街中で信号待ちをしているくるみは、
横断歩道の向こう側で信号待ちをしているナッツの姿が目に留まりました。
しかし、ナッツはなぜか民族衣装のような服に身を包んでおり、くるみは妙な不安感を抱きます。
『お茶が入りましたよ』ブンビーさんのお株を奪うような台詞と共に、ナッツハウスでみんなにお茶を入れるくるみ。
豆大福やシュークリームとともに楽しいおやつの時間が訪れますが、
くるみはお菓子に手を伸ばしたのぞみの手を叩きます。
そこから始まる2人の口論は、みんなもどこかで見たような気がしますが・・・?
果たしてくるみに釣られたのか、おいしいお茶の淹れ方なる報告書を書いている?
ブンビーさんのオフィスに、アナコンディさんがやってきます。
アナコンディさんはミルキィローズの事を記述した報告書の出来を褒めますが、
一部訂正を要求しました。それは、スコルプさんとの共作という事。
ブンビーさんは
スコルプさんの遺志を汲み、
彼が残したデータに依るところもあると食い下がろうとしますが、
アナコンディさんの対応は素っ気無く、スコルプさんが存在した事すら認めませんでした。
そして、シビレッタさんに手柄を奪われる事を何よりも忌々しく思いながら
ブンビーさんのオフィスを後にするアナコンディさん。
ブンビーさんはとんでもなくブラックな組織に再就職してしまった事を認識しますが
悔やんでも既に後の祭りです。
ナッツハウスでのお茶会の合間に、一人浮かない顔のくるみ。
みんなに問われて、ナッツが異様な服装で町に出ていた事を打ち明けます。
うららはオーディションに出るのではと勘繰り、
のぞみは仮装パーティではないかと、それぞれ脳天気な想像を巡らせますが、
くるみにとってはナッツの事が心配でなりません。
ナッツハウスを切り盛りし、パルミンを集め、さらにこれ以上何かを始めては、
ナッツが体調を崩してしまうのではないかと案じていると、
張本人のナッツが登場し、店番を頼んで外出して行きました。
小々田先生とくるみが店番を引き受け、
のぞみ達はナッツの奇行の真意を探るべく、5人でそっと後を尾けました。
ナッツハウスの掃除をするくるみは、
ヒマで仕方が無いというシロップにも掃除をするよう命じます。
つい釣られて愛想よく返事したものの、当然断るシロップ。
とはいえ、なぜか急にミルクからの手紙も来なくなり、ヒマな事に変わりはありません。
と、話題がミルクの事に及ぶや否や、くるみは会った事も無い筈のミルクをぎこちなく褒めちぎり、
そして何かを誤魔化すように掃除に精を出しました。
一方ナッツは、スーパーで各種コショウを買い漁り、
続けて服飾店でカラフルな布地を物色しています。
普段のナッツが買いそうもない品々に、みんな疑問を募らせますが、
のぞみはふと閃いて、ナッツハウスに戻るや否や、その考えを口にしました。
『みんな!ナッツハウスはラーメン屋さんになるよ!』コショウを買っていた事、そして布地は制服用だと主張しますが、
そんな斜め上の発想はのぞみにしか出来ません。
そこにナッツが戻ってきますが、無論ラーメン屋の開店など始める筈がありません。
その夜、色とりどりの布を裁っているナッツの前に、
ローズパクトの中からドーナツ国王が姿を現しました。
身体も回復し、近いうちにドーナツ王国へ帰れる見通しがつき、
その前にナッツとゆっくり話がしたいと話しかけます。
ドーナツ国王はナッツの部屋の書棚を見回し、勉強家である事を評価しながらも、
そのためにのぞみ達が心配してしまう事を忠告しました。
ドーナツ国王もナッツも、みんなへの評価は「優しい子たち」であり
「人の気持ちになって思いやる事ができる子たち」であると共通しています。
そしてドーナツ国王は、国とはみんなで協力してはじめて治められるもので、
たとえ王であっても一人でできる事には限りがあると語りました。
それは赤いバラと青いバラ、プリキュアとミルキィローズを
本当の意味で協力させたいという事にも繋がります。
既にナッツもドーナツ国王も、ミルキィローズの正体に気付いていました。
正体を告げさせ、お互いを知り、真の力を引き出すべき。
ドーナツ国王の助言に対し、ナッツが取る行動は・・・
くるみはナッツハウスへ向かう道の途中、ナッツ本人に呼び止められました。
ナッツハウス前の湖畔で、くるみにどこに住んでいるのか訊ねるナッツ。
以前のような暮らしぶりではないかと案ずるナッツの発言に、
くるみもナッツには正体を気付かれていると悟りました。
のぞみ達に正体を明かすかはくるみの判断に任せ、
ナッツはただくるみが心配なだけだと気遣います。
しかしくるみも同様に、ナッツの奇行を心配していました。
ナッツは昔この世界であった事を学んでいるだけだと答え、
それを参考にパルミエ王国に起きた悲劇も乗り越えられるのではないかと考えていました。
そして、くるみにのぞみ達と協力してキュアローズガーデンへ行ってほしいと頼みますが、
突如、そいつは無理だと声が響きました。声の主は当然ブンビーさん。
いつの間にか、目の前の湖面に立ちはだかっていました。
ナッツとローズパクトを守るべく、くるみは単身変身して立ち向かいます。
しかしブンビーさんはスコルプさんが集めたデータから
ミルキィローズの弱点が経験不足にあると分析していました。
守るべきもの、ナッツが巻き込まれるのに気を取られ、
いつもの強さを発揮できずに防戦一方。
ブンビーさんにねじ伏せられてしまい、膝を突くローズを守ろうとナッツが飛びかかるも
当然敵う筈も無く、窮地に追い込まれます。
間一髪のところにのぞみ達が駆けつけ、変身。
ブンビーさんは湖に浮かぶ小船をホシイナー化しました。
帆柱が立ち、砲門が開く、武装船さながらの様相を呈するホシイナーに
次々と攻撃を畳み掛けるプリキュア達。
しかし砲撃が始まると形勢は逆転し、皆は直撃を受けて倒れてしまいました。
そしてブンビーさんは思うような力を出せないローズに狙いを定めます。
『何かのために自分を犠牲にするなんて、下らないな!』
ローズパクトを奪い取ろうとするブンビーさんに必死に取りすがるも
ココ、シロップは脱落、しかしナッツだけは懸命に食い下がります。
奪う事からは悲劇しか生まれない。
ナッツはここ数日、この世界で起こった事を学んでいました。
かつて大国が胡椒や資源を求めて大海原に繰り出し、
その影でいくつもの国や文化が蹂躙され、失われてしまった事。
パルミエ王国を襲ったような事態は、かつてこの世界でも(今でも?)行われていました。
ナッツの訴えを聞いても、強い者が欲しい物を手に入れる事は正しいと
ブンビーさんは聞く耳を持ちません。
その窮地はローズパクトに潜むドーナツ国王による不意打ち目くらましで回避され、
ずっと俯いていたローズも戦意を取り戻し、ブンビーさんに反撃します。
『そんな考え方間違ってる!』ブンビーさんの攻撃を受け止め、強烈な蹴りを放ちました。
『私はキュアローズガーデンに行く。だからここで倒れるわけには行かない!』ローズの反撃に呼応するように、再びプリキュア達も立ち上がります。
ホシイナーにはプリキュア達が、ブンビーさんにはローズが挑みかかり、
ローズはブンビーさんを豪快にホシイナーへ向けて投げ飛ばしました。
間髪を入れず、ミルキィローズ・ブリザードを放ち、ホシイナーを撃破。
ブンビーさんも毒づきながら引き上げていきました。
ブンビーさん撤退を見届けた後、なぜか足早に立去ろうとするローズ。
しかし、ドリームに引き止められ、レモネードに丁寧にお礼を言われて困惑します。
妙に焦りながら帰ると繰り返していたローズですが・・・
『もうらめぇ・・・』我慢できない声と共に突然ローズの姿が消えました。
そして、ついさっきまでローズが居たところにちょこんと立っているのはミルクです。
薄々気付いていた風のミント、アクアと異なり、
ドリームはミルクに、もうちょっと早く着たらミルキィローズに会えたのに、等と語りかけ、
呆れ気味のルージュからミルクこそがミルキィローズだと指摘されてようやく理解しました。
『え゛え゛え゛~!?』『え゛え゛え゛~!?』素なのか計算なのか、レモネードまでもが大声を張り上げる中、
改めてミルクにこれまでのいきさつを尋ねると・・・
あの日、ミルクはみんなが帰った後で青い種を拾い、
丹念に世話をしているうちに青いバラの花が咲いて、
その力で変身できるようになった事を明かします。
しかしミルキィローズの力は体力を消耗するため、
力を使い過ぎると今回のように姿を維持できなくなってしまうとの事。
事情を聞いてみればいとも簡単な事ですが、なぜ正体を隠していたのかといえば・・・
みんなを救う素敵なヒロインとして、正体を秘密にするのはお約束、というだけでした。
なんとも些細な理由を聞いてみんなも脱力気味です。
さて、再会があれば別れもあります。
すっかり体力を回復したドーナツ国王は、ドーナツ王国へ帰還の時を迎えました。
当初辛辣だった国王もプリキュア達の心に触れてお礼を言い、
ココ達の真摯な姿勢を目の当たりにしてきた事で、
戴冠式が楽しみだとココ達を王として認めたようです。
そしてシロップをドーナツで手なずけて(
密かにカオルちゃんから作り方を覚えて広めたのか?)
別れ際に特製ブロマイド(笑)(お前はコブラージャさんか)を手渡し、
いつかそれが力になると言い残してこの世界を後にしました。
ナッツハウスではのぞみとくるみが、モップがけの途中で衝突しています。
実に他愛もないやり取りを呆れて見つめるみんな。
そのやりとりは、のぞみとミルクのものと何ら変わりはありません。
ところで、ナッツが繕っていた色とりどりの布は、
ナッツハウスに新たに住む事になった、新たな住人の部屋の表札として飾られました。
『ミルク。ナッツハウスへようこそ』
5週に渡り引っ張り続けたミルキィローズの謎は、蓋を開ければ何のことは無い、
単に謎めいたヒロインを演ずるためのミルクの思惑だったというものですが、
これはミルクの性格を踏まえた、ミルクにしか出来ない秀逸なオチだと思います。
正体がはっきりと明かされずとも、ここまででミルキィローズがミルクである事は
ほぼ誰の目にも明らかですし、作中でものぞみ(うららも?)以外は薄々感づいていました。
それでもあのミルクがなぜここまで強力な力を持つに至ったのか、
なぜ正体を隠すのかといった謎は興味をかき立て、
それを思いっきりはぐらかす脱力感で、一本とられた感じです。
ナッツの奇行も同様に、史実を学ぶ上での実践というものですが、
こちらは残念ながら少々無理があるように思えます。
大航海時代と、それによる植民地支配や三角貿易、奴隷制度などから
教訓を得ようというのは解りますが、わざわざ民族衣装を着たり
コショウを買ったりしなくても良いような気がしました。
ともあれ、文化の侵略と略奪という歴史がかつて現実にあったものだと
説明する意味合いとしては、子供達には解りやすい事かもしれません。
ただ、私は歴史を一方の視点から見ることはあまり好みません。
確かに大航海時代に失われた文化や文明はありますし、
その結果搾取された者と、潤った者が居た事も事実です。
しかし、逆に生まれた文化もありますし、一概に悪い事ばかりとは言えません。
ナッツが参考にすべき歴史は大航海時代ではなく、
他の史実の方が良かったのではないかと、気になってしまいました。
もっとも、世界史に興味を持たせるという点では、一番良い素材かもしれませんが・・・
何かのために自分を犠牲にするなんて下らないというブンビーさんの発言が、
矛盾しているのも気に掛かります。
報告書をせっかくスコルプさんとの共作にしたのに、
ブンビーさんがそのような発言をしてしまっては
仕事とプライドのために身を犠牲にしたスコルプさんも浮かばれません。
そして、ブンビーさん自身も今まさに仕事のために自分を犠牲にしています。
かつて
アラクネアさんを引き止める等部下想いの一面もあっただけに、
ブンビーさんを悪役にするための台詞としては、もう一捻り欲しい気がしました。
テーマには少々違和感を覚えたものの、
ナッツとドーナツ国王の語り合いの時や、ナッツとくるみの湖畔の会話シーン、
戦う気力を取り戻してからのミルキィローズの豪快なアクションなど、
話の雰囲気はミルキィローズの謎を明かす一編として、
楽しみやすいものだったと評価したいです。