イーラとマーモはアジトのボウリング場で、王女奪還を祝して乾杯し、
勝利の美酒(酒じゃなさそうですが)に酔いしれます。
この手柄は一番働いた自分のものだと密かにほくそ笑むイーラですが、
王女を亡き者にしようにも未だ固い氷に覆われて手が出せません。
イーラは巨大なハンマーを
槇村香のようにどこからともなく持ち出して
思いっきり打ち付けますが、氷にはヒビ一つ入りませんでした。
続けてマーモは、なんとダイナマイトに点火。おいおいここ室内ですよ(笑)
止めようとするイーラともみ合ううちに、彼らの足元でダイナマイトが炸裂。
こうしてジコチューの2人が天に還ったのでした。無茶しやがって・・・2人のアホな騒ぎを尻目に、レジーナは浮かない様子です。
自分に呼びかけるキュアハートの姿を思い浮かべる度に胸が痛み、
それをベールに指摘されると、ムキになったように否定します。が・・・
『そんなわけないじゃない!そんなわけ・・・』
レジーナの胸の内を知ってか知らずか、ベールは不敵な笑みを浮かべています。
その頃、ソリティア。王女がキングジコチューのもとへと連行された筈だと、
ジョー岡田は珍しく焦りを隠せません。
事は一刻を争うと解っていても、トランプ王国へと向かう手だてが無く、重い空気が流れます。
その時、アイちゃんの持つクリスタルが反応し、異空間への扉が開きました。
『クリスタルは今まで私達を導いてくれた。今回もきっとそうだよ!』そう確信するマナに続いて、みんなも扉へと身を投じました。
王女様を取り戻し、そしてレジーナときちんと話すために。
4人は途中で変身し、固い決意を胸にトランプ王国へと赴きます。
捕えた王女をキングジコチューに進呈するベール達。
お褒めの言葉があるかと思いきや、遅いと一喝されて、彼らはただ恐縮するばかりです。
しかしキングジコチューはベール達には厳しくとも、娘に対しては甘いところを見せました。
やや複雑な気持ちで、父の褒め言葉を受けるレジーナ。
続けてキングジコチューが王女を始末すべく稲妻を落とすのを目の当たりにして、
レジーナは思わず目を背けますが、雷の直撃を受けても王女を覆う氷は傷一つありません。
それでも王女を始末せずとも、手の内にある以上、完全陥落も時間の問題です。
その前に人間界を全員ジコチューにするという発言を聞いて、
キングジコチューが動けるようになるだけでいいと考えていたレジーナの顔色が変わりました。
しかしキングジコチューにとってトランプ王国や人間界は、
全宇宙を掌握する前の前段階に過ぎません。それを知ったレジーナを胸の痛みが襲います。
『先程から、らしくありませんな。我々はジコチュー。
人間界がどうなろうと関係ないではありませんか』
レジーナの様子がおかしい事を見てとったベールは、
キャンディを噛み砕き、棒を吐き捨てて言い放ちました。
『キングジコチュー様が本気を出されれば人間界もプリキュアも終わり』
噛み跡の残る飴の棒は、プリキュア達の、そして人間界のその後を暗示しているようです。
レジーナの脳裏にマナ達の姿が浮かび、
都度早鐘のように鳴る鼓動を押さえられず、レジーナは苦悩します。
『愛を振り撒くプリキュアが、いなくなってしまえばいい』
「マナがいなくなる」という事実に胸を締め付けられたレジーナは、思わず父に進言しました。
『そんなの駄目ッ!!パパ、人間界に手を出さないで!』
キングジコチューに逆らうのを見て焦ったベールは、レジーナに謝るよう申し入れますが、
時既に遅く、キングジコチューは娘に雷を落としました。
『お前などもう私の娘ではないわ!』
イーラとマーモが、倒れたレジーナを冷たく見下ろします。
『ふん。ジコチューが人の心配なんて』『随分お馬鹿さんになっていたのね』
そしてベールは手のひらを返すのも早く、レジーナの始末を買って出ました。
その時、空間が開いてプリキュア&ジョナサンがトランプ王国へやって来ました。
無様な着地や空を走る姿など、颯爽とはいきませんが、
荒野の向こうに聳え立つキングジコチューの姿を認め、改めて緊張が高まります。
王女はキングジコチューの下へ居ると察して向かおうとした矢先、
イーラとマーモが足止めにやって来ました。
『まっすぐで暑苦しい目。凄く不愉快だわ』
マーモが呼び寄せた無数のジコチューが、皆を取り囲みます。
ジコチュー達はロゼッタとダイヤモンドが、
鞭を振るって襲い来るマーモはジョナサンが、
ナイフを投げつけてくるイーラはソードがそれぞれ引き受け、
スパークルソードが道を切り開くや、
ハートはまさに猪突猛進、一直線にキングジコチュー目指して駆け抜けます。
『口を開けば愛だの友情だの、虫唾が走るプリキュアめ。そんなに好きなら、愛のために散れ』
レジーナのもとでは、ベールがその到着を待ち受けています。
みんなに後を託し、急ぐハート。行く手にレジーナが倒れているのを認めて駆け寄ります。
レジーナも無事に意識を取り戻しますが、案の定これはベールの仕掛けた罠でした。
突如現れた蜘蛛ジコチューによって2人の下に穴が開き、
奈落の底には灼熱のマグマが煮え立っています。
辛うじてジコチューから延びる糸を掴んだハートは、先にレジーナを飛ばそうとしますが、
レジーナの魔力は先程のキングジコチューの一撃によって封じられていました。
ベールは高みの見物と洒落込んで、ハートとレジーナの窮地をみんなに見せつけます。
レジーナを背負い、ハートが糸を登ろうとすると、か細い糸は今にも切れそうです。
ベールはこの糸は一人分の重さしか支えられず、二人揃って助かるのは不可能だと言い放ち、
どちらかが落ちれば別だと付け加えました。
『そんな事するわけないでしょ!』無論ハートが応じる筈もありませんが、その背のレジーナは動揺を隠せません。
『他人を想うから裏切られる。他人を気にするから単純な罠にもかかる』
ベールの言葉を聞いたレジーナは、これまで犯した所業を思い起こしました。
指切りの約束を破ったり、罠にはめてゲームをさせたり・・・自己中こそが最高だとのたまうベールに、ハートはきっぱりと反論しますが、
糸は今にも切れそうです。
『(2人仲良くマグマに落ちて愛など何の役にも立たない事を証明してくれれば、それで結構。
万が一レジーナがキュアハートを犠牲にしたとしても、俺が糸を切るだけだ。
そうすれば俺は確実にジコチューのナンバー2。そしていずれは・・・)』
ベールは密かに更なる野望を抱きながら、胸中でほくそ笑んでいます。
『ねえマナ。私とマナは、何なのかな?』
レジーナはハートを背中からギュッと抱いて問います。ハートの答えはシンプルです。
『友達だよ』レジーナの胸の奥に浮かぶマナは、いつも変わらず「友達」だと言っていました。
『マナは、変わらないね。私ね、マナと会ってからおかしくなっちゃったみたい。
マナに優しくしてもらうと、胸がドキドキするようになったの。
マナが辛そうな顔をすると、胸がズキズキするようになったの』
この気持ちこそが人を思いやる気持ち、すなわち「愛」だと言うハートの答えを聞いて、
静かに目を閉じたレジーナの目から、涙が一筋こぼれました。そして・・・
『マナ・・・大好き・・・』
手を放し、レジーナは自らマグマへと飛び込みました。
息を呑むハート。
その様を映像を通じて見せられていたみんなも、愕然としてレジーナの名を叫びました。
レジーナは微笑を浮かべ、達観したように静かに目を閉じて落ちて行きます。
気が付いた時、レジーナはまだ落ちていません。
ハートは懸命にその身を足で挟み、そして叱責します。
『諦めちゃだめ!』『でも・・・』
『「でも」も「だって」もいりませんッ!こんなの全然ピンチじゃないよ!
私を誰だと思ってるの!?私は、大貝第一中学生徒会長よッ!!フンッ!』「モチのロン」の時と同様、それ以上に鼻息荒い発言に思わず脱力するベール。
そしてハートは、生徒会長の凄さを語って見せます。
『生徒会長はみんなの笑顔のためなら、レジーナのパパよりも強くなれるんだから』穴の上で小物っぽくさっさと落ちろとほざくベールに対して、お断りだと言った上で、
『大丈夫。糸が切れたら壁を登ろう。壁が崩れても、きっと方法はあるよ』持ち前のポジティブさでレジーナを励ましました。
笑顔で応えるレジーナを、不思議な光と共に激しい鼓動が突き上げます。
『何だろう。すごく、ドキドキが・・・高鳴る!』
皆が駆けつけた時、レジーナがハートを抱えて穴から飛び出しました。
『カッコ悪いなあ』『全く役立たずなんだから』
イーラとマーモに馬鹿にされ、ベールは小物っぽい馬脚を現してジコチューをけしかけます。
『蜘蛛ジコチュー!レジーナを始末しろお』
しかし単なるジコチューごとき、力が戻ったレジーナの敵ではありません。
糸を受け止めた彼女に空の彼方へと投げ飛ばされました。
続いて襲い来る無数ンジコチュー軍団は、
プリキュア四人のラブリーフォースアローによって一斉に浄化されました。
そしてその隙にジョナサンがちゃっかりとアン王女を抱えて走り去ります。
この醜態にキングジコチューの怒りが爆発。
その矛先は娘の裏切りに向けられます。
『レジーナ!おのれィ!私に楯突いたばかりでは無く、プリキュアと心を通わせるとは!』
それでも父を切り捨てられないのか、躊躇するレジーナを稲妻が襲いますが、
一番わだかまりがある筈のソードが真っ先に飛び出して助けました。
改めて、手を差しだすハート。
その手を取る事に未だ躊躇っているレジーナの背後から、恐ろしい父の怒りが轟きました。
ハートの手をしっかりとつかみ、みんなと一緒に行く事を選ぶレジーナ。
キングジコチューの稲妻が逃げる一同を追って来ますが、
間一髪、時空の扉に逃げ込む事に成功しました。
キングジコチューの怒りに満ちた叫びが、荒野にこだまします。
王女も取戻し、完全勝利といっても良い金星ですが、レジーナの顔は優れません。
『これで、良かったんだよね・・・?』
レジーナは改めて、ハートと繋いだ手をしっかりと握り返しました。
まるで、何かを確かめるように・・・
そう来たか!と今回は唸らされました。
生みの親・主君への情とプリキュア達との友情の板挟みというレジーナの立場は
満と薫や
イース様と重なるだけに、どのように描いてくるかと期待しつつ、
どう差別化するのかという不安半分で臨みました。
レジーナの内面描写もさることながら、
マナ=ハートの姿勢が十分に活きた展開が秀逸で、
プリキュアの歴史にまた新たな名作が産まれた事を歓迎したいです。
まず今回最も印象的かつ、固唾を飲んで見守ってしまったレジーナの「自己犠牲」について。
前回の予告でも不穏な空気が感じられ、
この一週間彼女の安否を想うと心配でたまりませんでした。
それだけに、
満と薫の時のような「生死不明」の事態に陥らなかった事をまず評価します。
確かにあのままマグマに落ちた?として生死不明になったとしたら、
満と薫以上に無残な最期を遂げたのではないかと取ってしまいそうです。
また、イース様→パッションのように転生するとしても、
その前にある「死」がイース様のような安楽死でない死を遂げてしまうので、
私にとっては朝から食べ物が喉を通らない状態になってしまいそうでした。
続けて怒りにまかせたハートの涙の反撃、あるいは悲痛な叫びを上げる姿、
などという展開も想定されますが、私は以前よりプリキュアシリーズに於いては
必要以上に人が嘆き悲しむ様を見たくないと望んでいます。
そして何より、「自己犠牲」を演出してしまっては
プリキュアシリーズの流れに反してしまうと思っています。
「誰かの犠牲の上に成り立つ世界なんて要らない」既に8年も前になりますが、マックスハートでなぎさははっきりとこう言い放ちました。
確かに自己犠牲がもたらすドラマが持つ感動もあります。
しかし、自己犠牲を否定した先の、みんなで諦めずに歩む世界を貫いたからこそ、
今も私はプリキュアシリーズに惹かれ続けているのだと思います。
マナを救うために自ら犠牲になろうとしたレジーナの行動は、
穿った見方をすれば、父に見限られた絶望と、
マナ達を傷つけた自責の念から逃れるための「自殺」と見る事も出来ます。
それは最も安易な逃げ道ですが、遺された者に重い十字架を背負わせる、
この上も無く罪深い行為です。現に私も深い絶望に捉われた日々を送った時期があり、
この苦しみから何度逃れようと思った事か。
それだけにレジーナの痛みにはある程度共感できるつもりですが、
仮にレジーナが本懐を遂げてしまったとすれば、マナがいかに悔やむかを考えれば、
何があっても可能性を放棄する事は許されないのだと、改めて感じました。
だからこそ、直後のハートの『諦めちゃ駄目!』は、叱り諭すようにも取れます。
「王女様を救え」という今回のサブタイトルは、文字通りアン王女の事を指すのだと思いますが、
同時に「レジーナ」はイタリア語で女王を表す単語である以上、
女王と王女の違いがあるとはいえ、レジーナを救うというニュアンスもあるように感じました。
今回キングジコチューが人間界の征服を目論んでいると知った時、
レジーナは戸惑いを隠せませんでしたが、
その
彼女自身もこれまで何度か人の心を弄んできた事実があります。
本人からすればおもちゃで遊ぶような感覚だったのか、罪の自覚が無いのかもしれません。
実際、子どもは残酷なもので、ただ虫を殺したり、カエルに爆竹を仕掛けたりなどと
無邪気に残酷な遊びをしたりするものです。
しかし成長して行く過程で生命を知るにつれ、やがて小さな残酷からは遠ざかって行きます。
レジーナもまた、マナを通じて心とは何か、愛とは何か、
おもちゃのように扱っていた対象の本質を知る事で、何かが芽生えたのでしょう。
しかしこれまでに人の心を踏みにじった事には、罰を受けなければなりません。
今回父からの折檻、マナに対しての押しつぶされそうな罪悪感と胸の痛み、
そして未だ思慕の情の残る父との決別の悲しみ、
彼女が新たにマナ達との時を過ごして行くために受けた罰なのかもしれません。
そんなレジーナを取り巻くシリアスな状況&展開を
良い意味で吹っ飛ばすマナの懐の深さとスケールの大きさには感服しました。
「モチのロン!」の時も、その発想力に舌を巻いたものですが、
生徒会長だからという啖呵を切っただけで、この安心感!
一見無茶苦茶に見えても、この何とも言えない説得力とカリスマ性を見ると、
これから先に待ち受ける苦難に対してもきっと乗り越えられると感じさせます。
キングジコチュー様、例年通りのラスボス大物キャスティングでした。
個人的にはまだプリキュア未出演の大御所という事で、
密かに内海賢二さんを望んでいたのですが、残念ながら叶わぬ願いとなってしまいました。
とはいえ、ほうちゅうさんという渋いチョイスにも満足しています。
ただ願わくば昨年の玄田さんは目立つ活躍の場が少なかったので、
今年はキングジコチューというキャラクターの幅を広げて頂きたいと期待したいです。
しかし、キングジコチュー以下イーラ達三人組の所業と振る舞いを見ていると、
果たしてマナをもってしてもこの連中との架け橋が築けるのかが気がかりです。
今年は和解対話路線ではなく、かといって全面対立でも無い、
それが何なのかはまだ検討が付きませんが、
何かもう一つの道を模索しているような気がしてきました。
そんな中、少々気になったのは、折檻を受けたレジーナに対するイーラとマーモの反応です。
『ふん。ジコチューが人の心配なんて』『随分お馬鹿さんになっていたのね』
この時のイーラの目は冷たく見下ろしているようですが、
一方でどこか同情気味にも感じられました。
そしてマーモはこの台詞の際、どんな顔をしているのかが映っていませんが、
「随分お馬鹿さん」には自分を重ね合わせてどこか自嘲気味なニュアンスが伺えました。
彼らはレジーナとはケンカばかりで、反発したりされたりする仲でした。
だからこそ、それが飾らぬ本心での本音のやり取りとなって、
何かレジーナに対して思うものがあったのかもしれません。
もし、彼らが変わり得るとすれば、レジーナがその鍵となるのか、それとも・・・?
その反面、ベールは小物っぷりで馬脚を現して株を下げただけでしたが(笑)
下克上を匂わせたところを見ると、ジコチュー陣営のトップ争いにもひと波乱あるのでしょうか。
一応、彼が事実上のナンバー2的立場に居ますので、歴代のナンバー2と比較してみると、
意外にも自分が頂点に立とうとした者はいませんでした。
ナンバー2の地位を貫いたイルクーボ、カワリーノ、アナコンディさん、ノーザ「さん」、ジョーカー、
権力志向がありながらも、ノイズに取って代わろうとまでは思っていなかったファルセット、
ナンバー2と思わせて実はラスボスだったバルデスとゴーヤーン、
ハートキャッチのサバークは野心云々では無い独自の立場を取り、
ベルゼイは野望うんぬんよりも自らが生き延びるための下克上だったため、
こうして見るとベールの今後の動きが気になります。
重くなりがちな一編ではありますが、冒頭のダイナマイト騒ぎや
宙を走るハート等を織り交ぜる事である程度緩和していました。
ただ着地に失敗して砂に顔を埋める役目がダイヤモンドとは・・・
そんな位置づけになってしまったのですね(笑)
確かにロゼッタでもソードでも似合わないので、致し方ないのですが・・・
あとトランプ王国への行き方を相談している際、
部屋の片隅にセバスチャンがいたので、
まさか「心配ご無用」とか言い出さないか本気で案じてしまいました(笑)
あと真面目なシーンではありますが、マーモが鞭を振るう姿の似合う事と言ったら(笑)
漫画版だけに描かれたという「鞭を持ったイース様」が本編に出なかっただけに、
満を持して?の鞭使い女王様的な活躍を、また見たいものです。
未だ波乱の展開は続き、次回登場のキュアエースの謎にも期待が高まります。
絵を見る限りではアン王女に酷似していますが、果たして・・・?
「エース」だけに、ウルトラタッチよろしくレジーナとアン王女の合体変身だったりして(笑)
それともまさか、「アンー!」「ジョナさーん!」「プリキュアータッチ!」とか・・・
かつて「エースのジョー」と称された宍戸さんとかがいましたし(無い無い)
無論、水着に期待するだけ無駄なものの、みんなが海で楽しむ一幕にも期待しています。