「はなさき」という、この詩的な駅名を口ずさむだけでもう、私には花が咲いているようにみえる。この駅名は、人になにごとかを感じさせるといっていい。東武の伊勢崎線と東北本線が交錯する久喜から2駅。地下鉄が乗り入れてくる駅からほんのわずか離れただけで、空がひろい。
この町で、「つぼみ」「ブロッサム」に関連したものを探しもとめるのは、むずかしそうにおもえる。このシリーズでは、なるべく事前情報収集をせずに駅を訪ね、現地の案内板や目に留めたものを頼りに町を歩くという方針については、これまでですでにふれた。ちょうど駅前のロータリーに、ささやかな観光案内板が立っていたので、頼ることにした。
―加須はなさき公園―
という公園があるという。駅の周囲にはコンビニのほか、ありふれた人家が点在しているだけのようである。そのため、まずは件の公園を目指すことにした。
余談だが、「加須」は「かぞ」と発音する。こいのぼりの産地として知られているようである。
余談がすぎた。駅前から続くみちは、両隣に住居と、時折畑地、空き地が点在する光景がつづいている。
私の他は、人の子ひとり歩いていない。時折、思い出したように車が行き交うだけの道をしばらく歩くと、交差点に看板が見えた。
司馬文体を続けて行くのはやはり無理があるので、この辺で通常運転に戻します。
さて、花咲徳栄高校といえば高校野球で良くその名を耳にします。「花崎」と「花咲」で字が異なるため、まさかこの駅付近にあるとは知らず、意外な発見でした。あとで調べたところ、地名の「花崎」と、生徒に「花を咲かせる」を掛け合わせて命名したとのこと、粋なネーミングだと思います。
司馬遼太郎風にいえば「余談だが」となりますが、私は偶然あの2日間とも公休日だったようで、かつてこの学校と東洋大姫路がセンバツで繰り広げた死闘を両日とも観ることができました。延長で勝負がつかずに引き分け、翌日の再試合も延長という、すさまじい戦い。そしてその勝負の幕切れが、激闘の果てに力尽きた投手の暴投によって三塁ランナー生還サヨナラ負けという、これ以上無いほどの残酷な結末だったことは、今でも忘れられません。しかし、この試合を見た者は、勝負が決まった瞬間マウンドに崩れ落ちた彼を責めることなど出来ない筈です。それほど鮮烈な印象を、観ていた者の心に「花を咲かせて」くれた試合でした。
話が脇道に逸れ続けている。(まだ司馬文体やってんのか)
学校前の交差点を左折し、県道に出たところを右折すると、「青毛堀川」なる、なにか由来のありそうな川がありました。川そのものは農業用水路というようなささやかなものですが、
橋のたもとに小さな供養塔と祠があり、詳細はわからぬものの、何か逸話がありそうな雰囲気です。夜だと少々怖いかも?
川を渡って2分程歩くと、公園の入り口がありました。
案内板を見る限り、なかなか広くて設備が充実している公園に思えますが、「入場券売り場」があることが気になりました。ひょっとして新宿御苑のように有料なのかと思いながら中へ進んで行くと、
「本日休園日」の看板が・・・もっとも、プールがあるようなので、プールが無い季節は休園なのかもしれません。とはいえ、無料で散策できるエリアもそれなりに広く、しばし散歩を楽しみました。
銀杏並木や広い芝生広場など、近所に住んでいたらウォーキングが楽しめそうな公園です。桜の季節には「ブロッサム」も見られるのかもしれません。また、この時期にも花をつけている植物がありました。
そして一部「咲いちゃった♪」花もありますが、「つぼみ」収集!このシリーズを始めてから、実は初めて駅名と苗字名前が一致したものを見つけました。(
三角の「なぎさ」をどう見るかによって変わりますが・・・)
このあと公園前にあった「はなさきや」さんという、うどん屋さんで昼食。ハゼ天丼セット、そういうのもあるのか。とゴローさんになった気分で、普段蕎麦派の私ですが、久々にコシのあるうどんを堪能させていただきました。なお、店内に安倍首相の書いた色紙が飾られているので、応援演説か何かの視察時に来店されたのかと尋ねてみると、どうやらご主人のお知り合い筋からいただいたものとのこと。同じ質問をするお客様が結構いらっしゃると苦笑いしていらしたのも、小さな旅の想い出となりました。
このまま家に直行するのももったいないので、付近の東鷲宮にある
「百観音温泉」へ2年ぶり5度目の訪問。ここに来た事が複数あるので、「花崎」の近所にも必然的に足を運んでいたのですが・・・
ここは地元の方や温泉好きには超有名な日帰り温泉で、豊富に湧出する濃い源泉を、大量の浴槽にそのままかけ流しています。ただでさえ混雑しているのに、これ以上混んでほしくないのが本音ですが、ここの素晴らしさを知っていただきたいという矛盾した想いもあり、ささやかながら紹介いたしました。