キュアソード
"あなたマナの何を見てたの!?強ければマナみたいになれるの?そうじゃないでしょ!?"
ある日マナ達のクラスに、突然1年生男子が乗り込んできました。
『失礼します!!!相田先輩!僕を弟子にしてください!!』
いきなり土下座する男子生徒、早乙女純君を前に、マナ達は困惑の色を浮かべました。
彼が弟子入りしようと思ったきっかけは、
昨日本の山を抱えてふらつきながら廊下を歩いていた時、マナに助けてもらったためでした。
純君の代わりに本の山を軽々と持ち上げ、図書室へと向かう姿はとても輝いていて―
『その姿はとても力強くて頼もしくて、まるで、白馬の王子様のようでした』
『白馬関係ないし』
『僕は、相田先輩のように強くたくましい男になりたいんです!』
『マナ、男じゃないし』
弟子入り志願者は過去にも数名いたようで、慣れっこの六花の突っ込みが冴える反面、
マナはいとも簡単に弟子入りを許します。
またマナが面倒事を抱えると頭を抱える六花を他所に、
純君は精一杯頑張ると意気込み十分です。
その日の昼休み。購買前はパンを求める生徒達で黒山の人だかりで、
殺到する注文におばちゃんも対処しきれません。
そこに純君と共に通りがかったマナは、焼きそばパンが買えないと嘆く生徒のために
おばちゃんに声を掛けますが、いつの間にかてんてこ舞いのおばちゃんの代わりに
売店の手伝いを始めました。一方純君はといえば、人込みをかき分けて行く事すらできず、
聖徳太子のように注文を的確に聴き分け、満のようにお釣りの計算も全く間違えていない
超人的なマナの姿にただ舌を巻くばかり。
しかしマナはお手伝い&焼きそばパンを代わりに買う事だけに集中していたため、
自分の分を買う事をすっかり忘れており、
六花に泣きついて弁当を分けてもらう羽目になりました。
その後も階段を踏み外した生徒を保健室へ連れて行ったり、
養護教諭に頼まれて書類を職員室へ運んだり、
その途中で生徒同士の小競り合いを仲裁したり、
体育館の掃除、そしてもちろん生徒会長の執務と、マナの学園生活は大忙し。
下校時の際も、街の人たちの世話を焼き続けながら、ソリティアへと向かいました。
マナは赤ちゃんの世話までしているのかと驚く純君に、アイちゃんを抱っこさせてあげます。
ほっぺたを引っ張られたり、髪を引っ張られたりと、
案の定アイちゃんの餌食になる純君ですが、それでも精一杯あやしています。
六花達は純君が疲れていると気遣いますが、マナだけは違う感想を漏らしました。
『純君って、頑張り屋さんだね』
先輩に比べればまだまだだと謙遜する純君に、
マナは今日の出来事が大変でも楽しいと打ち明けました。
『だって、ありがとうって言ってもらえたり、喜んでもらえたりすると、嬉しいじゃない』
純君は、まだそこまでの余裕を持つ事は出来ません。
本当にマナのようになれるのかと不安を抱くものの、頑張れば僕だって、と思い直します。
『そんな頑張り屋さんの君にはこれ。君の望みがかなうように、このお守りラビーズをあげよう』
いつの間にかジョー岡田が現れ、純君にラビーズを授けました。
一方、ジコチュートリオのアジトでは、
絆創膏どころか包帯ぐるぐる巻きのベールが、イーラとマーモに危機感を促します。
今ひとつ緊張感に欠ける二人に対し、キングジコチューが相当怒っていると告げると
本気でやってやろうとイーラが重い腰を上げます。
しかし景気づけに投球!したボールは毎度おなじみガーターで、マーモの失笑を誘いました。
イーラは掟破りのボール連投で強引にストライクを計上し、
絶対にプリキュアを倒すと決意新たに出撃して行きました。
マナは相談された事の参考のために沢山の本を借りる等、読書家でもありました。
純君は書架の上にある本を取ろうとしますが、マナより背が低いため届きません。
その様子を見ていた六花と真琴は、純君がここまでついてこられた事を感心していますが、
ダビィは彼の元気が失せていると見て取っていました。
ため息交じりの純君が見上げる書架は、まるで威圧するような高い壁に見えます。
放課後、マナはテニス部の練習に付き合っています。
本職顔負けの鋭いサーブを放ち、練習後には純君が両手でも持てない重たいカバンを
マナは片手で軽々と持っていきます。再び純君は、ため息を漏らしました。
河川敷の帰り道、六花・真琴と三人で談笑しながら歩くマナと、
その後をついて行く純君との間には、埋めようのない距離があるようです。
そこに合流したありすは、マナ達の後ろの純君に目であいさつをしました。
『今日もマナちゃんのお手伝いですか?』
『・・・はい』
『それはお疲れ様です』
そう労われても、純君は自分の無力を思い知らされたような一日を振り返り、何も言えません。
その時、河原にいた子どもの帽子が突風で飛ばされました。
すかさず走り出すマナ。純君も後を追いますが、一生懸命走っても、その差は縮みません。
『僕は背も低くて、足も遅くて、力も無くて・・・』
足がもつれて転んでしまった純君と、帽子を見事キャッチするマナの対比は、
あまりにも残酷な現実です。
『どんなに努力しても、僕は先輩見たいにはなれない。強く・・・大きくなりたい!先輩よりも・・・』
純君のプシュケーが黒く染まり始めます。
なれるわけがない、そう思い浮かべた矢先、イーラの囁きが掛けられました。
プシュケーは一気に黒く染まり、イーラがそれを呑みこむと、
大きくなりたい、という純君の願望のような巨体へと変貌します。が・・・
『あれは・・・象?』『象ね』『象ですわ」
『・・・かわいい』
案の定、ベールビーストと同様、ぞうさんイーラビーストも何とも言えぬ脱力感があります。
しかしかわいくてもこいつは純君のプシュケーを奪った相手。
マナ達は子どもを逃がし、変身します。
鼻でロゼッタを巻きつけたと思えばソードを蹴り飛ばし、
ダイヤモンド目がけてロゼッタを投げつけ、ハートも土手に叩きつける等、
ぞうさんイーラビーストはかわいくても強敵です。
『強い・・・!・・・かわいいのに』『かわいいって言うな!』
都度「かわいい」に反応するイーラという脱力感があるものの、
その強さと本気度は本物です。無論純君を助けたいというハートの気持ちも本気ですが、
イーラは望みを叶えただけだとうそぶきました。
『強くなりたい・・・大きく、たくましく』
現に黒く染まったプシュケーの奥底から、純君の想いが伝わって来ます。
『こんなやり方、純君の本当の望みじゃない!』
『でも僕は先輩みたいにはなれないんだああああああッ!』
純君の心の叫びと共に、鼻から水を打ち出してハートを吹っ飛ばすイーラビースト。
続けて水塊はソード目がけて撃ち放たれます。
『あなたマナの何を見てたの!?強ければマナみたいになれるの?そうじゃないでしょ!?』
それを手刀で切り裂いて、ソードは純君の心に訴えかけます。
『マナだって最初から何でもできたわけじゃない。
誰かの力になりたくて、頑張り続けたから今のマナがあるのよ!』
『出来る出来ないでは無く、大切なのは誰かのために何かをしたいと言うマナちゃんの心!
強さとは、その心の事です』
ダイヤモンドも、ロゼッタもソードに続き、ぞうさんイーラビーストに立ち向かいながら
純君の心目がけて訴え続けます。
『みんな褒め過ぎ・・・私だってしょっちゅう失敗したり落ち込んだりしてる』
少し謙遜しながら、ハートは立ち上がりざまに鋭い拳を叩き込みました。
『・・・純君と同じだよ』
ぞうさんイーラビーストの胸元のプシュケーが、僅かに色を変えました。
『どうせこいつに聞こえやしない』
ぞうさんイーラビーストはハートを跳ね飛ばし、大きな足を思い切り振り下ろしました。
しかし、砂煙が晴れてみれば狙いは逸れており、イーラは困惑します。
続く攻撃の最中でも足が止まり、ハート達は純君の心が抵抗している事を察しました。
『いつも一生懸命頑張ってる純君に、私キュンキュンした。だから!純君のハートは渡さない!』
四人で重い足を支え、持ち上げて、渾身の力を込めて投げ飛ばしました。
すかさずスパークルソードで怯ませ、
苦し紛れの水塊攻撃はロゼッタリフレクションで弾いて逆に相手を水で包み込み、
その水をダイヤモンドシャワーで凍らせて、仕上げはハートシュートで射抜きました。
『強くなりたいって努力する純君の想い、真っ直ぐな願い。
それは決して自己中な心なんかじゃない!』
意識を取り戻した純君は、しばしマナと見つめ合い、そして・・・
数日後、最近純君が来ないと気になっていたマナ達は、
花が咲き乱れる花壇に目を止めました。これを仕上げたのは、園芸が趣味だと言う純君です。
『僕、気づいたんです。僕は先輩みたいに強く離れません。
でも、僕の花を見て誰かが笑顔に、元気になってくれたらいいなって。
僕が憧れていたのは、きっとそういう事だと思うんです』
真琴には逆に弟子を取れると言われ、謙遜しながら笑う純君。
色々と思い詰めていた彼にも、再び笑顔が戻って来ました。
ところが・・・
『あれがプリキュアか。いい遊び相手、みぃつけた♥』
その光景を不敵な笑みを浮かべながら見下ろしている金髪の少女がいる事を、
マナ達は知る由もありません。
いやあ・・・久々の日曜出勤(というか昨日まで出張)に行っている間、
早く帰宅して録画を見返すまでが待ち遠しい事!
出張中も、もし録画出来ていなかったらどうしよう、などと気が気ではありませんでしたが
杞憂に終わってほっとしています。
閑話休題、マナの万能っぷりを楽しめると言う点では前回と共通しますが、
純君を絡めた第三者視点で描く事によって、異なる方向性で多面的に楽しめたと思います。
背も小さくて力も弱く、ある意味では本来の視聴者であるお子様層に近い立場として
マナのカッコ良さを描き出す上で一役買っていました。
一方で、そんなマナも最初から完璧超人ではなかったと
ダイヤモンドやロゼッタの台詞を通して語る作りによって、
どんなに優れた人間でも努力なしではそうなり得ないのだという教訓も感じ取れました。
憧れの人に近づくために、まず模倣から入るのは一つの手段だと思います。
しかし、かつて薫がみのりをたしなめた時のように、
シリーズを通してでは必ずしも模倣を称賛していません。
向上心は大切ですが、自分にしかできない事を磨く事の方が
自分にも周りにも為になると、私も常々感じています。
ナンバーワンを目指す事ももちろん大事ですが、それが務まるのはごく一部のみ。
むしろオンリーワンの魅力、能力こそが、地に足がついた上で誰もが挑戦できると思います。
無論、マナが「ナンバーワン」であるとは明言されておりませんし、
マナ自身もそれを目指しているとは見受けられません。
むしろマナが頑張っているのは、周囲の人々の幸せや笑顔を見る事によって、
自分自身の幸せにそれを置き換えるという、情けは人のためならずの精神です。
それでも純君のように周囲から見れば、頂点で輝く太陽のように見受けられた事でしょう。
あまりにも眩しすぎる太陽は、直視する事が出来ません。
純君がジコチューになったのは、向上心を利用されたというよりも
マナに対する「妬み」が根底にあったように思います。
マナのように強くなりたい、目標として越えたいと考えて、
プシュケーが染まった時の純君の目からは、昏い歪みが感じられました。
輝いているマナへの尊敬が、敵わぬ対象への憎しみに転じても不思議ではありません。
直後、プシュケーが思い留まった際に「なれるわけない」と
後ろ向きな発言のように見受けられますが、
これはマナを押しのけてでも強くなろうという気持ちを、
そんな風に「なれるわけない」と推し留めたからではないかと考えました。
純君はラストの花壇作りで道を見出したように見られますが、
既にアイちゃんのお世話の際に答えを出しています。
戸惑い、色々と引っ張られながらも、マナ達のやり方ではなく
自分から「ベロベロバー」などを行ってあやしていました。
『純君って、頑張り屋さんだね』
誰かに言われなくとも自分で考えて行動できている姿をきちんと見ているからこそ、
マナはこのように評したのだと思います。
それにしてもジョー岡田、遂に男子にまで魔手を伸ばすとは・・・(笑)
まさか純君が番君以来(想像上ですが)の男子プリキュアになる、とか(無い無い)
ジョー岡田がラビーズを純君に授ける様を、
まるで不審者を見るような目で見ている真琴もツボでした。
とはいえ、これまでのジョー岡田の行動を見る限り、誰にでもラビーズを授けるとは思えません。
何らかの意味があるのか、それとも・・・?
今回ジコチュー化したしても抵抗出来たのは、プシュケーのお蔭かもしれませんが、
効果がはたしてそれだけだったのか、ちょっと気になります。
ありすが上手く空気を引き締めている様も印象的でした。
河川敷でのやり取りの際、純君の迷いを瞬時に見て取り、
簡単な目礼の後はただ話を聞くだけで、それ以上深くは追及していませんが、
それが逆に出すぎた感を与えず、ただ寄り添うだけで相談相手のようになっていたと思います。
相変わらず固い事ばかり綴っていますので、ちょっと砕きますが・・・
純君の想像上とはいえ「マナ王子」を実際に見るとカッコいいですねぇ。
六花でなくても改めて惚れ直します。
教室で純君の申し出を聞く前の「イス借りちゃってごめんね」→「いえいえ」
など、スイートプリキュアの「和音回」を思わせるやり取り等、
わかる人にはわかるファンサービス?も楽しめました。
そしてラストワンカットのみの登場でしたが、レジーナの可愛らしい事!
前回予告で見て以来、あの悪戯っぽい笑顔にハートを射抜かれました。
今のところ敵か味方か、目的もはっきりしませんが、
高いところから「監視」するように見下ろす姿からは、
満と薫の初登場時のラストカットを思い出し、今後どうなるのだろうとゾクゾクしたものです。
彼女が本格的に動き出す今後の展開に、大いに期待しています。
と、ここまで基本的に純君を応援しながら見て来ましたが、これだけは「絶対に許せない!」
ええ、無論あの「膝枕」の事です。
・・・!いいこと思いついた。俺もプシュケー染めればマナに膝枕してもらえるんじゃ・・・
いや、でもそんな事してマナ達に迷惑かけるわけには・・・
おや?誰かの囁きが耳元で聞こえるようなので、この辺で失礼します。