坂本さんがかれんの部屋をノックすると、扉は開いていました。
ソファでまどろんでいた幼き日のかれんは目を覚まし、
窓の外を飛ぶ飛行機を見上げて坂本さんに問いかけます。
『あの飛行機かな?お父さんと、お母さんが乗ってるの』『かも、しれませんね』
『早く、帰ってこないかな・・・』思わず本音を呟いた事に気付き、慌ててクッションに顔を埋める幼いかれん。
坂本さんはそんなかれんを不憫に思いながら部屋を出ました。
一人になった後、かれんは我慢していたかのように窓際へ向かい、飛行機を見上げます。
そして時は流れ、月を背景に飛ぶ飛行機を見上げる15歳のかれん。
『どうして・・・みんなを、助けられなかったの・・・?』幼い日の事、そして
変身できなかった日の事を思い返し、
何も出来ない自分を歯痒く思っていました。
ナイトメアでは、ブンビーさんがピンキー奪還という戦果を挙げてご満悦です。
一言も、何も発しない仮面を付けた社員達に褒めるよう要求した後、
次はドリームコレットを手に入れると豪語して、再び現場へ赴きました。
ピンキーを奪われ、頭を抱える小々田先生ですが、
のぞみは5人揃えばピンキーを助けられると楽観的です。
そして変身失敗を目の当たりにしても、何と言われようとも
のぞみはかれんを仲間にする事を諦めていません。
生徒会の会議が終わるまでの間、
かれんを迎えに来ていた坂本さんと一緒に待つことにしました。
一方かれんは、会議中もずっと上の空。
遅刻の取り締まりという風紀委員が提案した議題を聞き逃し、
意見を求められて慌てて書類に目を落とし、謝ります。
坂本さんは改めてのぞみ達に、これからもかれんと仲良くして欲しいとお願いします。
かれんは両親や周りに心配をかけまいと、いつも気を遣い、
幼い頃から電話の向こうの両親に対しても寂しさを押し殺しており、
坂本さんはそんなかれんを不憫に感じていました。
大勢の人が両親の演奏を望んでおり、自分だけが独占するわけにはいかない。
そしてかれんは寂しさを隠し、自分の気持ちを出さない人間になってしまったものの、
坂本さんは先日、心から楽しんでいたかれんを久々に見た事で、
改めてこれからもよろしく。そう言いかけた矢先、会議を終えたかれんがやって来ます。
坂本さんがのぞみ達と一緒にいる事で、険しい表情を浮かべるかれん。
のぞみは坂本さんが咎められないように自分が誘ったと弁明しますが、
かれんの言葉は冷たく響きます。
『何度も言わせないで。私はあなた達の力にはなれないの。放っておいて』『そんな言い方しなくたっていいじゃない・・・』『あなたは黙ってて!』思わず漏らしたりんちゃんを鋭く一蹴し、坂本さんを車へ向かわせた後、
かれんは改めてプリキュアへ誘うのぞみを制して、そっと語りかけます。
『私はプリキュアになれなかったのよ。見たでしょ?蝶が消えたのを・・・』かれんも無念なのだと悟ったのか、目を伏せるこまち。
小々田先生曰く、本当に心からなりたいと思わなければプリキュアにはなれない。
かれんは反論しようとします。あなた達を助けようと心から・・・
そこまで言いかけて、気がつきました。
本当にそう願っていたのか、仕方なく引き受けようとしていなかったのか・・・
後ずさりして、その場を立去るかれんですが、のぞみは諦めずにその後を追います。
のぞみはもう決めたから、という筋の通らない理由でしつこく食い下がり、
かれんと自分は全然違うと言いますが、先日一つだけ共通点を見つけていました。
それは、両親が大好きだという事。
両親を気遣い、人を思いやる優しさがある水無月先輩なら
プリキュアになれない筈が無いと主張するのぞみに、かれんも態度を軟化させ
プリキュアの事は別として、いつでも遊びに来て欲しいと友達として迎え入れました。
木立に響くのぞみとかれんの笑い声。
しかし、そこにもう一つの笑い声が重なります。
『私も遊びに行こっかな♥』
木陰から姿を現したのは、当然ブンビーさん。それにしてもこの管理職、ノリノリである。
のぞみに捕らえたピンキーを見せびらかし、そして開放するブンビーさん。
ピンキーを呼び寄せるのぞみ、のぞみの許へ飛び込もうとするピンキー、
双方共に必死なのを逆手に取り、ブンビーさんは放り投げた仮面に
ピンキーが自ら飛び込むよう仕向け、のぞみの目の前でピンキーがコワイナーと化しました。
ピンキーの攻撃からかれんを庇い、のぞみは単身変身して立ち向かいます。
しかしコワイナーに攻撃を仕掛けようとしても、
怯えるピンキーの姿が思い浮かんで、ドリームは手が出せません。
コワイナーに激しく叩きつけられてしまい、
駆けつけたりんちゃん、うらら、こまちも変身して立ち向かいます。
ドリームを叩きのめしたコワイナーに怒りを露にするルージュですが、
ドリームからピンキーがコワイナーにされたと聞いて、3人とも同じく手が出せません。
コワイナーの攻撃を避け続けるも決め手に欠き、時間だけがずるずると流れていきます。
『管理職の私には、残業代が出ないのでね!』
その状況にブンビーさんも怪人化し、勝負を急ぐように追い打ちを掛け始め、
4人はかれんの前で無抵抗のまま叩きのめされました。
とどめを刺そうとするブンビーさんを前に、遂に意を決し、かれんが割って入ります。
『もうみんなを傷つけないで!これ以上、みんなに手出しはさせない!』力の無い者に何が出来る、と扱き下ろすブンビーさんに対しても、
かれんの意志は曲がりません。力は無くても、みんなを助けたい気持ちは同じ。
かれんは4人を守るように手を広げ、みんなと過ごした時間を想い、
プリキュアになれなくてもみんなの力になりたいと宣言します。
そんなかれんを守るべく、ブンビーさんとの間に立ちはだかる4人。
互いが互いを守りたいという想いに引き寄せられたのか、再び青い蝶が飛来します。
本心からみんなの力になりたいと願うかれんの心に導かれ、
果たして蝶はかれんの腕に止まり、そしてピンキーキャッチュへと姿を変えました。
『知性の青き泉!キュアアクア!』プリキュアが5人になった事に愕然とするブンビーさんに、
6話目にして始めて5人の決め台詞が披露されます。
『希望の力と未来の光。華麗に羽ばたく5つの心。Yes!プリキュア5!』
きっと5人くらいいると思ってたと強がりながら襲ってくるブンビーさん。
アクアは早速「知性」らしくコワイナーの仮面を剥がせば元に戻ると推察し、
5人が各々の役割を分担して立ち向かいます。
ミントがピンキーを食い止めている間に、ルージュとアクアが仮面を剥がす。
そしてドリームとレモネードはその間ブンビーさんを引き付けておく。
作戦通りに事が進み、アクアのプリキュアの力が炸裂します。
『岩をも砕く乙女(笑)の激流!受けてみなさい!プリキュア・アクアストリーム!』続くルージュファイヤーとの2段攻撃で仮面は砕け散り、
ブンビーさんもドリームアタックを辛うじて避けた後、
上司への報告書を何て書けばいいのかと文句を言いつつ引き上げていきました。
無事に戻ったピンキーをキャッチして、改めて勢ぞろいする5人。
これからもよろしく、と互いに言い合うだけでなく、
テレビの前のお友達にも5人が揃った姿をアピールしました(笑)
その夜、母へ国際電話をかけたかれんの声は、いつになく弾んでいます。
『大した用ではないんですけれど、いつ日本に帰ってこられるのかなって。
ただ、会いたいなって思っただけ』素直な気持ちを言葉にするかれんに、坂本さんもどこか安堵したようです。
そして翌朝、会議の議題どおりに遅刻の取り締まりに立つかれんの前を
うららとこまちが問題なく登校して行きました。
りんちゃんはのぞみを急かして滑り込みセーフ。
しかしのぞみは間に合うかと思いきや校門前で盛大に転倒して
その間にチャイムが鳴り終わり遅刻になりました。
仲間のよしみでかれんに見逃してもらおうとしますが、それとこれとは別と却下されます。
"L'Ecole Cinq Lumiere"
フランス語で「5つの光の学校」と書かれた校門の下に意匠されている5つの星が
のぞみとかれん。そしてりんちゃん、うらら、こまちを見下ろしています。
前回の挫折を引きずる前半のかれんと、立ち上がる事を決意する後半のかれん。
1つの話の全後半だけでもかれんの描かれ方の印象は大きく異なります。
時折フラッシュバックする幼少時の記憶も、
無理に背伸びをして寂しさを隠し続けたかれんの姿を暗示しており、
それが本音を隠さずにストレートにぶつかるのぞみと好対照を現していると感じます。
かれんのような強い意志と責任感は当然好印象として捉えるものですが、
前回のおタカさんや今回の坂本さんが懸念しているように、
自分を押しつぶしてしまうことになりかねません。
まわりに心配や迷惑を掛けないため、全て一人で被ってきたかれんですが、
裏返せば信頼できる仲間がいなかった事でもありました。
だからこそ、それぞれの持ち味を活かした今回の戦闘は、
キュアアクアとしての最初の戦いというだけでなく、
かれん=アクアに信頼できる仲間が出来た事を描いていると思いました。
ところで話は少々逸れますが・・・
SS第1話レビュー時に私はロリコンではないなどと書いていたものの、
今回の幼少時のかれんの愛らしさには本放送時から打ちのめされました。
既に登場している
のぞみ、りんちゃんの幼少時ももちろん可愛いのですが、
幼いかれんの可愛さはまるで人形のような愛くるしさで、
クッションに顔を埋めたり、ソファに腰かけて片足をブラブラさせたり、
といった仕草も相俟って、歴代キャラクターの幼少時では最強クラスの可愛さだと思っています。
もっとも、これらの仕草の一つ一つが、寂しさを隠すかれんの心を表しているのですが・・・
今回のメインはもちろんかれんなのですが、のぞみの存在も非常に大きく感じられます。
のぞみがかれんを執拗に誘い、何と言われても諦めない理由は至極単純で、
「もう決めたから」という根拠の無いものです。
それを全く曲げず、かれんこそが5人目と信じて疑わず、
拒まれてもひたすらついていく。その一途なひたむきさは
筋が通っていなくても意志を貫く事の大切さを改めて思い起こさせます。
一方で常識的な反応を見せるりんちゃんとは衝突する場面もあり、
かれんとりんちゃんの確執が描かれる第8話に向けての伏線も徐々に張られてきています。
かれんとこまちの関係は主に中盤以降で描かれるので、
欲を言えば前回もそうなのですが、「親友」であるこまちをもっと上手に絡めていれば
また違ったものが見られたかも知れないと思いました。
うららも今回あまりストーリーの本筋には絡まないのですが、
一部で有名な「画面の下から見上げる顔の上半分のうらら」通称「うらポジ」
の強烈なインパクトが存在感を出していました。
そしてブンビーさん。のぞみとかれんの女子の会話に割って入るように裏声で笑ったり、
残業手当のくだりや「5人くらいいると思っていた」という捨て台詞など、
徐々にその魅力を発揮し始めてきています。
高木渉さんの演技が後と少々異なるのですが、
この時点で登場している敵の中で一番格が上という事情もありそうです。
カワリーノ登場以降、中間管理職の悲哀が伺えてから、
私達の応援するブンビーさんになっていったように思えますので・・・
蛇足ながら、現時点での私の役職は「主任」です。
そして私も、ブンビーさん同様に残業手当はありません・・・