満月の下、マイナーランド一味がアジトとする時計台の中で
バスドラは集めた音符の数がプリキュアとほぼ互角と判断し、
セイレーンに一応「様」をつけて呼んで、もっと音符集めに励むべく進言します。
しかし当のセイレーンはといえば満月を見上げ、
王子先輩の姿を思い浮かべてすっかり骨抜き状態です。
人間の男に一目惚れして追いかけていた事は
バスドラがチクったためにメフィストに筒抜けで、セイレーンは怒鳴り散らされた挙句、
弁明の余地も無くリーダーの地位を剥奪されました。
無念さを噛み締めるように、一人アジトを飛び出すセイレーン。
バスドラは抜け目無く、そのまま新たなリーダーへと就任しました。
バスドラは音符を一気に回収する策があると自信たっぷりで、
早速今日から俺様がリーダーだと高らかに宣言。
その後ろで例の如くハモるファルセットとバリトン、ですが・・・ちょっと嫌そうなのが気になります。
普段から音楽人口の多い加音町ですが、本日は特に楽器を手にした人々が目に付きます。
明日、音楽自慢大会が催される事となり、それは昨日決まったという
随分と急なスケジュールですが、町のみなさんは練習に余念がありません。
奏は響にピアノで出場しようと持ちかけ、奏も即座に快諾。
まさか簡単に返事されると思っていなかったのか、
半信半疑だった奏は響に抱きつきました(朝っぱらからごちそうさまです)
二人のハーモニーはハミィも楽しみにしています。
公民館とおぼしき音楽室で、夜遅くまでピアノの練習に励む響と奏。
気付いたら外は真っ暗ですが、奏は既にピアノの練習をすると家に連絡済でした。
今夜は納得行くまで練習すると、響も意気込みを見せます。
翌日11:30。楽器を手にした人々が時計台前広場に三々五々集まって来ました。
その中に王子先輩率いる王子隊や、玄人はだしの三丁目のおじさん達を認めて
怖気づく響を、奏は演奏そのものを楽しもうと励ましました。
『人は人。誰かと比べるんじゃなくて、私達なりにベストを尽くしていい演奏しようよ』
広場では音楽だけでなく、スイーツ姫こと東山先輩がお菓子を配っており、
響と奏もエールとお菓子を受け取りました。
広場にはアコを追う奏太の姿もあります。
クラスのみんなと縦笛で出るつもりなのですが、
アコはみんなでやるものではなく自由参加だと断り続けていました。
上手くできなくても一生懸命やる事が大事だとたしなめる奏を
いつも通りに口うるさいと切捨て、2人でピアノを弾くと言う響と奏に、
ピアノがどこにあるのかと至極全うなツッコミを返すアコ。
響と奏は指摘されて初めて会場にピアノが無い事に気が付きました。だめだこりゃ。
互いにピアノが無い事に気付かなかったと責め合う2人。
久々に響と奏の夫婦喧嘩が始まり、徐々にエスカレートし始めますが、
近所に住む老人からピアノ貸与の申し出を受けて何とかこの場は収まりました。
とはいえ、ピアノを運ぶのは大変な事です。
そこに降って沸いたかのように和音が登場し、周囲に協力を申し出ると
早速人手が集まり、無事会場にアップライトピアノが搬入されました。
ピアノを提供してくれた老人、運んでくれた町の人々、手を貸してくれた和音のためにも、
響と奏は改めて音楽自慢大会への気合を燃やします。
そうこうしている内に、開始時間の12時になりました。
ところがからくり時計は時間通りに動き始めても、
肝心の音楽自慢大会は始まる様子が無いどころか、審査員やスタッフも誰もいません。
突如、広場一体に低音の歌声が響き渡ると共にからくり時計が邪悪な面相と化して、
町の人々は次々と楽器を取り落として泣き崩れました。
そして歌声の主、バスドラがお茶目にマイクテスト&口上を披露して登場します。
『あ~テステス・・・
レ~ディス・アンド・ジェントルメ~ン!音楽自慢大会へ、ようこそ~♪』
バスドラ以下トリオ・ザ・マイナーは音楽自慢大会を妨害しているのではなく、
音楽自慢大会の開催こそが彼らの罠でした。
バスドラは音符が加音町に集まるのに目をつけ、
町の人間を集めれば音符を集められると企てて、
わざわざ手作りポスターを町中に貼って告知するという地道な作戦を実行。
その目論見は成功し、とあるお姉さんの持つシンバルに音符が潜んでいるのを見つけて
ネガトーンと化しました。シンバルの音圧が辺りに炸裂します。
町の人たちが楽しみにしていた事を逆手に取り、
自分の目的のために音楽を愛する心を利用したバスドラ達に憤り、変身する2人。
直後、調べの館でパイプオルガンの製作作業中の音吉さんは、
背後の池に波紋が広がるのを感じて振り返りました。
『ズレとる・・・』
これは果たして、何に対しての言葉なのでしょうか・・・?
UFOのように飛来するシンバルを白刃取りのように掴み、
巧みにあしらうメロディですが、もう一対あるシンバルにあえなく弾き飛ばされました。
リズムも同様、片方に気を取られている隙にもう片方に弾き飛ばされます。
劣勢を目の当たりにしたハミィは、邪悪な旋律の一端を担っている
からくり時計のおもちゃの楽隊を止めるべく、懸命に時計台を登り始めました。
その間にもシンバルネガトーンを前に得意のコンビネーションも通用せず、
苦戦を強いられる2人。そしてハミィも時計台の窓に辿り着きますが、
バリトンにあえなく猫掴みで捕らえられてしまいました。
今回はバリトンだけでなく、トリオ・ザ・マイナー全体的に良い働きぶりです。
ある程度作戦は成功しているものの、思ったほど音符が集まらない事に首を捻るバスドラ。
人を集めたくらいで簡単に見つかるくらいなら苦労しないとハミィに文句を言われ、
ネガトーンに町中手当たり次第探すよう命じます。
メロディとリズムはネガトーンを食い止めるべく立ち上がりますが、
奮戦空しく再び叩きのめされ、このままではやられてしまいそうです。
追い詰められるメロディとリズム。その時・・・
どこからともなく、モジューレの音色が響き渡りました。
音はバスドラたちの頭上、鐘楼の上から聴こえて来ます。
その上には仮面で顔を隠し、マントをなびかせる少女が立っていました。
それが誰なのか、メロディ、リズムはもとより、ハミィも、トリオ・ザ・マイナー達も誰も知りません。
邪魔はさせないとネガトーンをけしかけるバスドラ。
しかし仮面の少女は2対のシンバルを素早い動きで巧みにあしらい、
リズミカルな動作でネガトーンの動きを完全に読んで、ネガトーンを翻弄し続けました。
その間に、いつの間にかからくり人形は音吉さんの手で直され、
音吉さんに気を取られたバスドラは仮面の少女にあしらわれたネガトーンの直撃を受け、
ご自慢のヒゲが乱されてショックを隠せません。
すかさず手を広げる仮面の少女。虹色の鍵盤が広がり、
鍵盤から放たれるエネルギーがネガトーンの動きを止めました。
そして動きの止まったネガトーンはリズムのミュージックロンドで撃退。
シンバルは無事にお姉さんの手元に戻りました。
ヒゲを台無しにされた事に怒りながら、バスドラ達も撤退して行きます。
仮面の少女は一言も喋らず、代わりに紫色のフェアリートーンが名乗ります。
彼女の名前はキュアミューズ。
助けてもらったお礼を言う2人に対して、フェアリートーンがミューズを代弁するように
別に助けたわけではないと返答します。あのままではネガトーンに敗れていたと指摘。
それでもプリキュアかと酷評し、誰の味方でも無いと言い残して、フェアリートーン、
もといキュアミューズは建物の屋根伝いに疾風のように去って行きました。
『私達の他にもプリキュアが・・・』
『キュアミューズ。あの子は一体・・・?』
その夜遅く、満月の下。セイレーンがアジトへ戻ってきました。
どこへ行っていたか訊ねるバスドラに、そっけなく対応するセイレーン。
『リーダーは俺様だ。命令だ。どこへ行っていたのか言え』
『・・・何であんたに言わなきゃならないのよ。どこに行こうが私の勝手でしょ』
立去るセイレーンに、疑惑の目を向けるバスドラ。
果たしてセイレーンはこの2日間、どこへ行っていたのか。
そしてキュアミューズの正体とは・・・?
昨年の
キュアムーンライト、ダークプリキュアと月影ゆりの関係、
一昨年の
4人目のプリキュアとミユキさん、イース様の関係、
3年前のミルキィローズ、美々野くるみの正体など、新たなキャラクターの素性とストーリーの謎が深まる展開は、
これからどうなるのかと興味が掻きたてられ、先が非常に楽しみになってきます。
キュアミューズの正体は大方の予想通りセイレーンだと思われますが、
そうするとセイレーンはいつフェアリートーンと接触したのか、
どのようにプリキュアの力を得たのかという謎が深まります。
アジトを飛び出してからのわずかな時間では、
フェアリートーンと完全に心を通わせているのが少々疑問ですし、
そうするとかなり前からその下地があったのでしょうか。
これらの謎を早く知りたいという気持ちが半分、もう少し謎は謎のまま引っ張って、
楽しみを先に送って欲しいという気持ちが半分といったところです。
仮にセイレーンだとすると、セイレーン=エレン様の
意外とお茶目で抜けていたこれまでの姿と、
キュアミューズのクールな立ち居振る舞いのギャップがあります。
ひょっとして
初期のミルキィローズのように、謎のヒロインを演出するために無理に振舞っているとしたらそれはそれで面白そうです。
今回のエンドカードでも、キュアミューズの神秘性が崩れ去るような妙な姿が見られましたので、
実は毒舌・クールなのはフェアリートーンでミューズ自身は案外雄弁だったりして・・・(笑)
体術は優れていても技の効果は地味というギャップにも意外性があり、
その技「広げた手の間から虹色の鍵盤を作り出す」(技名現時点で不明)の
発動は中々格好良く、ルミナス・ハーティエルアンクション以来の動きを止める効果から
援護主体のキャラクターなのかと想像も膨らみます。
ところで仮面にマントにパンツスタイルと、昨年のダークプリキュア以上に
女の子受け要素が非常に薄いデザインのキュアミューズは、
果たして女児のハートをキャッチできるのか、妙な心配をしてしまいそうです。
東山先輩、和音、アコの登場シーンも必然性が低く、
キュアミューズの正体の可能性がこの3人にもあるというミスリードと見受けられます。
今のところ本命セイレーン、対抗アコ、単穴東山先輩、連下和音と言ったところでしょうか。
町の人々が泣き崩れる場面の中にこの3人の姿が見受けられないのも、
キュアミューズ候補としての幅を広げようという意図が感じられました。
ところで改めて東山先輩の下の名前「聖歌」が「製菓」と掛けているのではないかと思わせたり、
「和音」は「かずね」と読むのかと思いきや「わおん」だったりと意外な発見がありました。
まるでどこぞの電子マネーのようで、「わおん」はあだ名かもしれませんが(笑)
『恋は気のせい愛は幻だ。そんなものにうつつを抜かすとは何事だ』
これは気にするような台詞ではなく、聞き流すべき他愛もない台詞かもしれません。
冒頭、セイレーンを叱り付けるメフィストの言葉ですが、
この発言から、ひょっとしてメフィストはアフロディテに片想いした挙句に
フラれたのではないかという気もします。
そして今回、音吉さんは何の気配を感じて「ズレとる」と言ったのか、
あの波紋は何なのか、色々と気になる描写が多く、先が楽しみになってきました。
さてシリーズ全体の謎が深まる点も興味深いですが、
恒例の音楽の楽しみ方の姿勢という点でも色々と共感する部分がありました。
本番前に怖気づく響へ奏がかける言葉、
『誰かと比べるんじゃなくて、私達なりにベストを尽くしていい演奏しようよ』
プロがこのような事を言うようでは問題ですが、趣味として楽しみ、
発表の場でみんなに聞いてもらい、演奏を楽しむ事で聴衆にも楽しんでもらおうという
アマチュアとしては非常に的を得た発言だと思います。
また渋るアコに出演を勧める奏太、響、奏とのやりとりも、
確かに好き嫌いは別として強制は良くないという教訓が伺えます。
出たくない人を無理に出しても出る人、聴く人に良い結果を与えませんし、
無理矢理演奏させる、無理矢理音楽を聴かせるのでは、音楽を楽しむ事はできません。
私も大のクラシック好きですが、興味の無い方に勧めても逆効果だと言う事を知っています。
そして私自身にも苦手な作曲家や分野がありますので、
アコの態度には理解を示したいと思います。とはいえ、言い方、断り方という物はありますが・・・
音楽自慢大会について説明する響の「NHKのど自慢」のような想像も楽しく、
演歌でも歌ったのでしょうか、夏前に一足早く浴衣の響が見られたり、
エレキギターを下げたロッカー風の姿も似合っていました。
そしてシンバルを持って参加しようとしていたお姉さんは、
あれで一体何をしようとしていたのか(笑)など、
ミューズの謎と作品のテーマ、小ネタがうまく絡み合った一編だと思いました。