それは、ありすが小学生の頃の記憶―
物珍しい72色入り色鉛筆を見咎められて、生意気だと男子にからかわれていた彼女の元へ
「幸せの王子」が颯爽と助けに現れました。
『寄ってたかって女子をからかうなんて、最低よ!』―そして時は流れ
四葉邸で紅茶を囲む、中学二年のありす達。
(
ダージリンのファーストフラッシュとは・・・さすが四葉財閥)
ところで、彼女達の月に一度のお茶会は来週の筈。
訝る六花の機先を制すように、ありすは話を切り出しました。
『それはもちろん。プリキュアの事です』マナと六花が盛大にお茶を吹く音が、四葉邸にこだましました。
執事セバスチャンがボタンを押すと床が盛り上がり、そこにはのんびりとくつろぐランスの姿が。
あの時
理科室に置き去りにされたランスは、シャルルたちを探して夜の街を彷徨っていた際、
道路に不要に飛び出し、危うく轢かれるところでした。
偶然か必然か、その車に乗っていたありすに介抱されて、四葉邸でもてなされていました。
しかしランスはプリキュアの秘密を喋った訳ではありません。
再びセバスチャンがボタンを押すと、窓のシャッターとスクリーンが下り、
今度はクローバータワーの防犯カメラに映っていたという
マナがキュアハートに変身するシーンが大写しに投影されました。
これにはさすがのマナと六花も引きっつった顔を隠せません。
『私が気付いてクシャポイしたから良かったものの、
危うくプリキュアの正体が世界中に知れ渡るところでしたわ』この事実は幸い表に出る前に闇に葬られ(四葉財閥の力、恐るべし・・・)
ありすとセバスチャンしか知りません。
しかし、いつ何時プリキュアの事が知られてしまうか、決して油断できないのも事実です。
そのため、ありすは一つの提案を持ちかけました。
『私に、マナちゃんたちをプロデュースさせて下さいな』その頃例のアジトで、イーラは苛立たしげに3人目のプリキュア誕生を報告していました。
『こう青くてふわっとして、キラキラしてやがってさ』
『あら?惚れたの?』
年少故か、イーラはマーモとベールにからかわれ気味です。
とはいえ、彼らは決して甘くはありません。
『早めに滅ぼした方が良いだろうな。あのトランプ王国の時のように』
さて、プロデュースとは具体的に何をするのか詰めようとした矢先、
妖精達は闇の鼓動を感じ取りました。
すかさずセバスチャンが四葉財閥の情報網を駆使して現場を突き止め、
再びボタンを押すと地下から車がド派手に登場!
車で現場に向かうとは・・・今度のプリキュアは色々と予想外です。
駅前では携帯音楽プレーヤーのジコチューが、騒音撒き散らして暴れていました。
『待ちなさい!』屋根の上にハートとダイヤモンドを乗せた車が、颯爽と駆けつけます。
が、セバスチャンの荒い運転?にハートは車酔い気味です。
流石に朝のお子様向け番組で「あしたのジョーのアレ」はありませんが、
イマイチ締まらない名乗りになりました。
それでもジコチューに攻撃を畳み掛けて行く二人。
ランスも負けじとありすを促し、一緒に変身!・・・と呼びかけた折、
当のありすは戦いの場だというのに耳栓をつけて優雅にお茶を喫んでいました。
思わずランスの苦言が飛ぶも、
ありすはただ高みの見物をしているだけではなく、冷静に戦況を見ています。
『既に勝負はついています』電池切れを起こしたジコチューが音を発しなくなり、その隙にマイスイートハートで無事浄化。
これにて一見落着。しかし・・・ランスの胸の内に沸いたモヤモヤしたものは消えません。
駅前の監視カメラ映像の削除、ネットに上げられた目撃情報の消去など、
セバスチャンの仕事ぶりは完璧です。
このように万全のサポートを約束するありすに、マナと六花もまんざらではなさそうですが、
ランスは先程から抱いていた釈然としない気持ちをぶつけました。
『ありすはどうして戦わないランス?マナも六花も一生懸命戦ってるのに、
ありすだけ後ろでお茶を飲んでるなんて、おかしいでランスよ!』
ありすもプリキュアとして一緒に戦うべきだと、ランスは切実に訴えます。
必須アイテムであるラビーズを持っていないという問題も、
既にありすは
あの日クローバータウンの露店で手に入れていました。
あのタラシ野郎・・・これでありすがプリキュアになれない理由はありません。
『僕は君と巡り合うためにこの世界に来たんだランス。
お願いランス。プリキュアになって、僕と一緒に戦ってランス』
ありすの手を取り、再び縷々と訴えるランス。しかし、ありすはきっぱりと申し出を断りました。
『ごめんなさい。私、プリキュアにはなりません』ショックを受けて飛び去ってしまうランスを見送るありすの目には、
何とも言えぬ寂しさが宿っています。
マナと六花には、ありすがプリキュアになる事を拒む理由に心当たりがありました。
超お嬢様のありすは小学校では物珍しくて浮いており、
それ故にからかわれては都度マナが助けに入っていました。
冒頭で回想された出来事も、その一つです。
『あんたたち、恥を知りなさい!』その時幼いマナに叱られた男子二人が、
絵に描いたようなヤンキー兄貴を連れて仕返しにやって来ました。
幼いマナは先生を呼びに行こうとする六花を制し、
自分で敵わないからといって年上に頼るような卑怯者ではないと一歩も退きません。
しかし、兄貴の威を借りた男子二人はこれ見よがしにマナに暴言をぶつけます。
出しゃばりで、目立ちたいだけではないかと言われて、マナに戸惑いの色が生まれました。
『お前、みんなからウザイって言われてるんだからな!』
二の句が継げなくなったマナは、いつもの威勢を保つ事もできずに泣きじゃくります。
『違う・・・私そんなんじゃない・・・そんなんじゃないもん!』自分を守ってくれたマナが侮辱されたと見るや、ありすの目の色が変わりました。
静かに怒りを燃やしながら、卑劣な男子連中の前に立ちはだかり、そして・・・
『取り消して下さい・・・マナちゃんに対する暴言。今すぐ取り消して下さい!!!!』おっとり、のんびり、穏やかと言う形容が相応しいありすがケンカ?
その事実だけでも意外性十分なのですが、その結果もさらに意表を突いていました。
六花はありすがピアノ、習字といったものだけでなく、
空手に柔道、剣道、合気道といった武道全般まで幅広く習い事をしていた事を明かします。
まさか・・・その、まさかでした。ありすが我に返った時、いじめっ子とヤンキー兄貴は
完膚なきまでに叩きのめされて校庭にボロゾウキンのように転がり、
当のありすもまた、己の所業に恐れをなして夕陽の中、一人駆け出して行きました。
『それ以来、ありすは武道のお稽古は全部辞めちゃった。
ありすは友達の事を馬鹿にされると、怒りで我を忘れちゃうの。
多分自分でそれを分かってるのね。だから、ありすがプリキュアにならないのは、きっと・・・』六花はありすの気持ちに理解を示していますが、ランスは未だ釈然としません。
その時、闇の鼓動が感じられました。マナと六花はすかさず立ち上がります。
そしてランスは再び話をすべく、ありすの元へと向かいました。
ジコチュー出現の報をありすに告げるセバスチャン。ありすは動きません。
『私はプロデューサーですもの。現場の事はマナちゃん達に任せます』『本当は、ご一緒に戦いたいのではないですか?
私、長らくお仕えして気づきましたが、やはりお嬢様が一番輝いているのは
マナ様たちと一緒に居る時だと思います。時には、素直になられてはいかがですか?』
仕える相手の胸の内を理解し、時に導く事も有能な執事の条件でしょう。
決して出すぎず、それでいて的確なセバスチャンの助言を受けても、
しかしありすは己を厳しく律しています。
『いけません。私は、怖いのです。いつかまた自分を見失い、
誰かを傷つけてしまうかもしれない。そんな私にプリキュアの力は・・・危険です』ありすの脳裏には、あの日コテンパンに叩きのめしたヤンキーの姿が思い浮かんでいます。
『それは違うランス!プリキュアの力は大切な人を守るためのものランス!
それを・・・怖がっちゃ駄目ランス』
ランスの諌めながら説得する言葉を聞いて、ありすはあの日の祖父の言葉を思い出しました。
『力とは相手を撃ち従えるためのものでは無い。
良く考えよ。お前が拳を振るったのはなんのためだ?
力は己の愛する者を守るためのもの。それを忘れなければ二度と力に飲まれる事は無い。
ありすよ。恐れるな。己を磨き、心を高めよ』
あの事件の後、ありすを諌め諭した祖父の言葉。
力の意味、力の目的、力の使い道。そして、今守るべきもの・・・
ありすの持つラビーズが、持ち主を認めたかのように光を発しました。
『ありがとうランスちゃん。私はもう、恐れません』『俺ノSOUND良ク聴ケYo!俺ノLUNCHハカツサンド、Yeah!』
公園で、今度はヒップホップ風ノリのラジカセジコチューが騒音を撒き散らしています。
変身するマナと六花。
『愛を忘れた悲しいラジカセさん!このキュアハートが・・・』今回のジコチューは口上の途中で攻撃してくる等、お約束破りを披露しました。
何て自己中な奴でしょう。
さらにしっかりとコンセントが差さっており、先ほどのように電池切れを待つ作戦も使えません。
コンセント抜けばいいだろ、と思ったのは私だけじゃないと思いますが(笑)
ハートとダイヤモンドはジコチューが伸ばしたカセットテープ(懐かしい)に
足を絡め取られて投げ飛ばされ、プリキュア危機一髪のその時、車が駆けつけました。
『お待ちなさい。それ以上私の大切な友達を傷つけるのは、許しません』そして改めて、ランスに変身を申し出ました。ランスにとっても願っても無い事。
こうしてまた一人、
あざとい新たなプリキュアが誕生します。
『ひだまりポカポカ、キュアロゼッタ』照明効果が新たな戦士誕生を演出します。(四葉財閥というかセバスチャンの演出?恐るべし)
特異な変身口上はダイヤモンドに突っ込まれ、続く口上もまたイーラの突っ込みを誘いました。
『世界を制すのは愛だけです。さあ、あなたも私と愛を育んで下さいな♥』私めで良ければ、喜んで『なんだそりゃ、やっちまえジコチュー』
ジコチューの音波を避けたロゼッタに、カセットテープ攻撃が迫ります。
腕を絡め取られるも、柔道の心得を活かした一本背負いで逆にジコチューを投げ飛ばしました。
『すごい・・・これが大切な人を守るための力』バズーカのような最大音波攻撃に対し、受けて立つロゼッタの技とは、
『カッチカチのロゼッタウォール!』防御だけではなく、逆に最大の攻撃にもなりました。
ロゼッタが力を込めると、周囲に溢れていた暴音が消えます。
その現象をダイヤモンドはノイズキャンセリングと理解しました。
ジコチューはマイスイートハートで浄化され、ランスのパートナーも見つかり、プリキュアも三人。
これにて一件落着、と思われますが、実はプリキュアはもう一人います。
そのもう一人、キュアソードの存在をありすに打ち明けるマナ。
ありすにはその心当たりがありました。
あの日防犯カメラに映っていたのはマナ=ハートだけではなく、もう一人いました。
それがこの人だとありすが指さしたのは、真琴が宣伝しているエースティのポスターです。
まこぴーが、プリキュア・・・?マナの驚きの声が、夜の公園に響き渡りました。
今回初見で観た時は、ぶったまげたあまりテレビの前で何度ものけぞったものです。
絵に書いたようなセバスチャンの超万能執事っぷり、
そしてありす自身のキャラの物凄い濃さ、
四葉財閥の凄まじさ(恐ろしさ?)が、この一語に端的に込められている「クシャポイ」etc.
第二話では全く出番が無く、
第一話と
第三話で顔出し程度だったありすが
一気に表舞台に躍り出たストーリー構成は見事でした。
第一話の印象ではこまちやブッキーといったおっとり系キャラ以上に
のんびり天然さんというイメージが強かっただけに、
「武闘派お嬢様」のインパクトはクシャポイ以上に強烈でした。
まさかこんな可愛い女の子が一人で男子3人をボコボコにしてしまうとは・・・
(某pixivのタグ「血だまりボカボカ」には爆笑しました)
確かに
こまちも
ブッキーも怒らせるととっても怖かったですが、
ありすはそれ以上に「怒らせるとヤバい」感が伝わって来ました。
そのありすの「強さ」は、前例の少ない独特のものだったと思います。
悪ガキ連中にからかわれている時点で拳を振るう事も当然出来る筈ですが、
どんな目に遭っても決して自分のためには怒らないという、
己を厳しく律する事の出来る「強さ」。
本当に強い者とはどういう人間なのかを端的に表しているようです。
今後、このありすの「暴走設定」が再び描かれる事はあるのでしょうか。
もう一度観てみたい気持ちはありますが、私としてはおそらく無いと思います。
再びありすが暴走するような事になってしまえば、
それはプリキュアの道を選んだ彼女の姿を否定してしまうように思えるので・・・
もっとも、敵側があまりに卑劣な手段を用いるようなことがあれば、
例えば中盤の山場や最終回近辺で暴走してしまうかもしれませんが・・・
ところで当初は視聴者としてもありすの事情を知らない為、見ているこちらとしても
ハートとダイヤモンドに戦わせてのんびりお茶しているありすには違和感を覚えます。
その行動に疑問を抱くランスと視聴者の視点が重複し、
マナと六花による昔語りでありすの抱えている不安が明らかになる構成は見事でした。
金や口は出すけれども、汗をかかない、血を流さないといった、
現場を知らない者による経営、プロデュースなどは私は否定的に捉えています。
幸いなことに私の働く会社はそのような事が無いため恵まれている事を感謝したいですが、
色々な企業のトップインタビューやIR情報などを観ると、
どうも最近はそのような企業経営者が増えているように思えます。
無論ありすはそんな人物ではなく、また祖父の言動を見る限り
四葉財閥そのものも健全な企業理念を持っていると伺えますが、
このような状況への警鐘が暗に見て取れるような気がしました。
ランスのキャラが立っていた点も評価したいです。
一番マイペースで呑気者に見えた妖精だけに、逆にその言動には曇りが無く、
訴えたい想いがストレートに伝わって来ました。
妖精達の中では既にダビィがとんでもない個性を発揮していますが、
このランスだけでなくシャルル、ラケルいずれも単なる変身アイテムだけでなく
パートナーとして、あるいはそれ以上の存在としてのポテンシャルがありますので、
妖精達に主軸を置いた展開にも期待しています。
それにしても悪ガキ2人のみっともない事!
虎の威を借る狐ほど、見苦しいものはありません。
これまでのシリーズに登場した敵キャラクターにも、このような者はいません。
時には守るべき人間の方が、戦う相手よりも醜いものになり得ると言う点、
事実「ジコチュー」システムもそうですが、
人の心の醜さに直面してプリキュア達が迷うという話も考えられそうな気がしました。
ところで
すこぶるどうでもいい話ですが、72色の色鉛筆・・・懐かしいですねぇ。
クラスに2~3人はそんな多色のクレヨンやクーピーを持っている子がいた事を思い出します。
ただあれって、使いづらい色が多かったですよね?
「はいみどり」とか、「はいあかむらさき」とか、どうやって使い分けていたのやら(笑)
さて「黄色」の誕生と言えばどんな味付けをしてくるのかと身構えておりました(笑)
案の定ハートやダイヤモンドよりも力が入っていると思われる変身バンクといい、
黄ミューズの変身時ポーズを思わせる愛らしさであったり、
変身と同時に照明が周囲を彩る演出(byセバスチャン?)であったり、
「ぴかりんジャンケン」に匹敵する妙な口上など、やはり黄色の伝統は健在でした。
変身直前、暗い逆光の中に現れるといった演出もカッコ良く、印象深いものだったと思います。
もっともこの表現は、ありすの迷いを暗に「闇」として、これから向かうべき道を「光」として
対比させて描いたものだと解釈しています。
それにしても今時の中学生は「ラジカセ」知らないんですね・・・
ジェネレーションギャップは遂にここまで来たかという感がありました。
今回ハートたちが縛られたカセットテープも知らなさそうですので、
お子さんに「アレ何?」と聞かれた親御さんが居たかもしれません。
追い打ちを掛けるように「ノイズキャンセリングって何?」と聞かれて
ますます親御さんが答えに窮する姿が目に浮かびます。
ところでご存じの方もおられると思いますが、
私、タイツフェチである旨、時折本文中に織り交ぜておりまして・・・
ありすの黄タイツも無論ですが、幼い六花が穿いていた「白タイツ」
あれ・・・初めて見た時・・・なんていうか・・・その・・・下品なんですが・・・フフ(以下自粛)