5GoGo 第25話『真夏の悪夢の二人組』

台風が来ていた頃と、その後の首都圏は比較的涼しく、
過ごしやすかったのですが、また暑くなって来ましたね。
『暑いな・・・』『暑いぞ・・・』
最近では仕事の後の一杯のビールが生き甲斐だったりします。
『全部ビールか・・・』『これ全部ビールだ・・・』
・・・あれっ？
　

　
蝉が鳴き、アイスティーの注がれたグラスの中で弾ける氷。
ナッツハウスを取り巻く環境もすっかり真夏の様相を呈しています。
既に一学期も終わり、のぞみはまたかれんの別荘に行きたいとはしゃぎ回り、
うららの仕事の予定を聞いて調整に入るなど、すっかり夏休み気分です。
ところが楽しそうなのぞみ、微笑ましく見守るみんなとは裏腹に、
ふらついた足取りでやって来たシロップは妙にやつれていました。
『夏休みなんて大嫌いだ・・・』

エターナルへプリキュアの侵入を許してしまった事を詫びるアナコンディさんを、
館長はフローラが選んだ者を一度見ておきたかったと不問に処します。
アナコンディさんは既にネバタコス氏亡き後の後任人事を決めていました。
没収率100%を誇るという、後任となる最強のハンターとは、果たして・・・？
そしてブンビーさんもまた、茶柱の立つお茶を手に新たな上司にへつらう事を忘れません。
しかし、その上司の部屋に入ったところ、机が2つあるのを見て愕然としました。
一気に上司が2人も増えては、気苦労も倍増しそうな雰囲気です。
ところが、肝心の2人の姿は見えません。そして・・・
『暑いな・・・』『暑いぞ・・・』
小柄で小太りの男と、長身で生気の無い男の2人組が、
池の対岸からナッツハウスを見つめていました。

『夏だな・・・』『夏だぞ・・・』

シロップが弱っていた理由は、蓋を開けてみればなんて事無い、
学校が夏休みのためにランチタイムのお手伝いの仕事がなく、
その報酬の昼食が採れないだけの事でした。
腹ごしらえをして心機一転、代わりに配達の仕事を頑張るというシロップに、
ババロア女王は休養も大切だと忠告します。
しっかり休んだお陰で、間もなくババロア王国へ帰れるようになると言う女王ですが、
最初から異様に元気だったような気が・・・
ともあれ、気を取り直して仕事を始めようとするシロップに、
小々田先生とナッツは顔を見合わせて、早速仕事を依頼しました。
配達ではなく、店の模様替え。それも結構な重労働であり、
夏の間中泊り込んでやってもらおうなどと、
暗にシロップをここに寝泊りさせようとしている意図は明白です。

『池は涼しいな・・・』『ああ、池は涼しいぞ・・・』
蝉の鳴き声だけが絶え間なく聞こえる中、
あの2人は池の上に浮かび、徐々にナッツハウスに近付いてきています。

ナッツハウスには既にシロップの部屋が準備されていました。
ここに住むわけじゃないと強がるシロップですが、
既に仕事の契約をしたと持ち出されては分が悪く、
そして先日、館長と出会った事もあり、
みんなと一緒にいる方が安全だという小々田先生の勧めに従う形になりました。
そうと決まれば女子達は黙っていません。
シロップの日用品の買出しに一斉に出かけていきました。

その姿を池の上から遠巻きに見守る2人。
なぜかその手には、何段重ねかわからないほどのアイスクリームが握られています。
静かにアイスをなめながら、淡々と帰りを待つ2人。
『全部バニラか・・・？』『これ全部バニラだ・・・』
イマイチとらえどころが無いだけに、かえって得体の知れない不気味さが漂っています。

やって来たショッピングモールでは、
業務用クラスの大型冷蔵庫を勧めるのぞみ、巨大な本棚を勧めるこまち、
演技の練習のための鏡台を勧めるうらら、可愛いカーテンを進めるりんちゃんに
すっかりシロップは頭を抱えています。
みんなに自分の部屋ではないと注意するかれんが最後の良心かと思われましたが、
そのかれんにしても静物画を勧める始末。
どれもこれも男子の部屋には要らなさそうなものばかりです。
そして、女子の買い物に付き合うのは疲れるもの。
シロップはたまらず外に出てベンチに腰かけ、一人入道雲を見上げました。

その時ローズパクトが輝き、中からババロア女王が出て来て
みんながシロップのための買い物をしているのに、休んでいていいのかと注意します。
『うるさいしお節介だし、ただ面倒なだけだ』
そうこぼすシロップですが、その顔は不思議と嫌そうではありません。
『誰かが待っていてくれる。帰る場所があるというのは、素晴らしい事ロロ』
いつになく良い事を言うババロア女王も、
元気になろうと頑張れたのは王国で国民が待っているからです。
そしてシロップも、元気でいて欲しいと願うみんなに囲まれています。
『のぞみ達はそういう子たちロロ』
『・・・分かってるよ』
それでも素直になれないシロップの前に、
のぞみと一緒に模造紙を手にしたくるみがやって来ました。
それは家事を分担する当番を決める表を作るための物で、
腰が引けるシロップ、バツが悪そうにローズパクトに収まるババロア女王。
とはいったものの、シロップを取り巻く環境は活気に満ちています。が・・・
その頃、五月蝿かった程の蝉の声は、しんと消えていました。

買い物から戻ってきた時、のぞみはナッツハウスを覗き込む2人組に目を留め、
お客さんとして丁寧に扱いますが、彼らが求めているものは
当然アクセサリーなどではなく、ローズパクトです。
直後、振るわれる腕からのぞみを庇うシロップ。
しかし、見た目に反して目にも留まらぬ素早さで、2人組はシロップから何かを奪い取りました。
2人組のハンターの存在を噂で聞いた事があると戦慄するシロップ。
小柄の小太りの男はヤドカーン、長身の生気が無い男はイソーギンと名乗ります。
ローズパクトは渡さない。のぞみ達が身構えたと思いきや・・・
先ほどの動きで、ローズパクトは既にヤドカーンの手の内に奪われていました。
さらに彼らがこれまでの敵と異なるのは、
のぞみ達に目もくれずにさっさと引き上げようとする事。
このままでは本当にローズパクトが奪われてしまいます。
『ローズパクトを返して！』
のそみの声に足を止めるヤドカーンとイソーギン。
『何か聞こえたな・・・』『何か聞こえたぞ・・・』
振り返った二人は、目を異様に爛々と輝かせて受けて立ちます。
『やる気かな！？』『やる気だぞ！！』

変身した6人に、腕の形を禍々しく変えて跳びかかってくるイソーギンとヤドカーン。
迎え撃つドリームとローズの拳を軽々と受けとめ、反撃に転ずると思いきや、
ここでも2人はローズパクトを没収した事を思い出し、既に仕事を終えたと引き上げようとします。
当然ここで食い下がるプリキュアではありません。が・・・
ドリームに一撃を加え、続くレモネードとルージュを叩きのめし、
ミントとアクアを巧みにあしらうヤドカーン。
そしてイソーギンもローズの一撃を不気味な体勢でかわし、すかさず回し蹴りを叩き込みます。
鈍重そうなヤドカーン、貧弱そうなイソーギンともに、その見た目に反して素早く、
没収率100%を誇るというのもあながち誇張ではありません。

このままでは本当にローズパクトが奪われてしまいます。
その時シロップは一計を案じ、ローズパクトの中のババロア女王に向けて、
光を放つよう叫びました。
果たしてババロア女王が発する光は2人の目をくらませ、
その隙にシロップは見事ローズパクトを奪い返します。
ところが、かえって2人の怒りに火をつけてしまい、
ヤドカーンの上にイソーギンが乗るような形で一体化して襲い掛かってきました。
ファイヤーストライクも、サファイヤアローも、エメラルドソーサーもあっさりと止められ、
恐ろしい反撃に転じようとするヤドカーンとイソーギン。
攻防一体、隙が無い相手を前に、プリキュア達もローズも太刀打ち出来ません。
そして、ローズパクトを持つシロップに、ローズパクトを渡せば攻撃しないと通告する2人。
当然、断るシロップに2人の手が迫ろうとした時・・・

『シロップには、手出しさせない！』
ドリームに続けて、6人次々と立ち上がります。
『そうよ、料理も掃除もゴミだしも、シロップと一緒にやるって決めたんだから！』
ミルキィローズブリザードが、シューティングスターが叩き込まれ、
撃退したと思いきや、2つの技の直撃を受けてもまだ、2人は平然と立っていました。
いや、平然とではなく、少しムセていますが、
ローズは力を使い果たしてミルクになってしまい、こちらの戦力不足は確実。しかし・・・
『痛えな・・・』『痛えぞ・・・』

『今日は帰るか・・・』『今日は帰るぞ・・・』
あっさりと引き上げる2人。目先の脅威は、とりあえず去りました。

戦い終わり、シロップにローズパクトを守ってくれたお礼を言うのぞみ。
そして、ババロア女王が王国へと帰る時が訪れました。
ドーナツ国王と同じようにブロマイド？をりんちゃんに渡し、
シロップの背に乗ってババロア王国へと帰還していきます。
それにしてもいつも以上に舌の良く回るババロア女王、最後まで舌好調です。
どう見ても初めから元気だったような気が・・・

案の定、シロップは道中ババロア女王のお喋りにつき合わされ、
くたくたになって帰ってきました。
そんなシロップを迎えるのは、みんなが焼いたホットケーキです。
『お帰りなさい！』
呆気にとられるシロップを注意するミルク。
『お帰りって言ってるミル！』
こう言う時は、こう言うものです。
『・・・ただいま』
口ごもりながら、ただいまの挨拶をするシロップ。
のぞみの焼いたホットケーキは焦げてるってレベルじゃねぇぞ！状態ですし、
ミルクに食器洗いの当番を押し付けられ、シロップを取り巻く環境は騒々しいばかり。
それでも、シロップには帰る場所がはっきりと出来ました。


今回から登場する新幹部、ヤドカーンとイソーギンの2人は、
これまでの、そしてこれからの個性豊かな敵キャラクター達の中にあって、
私としてはそれほど記憶に残っていない連中でした。
もちろん彼らにも独特の喋りや、妙な落ち着きぶり、そして絶妙の「間」の取り方という
彼らにしかない個性があるのですが、
今回見返して決定的に他の敵キャラクター達と異なるのは、
「血の通った人間（？）」のように見えないからかもしれません。
後にも先にも連なるプリキュアの敵キャラクター達が、
共感や判官びいきの目で見てしまいたくなるのも、
実に人間くさい一面があるからだと思います。
現にスイートプリキュアにおけるトリオ･ザ･マイナーの3人も、
それぞれの性格や個性がはっきりとするようになるまでは、
やや没個性のように感じられましたので、その点ヤドカーンとイソーギンの2人は
決して多くない登場期間の中で少々損な役回りだったかもしれません。

とはいったものの、今回見返して彼らが本当に強い事には改めて驚かされました。
何より前回のアナコンディさんに続いて、
ミルキィローズ･ブリザードを食らって平気だという事で、
暗にミルキィローズのパワーアップの必然性がここから始まっている動機付けになっています。
そして撤退を邪魔されて振り返る際、これまでの死んだ魚のような目とは打って変わって
爛々と光る目を向ける様には、知っていても少しビビりました。
明け方の薄暗い時間に観ていたもので・・・（苦笑）

さて、ストーリーへ目を向けると、ここ数回のシロップにとって「帰る場所」の総決算とも言うべき、
中盤の山場を越えて後半へと踏み出す一編としての橋渡しのようです。
実際に国に帰ることになるババロア女王を通して、
帰るべき場所についての何たるかを語らせる事は説得力があり、
未だ素直になれないシロップを取囲むのぞみ達や、ココ達の気遣いも相俟って、
少し騒々しい日常が戻ってきた事、そして新たな日常が始まる事が見て取れます。
ラスト、帰って来たシロップをみんなで「おかえり」と迎え、
シロップにも「ただいま」と答えさせる。
このワンシーンだけで、帰るべき場所、居場所のありがたみが強く感じられました。

そして一年前と同様、山場を乗り越えた次の話での女子の買い物というのも、
少しハメを筈し気味の雰囲気と相俟って愉しさが感じられます。
5人それぞれの個性がはっきりと出る買い物と、付き合わされてうんざりのシロップ。
本当に女性の買い物に付き合うのは疲れますので、
シロップの気持ちには大いに共感しました（苦笑）