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ハピネスチャージプリキュア!第47話『ありがとう誠司!愛から生まれる力!』 [ハピネスチャージプリキュア!]

 愛する者同士が拳を交わす。これ以上ない悲劇です。
 しかしラブリーはその痛みを乗り越え、拳の向こうの相手をより深く知る事が出来ました。
 かつて一対一で拳を交え、戦いの果てに互いの理解を深めたキュアピーチとイース様のように。
 自らの暗部を見つめ、受け入れて試練を乗り越えたハートキャッチプリキュア達のように。
 愛乃めぐみと相楽誠司。この広い世界で隣同士に生まれ育つという、
 それだけで奇跡のような縁を持った二人もまた、先人達と同じ試練を乗り越える事となりました。
  
 空に浮かぶ赤い星は次第に大きくなり、世界の終末が刻一刻と迫っています。
 見る者の心を炎で焼くような、激しく燃える憎しみの色。
 赤い星の姿はレッドそのものを象徴するようです。
 青い地球を飛び発ち、赤い星へ赴く四人の戦士達。
『ブルーの愛によって生まれた者たちよ。お前達がいくらあがこうと、運命を変えることは出来ない』
 二つの星の狭間で、誠司が立ちはだかりました。
『幸せは一瞬、愛は幻』
 レッドはかつてミラージュ様に言わせた言葉を、荒廃した赤い星を見下ろしながら呟きます。
『命あるものは全て息絶える。この世界にあるのは絶望だけだ』
 青と赤。二つの星が衝突した時、共に消滅の運命を辿り、全ては幻となり消える。
 その時が間近に迫っています。

『さあラブリー!気合入れて行くよ!』
『相楽君を取り戻すんでしょ!』
『大丈夫。みんなで力を合わせれば不可能はないわ』
 青と赤の間で、誠司との戦いが始まります。
 皆が結晶を砕くための好機を作り、仕上げはラブリーに任せるという策。
 己の拳を見つめるラブリーに、彼の本当の気持ちを掬い取って来たのかという
 レッドの言葉がよぎりました。

 プリンセス爆弾ボンバーの弾幕で視界を遮り、ハニースパイラルリボンで絡め取ります。
 誠司は平然と身体を逆回転させてリボンを解き、逆にハニーを跳ね飛ばしました。
 追い打ちをかけようとする誠司に、今度はフォーチュンが向き合います。
 小細工など無い空手の構え。誠司も光弾を発したりはせず、徒手空拳で応じます。
 正拳突きをフォーチュンは氷川流空手の「防御」で受け流し、
 誠司の眼前に拳を寸止めして呼びかけます。
『相楽君が氷川道場に初めて来た日、強くなりたい。あなたはそう言ったわ。とても真剣な目で。
 それは、めぐみを守れる人になりたかったんでしょう?』

 しかし誠司の瞳は答えず、代わりにレッドが口を開きます。
『だが、プリキュアとなった彼女を君は守るどころか・・・』
 これまで幻影帝国からめぐみ達を守ろうとして、逆に返り討ちにされてしまった悔しい記憶が
 誠司の瞳に再び憎しみを宿させました。俯き喘ぐ誠司を、レッドの言葉が煽り立てます。
『守るための力などあって何になる。力は破壊をなすためだけにある。全てを憎み全てを壊してしまえ』

 憎しみと、怒りの感情のままに拳を振るう誠司を、プリンセスが、ハニーが押し留めます。
『誠司、あんたは凄いよ。めぐみが神様を好きになっても、自分の想いが届かなくても、
 めぐみに笑顔でいて欲しいって気持ちは、絶対に代わらなかった』

『自分が苦しくても相手の幸せを願える、とても強い心をあなたは持っているわ』
『だから憎しみなんかに負けないで、相楽君!』
 誠司への想いを込めた三人の力が、結晶を叩きます。
 しかしそれでも結晶は砕けず、プリンセス達は逆に跳ね飛ばされました。

 直後の隙に、ずっと力を溜めていたラブリーが、
 ありったけの想いを込めたパンチングパンチを叩き込みます。
 ラブリーの誠司へ向けた気持ちに比例するような巨大な拳が、誠司を覆う赤いバリアと拮抗。
 そして、互いにひびが入り、拳とバリアが同時に砕け散りました。
 そのままラブリーは誠司に向かって突進します。結晶に拳を突き付け、赤い星へと一直線に降下。
 誠司にはザク以上の耐久性があったようです(笑)。
 誠司の名を叫ぶラブリー。二人は隕石のように赤い星へと降りました。

 赤い星の空には、地球から見る月のように、青い地球が浮かんでいます。
『ようこそ。愛の名を持つプリキュアよ。残念だが無駄な努力だったな』
 憎しみの結晶を破壊することは不可能であり、倒すか倒されるかの二択しかない。
 どちらを選んでも結果は絶望。それが愛の結末だと嘲笑するレッドの前で、
 ラブリーは誠司と静かに向き合います。
『あなたの言う通りだよ、レッド』
 ラブリーはレッドに言われた言葉の意味をずっと考えていました。
『あの時結晶を通して誠司の心の叫びが伝わって来た気がした。
 そして今、もう一度触れてはっきりわかった。激しい炎みたいな感情。私の知らない誠司』

 それも誠司の心の一部であり、壊すことはできないとラブリーは受け入れます。
 誠司を助ける方法は解らずとも、やるべきことは決めてきました。
 そして二人だけでここに来たのは、誠司に皆を傷つけさせないため。それだけではありません。
『これは私のわがまま。誰にも邪魔されずに、二人っきりで誠司と話をしたかったから』
 笑顔で誠司と向き合い、構えを取りました。・・・あの、邪魔してる赤い神がいるんですが(笑)
 その邪魔している奴が(笑)、もう何も言っても小馬鹿にするのを気にせずに
 ラブリーは誠司の拳に拳をぶつけます。
『私が悩んでたり、辛かったりした時、誠司はいつだって話を聞いてくれて、励ましてくれた。
 頑張る力をくれた。だから、今度は私が誠司の気持ちを受け止める番!
 言葉じゃなくていい。思い切りぶつけ合おう!
 私も誠司に伝えたい、大切な事があるから!』

 拳と拳の力が炸裂し、空中戦へとなだれ込みます。
『遠慮はいらないよ誠司!私だって・・・伊達にプリキュアやってないんだから!』
 空中に交錯するラブリーの想いが、美しい軌跡を描いて行きます。
『だけど今の私があるのは、きっと誠司のおかげ。
 私がプリキュアになるずっとずっと前から、誠司が私の事を守ってくれてたから』

 意のままに二人を戦わせているのに、レッドは苛立ちを募らせます。
 憎しみを砕くのではなく愛を持って正面から受け止めると言う答えが、
 ラブリーの愛の在り方だと、ブルーは評します。

 レッドの煽りで、誠司は元気玉のように巨大な火の玉をラブリーに向けて放ちました。
 ラブリーはそれを避ける事も、跳ね除ける事も無く、受け入れます。
 まさに心頭滅却すれば火もまた涼し。レッドが唖然とする前で、炎をハートへと変えて
 ピンキーラブシュートで突進。
 受けて立つ誠司は、両手を広げて飛び込んでくるラブリーの笑顔を見て息を呑みました。
 ラブリーはそのまま誠司を抱き留め、腕の中の誠司に呼びかけます。
 プリキュアになって、色々な人に出会って、わかった事。
 それは、愛とは好きとか助け合ったりといった特別なことでは無く、
 一緒に学校へ行ったり、ご飯を食べたり、星を眺めたり、何気ないこともみんな愛なのだ、と。
 そしてブルーに失恋した時以上に、誠司を失った時に感じた痛みが大きかった事。
 ずっと当たり前のようにいた人を失って、初めてその人が沢山愛をくれていた事・・・
『誠司・・・ありがとう。いっぱい、いっぱい、愛をありがとう』

 厚い雲の切れ目から差し込む薄日に照らされながら、ラブリーは自分の願いを語ります。
『私の願いはぴかりが丘でみんなと幸せに暮らす事。友達と、家族と、誠司と一緒に生きていく事』
 それに応えるように、結晶の奥から誠司の声が聞こえてきます。
『もうその願いは叶ってるじゃないか。そうだろう?めぐみ』
 未だ結晶の奥に囚われたまま。その状態で、誠司はラブリーに、否めぐみに呼びかけます。
 自分もめぐみに沢山助けられ、一緒にいると元気になる。
 そんなめぐみと、自分もずっと一緒にいたい―
 この幸せをずっと続けさせること。二人の夢は、一つになりました。

 雲の切れ目から、プリンセスが、ハニーが、フォーチュンが降りてきます。
 みんなで一緒に学校へ行って、友達とおしゃべりして、おいしいご飯を食べる事。
 そんな毎日をずっと続けて、みんなが一緒ならきっと何があっても楽しい。それこそ、
『最高にしあわせハピネスだよ!』
 ならば、成すべきことはあと一つ。結晶の中で誠司が大きく手を広げました。
『さあ来い!めぐみ!みんな!』

 目を閉じて微笑を浮かべる誠司に向けて、イノセントプリフィケーションの歌声が放たれました。
 歌声の中で結晶は静かに消えて行き、愛しい人が戻ってきます。
『おかえり、誠司』
『・・・ただいま』

 決して砕ける事無い憎しみの結晶が消えうせ、呆然とするレッドに
 その背後に浮かぶ地球から、ブルーが語りかけます。
『愛は憎しみをも吸い込み奇跡を起こしたのです』
『何が奇跡だ。愛にはなんの力も無い!ただ絶望を生むだけだ』
 その愛に傷つき絶望させられたミラージュが、ブルーと共に愛を説きます。
『私は愛に救われた。愛があるから、幸せな未来を信じられる』
『あなたはもう分かっているはずだ。いくら神の力をもってしても、愛を消し去ることは出来ないと』
 それでも頑なに拒むレッドに、ブルーは畳み掛けます。
『いや、あなたは最初から分かっていた。あなたの心にも大きな愛が』
『黙れッ!何が愛だッ!愛など何の役にも立たぬ!愛は無力なのだ!』
 冷静さを失い叫ぶレッドに、誠司と手を取り合ったラブリーが語りかけます。
『愛からはいろんなものが生まれるよ』
 勇気、優しさ、希望が生まれる。愛は、無敵。
 彼女の言う無敵とは「最強」という意味ではありません。
『私一人じゃ何もできないよ。いろんな人が支えてくれたから、私は頑張れるの。
 それは神様だって同じなんじゃないかな。みんな誰かと一緒に生きている。
 レッド、あなたも誰かを愛した事があるんじゃないの?』

 その言葉は、レッドを諭すことなく、逆に逆鱗に触れました。
『何が分かる・・・貴様に・・・愛は幻。幻もろとも、この神の手でお前達を消し去ってくれる!』
 赤い星に鳴り響く地鳴りは、レッドの怒りを表しているようです。


 プリキュアは悲劇のままでは終わらないのは分かっていても、
 無事に誠司を取り戻す事が出来て本当に良かったと安堵した一編です。
 それも単に助け出したり、問題の目を摘み取り排除するのではなく
 誠司が何故憎しみの結晶を植え付けられたか、なぜそれを増幅させてしまったのかという
 問題から目を背ける事無く、心の負の一面を見つめて汲み取り、掬い上げることで
 根本の解決を果たした事は良い展開でした。
 冒頭の例で挙げたピーチとイース様の激闘も、互いに相手を排除しようとした戦いではありません。
 ハートキャッチの試練も同様で、自分の醜い部分、弱い一面を見つめて受け入れることで
 一段上のステージへと上り詰める事が出来ました。
 今回も同様で、仮に憎しみの結晶を砕くことに成功したらどうなっていたか。
 おそらく誠司は「またプリキュアに、めぐみに助けられてしまった」
「めぐみを守ろうとして逆にまた守られてしまった」「自分が原因でめぐみを苦しめてしまった」
 と思い詰め、さらに負の感情を増幅させてしまう可能性があります。
 誠司は優しく、真面目で、強い少年ですが、今まで見せた自己犠牲的ともいえる性格が
 時に危うい脆さを感じさせます。
 張りつめたものが折れるのは一瞬で、本人さえも気づかないほど、それは深く心を折る事があります。

 実際、過去の私も、そして最近も時折、そんな境遇に陥る事があり、
 誠司を自分自身と重ね合わせてしまったところがありました。
 私は自力で自分と向き合い、また様々な趣味を通じて乗り越えるように努めていますが、
 誠司が幸福なのは、めぐみがいてくれた事だと思います。
 まるで自分の半身を失ったような喪失感を抱くような、大切な存在。
 人はその生涯でそこまで深い伴侶に出会えるものでしょうか。
「独身」の私だから、その感覚が分からないのかもしれません。
 私は自身が独身故に不幸だとは思っていませんので、それを知らないのは不幸だとは言いません。
 しかし一般的には、そこまで思える相手がいる事、いてくれる事は幸福という事なのでしょう。

 ところで結晶に操られている誠司は、どこかに理性を残していたのでしょうか。
 ラブリーと戦う前の前哨でプリンセス達とも戦う場面がありますが、
 その中でフォーチュンとの戦いが印象に残ります。
 それまでレッドから貰った力の象徴のような赤黒い光弾を武器に戦っていた彼が、
 この時はフォーチュンに応じるように空手で立ち向かっていました。
 記憶を失っても、また我を忘れている状態でも、
 身体に染みついた基本の動作は忘れないものです。
 そのためにスポーツ選手は「基礎練習」を行いますし、
 演奏家も「基礎練習」を、画家は「デッサン」で基本動作を身に着けています。
 こうしたあたりまえの作業。それは日常の中で、ごく普通の生活をする間で得られていくものです。
 誠司がめぐみを守りたいという動機で空手を始めたのも、
 めぐみと一緒に暮らす日常の中で、めぐみを守れる強さを得たいというものだった筈です。
 地球と赤い星の神の代理戦争のようなものに巻き込まれてしまったものの、
 本来、彼が守りたかったものは日常で、プリキュアが守りたいものも日常。大義名分ではありません。
 その日常を守る戦いの果てに相手を見つめて、弱さを認め、醜い部分も受け入れる。
 この戦いの底には、互いの優しさが流れているような暖かさが感じられました。

 さて、その大迷惑な(笑)神様達。特にレッド。
 山岡士郎カーズ様ジェリド井上さんのお声くらいしか好きなところが無く、
 私はどうもこいつ(呼ばわりしてしまうほど)気に食わないのですが(苦笑)・・・
 それでも今回はスイートプリキュアのノイズを思わせる描写が気にかかりました。
 赤い星が地球にぶつかれば、共に消滅するとレッドは言っています。
 それはレッド自身も、赤い星と運命を共にするつもりだと取れます。
 悲しみの中で全ての音を消し、そして自分自身も消えようとしたノイズと同様、
 彼もまた絶望と深い嘆きを味わった者だと、この後のエピソードで明らかにされます。
 赤い星は荒野が広がり、レッドが立つ場所はマヤの祭壇のようで、
 さながら滅びた文明の象徴のようなところです。
 自分の悲しみを消すためには、全てを消すしかないと思いつめた結果、
 このような暴挙に至ったのでしょう。
 それはわからなくはないのですが、なぜかノイズは同情できたのにレッドは同情できない不思議(笑)
 自らの手を汚さず誰かを操って悪事を行うという卑劣さが理由なのでしょうか・・・
 でもノイズもセイレーンやメフィスト、ファルセットを操って黒幕に徹していましたし・・・
 ちょっとこの違いが上手く整理できなさそうなので、
 この再視聴が終わったらスイートを観返して比較してみたいと思います。
 
 次回はいよいよレッドをボコる展開に(笑)。
 と思いきや、また奴の好感度を下げる「俺を愛せ」発言&抱擁があったりするので、
 果たしてどんな感想を抱くのか、ちょっとばかり不安だったりします(笑)。
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まるっさ

まずは冒頭のプリンセスの健気さにうるっときたものです。ホントに誠司好きなんだなあっと···そして更に彼女に加えてめぐみ・ゆうゆう・いおなちゃんと幼い頃から関係を持つ誠司···あれ?ちょっとジェラシー?

そうですねえ···もちろん(···)僕も独身なんですが、それでも幼い頃からずっと一緒に居て常に思い出の中に存在してきた人間が死んだりして居なくなるというのはその分半身をごっそり持っていかれるという思いはホントよく判るし(汗)、こういうどっかから借りてきたのではなく、自分自身の言葉でふりしぼるように気持ちを伝えようとするところにめぐみの人間味溢れる魅力を感じたものです。

あとレッドさんよりはドキドキやGoプリの三幹部のような「悪人ほったらかし系」の方が納得いかない気はしますし、また話は変わりますが常にプリキュア達を責任持ってフォローしてきたブルーよりはジョー岡田やカナタ王子のような理由はどうあれ途中で失踪して終盤近くまでプリキュアほったらかしの無責任な人間の方がどうなの?と思ったりします。二人とも一応「戦ってるよポーズ」は取ってたのですが、実際はブルーと違って何の役にも立ってないところも含めて。
by まるっさ (2017-10-29 01:06) 

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