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プリキュア5 第5話『プリキュアの資格』 [Yes!プリキュア5]

希望情熱はじける安らぎ。1話毎に1人ずつ仲間が増えて行き
順当に行けば5話目の今回で知性のプリキュアが誕生する筈ですが・・・
自分に頼りきりの生徒会のために行動し、両親に心配させないために無理に背を伸ばし、
自分の心に嘘をついていたかれんが味わう大きな挫折。
今もって他に例のない変身失敗が描かれ、プリキュアの資格について考えさせる一編です。
 
校内を歩くだけで羨望の声が上がるかれんは、
相変わらずサンクルミエールの生徒達にとって注目の的です。
しかしその後の生徒会室での打ち合わせで、
かれんは生徒会員たちが自信無さそうに持ち寄る案件を一手に引き受けるものの、
一人になった後に漏らす呟きは、彼女の誰も知らない内面を覗かせます。
『結局、私がやらなきゃダメみたい・・・』

ランチタイムで大量のパンを頬張るのぞみを呆れながら眺めるりんちゃん。
ふと傍らのうららに目をやると、小柄な体に似合わず特盛りのカレーを食べている事に驚き
りんちゃんも負けじと豪快にスパゲティをかきこみました。
そして本日からは賑やかなランチタイムの輪に、新たにこまちも加わります。
こまちはココを質問攻めにして、既にかなり詳しく事情を把握していました。
改めて残る1人、知性のプリキュアは誰なのかを皆で考えていたところ
自称そろばん5級のおタカさんが話に割り込んで来ます。
その申し出を丁重に断り、こまちだけはおタカさんでも良いと思っていたという
ズレっぷりを披露しますが、のぞみはかれんを仲間にする事を諦めていません。
こまちはかれんと親友であるだけに、その強い責任感や頑固な一面を知っているため
少々心配そうですが、のぞみは少しも物怖じせず、
放課後に水無月家に行く事を決定します。

その頃ナイトメアでは、アラクネアさんがギリンマ君に続き
ブンビーさんの嫌味に耐え、もう一度チャンスを申し出ますが、
ギリンマ君同様、哀れ強制休養(奈落の底に落とすとも言います)を申し渡されました。
『まったく、出来の悪い部下を持つと苦労しますよ』
そして、これまで沈黙を守ってきたブンビーさんがついに動き始めます。

かれんにとって、今日は母から電話がある特別な日なのですが、
執事の坂本さんの車で下校しようとした矢先、ラブちゃん生徒会員に呼び止められました。
学年主任に年間予定をうまく説明できるか自信がないと不安の声を聞き、
かれんは坂本さんを先に返し、車を見送った後、誰にも聴こえないようにそっと呟きます。
『やっぱり、私がやらなきゃダメなのね・・・』

かれんは無事に役目を終えて、お礼を言う生徒会員にはいつでも相談するよう言うものの、
一人になると同時に深いため息を漏らします。
『一人で何でも頑張りすぎちゃうと、本当に自分の好きなことを出来なくなっちゃうよ』
下校する折、おタカさんにそう声をかけられ、かれんは一瞬図星を突かれたような
戸惑いを浮かべますが、取り繕って下校していきました。
そのかれんの後姿をおタカさんは心配そうに見送り、
かれんにも本音で話せる仲間が必要だと案じています。

話は前後して、水無月家を訪れたのぞみ達は、
豪邸というよりも宮殿といった規模の家に圧倒されていました。
うらら曰く学校のグラウンド98個分の庭園を経て、
執事の坂本さんの計らいで邸内でかれんの帰りを待つ事になります。
やがて帰宅したかれんは、こまち以外の3人の訪問に戸惑いながらも、
水無月家の事情―父はピアニスト、母はヴァイオリニストとして
日々演奏旅行で世界中を飛び回っているため、
巨大な屋敷にはかれんと坂本さんの2人しか住んでいない事などを説明します。
『こんな所に2人だけで寂しいよね』
りんちゃんが何気なく漏らした一言に、過敏に反応するかれん。
『別に、寂しくなんかないわ』
りんちゃんとかれんの相性の悪さが伺える、というよりも
かれんはどこか自分自身に言い聞かせているような口ぶりで答えます。
のぞみ、りんちゃん、うららの賑やかなやり取りを、
どこか憧憬を感じさせる眼差しで見つめるかれんの心中を察したのか、
こまちはお土産の羊羹を差し出し、みんなで庭のガゼボ(東屋)で頂く事になりました。
そしてその頃、水無月家の門前にはもう一人の訪問者が訪れます。
『洋館だ』
屋敷を見上げて一言。さすがブンビーさん、期待を裏切りません。

こまちの実家、創業百年の「菓子舗小町」の羊羹をみんなでガゼボでいただき、
のぞみとりんちゃんの微笑ましい羊羹の奪い合いを見るうち、
かれんはいつしか心の底から楽しそうな笑顔で見守ります。
そこにウィーンの母から国際電話が入り、
かれんは子供のように目を輝かせながら、中座して電話に向かいました。
『ええ、元気でやってます。いいえ、寂しくなんかありません。
 どうか気になさらずに、お仕事頑張って下さい』

久々の母との電話なのに、どこか背伸びをしているようなかれんの会話。
そして電話を終えて戻ってきたかれんは、改めて4人に来訪の目的を訊ねます。

プリキュアへの勧誘話を持ちかけられ、性懲りも無く、といった風に
興味が無いと一蹴するかれんですが、今回はこまちもいる事で説得力が違います。
先日の地響きはこまちが起こした物だと告げられ、
続けてのぞみのカバンから現れるココが動き、喋る事に
かれんは事情が飲み込めません。
『最近のぬいぐるみは良く出来てるわね・・・』
顔を引きつらせてココを見下ろすかれんですが、
ココが語る目的、ピンキーを集めて故郷を蘇らせる、という話は理解を超えており、
目の前の現実を受け入れる事ができません。
丁度ピンキーが近くに現れ、実例とばかりにこまちにキャッチを促すココ。
めでたくキャッチ、と思いきや・・・
こまちがキャッチする寸前、何者かが疾風のようにピンキーを掠め取ります。
『今までの連中はこんな簡単な事も出来なかったのかね』
あっさりとピンキーを奪い取り、さすが管理職の貫禄を見せ付けるブンビーさん。
ドリームコレットを渡すよう要求し、ガゼボに仮面を被せて
コワイナー化するブンビーさんを前に、かれんの前で変身に踏み切る4人。

『本当だったんだ・・・』
目の前で繰り広げられるプリキュアとコワイナーの戦いに息を飲むかれん。
コワイナーを圧倒して一息ついたのも束の間、ブンビーさん自らが蜂の怪人として襲って来ます。
腕から放たれるガトリングガンのような攻撃はミントプロテクションで防ぐものの、
追い打ちで放たれるミサイルのような攻撃にプロテクションはあっさりと破られました。
(ルミナスのバリア、SSの精霊の力、サンシャインのサンフラワーイージスに比べて以下略)
不敵に笑うブンビーさん、危機的状況のプリキュア4人。
その時、蒼く輝く蝶が物陰で様子を伺うかれんを目指して現れます。
『早く手を差し出すココ!プリキュアに変身してみんなを助けるココ!』
しかしココの訴えはブンビーさんの恐ろしい(笑)姿に怖気づいたかれんには届きません。
あんな怪物に立ち向かうなんて無理だと畏れ、拒むものの、
ココの懇願を聞いているうちにかれんは生徒会室での、
そして先ほどの電話のやり取りを思い出しました。
『結局、私がやらなきゃダメみたい』『いいえ、寂しくなんかありません』

『いつもそう。結局は、私がやらなきゃ、ダメみたい・・・』
諦めたように差し出されたかれんの腕に、蝶が止まるのを固唾を呑んで見守る4人。
しかし、蝶はピンキーキャッチの形にならず、消えてしまいました。
『かれん・・・』『プリキュアに・・・』『なれなかった・・・?』『何で・・・?』
愕然とする4人以上に、かれんも狼狽を隠せません。
『どうして・・・?私、何も出来ないの・・・?』

無力を噛み締めるかれんの前で、襲い掛かってきたコワイナーは
レモネードが、ルージュが牽制し、そしてドリームが仕留めました。
しかし、ブンビーさんはピンキーを奪ったまま撤退。
コワイナーを倒したものの、ピンキーを奪われた4人の顔は暗く、
それ以上に、かれんの表情は優れません。

『もう、二度と私を誘わないで』
夕陽の中、プリキュアが本当の事だと理解したものの、
自分が何も出来ないと気付いたかれんは無念そうに言い放ちます。
しかし、のぞみは全く動じていません。
『いいえ、また来ます。だって私、水無月先輩にプリキュアになってもらいたいんだもん!』
邪気の無いのぞみにあっけにとられ、のぞみを追ってみんなが帰った後、
かれんは改めて蝶が消えた手を見つめ、一人呟きました。
『私、なぜ、なれなかったの・・・?』


放映当時、1話毎に1人ずつ増えていく事を当然と考えられていたため、
良い意味で期待を裏切った今回はプリキュア5シリーズの中でも特に印象深い一編です。
現時点で唯一、変身することを「拒否した」ではなく「拒否された」かれん。
プリキュアとして戦うのは誰かに強制されるものではなく、
どれ程恐ろしくても、怖くても、辛くても、
自分の意思で選ばなければ意味がありません。
一見、目の前で苦戦している4人のために立ち上がるようですが、
その実はココの執拗な要求(笑)に負け、仕方なく戦う事を選ぶ様は、
怖さに震えつつものぞみを失う事の恐ろしさを考えて立ち上がったりんちゃん、
初めて親しく接してくれたのぞみを心の底から助けたいと戻ってきたうらら、
作家の夢を応援してくれたのぞみの夢を、逆に応援しようと宣言したこまち、
と比較して消極的なものでした。

今回のかれんは、自分を犠牲にして人のために働いているようで、
内心は周囲を見くだしているような一面が伺えます。
「結局、私がやらなきゃダメみたい」と諦めたように何度も呟く言葉からは、
私以外には誰も仕事が出来ない、誰もやってくれないと否定的なニュアンスが感じられます。
これはブンビーさんの今回の発言「出来の悪い部下を持つと苦労しますよ」
「今までの連中はこんな簡単な事もできなかったのかね」
という発言と、本質的に変わりません。
出来る人は、周りにも同じレベルで物事をこなすよう要求してしまいがちです。
生徒会のメンバーに対しても、こんな事が出来ないのかといった諦観があり、
ひいてはプリキュア4人に対してもその考えを抱いてしまったため、
仕方なく変身「してあげる」という感覚だったのでしょう。
しかし、それこそがプリキュアの資格に欠けるものでした。

そして、次回でも描かれるかれんの孤独な内面も影を落としています。
りんちゃんへのキツい反論、母との電話のやりとりからは
決して弱みを見せない、見せたくないという強い自負が感じられますが、
周囲が思っている程、かれんは強い子ではありません。
両親が不在である孤独だけでなく、羨望の眼差しを受ける生徒会長という役職でも
トップの孤独を抱き続けていたようで、おそらく親友であるこまちに対しても
弱みを見せまいと振舞い続けてきたのでしょう。
こまちは決して鈍感ではなく、むしろかれんの繊細な一面を良く理解しているのですが、
この時点のかれんは、おタカさんが案じた通りの孤独に苦しむ姿が感じられます。

プリキュアになれなかった、という一点で非常にインパクトのある一編ですが、
今回のかれんの姿は、つい頑張りすぎてしまう社会人の私達にとっても
いろいろと考えさせられるものでした。
時には弱さを素直に表す事、人には出来る事と出来ない事がある、
そして、自分に嘘をつかない事。
私自身に言い聞かせるように、今回の話を教訓として心に刻んでおこうと思いました。
そして次回、本心からキュアアクアへの道を選ぶかれんの姿から、
また新たな生き様を感じたいと思います。
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