"シロップ。私達は迎えに行くよ!エターナルへ"プリキュア達がエターナルに現れた事を訝りながら窓の外を見るアナコンディさん。
扉が開く音を聞いてアナコンディさんが振り返った時、
扉の際に追い詰められていたシロップの姿はありません。
しかしシロップが逃げた事を大して気にとめず、
アナコンディさんはプリキュアを始末すべく部屋を後にします。
実はシロップは逃げたと見せかけて、扉の影に隠れてアナコンディさんをやり過ごし、
みんなの所へ急ぎ向かおうと駆け出して行きましたが・・・その足が途中で止まりました。
『行って、どうする?俺は、俺は・・・裏切り者だ・・・』
プリキュア達に何でついて来たと凄むネバタコス氏は、
背後に迫る冷たい気配に気付き、顔色を変えました。
『これはどういう事ですか?ネバタコスさん』
これが初対面となるプリキュアに対し、アナコンディさんは丁重に自己紹介した後、
次いでネバタコス氏に冷たい目を向け、
プリキュアをエターナルに連れてきてしまった重大な過失を厳しく追求。
あなたの居場所は無いと事実上の解雇を言い渡します。
ネバタコス氏はあまりに理不尽な仕打ちに怒りで身体を震わせ、
その逆恨みをプリキュア達にぶつけて巨大なタコの怪物と化しました。
(その姿はあまりに凶悪で、
きっと美希だったら耐えられなかった事でしょう)
5人はネバタコス氏を引き受け、ココにシロップを迎えに行く役目を託します。
当然ココはすんなりとエターナル本部に入れる筈も無く、
その行く手にアナコンディさんが立ちはだかりますが、
ローズがアナコンディさんに飛びかかり、そしてココを通路の奥へと抱えて行きました。
そっと扉を開き、ココをエターナルの内部へ送り込むローズ。
その背後にアナコンディさんが迫り・・・
『ココ様・・・私は大丈夫です。シロップを、お願いします』ココは扉の向こうに響く衝撃音、続くローズの悲鳴に躊躇するも、
今はシロップを探しに向かう事がみんなの想いに応える道と判断したのでしょう。
ココは後ろ髪を引かれる思いを振り切り、
小々田先生の姿になってエターナルの奥へと駆けて行きました。
その頃シロップは、エターナル内部をさまよう内に、収蔵物を集めた広間へと辿り着きます。
古今東西の様々な文物が収められた部屋の奥にはエレベーターがあり、
誘い込まれるように乗り込んだシロップを、地下へと導きました。
エレベーターを降りた先は、廊下が一直線に伸びています。
ローズパクトを握る手に力をこめ、その廊下を進んで行くシロップ。
そして突き当たりにある扉を押し、その中へ足を踏み入れると―
『誰だ?』
部屋の奥から、部屋の主の声が響きました。
部屋の主の椅子がゆっくりと椅子が回り、冷たい仮面に覆われた相手の姿を見た折、
シロップは妙な既視感を覚えます。
『俺、あんたの事知ってる気がする・・・』
シロップを探し回り、館内を走る小々田先生もあの広間へと辿り着きます。
世界中の宝物を収蔵するエターナルの手口に憤りを覚えながら、
小々田先生もまた奥のエレベーターに目を留めました。
エターナル本部の外では、怪物化したネバタコス氏に苦戦する5人。
そしてローズは館内からアナコンディさんに跳ね飛ばされ、地に叩きつけられます。
ファイヤーストライク、エメラルドソーサーはネバタコス氏の墨にあっさりとかき消され、
続けてドリームが、アクアが、レモネードが強烈な打撃を受けて無残に弾き飛ばされました。
シロップと相対する館長は、その手に持つローズパクトの気配を感じ取りました。
執拗にローズパクトを求める姿に、シロップも相手が何者なのか薄々感じ始めています。
その時、小々田先生が室内へと駆け込んできました。
『シロップ!よかった。大丈夫かい?』
『何で・・・?何で来たんだよ!?来るなよ!!』
後ずさりして、小々田先生に反発するシロップ。
一緒に帰ろうと優しく語り掛ける小々田先生にシロップは目を逸らし、
そして自分がしてしまった事を悔やむように続けました。
『帰れない・・・帰れるわけ無いだろ?俺には、帰る場所なんか無いんだ』
小々田先生はシロップに、帰る場所とは生まれ育ったところではなく、
迎えてくれる誰かがいる場所の事だと言い含めるように語ります。
シロップはのぞみ達と過ごすうちにそういう場所を作ってきた事、
そして、シロップを迎えるためにみんながエターナルまでやって来た事・・・
『自分の事を知りたいというシロップに、僕は何も出来なかった。でも、これだけは知って欲しい』
まず第一に力及ばなかった事を謝りながら、小々田先生はシロップが一人ではないと諭します。
『僕もナッツも、ドリームもルージュも、レモネードもアクアもミントもローズも、メルポも、
みんな、シロップに帰って来て欲しいんだよ』
『帰りたい・・・でも、俺・・・みんなを裏切っちまった』
シロップの目から溢れる涙。裏切ってしまった事を悔やみ、しゃくり上げるシロップに、
小々田先生は首を横に振り、ローズパクトをまだ渡していない事を指摘して
まだ裏切っていないと、そして一緒に帰ろうと呼びかけました。
肩を震わせて頷くシロップ。
しかしここは館長の部屋です。ローズパクトは私の物だという声に、我に返る2人。
今まで黙って見てくれていた館長空気読みすぎ(笑)シロップを庇うように館長との間に割って入る小々田先生。
シロップを迎えに来たと言う小々田先生に対し、
ローズパクトを持つ者を返す訳には行かないと館長も譲りません。
そして相手がパルミエ王国の者と知った館長と、小々田先生との間に議論が繰り広げられます。
帰るべき場所に帰るのを止める権利は誰にも無く、
ここに収められた物達にも帰るべき場所があると、エターナルのやり口を非難します。
宝を価値の分からぬ者から守っていると主張する館長に、
宝を奪われた者たちの悲しみを訴える小々田先生。
当然話はかみ合わず、館長はローズパクトを改めて要求しますが、
フローラがプリキュアに送ったという小々田先生の言葉に、
いや、「フローラ」という名前を聞いて目の色を変えました。
その隙を突いてシロップと小々田先生は部屋を飛び出します。
目の前で逃げられたというのを意にも止めない程、館長の動揺は収まりません。
『ココ・・・俺・・・』『いいんだ。早くみんなのところへ行こう』
何か言いたそうなシロップを制して、外へと急ぐ小々田先生。
遂に出口を見つけますが、外に出た2人を待っていたのは、
なす術も無く倒れ伏すプリキュアとローズという凄惨な光景でした。
そして、脱出した2人の前にアナコンディさんが立ちはだかります。
しかし地下室で館長と対面したと知り、
これまで冷静だったアナコンディさんは突如怒りを露にしました。
『無礼者!』
シロップにアナコンディさんの衝撃波が迫りますが・・・
その衝撃は小々田先生が身を挺して庇いました。
衝撃で珍獣姿になってしまう2人に容赦なく迫る第2波。
思わず目を閉じるシロップですが、今度はドリームが身を挺して受け止めます。
『シロップは教えてくれたじゃない。大切なものは手放すなって』『だから、シロップ』『みんなで一緒に帰ろう』『シロップさんは私達の大切な仲間なんだから』『絶対に、離れ離れにはならない』ドリームだけでなく、倒れたままのみんなが次々と声を掛けます。
みんなの思いを知るシロップ。しかしアナコンディさんの非情な攻撃は止まりません。
再びドリームを衝撃波が襲い、続けてココも再びシロップを庇って跳ね飛ばされました。
駆け寄るシロップに、ココはこれくらいの事しかしてあげられないと苦しい声で謙遜しますが、
シロップにもココの優しさはしっかりと伝わっていました。
『一人で居たシロップに、ココはいつも話しかけてくれたロプ』
しかし、状況は変わらず不利のままです。
アナコンディさんは倒れ伏す5人に容赦の無い止めの一撃をお見舞いし、
ココとシロップの前で皆は爆煙に包まれました。
その時、ココの体がうっすらと光を発し始めます。
『お前達には分からないココ。生きている事、立ち上がる事、笑顔がある事、助け合う事、
友達を思う事、すべてに意味がある。かけがえの無い宝物ココ!』
その光は徐々に強さを増し、眩い輝きとなってあたりを照らします。
『みんな一緒に帰るココ!!』
歪んだ王冠が徐々に形を変えて行き、
光の中でココの頭上に王冠が燦然と輝きます。
ココの頭に王冠が載るのを阻止しようとするアナコンディさんの前に、
残された力を振り絞ってローズが立ちはだかりました。
『私達は、ココ様と一緒に帰るの!』渾身のミルキィローズブリザードもアナコンディさんを弾き飛ばす事しかできず、
力を使い果たしてミルクに戻ってしまうローズ。
しかしその間にココの頭に王冠が載り、同時にフローラの姿が浮かび上がりました。
その姿は、地下室の館長も察して激しく狼狽します。
煙が晴れると共に、立ち上がる5人の姿が現れます。
先ほどまでのダメージも癒え、力が溢れる5人を叩き潰そうと襲いかかるネバタコス氏。
それに対抗する新たな力が、王冠を抱いたココからもたらされました。
キュアフルーレ、5本の剣がそれぞれの手に渡り、
揃って剣を突き出すと同時に5色のバラが一直線に伸びて行きます。
レインボーローズ・エクスプロージョン。
5色のバラが集まり、一輪のバラとなってネバタコス氏を包み込み、
大輪の花を咲かせるのとは裏腹に、ネバタコス氏は花に包まれて散って逝きました。
『何があってもシロップはもう迷わないロプ。プリキュア達とキュアローズガーデンへ行くロプ』
皆を乗せて飛び去るシロップを苦々しく見送るアナコンディさん。
そして館長も、プリキュアをフローラが選んだという事実に衝撃を隠しきれません。
無事に帰還したナッツハウスでメルポに怒られ、
のぞみに申し訳なさそうにローズパクトを返そうとするシロップ。
しかしのぞみはシロップに持っていて欲しいと言い、
シロップもぎこちなくその言葉を受け入れましす。
先ほどのココの力も国王の力が目覚めたと見るべきかも知れませんが、
王冠が再び歪な形に戻ってしまったことから、ココ自身もまだ未熟だと自覚しています。
しかし、シロップに優しくしてくれた事は未熟な昔から変わりません。
シロップは優しさに甘えていた事を詫び、
そして迎えに来てくれた事のお礼を蚊の泣くような声で真っ赤になりながら言おうとした矢先、
突如目覚めるババロア女王に言いたい事は大きな声ではっきり言うよう水を注されました。
真っ赤になるシロップをからかって笑うみんな。
輝くような笑顔が溢れるこの場所こそが、シロップの居場所であり帰るべき場所です。
陽も暮れて行き、長い一日がもうすぐ終わろうとしています。
前回同様、今回もシロップの表情から汲み取れる巧みな心理描写が光ります。
今回は特に、裏切ってしまった罪悪感ゆえにココやのぞみ達の元に戻れないと
自分を責め続け、それでも帰るべき場所に帰りたいという想いが交錯している
葛藤に満ちた表情の数々が印象的でした。
冒頭、アナコンディさんを巧みにやり過ごし、
ドリーム達の元へ向かおうとして思い留まる際の複雑な表情、
そして涙と共に本音を打ち明ける様は、いずれもシロップの内面を巧みに描いています。
中でも館長の部屋に飛び込んできた小々田先生に対して、
『何で・・・?何で来たんだよ!?来るなよ!!』と声を荒げながら後ずさりするあたりは、
ココへの反発、危険を冒してまで迎えに来てくれた嬉しさを隠す強がり、
そして何で自分なんかを迎える為にこんな危険な所に来てしまったんだと気遣う素振りと、
3通りの意味が伺え、その複雑な心理が伝わってくるようです。
小々田先生がシロップに説く「帰るべき場所」
それは決められた土地や場所ではなく、
誰かが迎えてくれる、誰かが待っていてくれる場所という事で、
これまでののぞみ達との交流を経てシロップがその場所を築き上げた事を気付かせる場面も
小々田先生の諭すような語り口と相俟って胸を打ちます。
現在進行中のスイートの物語でも、
今まさに帰る場所を失ったかのように見えるセイレーン=キュアビートですが、
彼女にはハミィという確かな拠り所がいるという安心感があり、
明日以降の展開にもある種の安心感が見受けられます。
しかし、これら帰るべき場所や心の拠り所を、今回登場するエターナル陣営の
誰もが持っていない事がとても憐れに思えて来ました。
今回ネバタコス氏は、「あなたの居場所は無い」という言い方で解雇通告を言い渡されますが、
「居場所」というものを主軸に置いている前後編に於いて、
この言葉は対極的に位置する残酷なものです。
しかし、それを通告したアナコンディさんでさえ、
実は館長の信頼と寵愛を得たいと願っているものの未だ得られておらず、
そして最期まで得られる事はありませんでした。
その館長にしてもフローラの元へ行きたくても行く事が出来ず、
真に自分が居たいと望む場所は誰も得られていません。
この事だけでなく、強引に奪って集めているとはいえ
宝を価値がある者が保護すべきという館長の主張にも一理あり、
小々田先生と議論を交わす様は価値観の相違としか言いようが無いもので、
一概に悪と断じて良いものか、少々複雑な気持ちを抱いてしまいました。
とはいったものの、今回のアナコンディさんの冷酷な振舞いは
非情な敵幹部の姿そのものです。
まずココを扉の奥へ送り込んだ後、扉越しに聞こえてくる衝撃音とローズの悲鳴は、
その向こうで何が行われているのか見えないだけに、
一体どんな目に遭っているのか嫌な想像を巡らせてしまいました。
また、ネバタコス氏によってエターナルの外壁に叩きつけられたレモネードを、
貴重なコレクションが台無しになってしまうとさらに跳ね飛ばす冷酷な振舞い。
そしてドリームやココを衝撃波が襲う際も、それぞれの悲鳴が響くだけで
命中するような具体的な描写は描かれていません。
お子様に配慮して直接的な描写を避けたと想われますが、
描かれていないだけに想像力が働いてしまいます。
そして気功砲のような技でプリキュア5人を一気に倒そうとしたり、
ミルキィローズブリザードをまともに受けても耐え切るなど、
とりわけアナコンディさんの強さが抜きん出ており、
前年のカワリーノ同様、中盤でNo2としての実力を余すことなく発揮していました。
今回はパワーアップ&新アイテム登場アピールでもありますが、
キュアフルーレを異なる構えで披露する様は、
5人の個性も随所に伺える中々格好良いものだと思います。
背中越しに剣を構えるレモネード、という相変わらず独特なポーズもありますが(笑)
個人的には気品と凛々しさ、芯の強さが伺えるミントの構えが気に入っています。
ただ、せっかくの剣なのに必殺技を突き出す事にしか活用されず、
アクアVSハデーニャさんや、アクアVSダークアクアのような剣戟が見られないのが残念でした。
前回と続けて少々重めの内容でしたが、
最後のみんなの輝くような笑顔と、照れて真っ赤になるシロップの絵が微笑ましく、
作画の良さも相俟って、平穏なラストを迎えることで
中盤の山場を美しく締めくくったと思います。
次回からはあの奇妙で無愛想な二人組の登場とともに
再び、日常にちょっと些細な事件が舞い込む展開が続きます。
彼らにはあまり思い入れが無いのですが、再見で受ける印象が変わるのか、
こちらの面でも期待してみたいものです。