下校時、一人バレーの練習(には見えないですが・・・)に興じていたあかねは、
夢中になり過ぎたのか、足を踏み外して土手を転がり落ちました。
『Are you OK?』
差し出された手を取って立ち上がったあかねは、相手が金髪碧眼の少年と知って戸惑い、
ろくに言葉を交わす事も出来ず、手を振って立ち去る少年を見送るだけ。
それでも少年の「大丈夫」とプリントされた奇妙なTシャツと、
握った手の感触が心に残っていました。
さて今回からオープニングは当分劇場版仕様です。
毎年毎年同じことを言っていますので管々しくなりますが、またジレンマの時期が(以下略)
翌朝、その少年が佐々木先生と一緒にクラスにやって来ました。
『あーっ!「大丈夫!」』・・・よっぽどあのTシャツの文字がインパクトあったんですね(笑)
彼はイギリスからやって来たブライアン・テイラー君。
交換留学生として、三週間このクラスで一緒に過ごす事になります。
ブライアン君と知り合いだと思われたあかねは、学校を案内する役を押し付けられました。
放課後、みゆきはやよいと一緒に
ロボッターのDVDを観るため早々に帰宅し、
なおとれいかは部活。頼みの綱は誰もいません。
『By the way,What's your name?』
言葉の壁に困惑するあかねですが、ブライアン君も片言の日本語が出来ます。
『アナタ、名前ナンデスカ?』
『まいねーむいずあかね!』ぎこちないながらも、あかねの壁は少し取り払われました。
図書室をブックルームと説明する(libraryだろ中学生!)等、
珍妙な英語を交えて校内を案内している折、レディファーストの扱いを受けて
普段そのように扱われる事の無いあかねは戸惑いを隠せません。
話題を逸らすようにブライアン君に見たいものを尋ねると、
帰って来た答えはチャンバラ、キモノ、サムライ。
いかにもステレオタイプでベタなジャパンの代表的項目です。
正しい日本を教えるべく、あかねのやる気に火が付きました。
剣道部、茶道部、そしてれいかの在籍する弓道部を見学させ、
れいかがニンジャガールだと評されてしまうものの、ブライアン君の反応は上々。
クールなジャパンの実態を知ってもらう事に成功しました。
陽は西に傾き、すっかり遅くなってしまったと家路にむかうあかねに、
バレーボールを投げるブライアン君。そのボールをレシーブで返し、
二人のレシーブがしばし続きます。
『何や?あんたもバレーボール好きなんか?』『Volleyball!』
言葉のキャッチボールには、言語の壁はありません。
翌日、バレー部ことVolleyball clubの見学に誘い、ブライアン君も快諾しました。
秘密基地で、ブライアン君がすっかりバレー部になじんでいると話題に上ります。
言葉も何とか通じており、彼と話す分なら英語も・・・
そんなあかねを横目で見ながら、やよいはそっと、しかし単刀直入に問いました。
『あかねちゃんさぁ、最近ブライアンの話しかしないよね。
あかねちゃんさぁ、もしかして・・・ブライアンの事好きなの?』戸惑うあかねはたちまち4人の素早い動きによって取り囲まれ(笑)女子の尋問を受けます。
『あかねちゃん、ブライアンといてドキドキしない?』レディとして扱われた事がよぎり、どぎまぎするあかねの反応にみんなは大興奮。
『恋だよ!それは恋だよ!』あかねが否定しても、この状況では焼け石に水です。
ならば想いを伝えるためにも告白だと、当事者のあかねを置いて盛り上がりました。
まずはみゆきの案。名付けてシンデレラ作戦とは、
靴を落として拾ってもらうというそのまんまの作戦です。
そんな子供だましの手を・・・本当にやってしまうのがみゆきです。
あかねの上履きを投げ、確かにブライアン君は拾ってくれましたが、それでおしまい。
まあ、当然ですね(笑)
『こういうのは小細工なしだ!私がお手本を見せてやる!』次になおが直球勝負、正面切って告白の言葉の例をあかねに見せようとしますが、
なお自身もお手本を見せられる経験がある訳ではありません。真っ赤になって固まってしまい、
とても面と向かって「好きだ」などとは・・・
『言えるか~!!!!』次いでやよいがイラストで伝えようと、自作絵を例に出して勧めますが、
残念ながら
あかねの絵心は和音レベルでした。
『ねえ、あかねちゃん・・・』あまりの出来に絶句するやよい。もう何も言ってあげるな。わかってやれ・・・
イラストが駄目なら手紙だと提案するれいか。それはいわゆるラブレターというものです。
しかし、こんなに周りからいろいろ煽られては、書けるものも書けません。
すっかり暗くなった帰り道、
あかねはガイドブックを手にキョロキョロしているブライアン君を見つけました。
日本食の店を探しているというブライアン君を、
「お好み焼き あかね」に招待すると、その味に彼も大満足。
イケメンな彼氏だとお客さんに冷やかされたり、
「おおきに」の意味を説明したりするあかねに、
ブライアン君はもっとこの国の事、この国の言葉を知りたいと言いました。
『よっしゃ!ウチに任しとき!』あかねだけでなく、次第にみんなもブライアン君と打ち解けて行きます。
緑川家でなおの弟・妹たちと触れ合ったり、れいかと弓道体験をしたり、
ヒーローっぽいポーズ取らされてやよいの絵のモデルになったり、みゆきと一緒に本読んだり。
しかし、やはりあかねと過ごす時が長く、スパイク決めたあかねとハイタッチを交わし、
学校だけでなく一緒に食事をしたり、動物園や水族館に行ったり、砂浜を走ったり・・・
楽しい日々は瞬く間に過ぎて行きました。
夕陽を望む高台。この町で一番きれいなところだとあかねが案内した場所の景色に、
ブライアン君も感動し、日本に来て良かったと打ち明けます。
しかし、夢のような三週間はもう経ってしまいました。
『そっか・・・帰って・・・しまうんやな・・・』あかねにとって、シンデレラの魔法が解ける時が来ました。
夕焼けの茜色の空に、宵闇が交錯します。
お別れの日。花束を受け取り、みんなに見送られてブライアン君は学校を後にしました。
しかし、見送りの輪の中にあかねの姿が見えません。
ただ一人、みゆきだけが校門の影に俯いてたたずむあかねの姿を目にしました。
下校後もあかねの姿は見えず、みんなは空港へ見送りに行っていると思っています。
『ねえ、今日のあかねちゃん変じゃなかった?』疑問を口にしたみゆきは、一人鉄橋の下でボールを打つあかねに気が付きました。
見送りに行ったと思っていたみんなが、あかねの下へ駆け寄ります。
見送りになど行かない、一緒に居るのは楽しかったけれどそれだけで、
もう会う事も無いと、あかねは努めて素っ気なく振舞っているようです。
『本当にそれでいいの?何ていうか、その、多分。あかねちゃんらしくないよ』背中を押すのではなくとも、問いかけるようなみゆきの言葉。
あかねも分かっているのでしょう。しかし、何も言えません。
ほんの一歩、踏み出すだけの少しの勇気がありません。
そんな事とは露知らず、ウルフルンはベタな恋愛ドラマを観て苛立ちを募らせていました。
町に出撃しに来てみたら、今度はリア充爆発しろ的な光景を目の当たりにし、
『何が「待った~♥」だ。ムカつくぜ』
周囲をバッドエンドに染め、たちまち落ち込むカップルたち。
鉄橋の下のあかね達も周囲の異変に気づき、駆けつけて変身しました。
ウルフルンもカップルのペンダントをハイパーアカンベェ化して対抗します。
『目の前でいちゃこらと、目障りなんだよ!』
あの、ウルフルンさん何か暗い過去でもあったんですか・・・(笑)
それはともかく、愛や恋を下らないと一蹴するウルフルンに、
誰かを好きになる事は素敵な事だと反論しながら立ち向かうも、
相変わらずハイパーアカンベェは強く、返り討ちに遭います。
『何だかんだ言ったところで、最後は別れちまって終わりなんだろ?
くだらねえ。そんなの無意味で無駄なだけじゃねぇか』
別れてしまって、終わり。無意味で、無駄。
その言葉と共に攻撃を受けたサニーは立ち上がれません。が、しかし・・・
『でも・・・それが・・・意味が無いなんて。そんなの、寂しいよ』呟くようなピースの言葉で、サニーの心に火が付きました。
無意味などではない。無駄な筈など、無い。
スポーツデコルで出した竹刀でハイパーアカンベェの攻撃を受け止め、
無駄じゃなければなんだというウルフルンの言葉に反発します。
『それは、今のウチにはまだわからん。
けど!離れ離れになったとしても、一緒に過ごした時間は消えへん!』竹刀に炎を宿し、炎の剣でハイパーアカンベェと剣戟を繰り広げます。
そして雄叫びと共にハイパーアカンベェを押し切り、
ロイヤルレインボーバーストで仕留めました。
戦い終わり、あかねは空港へ向けて大急ぎで駆け出しました。
しかし空港行きのバスに間に合わず、目前で発車してしまい・・・
そこに追って来たなおが俊足を活かしてバスを呼び止めます。
ところが乗ろうとした折、お金を持っていない事に気が付いて・・・
今度はれいかが追いつき、財布を差し出しました。
しかし、折角2人の助力で乗れたバスは渋滞に嵌ってしまい・・・
と、今度はみゆきとやよいが自転車で追って来て、
みゆきは自転車を提供し、やよいは空港までの近道を描いた地図を渡しました。
みんなの少しずつの後押しを受けて、あかねは空港目指してペダルを踏みます。
下って行く坂道の先に空港が見えた、と思った矢先に転倒してしまい、
自転車はチェーンが外れてこれ以上漕げません。
あとは自分の足で走るのみ。空港を目指し、茜色に染まった空の下、
髪留めをほどいたあかねの髪が舞います。
走る。走る。息が切れて歩く。再び走る。走る。走る。そして・・・
空港に到着した直後、飛行機が離陸して行きました。
間に合わなかった・・・?膝をついたあかねの目に涙が滲みました。
『Are you OK?』
聞き覚えのある声に顔を上げ、目の前に差し出された手を取って、あかねは答えます。
『うん、大丈夫やで・・・』目の前には、あの「大丈夫」Tシャツを着たブライアン君が手を差し出していました。
あかねが来ると信じて待っていたという彼と、
先程交わす事が出来なかった言葉を交わします。
『なあ、ブライアン、その、えっと、なんちゅうか・・・』『おおきに。学校楽しかった。お好み焼き美味しかった。
他にも色んな事、沢山、沢山。全部あかねが教えてくれたんです。
あかねがいたから、僕、この国がとても好きになりました。だから、おおきに!』
『ウチも・・・ウチも、めっちゃ楽しかった』あかねはブライアン君の手で涙を拭い、笑顔で握手を交わしました。
またいつか、会う時があるでしょう。See you again.
今回は戦いが終わってからラストにかけての場面が真骨頂と言えるでしょう。
みんなの少しずつの後押しで空港に向かうあたりから私の涙腺がヤバくなり、
自分の足で走り始めてからは本気でヤバくなりました。
戦いが終わってからの「走る」場面で泣かせて来た、体育祭の話を思い出します。
あかねがかなりお気に入りの私としては、視聴前にやや複雑な気持ちがあったのも事実です。
しかし、歴代の恋愛対象となる人物、
いつきと
コッペ様は、まあ・・・アレとして(笑)
藤P、牛乳王子、ココ、ナッツ、王子先輩のように、
ブライアン君は内面も立派な英国紳士でした。(大輔?御子柴?なにそれおいしいの?)
実際プリキュアにおいて視聴者を裏切るような真似はしない事を信じていますので、
素直に2人の関係を暖かく見守る事が出来たと思います。
事実、あかねファンとしては普段見られない彼女の表情や仕草の数々が見られて新鮮でした。
特に印象深いのは、髪留めを外して走り始めた場面です。
この場面は意地を張ったり、照れ隠しだったり、別れの寂しさから来るあきらめといった
抑えていた心を解き放って素直になった事の象徴のように見えました。
そしてもう一つ、あまり認めたくないのですが・・・
この髪の描写は、恋を知って「女」になった事を暗喩しているようにも思えます。
本人もあまり意識していませんが、あかねは女性的で繊細な要素も持っています。
ボーイッシュな一面が際立つが故に、これまでクラスの男子や弟からも
あまり女性扱いを受けなかったのかもしれません。
先入観無く、普通にLadyとして扱ってもらった事によって、
プリンセスフォームの髪型などで少しずつ表れてはいた女性的な面が
本人は気づかないながらも、少しずつ表に出て来たように思います。
それにしてもブライアン君、嫌みの無い素直な性格で好感が持てました。
ステレオタイプな日本像を持っていたり、妙なセンスのシャツを着ているところも
ありがちな外国人観光客っぽくてリアリティがあります。
個人的には、交際とまでは行かずとも、あかねとは今後連絡を取り合う仲でいて欲しいです。
例えば手紙やメールのやり取りをきっかけに、
あかねが苦手な英語を克服する可能性もありますね。
また、彼がバッドエナジーを出す展開にならなかった事も評価したいです。
あかねの英語嫌いという設定を活かしてこの話を作ったところ、構成の上手さが感じられます。
人はいつ、どんなきっかけで変わるかは解りません。
昨年の響も
初期の時点では本気でピアニストを目指すなど想像もつきませんでしたし、
つぼみの宇宙飛行士や
のぞみの教師、りんちゃんのアクセサリーデザイナー、かれんの医師なども同様です。
最初から道を決めていたとしても、その可能性はいくらでも枝分かれして行きます。
一本の道を進む事も、たくさんある可能性を選んで進んで行く事も
どちらも肯定して成長を描いてくれるプリキュアシリーズに出会えた事が
今更ながら本当に良かったと再度感じた次第です。
また、言葉というものは「伝えようとする気持ち」「理解しようとする気持ち」があれば
言語が違っても少しぐらい何とかなるものです。
実際私も英語はさっぱりですが、海外旅行の折には何とかなっています。
途中描かれるバレーボールのシーンでは、
この「言葉のキャッチボール」を象徴しているように思えました。
ところで、あかねを囲む4人の反応もまた楽しめました。
修学旅行の夜といい、この子たちは自分の恋愛にはまだ関心が薄くても、
他人の恋愛には思いっきり興味があるお年頃なんですね(笑)
そしていざ当事者になるとアタフタしてしまう、と。
実際の中学生としては少々初心ですが、そこがプリキュアらしい点でもありました。
そんな中、やや興味本位というか、押しつけがましく見えてしまうやよい、なお、
一応傍観の立場ながら、興味津々といった感が隠せないれいかに比べ、
みゆきのさりげない一言は今回も常に的確です。
見送りに行かないと一点張りのあかねや、
ウルフルンの言葉に返せず、攻撃と共に立ち上がれないサニーにかけた言葉は、
いずれもみゆき=ハッピー自身がはっきりと言葉に纏めきれないものでした。
それでも、言葉にならずともほんの少しだけ背中を押す効果をもたらしています。
「私の意見はこうだからこうした方が良い」
ではなく、「こういう風に思うけど、どうかな?」といった感じのニュアンスで、
自分一人や誰か一人のウルトラハッピーではなく、みんなのウルトラハッピーを願う
みゆきらしさが端的に感じられたと思います。
今回ウルフルンが否定するのは恋や愛ではなく、
最終的な結果が望むものでは無かった場合における、
そこに至るまでの過程を「無駄」と一蹴する事でした。
事実、空港へ向かうあかねをサポートするみんなの行動は、
悪い見方をすれば徒労に終わったと見る事も出来ます。
なおが懸命に呼び止め、れいかが差し出した財布で乗ったバスは渋滞に巻き込まれ、
結局あかねはこのバスで空港へ行っていません。
みゆきの自転車も途中で役割を果たせず、
やよいの地図だけが結果に繋がる過程かもしれません。
それでも、この行為の数々が「無駄」だったとは思えません。
空港へ向かおうとしなければ、空港へ辿りつけないですし、
先の事を考えてばかりでは何も始まりません。
こうした過程の結果こそが、あかねを空港へ到着させ、
ブライアン君との別れに間に合ったと考えたいです。
それにしてもサニーがメインになる話はアクションにも恵まれていて、ファンとして嬉しいです。
今回もアクションパート自体は短いのですが、
竹刀デコルからの炎の剣のカッコ良さときたら!
ビューティ以外に剣を使うキャラクターが出る等も予想外だったので、驚きました。
その炎を剣に帯びる際の指弾きといい、本当サニーはアクション映えします。
また、彼女の名前の由来でもある「茜色」を描いた、夕焼けの美しさも印象的でした。
七色が丘に国際空港があるあたり、やや無理な設定かもしれませんが
成田や羽田に向かう展開だったら、あの走る場面が無かったと思うと、
突っ込むのが野暮と思う事にします。
ところでブライアン君は「交換留学生」でした。
という事は、逆にイギリスへ行ったクラスメイトが誰かいたのでしょうか(笑)
そっちにも同じようなドラマがあったのかもしれないと思うと、
また想像力を掻き立てられます。
そして、みゆきがすっかりロボッターにハマっているのにも笑わせてもらいました。
こうやって布教活動が行われて行くのですね(笑)
なおが勇気を振り絞って「好きだ」とあかねに言えたとしたら・・・
この画が見られなかったのが少々残念ではありますが、そこは想像力で補う事にします。
その想像力がブッ飛ばされそうな次回予告がまたやってくれました。
いったい、あの三人は・・・
本当にスマイルプリキュアは予告で毎度度肝を抜いてくるので、ラストの後まで侮れません。