マナ達のクラスでは、将来の夢についての議題で盛り上がっています。
マナの「総理大臣」というとんでもないスケールの夢も、
彼女ならそれも可能に思えるところが凄いです。
さて、
六花の夢と言えば医者の筈でした。ところが、本当にそうなのか・・・
『私がお医者さんになりたいのって、ママがそうだからなの?』小さな疑問が彼女の中に沸きあがりました。
放課後、甘味処(渋いねェ・・・)でありすを交え、先程の将来の夢について語り合う4人。
改めて、医者になるのかと真琴に問われた六花は、即答できませんでした。
『自分でもずっとお医者さんになるって思ってたんだけど、
もしかしてそれって、ママに憧れていただけなのかなって』『それはつまり、本当の気持ちでは無かったという事ですね』いつからそこに居たのか、店内から不意に亜久里の声がしました。
亜久里はこの店の「モチモチ白玉と寒天、黒糖のハーモニー」についての賛辞を述べた後、
本当の気持ちじゃないとはどういう事か問う六花を、答えは自分で探すものだと突き放します。
『どうもあなたは心が揺らいでいるようね。ならばちょうどいい機会です。
自分の本当の気持ちについて、とことん悩んでみてはいかがですか?』そう言い残し、店を出る亜久里。
ところで勘定払ったのか?六花の心を暗に示すように、店先のかき氷暖簾が風に揺れています。
今日は3ヶ月ぶりに悠三パパが帰宅する日で、さらに亮子ママも早番で、
先程の一件をマナに心配されながらも、六花は久々の家族水入らずを楽しみにしています。
一方その頃、イーラはリーヴァとグーラによって、ボウリング場を追い出されていました。
黒雲立ち込める夜の海で、雷の音に八つ当たりをぶつけたところ、稲妻がイーラを直撃。
雷に打たれたイーラは、海へと落ちて行きました。
両親の帰りを楽しみに待っていた六花のもとへ
亮子ママは急患対応、悠三パパもフライトキャンセルで今夜は帰れないと電話が入ります。
六花はいつもの事だと気丈に振る舞い、心配そうな目でみつめるラケルを
逆に気遣って明日デートに誘いました。
耳をプニプニされながら、ラケルもまんざらでは無さそうです。
自転車のカゴにラケルを乗せて、自転車で海へと向かう六花。
ただなんとなく海へ来て見たという六花は、ふと源重久の歌を詠みました。
『風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ 砕けてものを 思ふころかな』岩に打ち付ける波を見ながら思い悩む少女の歌だとラケルに説明する六花自身も、
どこか思い悩んでいる事を否定しません。
『やっぱり、ママに憧れてただけだったのかな。
思えばプリキュアになったのも生徒会に入ったのも、マナと一緒ならって思ったからだし』波打ち際に続く六花の足跡を、寄せて返す波が消して行きます。
『結局、私っていつも誰かに憧れているだけなのかも。
それじゃ私自身の気持ちは一体どこにあるんだろう。私は、どうしたいのかな』果てしなく続く青い海原を前に、自問自答するようにラケルに問う六花。
その答えは、六花にしかわかりません。
その時ラケルは浜辺に打ち上げられて倒れている人を発見しました。
六花も急いで駆け付けると、それは怪我を負って意識を失っているイーラです。
警戒するラケルを他所に、六花は放っておく事が出来ず、迷いながらも行動に移しました。
木陰に運び込んで介抱するうち、イーラは目を覚ましますが・・・
『あなたが、助けてくれたんですか?ありがとうございます』
普段の彼とは思えない神妙さの理由は、落雷の衝撃で記憶を無くしていたためで、
二の腕に包帯代わりのハンカチを巻いてもらい、素直にお礼を言います。
『ありがとう。優しいんですね』
年頃の少年に間近でそんな事を言われてはたまりません。たちまち六花は真っ赤になりました。
ちくしょおおおおおおおおおおおお空腹のイーラを家に連れ帰り、厨房に立つ六花。
手伝おうかと申し出る等、イーラからは邪念のかけらも伺えませんが、
それでもラケルは気が気ではありません。
オムライスを作って運ぶ途中、段差につまづいて転びそうになる六花を、
とっさにイーラが身を乗り出して、六花とオムライスを死守しました。
身を挺したイーラを心配する六花ですが、彼の様子を見る限り大事無さそうです。
『あなたが無事ならそれでいいわ』六花の優しい心遣いに、イーラは頬を染めて返しました。
『天使のような人だ・・・』
再び固まる六花。
ちくしょおおおおおおおおおおおお『いつまでくっついてるケル!』
私の気持ちを代弁してくれたようなラケルの発言で気を取り直し、改めて食卓を囲みます。
怪我のため、スプーンを上手く使えないイーラの事を、次第にラケルも気遣うようになりました。
『怪我してるんだから気をつけなきゃ駄目ケルよ』
『ありがとう。君も優しいんだね』
そんな事を言われたラケルも、六花同様に照れて固まりました。
ともかく、スプーンを持てない程の怪我では食べずらいです。
・・・ということは、まさか・・・六花にあーんしてもらうだと?ちくしょおおおおおおおおおおおお私の感情とリンクしたように、ラケルは妬いて席を外しました。
と、不意にシャルルとランスが登場。
六花が親子水入らずならばラケルが暇だろうと気を使って遊びに来た2人から、
ラケルはイーラの事を隠そうとしますが、隠しきれませんでした。
六花がイーラにあーんしてあげている光景を前にしたシャルルとランスもまた、
目が点になって固まりました。
事情はマナ達にも知れ、河川敷に集まって協議が始まります。
そんな懸念とは関係なさそうに、イーラは花に留まる蝶を愛で、
ひまわりに見とれたりと、毒気が抜けて極めて穏やかな素振りを見せています。
マナとありすは六花の判断に理解を示すものの、
真琴とダビィは無害な状態のイーラに対して不信感を拭えません。
その懸念を解っているつもりの六花に対し、亜久里は厳しく追及します。
『甘いですわ。もしその者を放っておいて何か起きたなら、あなたにその責任がとれて?』六花は言葉に詰まり、即答できません。
『手傷を負っているとしても、敵は敵、悪は悪』亜久里はエースに変身し、問答無用でラブキッスルージュを構えてイーラへと向けます。
イーラとの間に、六花はとっさに割って入りました。
『何するつもり?』『回復し、記憶が戻ればその者は再び私達に襲いかかるでしょう。ならば、今ここで・・・』『やめて!』空には暗雲が立ち込め、遠雷が鳴り響きました。雨が、降り始めます。
イーラを庇う六花、かたやイーラを討つべく武器を向けるエース。
『おどきなさい』マナ達も、エースに追随してもおかしくない真琴も、固唾を飲んで見守る中、
六花は退きません。目も逸らしません。
『どきなさい!』『嫌よ!』強い口調で言われても、六花は譲りません。
イーラがこれまで行ってきた行為を理解した上で、信条を貫き通します。
『どんな人であっても、怪我をして苦しんでいるなら私は助けてあげたい。
でなきゃきっと後悔する。私は、後悔したくない。自分の想いを信じるわ』『・・・あなたもですか?』見ると、ラケルも六花に従い、イーラを庇うように手を広げていました。
本当はエースが正しいと思っていても、六花を信じるとイーラを庇い、
マナとありすも、そして納得できないながらもラケルと同じだと真琴も続きました。
そこに、グーラが登場。
『キュアダイヤモンド、その想い、見極めさせてもらうわ』エースはグーラを迎え撃つ事なく、その場から姿を消します。
グーラが吐き出す光線から、イーラを庇う六花。
そのままイーラに下がるよう言い含め、みんなを促して変身します。
『六花さんも、変身した・・・?』
先程六花に助けられた時に頭を打ったイーラは、キュアダイヤモンドを見てこう感じました。
『青くて、ふわふわして、きらきらして・・・』
そして、
前にもこんな事を言ったような記憶が蘇り始めました。
グーラと戦うプリキュアの姿を見るうちに、徐々に失った記憶が戻りつつあります。
その間に4人はグーラに投げ飛ばされ、
丁度グーラとプリキュアの間にイーラが立つ、という構図になりました。
『イーラ、そんなとこで何してやがる』
グーラに名を呼ばれた事で、これまでの記憶が蘇り、そして・・・イーラの目が鋭く輝きました。
イーラはグーラが放つ光線の軌道上に立っています。
『逃げて!』イーラはダイヤモンドの叫びに向き直り、片手で光線を弾きました。
弾かれた光弾が、厚い雲に穴を開けます。
『ふん。プリキュアを倒すのは、この僕だ』
グーラに咎められたイーラが返した言葉を聞いて、
記憶が戻ったと察したダイヤモンドから、安堵の声が漏れます。
『記憶が・・・?そう、良かった』『何で喜んでんだよ。変な奴』
『だって、嬉しいんだもん。きっとこれが私の素直な気持ちなんだと思う』直後、イーラはおもむろに烈風を起こしプリキュアを吹き飛ばします。
丁度先程までいた場所にグーラの拳が炸裂し、結果的に4人を庇った形になりました。
『まさか、助けてくれた・・・?』イーラはそれには答えず、静かに立ち去ります。そして、ダイヤモンドからも光が立ち上りました。
『見せてもらいましたわ。あなたの本当の気持ち』再び戦いの場に戻ってきたエースが、ダイヤモンドに誓いを説きます。
『プリキュア5つの誓い、ひとつ!プリキュアたる者自分を信じ、決して後悔しない』ダイヤモンドも先程のエースの厳しい態度は
自分に本当の気持ちを気づかせるためのものだと気づいていました。
その事にお礼を言うダイヤモンド、とぼけるエース。
そして、ダイヤモンド自ら先陣を切ってグーラに挑みかかります。
迷いを払ったその戦いぶりは強く!美しく!
『お行儀の悪い食いしん坊さん。このキュアダイヤモンドが、あなたの頭を冷やしてあげる!』雲の合間から立ち込める日をバックに橋の欄干に立つ姿からは神々しさすら覚えます。
共に戦おうと申し出たエースがラブキッスルージュでグーラの動きを封じ、
そこにダイヤモンドシャワーを叩き込みます。
それでもグーラは動じず、かき氷は好物だと氷の嵐を喰らい始めました。
その食欲に呆れるものの、それならばと再度氷を叩き込むダイヤモンド。
『お粗末様。ところで、そろそろ頭は冷えたかしら?』勝ち誇っていたグーラでしたが、カキ氷を喰いまくった反動の頭痛が襲ってきて、
耐えきれず撤退して行きました。
戦い終わり、エースはダイヤモンドが新たな力に目覚めた事を評しながらも、
イーラの事を油断しないよう釘を差しました。
おそらく、次に相見える時は敵対するだろうという事はダイヤモンドも自覚しています。
エースが立ち去った後、いつしか雲は晴れて、空には虹の橋が架かっています。
燃えるような夕焼けの下、六花が腕に巻いてくれた包帯に目を落すイーラ。
逆光のため、その表情は伺えません。
投げ捨てた包帯がビルの谷間へと消えるのを見届けた後、
彼は無言で姿を消しました。
菱川家では遅れた家族水入らずを楽しんでいます。
悠三パパが持って来たお土産は相変わらず微妙なセンスの民芸品ですが、
夢をかなえてくれるお守りと聞いて、六花は丁度良かったと亮子ママに向き直りました。
『私、夢が出来たの。私の夢はお医者さん。ただ、今までとちょっと心構えが違うっていうか・・・』漠然ではなく確かな信念を抱いた彼女は、きっと夢を実現させる事でしょう。
まず、昨日は午後から外出していたため、UPが遅れて済みません。
それだけでなく四人の逸話のトリを飾るに相応しく、充実した内容に、
うまくまとめるのにも難儀しそうな嬉しい悲鳴を上げた次第です。
もっとも、本文中にやたらと嫉妬に狂った私の魂の叫びを織り交ぜてしまいましたが(笑)
それをラケルがある程度代弁してくれていたところも楽しめました。
幼少時から明確な将来の夢を一貫して持っているキャラクターは、
うららやこまち等、過去のシリーズでも見受けられます。
それだけに、六花はどう差別化してくるのかという問題がありましたが、
イーラを上手く絡めた事でこれまでにない印象的なエピソードに昇華していたと思います。
医師を目指すのであれば、今回のような事態は避けて通れぬ道でしょう。
窮鳥懐に入れば猟師も殺さず、と言います。
どんなに嫌な奴でも、兇悪殺人犯でも、主義主張の異なる相手であろうとも、
例えばレーガン米大統領銃撃事件時の医師達のように、
自己の主義主張を超えて使命を尽くさねばなりません。
さらに、時に大切なプライベートも犠牲にする覚悟が必要でしょう。
現に、亮子ママは楽しみにしていたであろう一家水入らずよりも、急患対応を優先させています。
この点に関しては、普段から慣れているという事で
今回の六花にはさほど影を落としてはいないように思えますが、
電話に出ている六花を囲む廊下は、薄暗さが強調されて描かれていました。
頭で解っていても、やはり寂しいという、六花の心境が暗示されていたと思います。
この時点では、理解は出来ても割り切る事が出来なかったような気がしました。
六花がラケルを誘って出かけた先に海を選んだのも、
先日の健太郎パパの台詞が効いていたからだと思います。
ちっぽけな事で悩まず、前に進んで行こうというこの言葉通り、
文字通り波打ち際を歩いて行った先に、六花は青い大海原と、そしてイーラを発見しました。
立ち止まっていては答えは出ない(というには極端な出会いでしたが(笑))
というだけでなく、この時六花は靴を脱いで裸足で歩いている事が強調されています。
素直な裸足の本心に向き合おうという象徴のように思えました。
『結局、私っていつも誰かに憧れているだけなのかも』
この時六花はそのようにラケルに問いかけているように見えて、
実際は自問自答しています。ラケルもそれを踏まえて、六花にしか解らないと返したのでしょう。
ここでラケルが何か意見を述べていたら、それは六花の出した答えにならなかったと思います。
六花は比較的他の子と比べて、自分を相対的に低く置く傾向が見受けられます。
確かにマナのようにぶっとんだ存在が近くに居れば無理もないのですが(笑)
六花自身は決して劣ってなどいません。
むしろあの成績は誇っていいべき物でしょう。
自分の事は自分で見えづらいものです。
だからこそ、そんな彼女が自分を見て、自分を認め、
確固たる信念を抱いた成長物語には感銘を受けました。
さて、今回のイーラについて。
記憶を失っただけで性格も天使のようになるというのはお約束ではありますが、
仮にこれがイーラの素だとすれば、人間は環境・境遇次第で
どうにも染まるという事のように思えます。
今までのジコチュー軍団は時折アホな事をするものの、
比較的シビアな悪役を演じてきたので、今年は和解路線では無いのかと考えていましたが、
にわかに相互理解の可能性が浮上してきました。
ラスト前、夕陽の中で包帯を解くシーンでは、彼の表情は逆光のためはっきりとしていません。
しかし包帯を見つめる様からは、
キリヤの絆創膏のように心を縛るものになる予感があります。
そして、夕陽の中へと振り返って歩み出した姿は、
闇から光への転換を暗示しているように思えました。
かつてのキリヤとほのかのように切ない展開もドラマティックではありますが、
願わくば彼には幸せな結末を望みたいものです。
性格・態度が状況によって変わってしまう事は、レジーナの事例を想起させます。
そしてレジーナといえば、今回の六花はレジーナを庇い続けたマナに通じるものがあります。
六花はかつて、レジーナに対してやや不信感を抱いていました。
まあ、
マナを取られかねない嫉妬もあったかもしれませんが(笑)
それはさておき、マナがレジーナを信じ続けた姿を見ていた事が、
今回六花がイーラを守り通した事に影響していると思います。
生徒会はともかく、プリキュアになったのは
マナのために自分で選んだ道でしたし、
六花は本人が言う程、決してマナに憧れているだけではありません。
一緒に高く飛べるだけのポテンシャルを十分に秘めています。
それは私自身への自問自答へと繋がりました。
2月に休止し、3月に再会した時の心境はどうだったのか。
私自身が再び続けてみたいと感じたからこそだった筈です。
最近思うように筆が進まず、思い悩む事も多かった私ですが、
これから先もおそらく悩みながら、それでも作品の魅力を語り続けて行きたいと、
改めて自らを見つめ直すきっかけになったと思います。
ところでファン心理としては欲張りなもので、
個人的に2点、もしもこうだったら?と気になったものがありました。
一つは、仮に負傷して記憶喪失になったのがベールだったら、
もう一つは、イーラが負傷しながらも記憶喪失にならなかったら
果たして六花はどう対処したのか?
前者は想像が難しいのですが、もし後者があったとすれば、
「なぜ助ける?僕は敵だぞ」といった風に、
のび太と鉄人兵団のように悲劇的ながらも強く印象に残る作品になったかもしれません。
以上チラシの裏ネタで失礼しました。
六花メイン回に相応しく、六花の魅力も大きくクローズアップされていて良かったと思います。
もともと上品で育ちの良さが伺える彼女ですが、
海へ向かい自転車をこぐ姿が特にお嬢様っぽくて素敵でした。
イーラの言葉を借りずとも、天使を観たような気がします。
そして他のネタ的に、亜久里の凸・・・(笑)
やっぱりこれは某竜宮小町のお嬢様アイドルを意識していらっしゃるのでしょうか。
あと、ラブキッスルージュの折の青い唇(笑)
前回の黄色やその前の紫色の唇も密かにインパクトがありましたが、
青だとなんだかヘドリアン女王みたいで・・・
また、ブルーハワイのカキ氷食いすぎて唇が冷えたように見えなくもないです。
強いようで弱点があり、弱点があっても譲らぬ強さがある。
プリキュアはそのような作品であり、そのような少女の姿が胸を打ち続けて来ました。
さて、今のところ完璧に見える亜久里の弱点とは、一体・・・次回も楽しみです。