ある晴れた日、走る少女。
遅刻しそうなのか息を弾ませて走っていたところ、
ふと桃色に輝く蝶が舞っているのに気が付きます。
その美しさに魅せられて、追いかけて路地に飛び込んだ際、
誰かにぶつかって転倒しそうになりました。
転ぶ前にぶつかった相手に助け起こされ、相手が涼やかな青年であると気付いて赤面。
思わず突き飛ばしてしまい、そして謝ります。
青年がそっと手を差し出すと、その指に止まる蝶。
青年は蝶に触ろうとする少女を、触ると消えてしまうと留めながらも、
蝶が好きなのかと問いました。
少女にとって蝶は特別好きなものではありませんでしたが、
綺麗なものを見ると今日一日が良い日になるような気がする。そんな気がしています。
『きっといい日になるよ。君、名前は?』
『夢原のぞみです』素敵な出会いの始まり、と思いきや、怪しい気配を察して立去る青年。
名前を聞こうとしたのぞみが路地を出ると、そこには誰もいません。
青年が消えた事を訝りながら再び通学路を行くのぞみに、
バス停から幼馴染、夏木りんちゃんの呼び声が響きました。見るともうバスが来ています。
『
ぎゃおおおおん!遅刻しちゃう、そのバス、待ってー!』のぞみの長い一日は、ここから始まります。
バスの中で朝の出会いの事をりんちゃんに語るのぞみ。
運命の出会いについて話が弾む中での、腐れ縁のように賑やかな2人のやりとりを
車内のポスターから金髪の少女が見下ろし、
読んでいた本から目を上げて緑髪の上級生が優しく見守ります。
バスを追い越す車の後部座席からは、バスを見上げる青髪の生徒会長の姿が。
のぞみの運命の彼の名前は聞けませんでしたが、再会を夢見て乙女心はときめきます。
車を降りた生徒会長水無月かれんと、
のぞみとりんちゃんの後からバスを降りた図書委員の秋元こまち、
親友同士の3年生は、生徒達の憧れの的。
高嶺の花のような2人を見送るのぞみとりんちゃん、
というより抜群の運動神経で知られるりんちゃんも、
運動部員達に取囲まれ試合の助っ人として引っ張りだこです。
りんちゃんを残して先に行くのぞみは、ふと振り返ると
みんなに囲まれているりんちゃんが、どこか遠い存在のように思えました。
『やりたい事、私もすぐに見つかるもん!』『待ってるだけじゃ駄目!自分で見つけるのよ!』りんちゃんを羨むような独り言を言ったのぞみに唐突にかけられる言葉。
それは金髪の少女が読んでいた台本の台詞です。
バスのポスターに起用されていた子、春日野うららを目の当たりにして、
本物の芸能人だと喜ぶのぞみ。うららは新入生として
サンクルミエールへ入学していました。
のぞみはうららの持つ台本に目を留め、女優さんだと尊敬の念を抱きますが、
うららはその幼さを感じる外見とは裏腹に、仕事に対する厳しさを露にします。
『いえ、まだまだです。とても女優なんて言えません』台本を握る手に力がこもり、のぞみに一礼して立去るうららに触発され、
のぞみは改めてやりたい事を見つけると決意を固めます。
とはいったものの、のぞみは何をやってもパッとしません。
先週入った手芸部は針に糸を通す事すらできずに挫折。
先々週の演劇部は転んだ拍子にセットを壊して出入り禁止。
その前の吹奏楽部は演奏を聴いているうちに夢の世界へ旅立ってしまい・・・
少々呆れ気味のりんちゃんは今日から運動部の助っ人として忙しく、
取り残されたのぞみはやりたいものを見つかるまで探す!と
意気込んで窓の外を見下ろすと、朝出会った青年が校内をうろついているのを見つけました。
何かを探しているのか、それとも何かから逃げているのか・・・
のぞみは青年の後を追って、図書館へと入ります。
のぞみは図書館内で談笑していたかれんとこまちに
青年の事を尋ねてみますが、2人とも誰も見ていません。
かれんは全校生徒の顔と名前を覚えており、初めて話すのぞみの事もちゃんと知っていました。
そのかれんは、誰も来ていないにも関わらず館内を探そうとするのぞみに対して
表情と口調が険しくなり、まるで叱り付ける様に誰も来ていないと言い放ちますが、
のぞみはまるで動じずに図書館内を探すと立去ります。
そんなのぞみの姿はこまちにとって、かれんに似ていると感じさせました。
『誰が何と言おうと、自分が正しいと思う事は曲げないところ。かれんもそうでしょう?』薄暗く、しかし荘厳な館内。
のぞみはふと書架に目を留めると、丁度書架を物色している青年の後姿が目に入りました。
しかし、駆け寄るとそこには誰もおらず、いつの間にかのぞみの背後の書架を物色し、
そして気付いたらまた消えている青年。
不思議な空気が漂う中、のぞみは書架の中で光る本を見つけます。
手にとって見ると、それは本ではなく木箱のような物でした。
『ドリームコレット!』
突然青年の声が響き、のぞみの元に駆け寄ります。
青年の姿に胸をときめかせて、再会を喜ぶのぞみとは裏腹に
青年は実にそっけなく、生返事を返してドリームコレットを渡すよう要求しました。
その態度に幻滅し、のぞみは意固地になって渡すのを拒みます。
『乙女をギュッと抱きしめて、すっかり忘れてたような言い方をして!』強引に奪い取ろうとする青年と、譲らないのぞみ。
のぞみが思いっきり踏ん張ると青年は力負けし、
その衝撃で愛らしい生物の姿に変わってしまいました。
その愛らしさにのぞみはメロメロです。頬ずりしたり、狸って本当に化けるんだと言って見たり。
改めて手を差し伸べ自己紹介するのぞみに対し、
ココと名乗った生物は相変わらずそっけなく、よろしくしたくないと拒みます。
しかしのぞみはどこ吹く風、ココの毛を引っ張ったりとじゃれていますが・・・
『何か出たココ!』
館内に響く笑い声。ココが戦慄する相手、ナイトメアの手の者の一人、
ギリンマ君が図書館の暗がりから現れます。
ギリンマ君の狙いもまた、どんな願いも叶うというドリームコレット。
それでもココはこれだけでは願いは叶わないと強気ですが、
その目論見はあっさりと打ち砕かれました。
ピンキーを集めればいいという事までしっかり調査しているギリンマ君は
力ずくで奪い取るとカマキリの怪人へと姿を変えました。
図書館に異音が、振動が響き、受付に居たこまちとかれんも得体の知れない気配を察します。
コレットを奪い取ろうとするギリンマ君に対し、ココはコレットを手放そうとしません。
ココがどうしても叶えたい夢とは、失った故郷を甦らせるというものでした。
のぞみはその夢を笑い飛ばすギリンマ君を睨みつけ、
コレットが収まっていた木箱を投げつけてココを抱えて走ります。
木箱を真っ二つに斬り、後を追うギリンマ君。
その直後に駆けつけ、散らばる本と傷ついた床を見て戸惑うこまちとかれん。
ギリンマ君の攻撃が振るわれる度に、
グラウンドのりんちゃんも、下校中のうららも奇妙な胸騒ぎを覚え、
そしてのぞみは図書館の隅へと追い詰められました。
ドリームコレットを渡せば見逃すと、あくまで低姿勢に出るギリンマ君を拒むのぞみ。
君が思っているほど悪い人じゃないというギリンマ君の言葉を否定し、
ココの夢を馬鹿にした事を非難します。
『夢はとっても大事なものなんだよ。自分がボロボロになっても、叶えたい大切なものなんだよ。
それを馬鹿にするなんて最低!だから絶対に渡さない!』下手に出ていたギリンマ君も、堪忍袋の緒が切れたようです。
『凄ぉ~く痛いよぉ・・・』
追い詰められたのぞみに、ギリンマ君の鋭い刃先が迫ろうとするその時・・・!
朝のあの蝶が飛んできました。
のぞみの腕に留まり、光を発して腕時計のように手首にまとわりつきます。
のぞみはココに促され、その腕時計のようなもの、ピンキーキャッチュでの変身を
意味が解らないながらもとにかく構える事になりました。
『プリキュア、メタモルフォーゼ!』ピンキーキャッチュからの光に導かれ、徐々に露になる姿は・・・
『大いなる希望の力、キュアドリーム!』変身の口上、変身後の姿に戸惑うのはシリーズの伝統です。
自分の姿に驚くドリームと、伝説の戦士誕生に感激するココですが、
思わぬ邪魔が入ったギリンマ君は素早い攻撃を仕掛けてきます。
その攻撃を軽く一っ飛びで避け、その跳躍力に驚くドリーム。
そのドリームにギリンマ君は新たな刺客、コワイナーを差し向けます。
壁に掛かっていた
番慶子ママンの貴婦人の肖像に怪しげな仮面を被せると、
そこから実態化して現れるコワイナー。
お化けのような姿におびえて逃げるドリームを、ココは奮起させるべく促します。
『夢を叶えるためには自分を信じて立ち向かわなければならないときもあるココ』
逃げ回っていたドリームも、ココの言葉に踏みとどまり、戦う事を決意しました。
コワイナーの日傘攻撃を避けて、鋭い蹴りを叩き込み自分の力に驚いているドリーム。
しかしその背後にギリンマ君が回りこみ、ドリームの首筋に刃を突きつけて
ドリームコレットを渡すようココを脅迫します。
卑怯だと罵られても、俺は卑怯者さ、と開き直るギリンマ君。
戸惑うココに、ドリームはコレットを渡さないよう励まします。
『叶えたい夢があるんでしょ?叶える為にそれが必要なんでしょ?だったら絶対渡しちゃ駄目。
こんな奴に、人の夢を馬鹿にする奴に、絶対負けないもん!』隙を突いてギリンマ君を投げ飛ばし、コワイナーにドリームのプリキュアの力が放たれます。
『夢見る乙女の底力、受けてみなさい!プリキュア・ドリームアタック!』ピンキーキャッチから飛び出す蝶を、鋭く叩きつける技を受けて、
コワイナーの仮面は剥がれ落ち、元の肖像画へと戻ります。
仕事を邪魔された事に舌打ちし、ギリンマ君が撤退すると共に
荒れた図書館も元に戻り、そして元の姿に戻ったのぞみも今の出来事を反芻しました。
改めてプリキュア誕生を驚き、喜ぶココ。
どうしてもココを助けたいという強い心がプリキュアになるための道を開きました。
そして、のぞみもやりたい事がようやく見つかります。
それはプリキュアとして、ココの願いを叶えてあげる事、に決定です。
しかし、プリキュアは5人いるとココに指摘され、
まずは仲間集めがのぞみの最初の役目となりました。
ふたりはプリキュア、
マックスハート、
スプラッシュスターと、
既に3つのシリーズの再視聴レビューを終えた身として、
先の展開を知った上で見る第1話の新鮮さを知っていたつもりでしたが、
プリキュア5の第1話は改めて鮮烈な印象を与えます。
5人に増えた主人公を、これから1話ずつ掘り下げて紹介していく流れが続きますが、
まず第1話では最低限の顔出しが必要です。
りんちゃん=スポーツ万能で運動部の引っ張りだこ。かつのぞみとの深い絆。
うらら=芸能人として活躍しながら、自分に厳しく現実的な性格。
こまち=優しく、おっとりとした物腰ながらも、時折鋭い観察眼を発揮する。
かれん=生徒会長として自他に厳しく、少々頑固なところも併せ持つ。
この特徴は今回で既に描かれ、これから少しずつ変わる所がありますが、基本はブレません。
しかし、かれんに関しては、後の印象との差を感じます。
近寄りがたい雰囲気を醸し出し、図書館でのやりとりはかなり冷たい印象を与え、
事によると年間で最も成長し、最も変わったのはかれんではないかと改めて感じました。
それぞれ異なる強烈な個性を持つ4人に対して、のぞみの個性とは何なのか。
本人が没個性である事を人知れず悩み、
そんな自分を変えるためにやりたい事を探すのが今シリーズの基本路線となっています。
今シリーズの最終版で、のぞみは真に自分の目指す道を決めますが、
その決定を下すまでの、のぞみの成長こそが今シリーズの魅力だと思います。
のぞみは運動も、勉強も、それ以外のものも何をやらせてもダメながら、
周りにいる人々に夢を与え、希望を抱かせる不思議なカリスマを持っています。
各シリーズの主人公に共通したものですが、
他人の不幸を悲しみ、他人の幸せを喜ぶという事が誰よりも強く感じられるからでしょうか。
ココのために精一杯の勇気を振り絞って立ち向かう姿は
「弱い」ながらも懸命に戦ってきたハートキャッチシリーズの2人と重なります。
それにしても先入観とは恐ろしい物です。
ココとの出会いは路地でぶつかったシーンの印象が強かったため、
その後のココがこんなにそっけなかったとはすっかり忘れていました。
ギリンマ君の気配を感じて「奴らか?」と逃げたりする様は中二病(笑)のように見え、
校内をキョロキョロしながらさまよう姿は見た目がイケメンでなければ不審人物です。
珍獣姿になってからも、あれ程強い絆で結ばれる事になるのぞみに対して
よろしくしたくないココ、とまで言い放っている等、
後の展開を知っているだけに、かえって新鮮な驚きが感じられました。
そしてギリンマ君の意外な活躍も新鮮です。
ギリンマ君に限らずナイトメアの構成員達はサラリーマンの目から見ると
皆同情を禁じえない点が多々あるのですが、
今回に限ってはギリンマ君が立派に悪役を努め上げていました。
これからギリンマ君がブンビーさんに嫌味を言われ、
苦労しながらも奮闘していく姿、そして
その最期も知っているだけに・・・
メインキャラクターが多い事と相俟って、非常に賑やかで華やかな幕開けをしたプリキュア5。
これから毎回1人ずつプリキュアが増えていく中で、
次回のルージュ誕生のエピソードはりんちゃんののぞみに対する想いの深さ、
戦いの現実と恐ろしさを描く印象的なものだったと記憶しているため、
再見でどのような感想を抱くのか、5人が揃うまでが再び楽しみになってきました。