相田マナ
"私はもう逃げない!大切な人たちを守るために、私は戦う!"
年長のダビィさえその存在を知らない謎の戦士、キュアエース。
エースを前にしたレジーナは、突き上げる鼓動とともに、
胸の奥がむかつくような嫌悪感を抱き、強烈な一撃をお見舞いします。
その攻撃を難なくかわし、続く徒手空拳の戦いでもエースはレジーナを軽々とあしらい、
口紅のような
エースショットを放ち、レジーナを一気に押し切りました。
悲鳴を上げて倒れるレジーナのもとへ、マナは傷ついた体で歩み寄ろうとしますが、
その前にベールがレジーナを抱え上げました。
『待って!レジーナを連れて行かないで』
懇願するマナの姿が、レジーナの瞳に映りますが・・・
『プリキュア・・・絶対許さない!』
その一言に愕然とするマナを残し、ベール達はレジーナを連れて姿を消しました。
打ちひしがれたマナの咽び泣く声が浜辺に響き渡ります。
『泣けばあの子が戻ってくるとでも言うのですか?
さあ、立ちなさい。あなたには立ち止まっている余裕など無い筈です』
確かに泣いたからと言って解決する問題ではありませんが、
今のマナに対してあまりにも酷な発言に抗議する六花達。
エースはその抗議の反論ではなく、「誓い」を言い含めるように口にします。
『プリキュア5つの誓い。ひとつ!プリキュアたる者、いつも前を向いて歩き続ける事!』
そして、マナを諭すように語りかけました。
『・・・もっと、強くなりなさい』
『無理だよ・・・私、これ以上強くなんてなれない・・・』
打ちひしがれたマナにはその言葉を実行する事が出来ず、砂を握り締めて嘆くばかり。
その姿に、エースはマナからラビーズを取り去りました。
『あなたが愛を取り戻すまで、これは私が預かります』
エースが立ち去った後、マナは己の無力を嘆き、みんなに詫びるしか出来ません。
『ごめん、みんな。あの人の言う通りだよ。私にはプリキュアの資格なんて無い・・・』
『マナは何も悪くない。だから、泣かないでよ・・・』
六花に出来る事も、寄り添って慰めるだけ・・・
この日マナ達は、あまりに大きなものを失いました。
キングジコチューの下へ連れ帰られたレジーナは、未だ悶え苦しんでいます。
彼にも父の慈悲があるのでしょうか、その姿を不憫に思ったキングジコチューによって、
レジーナは深い眠りへと落ちました。
改めて新たな戦士キュアエースについて問うキングジコチューに対し、
ベール達は答える事が出来ません。そこに、他国を攻め滅ぼして来た幹部二人が現れました。
髭の剃り跡が隠しきれないオネエキャラ、リーヴァ。
飽食の象徴のような巨漢、グーラ。
キングジコチューはこの2人にプリキュア対策を任せます。
ベール達はただ、役目を奪われた屈辱に耐えるばかりです。
今日は大貝商店街祭り。
活況を呈する商店街に、健太郎パパ達もフランクフルトの屋台を出しています。
しかしマナはあれから食事もとらずに部屋に引きこもったままで、
健太郎パパは娘のらしくない姿を案じて、レジーナとケンカでもしたのかと事情を尋ねました。
無論六花達は本当の事を言える筈もありませんが、真琴はマナを信じて断言します。
『大丈夫です。今は辛いかもしれないけど、マナはきっとすぐ元気になると思います』
『そうだね。マナは本当にいい友達を持ったな』
そして二階のマナの部屋をみんなで見上げました。窓にはカーテンが閉まっています。
エースの正体は四葉財閥の情報網をもってしてもわかりません。
みんなが思案しているところに、宗吉さんが荷物を抱えて降りて来ました。
本当はマナにフリーマーケット出店を手伝ってもらう筈だったと聞いて、
六花達は宗吉さんに手伝いを申し出ます。
フリーマーケットはアイドル真琴の客寄せで大賑わい。
趣旨が異なっていようとも、賑わいが人を呼んで、活気が笑顔をもたらすのもまた事実。
みんなでマナの分まで盛り上げようと、六花とありすも意気込みました。
部屋でふさぎ込むマナには、レジーナと過ごした時間が去来していました。
無邪気にお絵かきしていたり、ランドセルをしょってはしゃいだり・・・
その甘い幻想に、冷たい現実が突き刺さります。
『プリキュア・・・絶対許さない!』
去り際のきつい言葉を思い出し、マナの心は悲鳴を上げています。
シャルルにしっかりしろと喝を入れられても、マナの気力は戻りません。
『私は、もう・・・』
その時、アイちゃんの声が聞こえた気がした。
突然、屋台が忙しいから代わりに面倒を見て欲しいと、
あゆみママが事も無げにアイちゃんを連れて来ました。
続けて『あなたの妹』なんだからと言われ、マナは困惑するばかり。
そして先程の魔法?によって、相田家の一員のように思わされていると理解しました。
「妹」アイちゃんはマナの名を呼び、そしてお世話ラビーズを差し出します。
これでお世話して欲しいのかと思いきや、
ラビーズから出るラッパを吹いて、マナ逆に励ますアイちゃん。
マナは涙を浮かべて、アイちゃんを抱きしめながらお礼を言いました。
少し元気を取り戻したマナは、アイちゃんを連れて屋台散策に出かけました。
まるで影のように暗い人々の間に、ふとレジーナの姿が見えた気がして後を追いますが、
人気の無い通りに出たマナを待っていたのはレジーナと同じくらいの年格好の少女です。
『いつまで背中を丸めているつもり?』
アイスを手にして背後から語りかけ、少女はマナに問いかけます。
『そんな事では、いずれあなたの一番大切なものを失う事になってよ。相田マナさん』
真琴にサインをねだるも、今日はプライベートだからとDBに断られる男性二人。
プシュケーが濁りかけるも、生で見られたから良しとしようと思い直しますが、
そんな彼らのプシュケーはリーヴァによって染め上げられました。
そしてグーラは闇のプシュケーを利用してサインペンと色紙のジコチューを産み出します。
セバスチャンが人々を避難誘導するのを見計らって、
マナ不在の分までカバーする決意を胸に変身する三人。
自己紹介の挨拶代わりにリーヴァが投げたシルクハットには、
大口開けて襲いかかってくるグーラの攻撃をロゼッタが受け止めるものの、
そのバリアすら美味しそうに食べられてしまい、
色紙とサインペンジコチューの攻撃によって、三人は次第に追い込まれて行きました。
少女と向き合うマナに、シャルルはみんなの苦戦を伝えます。
しばし間を置いて、顔を上げるマナ。
『行こうシャルル。みんなの所へ』
その目は例え変身できなくても行くという強い意志を感じさせる、いつものマナの瞳です。
『ありがとうございました!』
お礼を言われて少しきょとんとした少女に、マナは改めて気づいた事を語ります。
『私、レジーナがいなくなった事で頭がいっぱいになって、
大事な事が見えなくなってたんですね。
でも、何が一番とかじゃなくて、私はみんなの笑顔を守りたい。
仲間たちの笑顔の笑顔も、レジーナの笑顔も、全部守って見せる』
決意を胸に駆け出していくマナを見送る少女の口元に、微かな笑みが浮かんでいます。
インクを吹きつけられて色紙で殴られ、魚拓ならぬキュア拓
を取られる等ソード達は苦戦を余儀なくされています。
『私たちは、負けるわけにはいかないのよ』
『マナちゃんの分まで、この町を』『みんなの笑顔を守って見せる』
懸命に立ち上がろうとする三人に、サインペンジコチューの攻撃が迫るその時・・・
『ちょっと待ったああああ!』
マナが生身で割って入りました。その大声はジコチューはおろか、リーヴァ達をも怯ませます。
変身できないとダイヤモンドに危惧されても、マナの心はもう折れません。
『私はもう逃げない!大切な人たちを守るために、私は戦う!』
吹き付けられるインク攻撃をパラソルで防ぎ、飛び散ったインクで汚れてしまった
色紙ジコチューとサインペンジコチューは仲間割れを始めました。
『お見事です。相田マナ。いえ、キュアハート』
おもむろに、先程の少女が木陰から姿を現しました。
そしてマナの心を確かめるように、あの言葉で問いかけます。
『プリキュア5つの誓い。ひとつ!』
『プリキュアたる者、いつも前を向いて歩き続ける事!』
この少女こそが、キュアエースでした。
マナが愛を取り戻した事を確信してラビーズを返し、一緒に戦おうと申し出ます。
ハートに変身したマナに続いて、少女もアイちゃんと共に
『美しさは正義の証。ウインクひとつであなたのハートを射抜いて差し上げますわ』
ハートと二人、ジコチュー達に挑みます。
エースが色紙を巧みにかわして懐に潜り込み、ゼロ距離攻撃を叩き込めば、
ハートもサインペン攻撃を華麗にかわし、足払いで体勢を崩して蹴り飛ばす!
初共闘ながら見事なコンビネーションを見せた後、
本日二度目のエースショットと、久方ぶりのハートシュートによって撃退。
リーヴァとグーラは緒戦黒星を喫しました。
ダイヤモンドはハートに抱きついて喜びを露わにし、(マナりつキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!)
ロゼッタとソードもまたハート復活を喜びますが、エースは相変わらず厳しいです。
『喜んでいる暇は無くてよ。あなた達の試練はまだ始まったばかり。
早く登っていらっしゃい。私のステージまで』
そう言い残して立ち去るエースの正体は、未だ謎に包まれています。
衝撃でした。
なんと力強いメッセージ。
私としても原点に立ち返ったような感じを覚えました。
私もマナと同様、ここしばらくは立ち止まっていたと思います。
何で私は貴重な日曜の時間を割いてまで、しんどいと感じながら続けているのか。
プリキュアが好きだからじゃなかったのか?
理屈を持ち出してどうこうではなく、プリキュアを観て感じた事を発信する事で
さらに魅力を再確認し、感動を分かち合いたいからでは無かったのか?
歩みを止めてしまったマナが再び歩み出す姿は、私自身ともオーバーラップして
エースの叱責と共に強く心を揺さぶりました。
もちろん本当に疲れた時には休養も、慰めも必要です。
エースの厳しい発言に対する、六花・ありす・真琴のような心づかいも当然あって然るべきです。
けれども「生きる」ためにはどんなに辛くても前に向かって歩かなければなりません。
それが茨の道であっても、その道へ送り出すように背中を押す事もまた優しさなのだと、
エースの姿勢からはそのように感じました。
初見時、前半部分を見た時にはマナとレジーナがあまりにかわいそうで、
胸を締め付けられるような苦しさを抱いた程です。
ちょっと物騒な言い方で失礼しますが、レジーナ初の「徒手空拳」アクションは、
見応えがあるものの常に劣勢だった事と、レジーナを「殺る気マンマン」に見えるエースに
初披露の技に対する興味よりも、え???え???マジで???というように思ってしまい、
技を喰らった後の悲鳴、倒れ伏す様など、
こんなものを目の当たりにさせられたマナもとても辛かったと思います。
そんなマナをさらにどん底に落とす「絶対許さない!」発言や、
傷口に塩を揉みこむようなエースのキツイ物言い、
レジーナと過ごした楽しい時間を夢想する姿の痛々しさ。
特にレジーナと過ごした日々と、直後の現実の落差には、
「薫お姉さんって、誰?」のような衝撃を受けました。
そんな状態から、マナは再び立ち上がりました。
それも、マナはやっぱりこうでなくては!と思わせる
再び立ち上がってからの、あの力強い瞳の輝き、
大声で割って入る思い切りの良さ、生身の状態ながら傘で攻撃を防ぐという意外性、
これこそ「大貝第一中学生徒会長」の肩書に相応しいものです。
決して無理をしているわけではない、あくまでマナ自身が自分で選んだ結果という事は、
傘でジコチューの攻撃を受け止め、傘を回している時の表情で見て取れます。
「モチのロン!」「私を誰だと思ってるの!?」
通常ならば絶望してもおかしくない土壇場でのこれらの振る舞いが
再び戻ってきたような力強さは、いろいろ迷いがちだった私にも喝を入れてくれました。
今回のお祭りの風景では、楽しい筈のお祭りらしからぬ
「影のように黒い人々」が印象的でした。これは何を意味しているのか・・・
レジーナの幻影を追うあまり、守るべき「みんな」の笑顔を忘れている事の象徴かもしれません。
もう一つ、久々にクラシックになぞらえた解釈で分かり辛く恐縮ですが、
私にはチャイコフスキーが交響曲第4番で明示したプログラムが連想されました。
この曲もかつてスイート最終回で引用した交響曲第5番同様、運命がテーマになっています。
「服従し、嘆き悲しむ他無い」第一楽章第一主題は、浜辺で嘆くマナの姿が、
「幸福を約束する優しい幻想。美しい夢、幸せ」同第二主題展開部はレジーナの幻想が、
「夢は運命によって追い払われ」直後の運命のファンファーレが、それぞれ重なるようです。
この曲の第四楽章は、輝かしい祭りに身を置く姿が描かれています。
「自分の中に喜びを見いだせないなら、人々が祭を楽しむ姿に身を投じる姿を見て下さい。
他の人々はあなたを構ってくれません。あなたを見てはくれないのです。
あなたが置き去りにされている事など気がついてはくれません。
なんと彼らは喜んでいる事でしょう。なんと彼らは幸せでしょう。
この世の全ては暗闇で悲しい事だと言うのですか。
まだこんなに沢山素朴で飾らぬ喜びがあるではありませんか。
―そして、あなたは再び生きる事が出来るのです」
長々と引用してしまいましたが、あの「影」のような人の場面で、
マナがレジーナ以外の人を見れていないように、人々もまたマナの苦しみを知りません。
その間も、人々は祭りを楽しみ、いつもと同じか、ちょっと高揚した気分を味わっている事でしょう。
そんな人々の喜び、日常を守る事が、レジーナだけでなく
ひいては自分自身が生きるための道を切り開いて行く事が出来る―
この影の描写は、私にとってもマナと同様、再び歩む気力を生むきっかけになったと思います。
また、マナが駆け出す直前、道幅は異常に広く描かれており、
まるでだだっぴろい空間に一人置かれているように見えます。
方向感覚が失われるようなこの描写も、どの方向に進むか、
道は自分で決めなさい、という事のように思えました。
ところですっかり後回しにしてしまいましたが(笑)
キュアエースの変身バンク&技バンクには色んな意味で驚いたものです。
まず、技。なんですか、あの「ばきゅーん」は(笑)
最初技名の一部かと思っていましたが、CM開けから字幕付きで見ていたところ
違う事が判明し、大人びた容姿に反して変身前の子どもらしさが出ているようで、
そのミスマッチもキャラのうち、プリティは花盛り、という事でしょうか。
変身バンクも本文で「10歳は老けて見える」などと揶揄してしまいましたが、
決して貶すつもりではなく、あくまでネタですので・・・
こちらは大人に憧れる少女の姿を現したような作りが印象に残りました。
変身前の少女姿、変身後は某お蝶夫人のような台詞回しと、
釘宮さんの本領発揮と言えそうな配役にも納得です。
そして去り際の「アデュー」といい、己の容姿に自信を持っていそうな変身後の口上といい、
お前はコブラージャさんかと突っ込みたくなったのは私だけではないでしょう(笑)
エースの正体に関しては未だ予測がつきません。
私は予想を外す事に定評があるので、あまり口にすると恥をかきそうですが、
エースに変身する少女の描き方で、気になる事がありました。
一つはレジーナと同じ年恰好で、見た目や雰囲気も少し似ている事。
もう一つは、「光」側の人物の筈なのに、マナと対峙した際にはほとんど「影」の中にいる事です。
これは誰にでも光と影の側面がある事を暗示しているのでしょうか。
そうすると、彼女の闇の部分がレジーナと関わりがあるのか、それとも・・・?
レジーナがエースに抱いた嫌悪感は、自分の姿を見るようなものだったのかもしれません。
レジーナは本当にキングジコチューの娘なのかという疑問に関して、
今回アイちゃんが相田家の一員のように思わせるという描写があったため、
この路線の信憑性が高まったように思います。
かつてひかりがアカネさんと同居する際に取った手法ではありますが(笑)
悪くいえばこれも「洗脳」です。この二つの「洗脳」がどう転ぶのか、
レジーナをいたわる素振りを見せたキングジコチューともども、こちらも気がかりです。
そして眠りについたレジーナの出番が、
満と薫のように終盤にずれ込む事が無いか、重ねてこちらも気がかりです。
後回しと言えば、新登場のおっさん二人組の事も・・・
まだ別にふざけた態度ではない(オネエキャラではありますが)にもかかわらず、
初登場と同時に強烈なインパクトを持つ存在感がありました。
それにしてもリーヴァを演じるのが飛田さんという事で、
最近出番が無い二階堂君=シーザー/マーモ=リサリサ先生の師弟コンビに続き、
マーモ=リサリサ先生/リーヴァ=スト様の師弟コンビまで生まれるとは・・・
天田さん共々、実にいい味を出していたので、
これから先ベール達の再奮起にも期待しつつ、彼らの活躍ぶりも楽しみたいと思います。
ありすの「うらポジ」再びといった小ネタや、キレ味の良いアクションシーンなど、
中盤の山場を彩るに相応しい出来だったと思います。
アクションの中では、ハートがジコチューの攻撃を避けた時の姿が
第1話でソードが初めてマナの前に姿を現した時と同じだった事が目を惹きました。
これはあの時マナがソードの事を自分を助けに来てくれた戦士というように見て、
今回はソードがハートの事を、再び立ち上がって助けに来てくれた戦士、
という風に見て取ったのかもしれません。
今、現実には仕事も忙しく、職場での役職や立場も変わり、折れる事が続くかもしれません。
またこれから先、プリキュアの感想記事でも言う事が変わったり、
泣き言や愚痴めいたものを書いてしまうかもしれません。
私は弱いと自認しています。
そう思った時には、再び今回の事を思い出したいです。
すぐに改善されないかもしれないけれど、ちょっとずつでいいから前に。
前回の言葉、昨日見た広い海、そして今回を観た事で、改めてそう思いました。
・・・ところで今この時期にお祭り回という事は、まさか今年は浴衣は無いんでしょうか・・・?