冒頭から夕暮れの町を襲うデザトリアンと、それに立ち向かうプリキュアの戦闘が描かれます。
同時にキックと促すマリンに応じるブロッサムは、あろうことかつまづいて転び、
それに気を取られた隙に攻撃を受けてしまうマリン。
立て直すべくタクトを出すブロッサムは、デザトリアンの背後、
瓦礫に足を挟まれている子供に気付いて助けに向かいますが、
その際デザトリアンにタクトを弾き飛ばされてしまいました。
振りかぶったデザトリアンから子供を庇うように手を広げるブロッサムのさらに前に
マリンが割って入り、その攻撃を受け止めてマリンインパクトで跳ね飛ばし、
そのままブルーフォルテウェーブ。結局マリン一人で撃退しました。
助けた子供もマリンをカッコイイと評し、ブロッサムは微妙・・・と評する始末。
落ち込むブロッサムは気を取り直し、先ほど弾かれたタクトを探しますが、
タクトは新たな大幹部、クモジャキーの手の内に。
『噂には聞いとったが、史上最弱のプリキュアは二人になっても最弱ぜよ』
そう酷評し、弱いプリキュアを倒してもつまらないとタクトを返して姿を消しました。
目を醒ましたつぼみは、えりかに迷惑かけてしまったと朝から思い悩んでいます。
窓の向こうで手を振るえりかは全然そんな事考えていないようですが、
今日も元気に行こうと言われ、私も元気にいかなくちゃと気を取り直しました。
砂漠の国では、サソリーナが2人目のプリキュアの事をサバーク博士に報告しています。
そこに一戦交えたクモジャキーが帰還。サソリーナは何故タクトを返したのか訊ねると
『小さいことは知らん。俺が相手にするのは世界じゃからのぅ!』
日曜夜8時の主人公を彷彿とさせる発言で返すクモジャキーですが、
サバーク博士の目的も全世界の支配。
そのために人々の心を砂漠のように草木の育たない世界にする、という
彼らの方針が明らかになりました。
理科の授業が終わり、えりかにアルコールランプを消すよう言われるつぼみですが
怖がって消せません。蓋をすれば消えるのですが、それを聞いて耳に蓋をする始末で
見かねたえりかが消しました。
そのえりかは実験器具の片付けを女子に押し付けていく男子を押し留め、
ここは公平にジャンケンで、と対戦して見事男子に勝ちます。
男子と堂々と渡り合う姿を、つぼみは羨望の眼差しで見つめました。
体育の授業でも、跳び箱を軽々跳ぶえりかと、顔面から突っ込むつぼみ。
国語の授業中でも、ぼんやりしていて当てられて戸惑うつぼみと、
わざと間違えた答えを教えて助け舟をだすえりか。
二人の対照的な姿が描かれ続けますが、つぼみは一人思い悩んでいます。
えりかはクラスの人気者なのに、私は・・・
そんな心を、私は変わるんです、と鏡に向かって奮い立たせました。
放課後、つぼみを自宅兼店舗の「フェアリードロップ」に招いたえりかは、
ファッション部員勧誘のための服選びを始めました。
えりかがつぼみに選んだ服は派手すぎる、という事で自ら服を選ぶつぼみ。
手に取ったのは、黒のシャツにグレーのスカートの組み合わせで、
えりかに言わせると「しょんぼりしている時に選ぶ色」のようです。
そういう時には緑色というえりかのアドバイスに続く
『私達がプリキュアってバレることはないだろうけど、
いざという時の為にイケてる服を着てないと恥ずかしいじゃない』
という発言が、つぼみを一人追い込んで行きました。
『そうじゃないとえりかがコンビを組むのに相応しくないですよね・・・』
えりかはそんなつぼみを少々強引に、走ろう、と連れ出します。
運動して発散するのが一番だと。
走る二人が着いたテニスコートでも一悶着ありました。
テニスコートから出て行くあゆみと、取り残されたまお。
二人はダブルスで全国大会まで行くほどの腕前ですが、
あゆみが当分一人で練習したい、と宣言して行ってしまったようです。
ずっと試合であゆみに頼っていたから、愛想尽かされてしまったと思い込むまおに、
『コンビを解消すればもっと強い子と組めるし』
と軽く発言するえりか。
その発言は自分に向けられたものではないにも拘らず、つぼみは過剰に反応します。
えりかに断絶宣言された姿を想像したつぼみは口を挟もうとしますが、
『前向きに考えようよ。コンビ解散は新たなスタートだよ!』
再び「コンビ解散」という発言に過剰反応。
そしてまおも『もういいからほっといて!』と声を荒げて行ってしまいました。
何故まおが怒ったのか、えりかには理解できませんでしたが、
ふと見回すとつぼみもいません。
土手を行くつぼみに追いつきますが、
『短い間でしたけど、別の子と組んでも私の事忘れないで下さいね』
鼻をすすって涙を流し、駆け出すつぼみ。
見守るシプレとコフレはプリキュア解散の危機を懸念していました。
池のほとりで不貞腐れるえりかには、なぜつぼみが急にしょんぼりしたのか理解できません。
そこに現れるもも姉。ファッション誌のグラビア撮影中で、休憩時間のようです。
つぼみとケンカしたのかと訊ねられて、まおにアドバイスしただけなのに、
つぼみがしょんぼりしてしまったと返答するえりか。
妹の欠点を、もも姉は適切に指摘します。
相手の気持ちを考えずにズバズバ言ってしまう事。
良かれと思って言った事が相手を傷つける事もある事。
再び撮影に戻るもも姉は、皆がえりかみたいではない、と忠告して行きました。
えりかもそんなことは分かっているのですが、その表情は優れません。
薫子さんの温室を訪れ、コッペに泣きついて疑問をぶつけるつぼみ。
何で私がプリキュアになったのか。度胸も無く引っ込み思案で運動神経も悪い。
プリキュアになる資格なんて、きっと無い。
その疑問に対するコッペの答えはありません。
が、その姿と体には得も言えない包容力が感じられます。
一人で練習に励むまおは、私だって頑張ってきたのに、と
苛立ちをぶつけるようにラケットを振ります。
頑張っているのに、別の子とコンビを組むなんて・・・
その心の隙間は、俗に言う「コンダラ」の上に現れたクモジャキーに利用されてしまいました。
まおの心の花を抽出し、コンダラをデザトリアンにするクモジャキー。
なぜかタイミング良く現れたシプレとコフレは残された球を回収し、
つぼみたちに知らせるべく奔走します。
注:MH7話でも説明しましたが、コンダラとはグラウンドの地ならしに使うローラーで、巨人の星のOP 「思い込んだら試練の道を♪」のくだりで飛雄馬が引きずるシーンを「重いコンダラ」と誤解されたことから付いた俗称です。『プリキュアになる資格と言うものがあるのだとしたら、優しい心と強い心。
全てを大切に思う気持ち。そして自分が辛くても頑張ろうという気持ち。
つぼみはその二つを十分持っているわ』
コッペに泣き付いていたつぼみに、薫子さんはそう言葉を掛けます。
そこにデザトリアンの事を告げにシプレが現れますが、
つぼみはもう、立ち上がれます。
えりかはずっと考えていますが、答えが分かりません。
つぼみに謝ればいいのか。でも何を謝るのか。
そこにシプレとコフレが、追ってつぼみが駆けつけ、一瞬顔が曇るえりかですが、
有無を言わさず現れるデザトリアン。
そして、急いでデザトリアンの心の花を戻してあげようというつぼみの姿に、
えりかも気を取り直し、2人で変身します。
『アユミトハ良イこんびダッタノニ!』
ダブルパンチで攻撃しようと提案するマリン。
ところが冒頭の戦闘の再現のように転んでしまうブロッサムに巻き込まれて一緒に転倒します。
そんな姿を酷評し、追い打ちを掛けるクモジャキーの攻撃がブロッサムに迫りますが、
マリンが身を挺して庇いました。
足を引っ張っている事を詫びるブロッサムですが、マリンは全く気にしていません。
『私ハアユミノ足ヲ引ッ張リタクナイカラ頑張ッテ練習シテタノニ!』
ブロッサムの心境を代弁しているかのような、まおの心の痛みを叫ぶデザトリアンの
腕コンダラの一撃が振るわれますが、再びマリンがブロッサムを庇い一人で受け止めます。
『やっぱり私ダメなんです。マリンはもっと強い子と組んだ方がいいんです』
加勢するもののブロッサムは自分に自信を持てませんでしたが、
その発言でやっとマリンはブロッサムの悩みがわかりました。
ちゃんと言ってくれなければわからない。一見口論を繰り広げるような様に
クモジャキーの酷評が飛びます。
『今度はケンカか。最弱どころか最悪のコンビぜよ』
ところが、それに真っ向から反論するマリン。
『私達は最悪なんかじゃない!最高のコンビなのよ!
私はブロッサムが好き。頭が良くていろんなところに気が着けるなんて素敵だよ!』
2人はきっと互いの力が必要。妖精も加わってコンダラを押し返した後、
マリンはブロッサムの手を取り宣言します。
『私達は二人でプリキュアだよ!』『2人でプリキュア?本当に、私でいいんですか?』
『ブロッサムでいい。じゃなくて、ブロッサム
がいいの』
『ごちゃごちゃ言う奴は好かんぜよ!男は、一人人生と言う荒波を越えて行くんじゃ!』
おそらく大多数の視聴者が女の子ですから、という突っ込みを入れたのではないでしょうか。
ともあれ、下らないと切り捨てるクモジャキーに、堪忍袋の緒が切れるブロッサムに、
シプレとコフレは2人での攻撃を勧めました。
2つの花の力、フローラルパワー・フォルテッシモ。
2人デザトリアンの体を突きぬけ、「ハートキャッチ!」と決めると
デザトリアンを撃退し、心の花を取り戻しました。
『お前らもっと強くなれ!そしたら俺が倒してやるぜよ』
言い残し、引き上げるクモジャキー。
目を覚ましたとき、まおはあゆみに介抱されています。
あゆみがコートに来てみたら、まおが倒れていたとの事。
『あゆみ、私もっと頑張って練習するから、コンビ解散しないで』
『何言ってるの?それは私の台詞よ』
まお、あゆみ両人とも、相手の足を引っ張っていると思い込んでおり
それ故にあゆみは一人で特訓しようと思っていたようです。
『私達ってお互いの事信じられなくて勝手に心配していたのね』
『これからも一緒にやってくれる?』
『もちろん。だって私達、最高のコンビだもん』
涙を拭い、笑顔を見せるまおを、夕陽が優しく包みます。
まおの心の花、ブルースターの花言葉は信じる心。
互いを信じる事で、前よりもっと強い友情に結ばれた事を察するつぼみ。
そしてコフレも排便もとい心の種を産み落としました。
(余談ですが、今日は朝食採りながら見ており、この事を忘れておりました・・・)
『私達の友情も強くなったね』『はい』
先ほどの土手を行く2人。えりかはつぼみに訊ねます。
私達、親友だね、と。一瞬戸惑ったものの、強く言い切るつぼみ。
『はい!親友です』
共に笑い合い、手を取って家路に着く二人を見守るように、空には一番星が輝いていました。
「えりかに迷惑をかけてしまった」
「えりかとコンビを組むのに相応しくない」
「マリンの足を引っ張ってばかり」
つぼみは一人そう思い込んで、勝手に自分を悪いほうへと追い詰めて行ってしまいます。
私自身、周りが自分を理解してくれない、自分はダメだ、自分はいないほうがいい、
と思い込んで鬱状態に陥り、休職に追い込まれた事があるため、
今回のつぼみに親近感が沸くものの、今となっては共感できない事に気が付きました。
えりかは全くつぼみを責めておらず、それどころかそんな気持ちはさらさら無いのですが
つぼみはえりかにそう断言してもらわないと安心できなかったのでしょう。
言い方は厳しいようですが、独りよがりの甘えと捉えられかねません。
周りに「迷惑」ではなく「心配」をかけてしまう、と言う事に
この状態に陥ると気が付かないものです。
しかし、共感を覚えなくなったという事はそういうSOSを発している人の
気持ちが分からなくなった事かもしれないので、気をつけたいと思います。
コッペに疑問をぶつける場面は私自身の経験とも相俟って印象に残りました。
こういう問題は、誰かに答えを与えられて解決するものではなく、
自分自身で解決しなければいけない問題です。
単に無口なだけかもしれませんが、何も言わないながらも包容力を感じさせるコッペは
自分と向き合い、自分で考えさせる場をつぼみに提供したように思えます。
ただ黙っているだけではなく、穏やかに見守っている。そう感じさせるのは
コッペの周りを飛び回る小鳥達の描写があるからでしょうか。
その大きさと相俟って、SSの大空の木のような、心の拠り所のような存在に見えます。
それでもつぼみは、真に助けを求める人に手を差し伸べられる強さを持っています。
冒頭の戦闘でも良い所が無いものの、子供の窮地に気付いて身を挺して庇おうとしたり、
自分に似た悩みを訴える、まおの心境を察して立ち上がったり。
だからこそ彼女がプリキュアの資格を失わない、失う事が無いのだと思います。
そしてえりかは
1話で見られたような無神経さはあまり伺えず、
しかもつぼみやブロッサムに対して無神経な態度らしいものはほとんどありません。
不用意だったのはまおに対する発言で、
それをつぼみが拡大解釈してしまったとは考えられなかったでしょう。
だからこそ、もも姉に注意されても、何が原因だったのか分からず混乱しますが、
物事を深く考えすぎない事、すぐに水に流せる事は彼女の大きな強みではないでしょうか。
えりか=マリンは本心からつぼみ=ブロッサムがパートナーで良いと考えており、
その事をはっきりと口にする場面は、
今後ハートキャッチシリーズの名場面に挙げられると思います。
悩みを口にしてくれなかった(できなかった)つぼみ、
口にしてもらわなければ理解できなかったえりか。
この2つがあるからこそ、「ブロッサムでいい。じゃなくて、ブロッサムがいいの!」
とはっきり宣言する台詞が印象に残ります。
初代第8話でも国語の授業のシーンがあり、この時は「枕草子」が用いられていました。
今回国語の授業で用いられるのは、石川啄木の「一握の砂」より、
「不来方のお城の草に寝ころびて空に吸われし十五の心」。
青春の不安な心を果てなく続く空に向けて詠んだ短歌ですが、
つぼみの心境とも同調しており、効果的に引用されています。
そしてえりかの「啄木」ならぬ「たんこぶ」という間違えた答えも相俟って
インパクトのあるシーンでした。
そして2人目の大幹部、クモジャキーは初登場から強烈な印象を残します。
まるで坂本龍馬に影響されたかのような言葉遣い。
(余談ですが、「龍馬伝」の福山龍馬はあまり「ぜよ」と言いません)
新撰組の羽織を思わせる上着の裾。そして強い者との戦いを望む信念。
キントレスキーのような名悪役になりそうな予感がします。
切り口が異なるため、
初代第8話とどちらが秀でているという事は論じられませんが、
今回は優れたエピソードとして、ハートキャッチシリーズを彩る事になると思います。