彼女はただあの人を振り向かせるため、
そのためだけにコレクションを求めて世界中を飛び回り、色々な物を見てきました。
荒れた大地で砂に包まれていた遺跡、滝の水幕の裏側で輝いていた遺跡。
そんな日々の最中にあの人の傍にいて、微笑みかけた記憶も
時が来ればやがて消えます。雨の中の、涙のように・・・
キュアローズガーデンへの扉の前に立ちはだかり、
アナコンディさんは以前と同じように、稲妻から龍のホシイナーを作り出しました。
変身する6人。
ローズはアナコンディさんを一人で引き受け、
5人のプリキュアをホシイナーへと向かわせます。
『残念だけど、ゆっくりあなたの相手をしている暇は無いの。本気で行くわよ』
ミルキィローズとアナコンディさんの拳と拳がぶつかり合い、
激しい戦いの幕開けを伝えるかのように、稲光が2人を照らします。
キュアローズガーデンの命運を左右する戦いが行われている頃、
ブンビーさんはベンチで就職情報誌を手に途方に暮れて溜息をついていました。
今更エターナルにも戻れないとぼやいた矢先、
突如目の前に満身創痍のムカーディアさんが現れます。
前回レインボーローズエクスプロージョンの直撃を受けたものの辛くも一命を取り留め、
藁にもすがるように館長の元へと連れて行くよう頼み込むムカーディアさん。
一度は渋るブンビーさんですが、
アナコンディさんを介さず直接館長に掛け合えば
再びエターナル復帰が叶うかもしれないと、セコい打算を巡らせました。
ホシイナーは強く、苦戦を強いられるプリキュア達。
そしてアナコンディさんに挑むローズもまた、攻撃を軽々とかわされ続けます。
『かなわないと解っていながらそれでも向かってくるとは。
私ならとっくに諦めていますけどね』
『私は諦めが悪いのよ!』
『どうせあの守る価値の無い連中のために必死になっているんでしょう。馬鹿馬鹿しい』
『ココ様とナッツ様を侮辱することは許さない!』
言葉の数々に反抗するように鋭い回し蹴りを繰り出すローズ。
その蹴りをアナコンディさんはマトリックスばりの身のこなしで避け、
強烈な反撃を叩き込みました。
倒れたローズに歩み寄るアナコンディさんは追い打ちを掛けるでもなく、
目に寂しそうな光を浮かべ、ローズを見下ろしながら静かに呟きます。
『私達は似ているのかもしれませんね。
あなたはパルミエ王国のために。私は館長のために・・・』
『誰かのためじゃない。私は、自分の為に立ち向かっているのよ。
みんなが大切に思っているものを踏みにじる、あなた達のやり方が許せないから!』
ローズは立ち上がり、再びアナコンディさんに挑みます。
『私は、あなたなんかに絶対に負けない!』
『私の想いを誰にも邪魔はさせない』
アナコンディさんもまた、内に秘めた想いを胸に受けて立ちます。
ムカーディアさんは館長に直接アナコンディさんの事を報告します。
4人の王が揃っていた事実を隠匿し、館長に嘘をついていたばかりか、
フローラから館長へ宛てた手紙を隠し持っていた事も打ち明けて、
アナコンディさんの行いを厳しく糾弾、その後釜に自らを据えるよう願い出ますが・・・
『お前などいらぬ』
ムカーディアさんなど目もくれず、まるでゴミ屑のように処分する館長。
その様子を覗いていたブンビーさんは恐れおののき、慌てて逃げて行きました。
館長は誰もいなくなった部屋で手紙の蝋封を切ると、
中からは種が3粒、零れ落ちました。
ローズはナッツの助力を得てメタルブリザードを放つも、
アナコンディさんはものともせず、打ち消し様に猛烈な反撃を叩き込んできます。
ホシイナーを相手にしている5人も決め手に欠く中、
アクアは妙案を思いつき、シロップに協力を求めました。
5人を背に乗せて飛ぶシロップ。その後をホシイナーが追いかけます。
シロップはそのままアナコンディさんの方へ突っ込み、
アナコンディさんが迎撃しようと放った攻撃の直前で避けて、
その攻撃を後ろのホシイナーへと命中させました。
その隙を突いてホシイナーにファイヤーストライク、プリズムチェーン、
エメラルドソーサー、サファイヤアローを叩き込み、
ドリームは4つの技を一纏めにしたシューティングスターで突っ込んで
5人とシロップの力を合わせてホシイナーを撃退しました。
キュアローズガーデンを目指す上で、残る障害はアナコンディさんのみ。
突如、その場を異空間が包み込みました。
ココ、ナッツと4人の国王以外はその異空間と共に消え、
気が付いた時、そこはエターナルの本部前。そして、館長の前でした。
アナコンディさんは館長が例の手紙を手にしている事に気づき、
いつもの厳しさとは裏腹に歯切れ悪く弁明しようとします。
そしてシロップは館長が持つ手紙を見て、生まれた時からの記憶が蘇りました。
卵の殻を破って外の光を見た誕生の時、
フローラの手の中で優しい微笑に包まれていた雛の頃。
少しずつ成長し、ローズガーデンで過ごした日々の事。
『シロップ。大切なものは決して手放してはいけませんよ。
大事なものほど、すぐに失くしてしまうものなのです』
常日頃シロップが口にしているこの言葉は、フローラから聞いたものだと思い出しました。
そして館長に宛てた手紙を届ける途中、
アナコンディさんに襲われて手紙を奪われた記憶も蘇ります。
同じエターナルの者同士、なぜ館長への手紙を奪ったのか疑問を抱くプリキュア達。
そして館長もなぜ手紙を奪ったのかを追及します。
アナコンディさんはこれまで世界を飛び回り、
コレクションに相応しいものを集めてきたのに、館長は満足するどころか、
キュアローズガーデンの、いやフローラの事しか考えておらず、
これまでの努力に振り向いてくれなかった事を吐露しました。
『私の努力に全く振り向こうとしない館長を、フローラにだけは会わせたくなかったのです』
最初ためらいながら、そして最後に思い切って本心を打ち明けるアナコンディさんの姿に、
ローズは先ほどのアナコンディさんが寂しそうに呟いた言葉の意味を知りました。
『あいつ、館長の事が・・・』
しかしアナコンディさんに館長が掛ける言葉は無情です。
『伝説の戦士プリキュアを我がコレクションに加えたい』
アナコンディさんはその代償の大きさに思わずたじろぎますが、
館長の意志が揺るぎない事を悟り、覚悟を決めました。
『あなた達をコレクションに加えさせてもらいますよ』
蛇の髪を振り乱して襲い掛かるアナコンディさんを迎え撃つルージュは
一瞬で石と化し、続けてレモネードもあえなく石と化しました。
『館長の望み、私の命を捨ててでも叶えます』
一人石化する度に激しく呼吸が乱れ、肩で息をしながら
アナコンディさんは文字通り生命を削りながら、ミントとアクアも石像へと変えて行きます。
『みんなを元に戻しなさい!』
膝をついたアナコンディさんに挑みかかるローズでしたが、
アナコンディさんが何の反撃も防御もせず、
まともに攻撃を喰らった事で躊躇いを覚えます。
アナコンディさんもローズの相手をしている時ではないt、
館長の望みを果たすために残るドリームの前へと立ちはだかり、
そしてドリームも石像へと変えられました。
館長にプリキュア5人を献上した後、苦しい吐息を漏らしながら
もはや立つ力すら無くくずおれるアナコンディさん。
館長が素晴らしいコレクションだと満足し、保管庫に送り込むのを見て
アナコンディさんは微かな期待を抱いたような笑みを浮かべました。
これで館長に喜んでもらえる、褒めてもらえる。
そう考えていたのでしょうか。しかし館長の関心はフローラに向いたまま、
アナコンディさんに何の労いもかけず、いざフローラの元へと向かおうとしています。
『どうして・・・わかってくれないのですか・・・?』
翼を広げる館長の前に、最後の力を振り絞り、辛うじて立ち上がるアナコンディさん。
『どうしても止められないのであれば・・・行かせない!』
『駄目よ!!』
アナコンディさんの鬼気迫る姿、そして館長の冷たい素振りに
ローズは何かを察したのでしょう。激しく戦った相手を思い留まらせようとしますが・・・
アナコンディさんが館長へと伸ばした髪も、伸ばした手も、館長には届きません。
懸命に伸ばした指も館長の鉄仮面に触れる事叶いません。
アナコンディさんの脳裏に、これまで館長の傍につき従った日々が浮かんできました。
秘書としての務めを果たしながら仕えた事。
ちょっと困ったような笑みを浮かべて館長を見つめた日の事。そして・・・
『館長ぉぉおおおお・・・・・・!』
館長は何の感慨も無く、アナコンディさんを無情に消し去ります。
アナコンディさんの最期の声も、消え逝く間際に流した涙すらも館長には届きません。
鉄仮面に冷たく弾かれる涙の滴にも館長は眉一つ動かさず、
いや、その表情すら伺い知る事は出来ませんでした。
『なんてことを・・・』
一途な想いの結末を見届け、悲しそうに呟くローズ。
手紙と種を価値の無いものと放り捨て、キュアローズガーデン目指して飛び去る館長。
アナコンディさんまで消された事を密かに目撃して戦慄するブンビーさん。
手紙と種を拾うシロップ。キュアローズガーデンへの階段を駆け上るココとナッツ。
そして、展示室に安置されたプリキュア達の石像。
物語は、佳境を迎えます。
残り3話を残すのみとなった段階において、今回はのぞみ達ではなく、
アナコンディさんとミルキィローズに大きなウェイトが置かれているのが特徴です。
互いに想い人がありながら、決してその相手はこちらを振り向く事が無い事、
その気持ちをのぞかせるアナコンディさんに対し、
これまで激しく戦い合った相手ながら同情の念を伺わせるローズ。
時に対照的に、時に相似して描かれる2人の姿は悲しくも美しいものでした。
『かなわないとわかっていながら、それでも向かってくるとは。
私ならとっくに諦めていますけどね』
ローズを見下すように言い放つアナコンディさんのこの台詞は、
「敵わない」とも「叶わない」とも解釈する事ができます。
本来は「敵わない」として、戦力差の大きい相手に挑むローズを
見下す意味合いの台詞かもしれませんが、
「叶わない」と見ると一転、アナコンディさんも叶わぬ想いとわかっていながら、
それでも館長を一途に想い、諦める事が出来ないという矛盾した心境が垣間見えます。
「館長のために」と言いながら、アナコンディさんは館長が望むもののためではなく、
館長に自分を見て欲しいと、「自分のために」戦っていました。
そしてローズは「自分のために」戦っていると反論するも、
結果としてココのためであり、ナッツのためであり、
ひいてはパルミエ王国のためになっています。
エターナルのナンバー2として、エターナルのために尽くすはずが
恋慕の念が故に自分勝手に組織を動かし、多くの部下を使い潰したアナコンディさん。
準お世話役として、王に仕える事に誇りを持ち、
その過程で淡い想いを抱いていたミルク。
こうして対比してみると叶わぬ想いを抱きつつ戦っているという「似ている」点よりも、
相違点の方が見受けられます。
その中で、次第にローズがアナコンディさんに対して
理解を示していくような微妙な表情の数々や台詞回しが印象的でした。
最初のきっかけはアナコンディさんの「似ている」発言ですが、
決定的に気持ちが動かされたのは、アナコンディさんが館長に
フローラに会わせたくないと打ち明けるのを見た時でしょう。
ひょっとして彼女もココをのぞみに会わせたくないと思った事があったかもしれませんし、
アナコンディさんと自分を重ね合わせたとも考えられます。
次いで印象に残るのは、4人が石にされた後、
アナコンディさんに攻撃を仕掛けたローズが、
これまで全く通用しなかった攻撃をまともに受けるのを見て
一瞬はっとした顔を浮かべた事です。
この手応えでアナコンディさんがどれだけの生命力を削って戦っているのか、
どれだけの想いを込めて館長に応えようとしているのかに気づいたようでもあり、
以降ローズはドリームを石化するアナコンディさんに手を出せませんでした。
そしてドリームが石化された後の表情は、プリキュア5人が石にされた事よりも、
アナコンディさんの悲壮な姿を案じているかのようにも見受けられます。
後のピーチとイース様のように、拳を交えた仲だからこそ、
心のどこかで通じ合えた部分があったのではないでしょうか。
最後の力を振り絞って館長に手を伸ばすアナコンディさんを引き留めようとしたり、
アナコンディさんの最期を見届けた際、
思わず漏れた呟きと悲しげな表情から、そのような印象を受けました。
アナコンディさんも館長も、どちらも相手の気持ちを考えずに
自分に目を向けて欲しいという事で共通しています。
それが理解できなかった故の悲劇というべきか、
館長にはまだフローラという道を糺そうとする者がいましたが、
アナコンディさんにはそのような人は居ませんでした。
それだけにどこかで気持ちが通じたようなローズの存在が救いだと考えたいです。
アナコンディさんがこれまでやってきた事はカワリーノと同じです。
それでもアナコンディさんをひいき目で見てしまうのは私が面食いだからか(苦笑)
普段の冷たい美貌もさることながら、
真の姿もノーザ「さん」のような醜い姿ではなく、
あくまでもアナコンディさんらしくスタイリッシュで美しく惚れ惚れします。
その姿はアクションパートでも見栄えが良く、
前述のマトリックスのように攻撃をかわす様や、稲妻をまとっての強烈な蹴り、
そして倒れたローズを見下ろしつつ、蛇の髪をなびかせる様など、
この姿で戦うのは今回が最初で最後でしたが、
もっとアナコンディさんが戦う姿を見て見たかったものです。
思わず見ていて背筋が伸びてしまうような、
アナコンディさんとローズの間に流れる鋭い緊迫感の中、
緊張を見事に解きほぐすブンビーさんの存在も光ります。
ムカーディアさんを館長の元へ連れて行く際に打算を抱くなど
これまで描かれていた小物ぶりは未だ健在で、
だからこそ次回での大きな転機に効いてくるような気がしました。
あまりにあっさりとに切り捨てられるムカーディアさんは理不尽ではありましたが、
彼もまたエターナルのためではなく、
自らの出世のために館長に取り入ろうとした報いと言えそうです。
なお全くどうでもいい事ですが、
フローラの眉はほのかや咲なみに太い事に今更ながら気づきました(笑)
今まで私はなぜ気づかなかったのでしょう。
ラスト近くになってもなお、新たな発見(?)があるシリーズも、残すところあと2話です。