スタジオで熱唱する真琴は今日も輝いて見えます。
しかし終わると同時にため息を漏らす等、どこか疲れが伺えます。
次のコンサートチケットも完売、さらに追加公演のオファーがある等、
人気は衰えるところを知りませんが、当の真琴は迷いを抱いていました。
『私、歌ってていいのかな?
今までずっと王女様を探すために歌って来たけど、結局私の歌は何の役にも立たなかったわ』DBは王女様だけでなく大勢のファンも楽しみにしていると励ましますが・・・
ぶたのしっぽで、エースの正体について談じる四人。
一体何者なのか見当もつかず、変身前は小学三年生くらいだったと言及した矢先、
『四年生です』不意に当の本人が登場。全く動じないありすの挨拶を受けて、初めて名前を名乗りました。
『こんにちは。私の名前は円亜久里ですわ』亜久里はアイちゃんとじゃれあった後、卓上のロールケーキに目を留めます。
セバスチャンが作ったという桃ロールケーキを口にすると・・・
『うーまーいーぞー!!程良く焼き上がったふわふわのスポンジッ!
濃厚ながら甘すぎない生クリームッ!惜しげも無くふんだんに散りばめられた旬の桃ッ!
全てが優しく抱き合って、爽やかな初夏を感じるッ!ブラボー!ブラボー!!』(台詞回しは一部実際と異なります)
パティシエ顔負けの菓子作りの腕前だけでなく、不意の来客を受け入れる手際の良さ等、
セバスチャンを執事のプロフェッショナルだと高く評価する亜久里。
それと比較するように、昨日テレビで見たと言う真琴の歌を酷評しました。
真琴は人気があって歌唱力も定評のある実力派だと反論するマナ達の抗議を退けて、
亜久里は真琴の歌からは愛が感じられず、むしろ迷いが感じられたと切り捨てます。
図星を突かれた真琴は返す言葉もありません。
プリキュアとの二足のわらじを履いて頑張っているとのマナの弁護に対しても、
プリキュアとしても中途半端で半人前だと厳しく言い放ちました。
そして立ち去る亜久里の後をマナは急ぎ追いますが・・・
扉を開けた時、既に彼女の姿は見当たりません。
その後、真琴は車に乗り込む際、亜久里の言う通りプロ失格だと漏らしました。
同時に王女が見つかった今、歌う意味が見いだせない事の迷いにも触れ、
今度のコンサートで引退発表するとの電撃発言をします。
驚くマナ達を振り切って車に乗り込む真琴。
バックミラー越しに彼女を見るDBは何も言いませんが・・・
翌朝、マナは真琴を昇降口で待ち受けています。
「まこぴーに歌わせよう作戦」なる策を携えているものの、
六花の不安を見ると嫌な予感しかしません(笑)
登校した真琴は、声を掛けられた方向を見て思わずドン引きしました。
アン王女(らしきもの)に、歌をやめてはいけないと諭されますが、
『マナ、なんのつもり?』手作りのアン王女のお面で誤魔化せると思っていたマナもマナですが、
真琴が正体を見破ったのは、王女様は「まこぴー」とは呼ばないと言う事です。
突っ込みどころ満載の展開に、六花は人知れず頭を抱えるのでした。
次いで真琴を、フルオーケストラのチューニングの音が待ち受けています。
ありすが動員した四葉po.の音色で歌いたくさせようとした作戦も、無論失敗に終わります。
もちろん六花の言う通り、逆に歌いづらいというのもありそうですが(笑)
迷う心を紛らわすように、がむしゃらにランニングに精を出す真琴。
その激しさに腰につけられたダビィが音を上げていますが、
それとは別の泣き声が、
ボエー!ホゲー!な歌声と共に聞こえて来ます。
見ると、アイちゃんをあやそうと子守唄を歌っているマナの姿がありました。
マナも真琴がいる事に気付き、渡りに船とばかりに子守唄を歌ってもらおうとしますが、
真琴は手を出しかけて、歌う事を断りました。
『楽しくなかった?まこぴー』立ち去ろうとする真琴の足が、マナの問いかけを受けて止まります。
『歌ってるまこぴーは、いつもとっても楽しそうだったよ。
それを見てると何だか私も胸がポカポカして、楽しくなって』それでも真琴は楽しんだり歌ったりする暇など無いと振り切り、
マナ達の事をプリキュアの自覚に欠けると言い残して立ち去りました。
ダビィはそんな真琴に、みんなは歌を続けて欲しいのだと諭します。
それを肯定しながらも、強制はしません。
『真琴にはやりたい事をやって欲しいビィ。ダビィはそれを応援するビィ』
ダビィの言葉にはっとしながらも、思い直したように真琴は再び駆け出して行きました。
ボウリングのピンをシルクハットで斬り割くリーヴァと、ボールを食って不味いと漏らすグーラ。
マーモに野蛮だと扱き下ろされても、彼らは知ってやっているのだと意にも解さず、
キングジコチューの命令だとしてベール達に王女探しを指示します。
歯噛みしながら彼らが出て行った後、リーヴァはテレビの中で歌う真琴に興味を示しました。
コンサート当日。開演時間が迫っているのに真琴の姿は見えず、連絡も付きません。
マナ達やセバスチャン、スタッフが慌ただしく探し回っている頃、
真琴は近くの公園にいました。開演時間だとダビィに言われて、重い腰を上げようとします。
『そうね。行かないと。行って、引退するって・・・言わないと』スタッフが慌ただしく駆け回る様は、
開演間のトラブルではないかと芸能レポーターに嗅ぎつけられました。
控室への突撃を企てる彼女のプシュケーが濁りかけます。
それはルール違反だと思い直した矢先、その心をリーヴァに利用され、
マイクジコチューが生み出されました。
そのままステージに立ち、今日のステージの主役だと宣言するリーヴァ、
そして屋根を破って登場するジコチューに、観客達はブーイング以前に呆気に取られています。
リーヴァはその反応の悪さに閉口し、マイクから騒音を撒き散らさせて観客を攻撃。
騒ぎに気付いたマナ達は三人で変身します。
屋根の上にジコチューを蹴り上げ、このまま押し切ろうとした時、
ジコチューのマイクが付き出されます。思わず防御の姿勢を取るハートですが・・・
『恋人はいますか?』
『六花です』思いがけない質問に絶句するハート。ジコチューはダイヤモンドとロゼッタにもマイクを向けます。
「テストは何点?」「貯金はいくら?」
突然の質問に呆気に取られた隙をつき、三人を突き飛ばすジコチュー。
プライバシーの侵害だと憤るロゼッタですが、しかしジコチューの強さはかなりのものです。
先程ハートが蹴り上げたジコチューが屋根から飛び出すのを見て、
異変に気付いた真琴が駆けつける途中、アイちゃんと鉢合わせます。
アイちゃんが差し出すラビーズをダビィにセットすると、アン王女の声が聞こえて来ました。
王女は未だ目覚めてはおりませんが、アイちゃんに力で一時的に話せるこの機会に、
動く事も声を上げる事も出来ず希望を失いかけていた時に励ましてくれたのは
ソードの歌だったと、これまで歌い続けてくれた事を労います。
『あなたの歌を聞くと胸がポカポカして、元気が出て来たのです。本当にありがとう』
まだ目覚められずとも、ジョナサンがいるから大丈夫だと真琴の心配を断ち切って、
これからは自分のために歌うよう諭します。
『昔のように、楽しみながら。あなたが楽しいと私も嬉しいわ』
かつて
歌姫キュアソードとして祈りの歌の儀式を努めあげた時の事を、
庭園で王女と語り合った時の事を思い出し、真琴の目に涙が溢れました。
『王女様もマナも同じことを言ってるビィ。
王女様もマナもダビィも、みんな真琴の歌が大好きなんだビィ』
楽しく歌う真琴の歌を聞きたい。ダビィに寄り添うアイちゃんも、そう言っているように見えます。
『私・・・歌いたい・・・』真琴はアイちゃんとダビィを抱きしめて呟きました。
ハート達はジコチューのコードに絡め取られています。
そこにソードが駆けつけて、そのコードを断ち切りました。
『みんな、わたしのために・・・ありがとう』ジコチューの質問は、ソードに対しても向けられます。
『プリキュアなのに、どうして歌ってるんですか~?それでもプリキュアですか?』
そんなぶしつけな質問にも、ソードはもう動じません。
『私は歌うプリキュアよ!』歌など何の役にも立たないとリーヴァに言われても、
歌う事は楽しかった、嬉しかったと振り返るソードの胸の内に、
駆け出しの路上ライブ時代や、自分にときめいてくれたマナ、
そして貴賓室で手を振る王女の姿がよぎります。
『私は歌う事が好きだから、歌って来たの!』歌いたいから歌うなど自己中だとのたまうリーヴァの言葉に対しても、
反論はしません。応援してくれる人のため、そして自分のために歌うと高らかに言い放ちます。
ソードの身体から、輝きが立ち上りました。
『愛に目覚めたようですね、キュアソード』一部始終を見届けたように、亜久里が姿を現します。
『プリキュアの力は、愛から生まれます。大好きな事をひたむきに続ける事。それも愛なのです』亜久里は愛の力を妨げていた迷いを乗り越え、新たな力、さらに大きな愛に目覚めたと評し
ソードにプリキュア5つの誓いのうちの一つを言い含めました。
『プリキュア5つの誓い!ひとつ!愛は与えるもの!』これからも世界に愛の歌を響かせて下さいと告げて、亜久里も変身します。
『好きなスイーツはなんです・・・かぁあああああ』
ジコチューを質問の途中で蹴り飛ばすエース。
ここは私のステージだとのたまうリーヴァの抗議にも耳を貸しません。
『独りよがりなステージは迷惑です。あなたの行為に愛は感じませんわ』エースショットでジコチューの動きを封じた後、決めはソードに任せました。
迷いを振り切ったソードのスパークルソードによりジコチュー撃退。リーヴァも撤退して行きました。
無事ライヴがスタートします。
改めて、歌で客席を笑顔に出来る真琴の凄さを認めるマナ達。
亜久里も歌から愛が溢れていると認識し、客席で一緒に盛り上がっています。
『私は歌う事が大好きです。歌っていると、楽しくて嬉しくて、幸せな気持ちになります』客席から語りかける真琴の瞳には、もはや迷いは伺えません。
『そんな気持ちを・・・みんなにも感じてもらいたい。だから歌います!』これからもステージの上で、彼女は輝き続ける事でしょう。
まず、真琴がアイドル活動をしていたのは「王女を探す」という目的だったので、
完全では無いにせよ、その目的が半ば達成された今、
アイドルを継続する事への合理的な理由付けが必要でした。
そのため、このような話が求められるのは必然で、
どのように展開して行くのか、真琴が向き合うであろう「5つの誓い」と共に興味深く臨みました。
前回同様、私自身シンパシーを抱く点が多かったため、色々と考えさせられた一編でした。
真琴のアイドル活動に目的があったように、私もここを始めたきっかけの内には、
休職してから社会復帰するにあたってのリハビリという目的がありました。
無事に職場復帰を果たし、次第に仕事内容も休職前に戻って行き、
「リハビリ」という目的が達成されてからも、週1回と並行しての再視聴を続け、
この頃はプリキュアへの「愛」に憑りつかれ、クライマーズ・ハイ状態だったと思います。
それが再視聴終了直前のGoGo最終回間際で、
ゴールが見えてしまったという安心感と、得も言えない不安がよぎり一度燃え尽きかけました。この時はまだ、なぜ続けて行くのかというような考えは持たなかったのですが、
その後は何度か色々な環境の変化や、注目を集めている事に対するプレッシャー、
次第に変わって行った自分自身の感想のスタイルに悩み、迷い、
今年2月に実際に歩みを止めてしまったのは以前からお越しの皆様がご存じの通りです。
既に三十路も半ばを過ぎた私がこんな青い事を言うのも難ですが、
今回の真琴を見ていると、あの当時の自分の姿が思い起こされて
真琴が私には他人には思えません(変な意味ではありませんので・・・)
思い詰めるととことん考え込んでしまって前に進めなくなってしまったり、
いっぱいいっぱいでテンパりがちだったりと、
私が常々悩んでしまう事柄が、特に今回の真琴と重なりました。
だからこそ、あの時皆様から頂いた励まし、労いの声の数々が、
今回のマナ、王女、そしてダビィの言葉とも重なり、
改めて皆様から頂いた暖かさを思い出しました。
みんなが真琴に歌を続ける事を求める声は、真琴への愛に満ちていました。
愛は与えるもの、という今回の「誓い」の通り、それは真琴に向けて与えられています。
しかしこれまでは真琴が歌を通してみんなに愛を「与えて」いたからこそ、
与えられていた側からの返しがあったのでしょう。
いい加減な気持ちでアイドル活動を行っていたのでは、
こういう答えは返ってこなかったと思いますし、
また真琴もそれを励ましとして受け取る事が出来なかったと思います。
手前味噌で恐縮ですが、私もプリキュアへの愛を発信していたからこそ、
皆様からのお言葉がとても嬉しい励ましとして受け取る事が出来たのか、
なとと感じてしまいました。
愛は望むものでは無く、与えなければ与えられないという当たり前の事が、
自分の経験とオーバーラップして伝わって来ました。
さて、プリキュアでアイドルといえば真っ先にうららが思い浮かびます。
今まで「プロ意識」に関しては、うららの方が真琴より高いように見えました。
それはこれまでの芸能界の仕事に対する「やりがい」や、
仕事を通しての「生きがい」について比較した場合、
女優になる事が目的で芸能界入りしたうららと、
王女を探すため人目に付くよう芸能活動を始めた真琴では、差がつくのも無理はありません。
それだけに「歌いたいから歌う」と、しがらみから解き放たれた今、
真琴が芸能活動を通じて人間的にどう成長していくのか期待しています。
尤も、芸能活動描写が最近少なかったのであまり描かれないかもしれないかもしれませんが・・・
真琴を応援する言葉の数々の内では、ダビィのものが印象的でした。
パートナーというだけでなく、DBとしてマネージャー業務に携わるだけあって、
あくまで判断は真琴に委ねた上で、
そっと背中を押してあげるような言葉に、彼女の優しさが感じられます。
「真琴にはやりたい事をやって欲しい。それを応援する」
仮にアイドルを止める事を本気で選んだとしても、ダビィはそれを否定しなかったのでしょう。
その結果もたらされるであろう様々な事態にも、とことん付き合っていくという意志が伺えます。
真琴が再び「歌いたい」と口にする場面では、
アイちゃんとダビィを抱き締める真琴は階段の下でうずくまっています。
これは登るべき道の途中で歩みを止めてしまった真琴が、
これから再び険しい登り坂を登っていくという象徴のように思えました。
ところで、初めて名前が判明した亜久里のキャラクターが良い味を出していました。
ケーキを食べた時の背景の反応の可愛らしさ、
真琴に対し厳しい注文をつけながら、その際口にクリームがついているという子どもらしさ、
「わたくし」「ですわ」などのいかにもなお嬢様口調と高飛車な態度の端々に見える、
厳しさの裏に優しさを秘めた言い回し。
彼女の素性や、エースに変身する事になった経緯など気がかりな点は多々あるものの、
それを差し置いても登場からわずかな間で、
既にこの作品に深く根を下ろしたような存在感に、キャラづくりの巧さを感じます。
その亜久里が歌で世界に愛を与えていたと諭しながらソードと向き合う場面で、
背景の広い青空が目に留まりました。
この空の向こうには、どんな夢があるのかというEDの歌詞が連想され、
この先真琴が向かうべき「道」についても明るい未来が見えているようです。
昇降口でのマナの無理がありまくりな作戦や、
(これを本気で実行できるところがマナの凄みとも言えますが・・・)
四葉財閥の財力をフル活用するありす、
都度ツッコミ役としてのキレが光る六花など、コミカルな要素も目を惹きました。
戦闘中のジコチュー突撃リポートも予想外で、ひねりが効いていて面白かったと思います。
それにしてもマナの「恋人」や、六花の「テストの点」はともかく、
貯金を数えた事が無いというところに、ありすの恐ろしさを垣間見た気がしました(笑)
人気絶頂期での引退といえば、「普通の女の子に戻りたい」という有名な台詞がよぎります。
真琴だけでなく、マナ達が本当の意味で普通の女の子に戻るのは、
ジコチューとの戦いを終え、戦士としての役目から解放された時です。
つい先日始まったように思えるのに、既に折り返し地点に来てしまったこのシリーズ、
それだけ密度が濃い作品に仕上がっていると思います。
レジーナについて全く触れられなかったのが少し残念ではありますが、
無理に詰め込んで話に齟齬をきたすよりは、
再登場の際に劇的な展開を見せてくれる方に期待したいと思います。
さて、そんな濃いシリーズ展開に何をやってくれるのかと思いきや・・・
なんですかあの次回予告は(笑)
エースというよりはパッションに見える謎のヒロイン?といい、
妙にはっちゃけたセバスチャンや、さらにぶっ飛んでバットマンにしか見えないセバスチャン等、
予想の斜め上どころか、はるか上を行っていて度肝を抜かれました。
プリキュアシリーズは予告が終わるまで油断できないのだと、改めて認識した次第です。