沢山の音符を収めた伝説の楽譜を手に、メフィストはご機嫌です。
あとはセイレーンが不幸のメロディを歌って楽譜に音符を染み込ませ、
世界中の人々が不幸になるのも時間の問題です。
メフィストは作戦の実行のための最高の舞台を用意するようねだるセイレーンに応え、
トリオ・ザ・マイナー達、そして抜いた髭に息を吹きかけて生み出した手下達を用いて、
加音町の広場の鐘を不気味なキノコのような舞台へと変えさせました。
世界を悲しみのどん底に突き落とす、史上最悪のコンサートが間もなく始まろうとしています。
『こんなに嬉しい事があるだろうか!』
マイナーランドにメフィストの高笑いが響き渡りました。
『こんなに悲しいことがあるでしょうか・・・』
今まで集めた音符全てを奪われてしまった事を案ずるアフロディテ。
それでもハミィは動じておらず、セイレーンを信じているから大丈夫だと主張を曲げません。
アフロディテもハミィの瞳を信じ、その想いをセイレーンへ伝えるよう促します。
路地から駆け出してくるハミィを見た響と奏は、
ハミィが出て来た方向に映るアフロディテを目の当たりにしました。
初めて相見えるアフロディテの美しさに目を奪われ、
ガチガチに緊張しながら挨拶する2人。
アフロディテはこれまでの活躍を労いながらも、事態の悪化を憂慮し、
ハミィとセイレーンの友情を信じるしかないと言いますが、
ここまでされたのにまだセイレーンを信じなければならないのか、響と奏は疑問を抱きます。
しかしアフロディテはハミィとセイレーンの関係を、
響と奏に置き換えて、諭すように問いかけました。
仮に響と奏のどちらかが悪に走ったら、2人は信じる事をやめてしまうのか、と。
『やめません』
きっぱりと断言する響と奏同様、ハミィもきっとそう思っている筈だとアフロディテも信じています。
暗雲に覆われた空の下、ハミィは一心に走り続けます。
未だマイナーランドにいるセイレーンへ、その思いは届くのでしょうか・・・
セイレーンと一緒に食べるために隠していたのでしょうか。
ハミィは繁みの中からカップケーキを取り出し、先日の出来事を思い出しながら食べ始めます。
セイレーンにどら焼きをあげた事、仲間になりたいと申し出た事、
そして、久しぶりに一緒に歌った事など・・・
カップケーキを食べ終たハミィは、雲の立ち込める空を見上げて大きく息を吸い込みました。
その頃、マイナーランド。
本番を控えて練習するセイレーンに、囚われのフェアリートーンたちは、
セイレーンも本当はハミィの事が大好きなのではないかと疑問をぶつけます。
しかしセイレーンは動じず、私の心を動かそうとしても無駄だと
フェアリートーンが閉じ込められている檻を脅すように叩いて出て行きました。
その様子を見て、メフィストはセイレーンの心はもう動かないと満足そうです。
しかし、バスドラはハミィの友情を信じる力は侮れないと危惧していました。
それでもメフィストには切り札ともいえる、
あの洗脳装置があります。
不気味なキノコのステージにメフィストのしもべ達と楽器が集まり、
今にも不幸のメロディのコンサートが始まろうとしています。
トリオ・ザ・マイナー達の開幕宣言と共に、不幸の音波が辺りを漂い始め、
響と奏、音吉さん以外の人々は皆耳を塞いで逃げ惑い始めました。
人々を苦しめる所業に我慢ならず、変身しようとモジューレを取り出す2人。
しかしメフィストにハミィとフェアリートーンを人質?に取られ、
このまま世界が悲しみに包まれていくのを、手をこまねいて見ている事しか出来ません。
『メフィスト様。あれは・・・?』
捕らわれているハミィの耳に、例の洗脳装置が付けられているのを見て、
思わずセイレーンもメフィストにその意図を尋ねます。
メフィストの腹積もりは、もしセイレーンが悪の心を忘れたならば、
代わりにハミィを洗脳して歌わせるというものでした。
『聴こえたか?天然ボケの子猫ちゃん』
メフィストに呼びかけられ、目を開くハミィ。
ところが・・・目を閉じていたのは単に寝ていただけで、
思わず古典的にずっこけるメフィストとトリオ・ザ・マイナー達。
緊迫した空気が一瞬和らぎます。
しかし気を取り直し、セイレーンがもう迷いは無いと言い放って伝説の楽譜に向かうと、
再び緊迫した空気が漂い始めました。
楽譜に向かい、歌い始める前に、ハミィに今更止めようとしても無駄だと言い放つセイレーン。
しかしハミィの答えは予想に反するものでした。
友達であるセイレーンのする事を、邪魔したりはしない。
ハミィの言葉に響と奏は耳を疑い、セイレーンは一笑に付します。
その時、セイレーンは体の奥から突き上げてくるような鼓動を感じました。
『何・・・?今の・・・』
セイレーンは迷いを振り払うように首を振り、
今から世界を悲しみのどん底に突き落とす不幸のメロディを歌うと言い放ちますが、
それでもハミィはセイレーンを否定しません。
世界が悲しみに突き落とされたとしても、セイレーンが一緒に泣いてくれる。
いくら天然ボケだと扱き下ろされても、ハミィの言葉は曲がりません。
『天然ボケでごめんニャ♪』
ハミィの目は笑っています。しかし、その目には涙が溢れています。
『何があっても、ハミィとセイレーンは友達ニャ!ずっと!ずーっと友達ニャ!!』
涙を流していても、力強い瞳で、涙声で呼びかけるハミィ。
そして、
あの天使のような歌声が辺りに響き渡ります。
その歌声を耳にしたセイレーンもまた、
前回疑うことなく受け入れてくれたハミィを、
そして
一緒に歌う練習をした、幼き日々の事を思い返していました。
雲に覆われた空から、雨が降り始めます。雨滴がセイレーンの目を、涙のように濡らしました。
『友達ごっこはそれまでだ』
雨の中、メフィストの指示で不幸のメロディが今まさに始まろうとしています。
楽譜に向かい、大きく息を吸うセイレーン。しかし・・・
セイレーンは歌い出す事ができません。それどころか、声が出ません。
まるで雨に打たれて泣いているようなセイレーンに、メフィストは冷酷な言葉を投げかけました。
『お前を信じなくて良かったよ』
すかさずハミィを悪のノイズが襲います。
メフィストはハミィに友情や愛情、信じる心をまやかしだと説き、
世界を不幸のメロディに包む事が使命だと攻め立てました。
ハミィが悪のノイズに襲われるのを見て、セイレーンの内から再び鼓動が突き上げてきます。
果たして意識していたのか、無意識なのか・・・
突如、セイレーンは伝説の楽譜から、音符たちを解き放ちました。
再び音符が散らばる事を恐れたメフィスト自ら、
音符達をまとめて時計塔もろともネガトーンと化します。
間一髪、時計塔から飛び降りるハミィをフェアリートーンと共に受け止め、
響と奏はハミィを苦しめた事や、世界を不幸に陥れようとした事に憤り、変身。
ネガトーンが打ち飛ばす時計の針を真っ向から迎え撃つも、
メロディとリズムは時計台の巨体に叩きのめされました。
雨が降りつける戦いの場に、人知れずミューズも屋根を飛び越えて駆けつけています。
しかし、すぐには手を出さず、何かを見届けるように様子を伺っています。
『裏切り者のセイレーンよ。見るが良い!』
楽譜に背を向け、俯き歩み出したセイレーンは、
あの洗脳装置に追い回されるハミィを目の当たりにしました。
必死に逃げ回るも、水溜りに足を取られて転倒するハミィに洗脳装置が迫り、
思わず目を背けるセイレーンの内から、再び鼓動が突き上げてきます。
『もう嫌・・・やめて・・・』
転んだハミィの前にはトリオ・ザ・マイナー達が立ちはだかり、
今まさにバスドラの魔手が迫ろうとしています。
『やめて!!もうこれ以上、ハミィを悲しませないで!!』
涙と共に叫ぶセイレーン。その時・・・
セイレーンのネックレスから光が満ち溢れました。
その光の中で、セイレーンは
キュアベリーへと姿を変えていきます。
勢いのままにバスドラに飛びかかり、ハミィをその手から奪い返して
着地するその姿を唖然として見つめるメフィスト。
『ありがとニャ♪セイレーン』
ハミィがお礼を言うのを聞いて、それがセイレーンだと知り皆が呆気に取られる中、
当のセイレーン自身も呆然としてハミィを取り落とします。
そして我に返って辺りを見回し、己の姿に戸惑い、その場を去ろうとするセイレーン。
その間にメフィストは再びネガトーンをメロディとリズムにけしかけます。
『セイレーン。どこに行くドド?このままハミィを放っておくドド?』
屋根の上で、立去ろうとするセイレーンを呼び止めるミューズ(ドドリー)。
セイレーンはハミィなんかどうなっても良いと、
この期に及んでまだ憎まれ口をたたきますが、
それなら何故助けたのかと問われると、声を荒げて答えました。
『わからないわよそんな事!』
しかし、本当はわかっている筈です。
ミューズはセイレーンに、ネガトーンと戦うメロディとリズムの姿を見せ付けました。
『私たちプリキュアは、絶対に逃げたりしない』
『そうよ、世界を幸せにするまで・・・』
『絶対に諦めない!!』
セイレーンはその姿に衝撃を受けました。
どんなに苦しい時でも自分の気持ちから逃げないのがプリキュアであり、
セイレーンはハミィを助けたいと心から願ったから、プリキュアに変身した。
ならばその気持ちを信じ、正義のプリキュアとして戦う運命だと言う
ミューズ(ドドリー)の言葉を聞いて、セイレーンは己の手を見つめました。
そしてメロディとリズムはネガトーンの拳を避けてベルティエの一撃を叩き込み、
そのままミラクルハートアルペジオとファンタスティックピアチェーレでネガトーンを撃退。
大量の音符を回収して喜ぶハミィとは裏腹に、煮え湯を飲まされたメフィストは、
伝説の楽譜はこちらにあると捨て台詞を残して引き上げていきました。
毎度おなじみ、抱き合って喜ぶメロディとリズム。(本当ご馳走様です)
しかしハミィが気がついた時、セイレーンの姿は見当たりません。
降りしきる雨の中、逃げるように路地を走るセイレーン。
プリキュアの姿からエレン様の姿へと戻った後も、動揺は収まりません。
『私が・・・プリキュア・・・?』
空を見上げるエレン様を打つ雨は、止む気配がありません。
新たなプリキュア誕生というこれまでの前例どおり、
今回も大変に見ごたえのある内容でした。
これまでの追加戦士達―
ミルキィローズ、
キュアパッション、そして
キュアサンシャインは
その初登場時、いずれも雨や曇りだった空が、姿を現すと同時に晴れ渡り、
新キャラクター登場の高揚感と相俟って盛り上がりを演出していました。
今回も同様に雨が降っていますが、その雨が最後まで降り続けている事が異例です。
この雨は、未だ自分の心が分からず、そもそもプリキュアになってしまった事に戸惑う
セイレーンの心情を表しているように感じられました。
セイレーンの立場的にはイース様→パッションに似ているものの、
はっきりと異なるのは
イース様が心の内ではラビリンスに決別していたのに対し、
セイレーンは未だ自分の立場を受け止める事が出来ていない点だと思います。
とにかく今回は変身後、戸惑い続けてどうしてよいか分からず、
自分の心に素直になる事も出来ず、逃げてしまう姿が人間臭くて印象的でした。
次回、逃げずに運命を受け止める事ができるのかが大きなポイントとなりそうです。
本編中一度も「キュアビート」という名前が出てこなかったために
あえてここまでその名前を出してきませんでしたが・・・
エレン様のクールな神秘性も活きている魅力的なデザインで
私も早速ハートキャッチされてしまいました。
2年前の某完璧な先輩によく似ているのはご愛嬌として(笑)
助けたハミィを抱えて雨の中、しっかりと立つ姿は大変かっこよく、
次回予告を見る限り、変身バンクにも大いに期待できそうです。
さて、ともすれば響と奏ですら不審感を抱きかねない中で、
ハミィの愚直なまでに一途な姿は単純だからこそ胸を打ちます。
嬉し涙ではなく、さりとて悲しい涙でもない、
けれども涙なくしては語れぬ想いを打ち明ける様は、
この涙と涙声にどれだけの物をハミィが込めているのかと思うと、
普段のハミィの天真爛漫さと相俟って、私も少々こみ上げて来ました(苦笑)
前回言及したのですが、世界が全てセイレーンの敵になっても、
セイレーンの最後の友達でありたい、というようなハミィの姿勢は、
今回の涙と共に宣言された言葉に集約されています。
それどころか、世界を敵に回してもセイレーンが共に居てくれると信じる様は、
もはや友情の枠を超えた献身のように感じられます。
ここで
響の母、北条まりあママの姿勢が思い出されました。
―世界中の人が敵になったとしても、ママだけは味方でいてくれる―
ことによるとスイートプリキュアに登場する人物には、
このような人物が常に身近にいるよう描かれているのではないでしょうか。
今の響と奏の関係もそうですし、響が困った時にはいつでも助けるという和音や、
つかず離れず、それとなく奏や部員を見守る聖歌先輩、
さらには孤立気味のアコにつかず離れずの奏太にもそのようなフシが見受けられます。
そしてそれは、
メフィストとアフロディテにも関係がありそうに思えてきます。
今回もハミィとセイレーンの物語で、響と奏のストーリーではありません。
主人公二人の影がやや薄い事が残念ではありますが、
圧倒的な強さを新キャラクターが披露するというこれまでのシリーズとは異なり、
むしろ戸惑う新たなプリキュアの手本となるような、
「先輩プリキュア」としてブレていない戦いぶりを披露するという展開は評価したいです。
そして戦闘終了後のラブラブっぷりなど、
こちらもブレていない存在感は大いに発揮しておりましたので(笑)
キュアビート誕生に伴う山場を越えた先の活躍を改めて期待しています。
そしてマイナーランド勢のキャラクターもしっかり立っていました。
メフィストもトリオ・ザ・マイナーも基本ずっこけキャラクターですが、
だからこそ時折見せる恐ろしさが際立っています。
ハミィを追い詰める際、稲光の逆光で目が赤く輝くトリオ・ザ・マイナーは
2話前に体育館ですき焼きを食っていた連中とは思えない凄みが感じられました。
そしてセイレーンが再びハミィになびく事を見越していたメフィストが、
「信じなくて良かったよ」
と言い放つあたり、その口調の変化とも相俟って実に怖く、
何だかんだ言っても敵の親玉らしい貫禄が見受けられます。
とは言ってもメフィストが生み出したからといってネガトーンが際立って強いわけでもなく、
撤退時の捨て台詞の小物っぽさも相俟って、
やっぱりメフィストらしく独自の個性が感じられました。
キュアパッションが共に手を携えるようになった
フレッシュ第24話を思わせる
次回の展開、そして今後の後半の流れが楽しみになってきました。