希望とは、絶望とは何か。
荒野と化した地球に異形の巨人が跳梁跋扈する世界という
「最悪の結末」とはこの事かと言わんばかりの絶望的な状況を前にして、
満を持して復活したピエーロに相対した五人と一人の
一年間の足跡を思いめぐらさずにはいられません。
最終決戦の火蓋が、ここに切って落とされました。
ピエーロの復活、ジョーカーの異様な最期、世界を跳梁跋扈する絶望の巨人。
次々と起こる絶望的な状況下で、ポップは願いを込めて最後のデコルを収めました。
あふれ出る光の中で、ロイヤルクイーンとの謁見を果たすプリキュア達。
そして新たな女王、ロイヤルキャンディが目覚めの時を迎えます。
妖精キャンディだったその「少女」は、みんなの声を聞いて目覚めました。
自らの無力を詫びる「母」ロイヤルクイーンへ、最後の呼びかけをするロイヤルキャンディ。
『ロイヤルクイーン様は、メルヘンランドみんなのお母さんクル。
妖精のみんなもキャンディも、お母さんが大好きクル』
しかしその存在は既に亡く、ロイヤルクイーンは今まさに消え去ろうとしています。
『皆さんの未来は真っ白です。白紙の未来に新しい物語を描くのは、自分自身の心なのです。
私はいつでも皆さんの事を見守っています』
今際の際に流した涙の滴がロイヤルキャンディの胸元で弾け、ミラクルジュエルが生まれました。
それは願い事を叶える力は無くとも、
「暗い絶望の中でも一筋の希望を見出す」力を秘めているとロイヤルクイーンは言います。
たくさんの光があらんことを。最後にそう願い、ロイヤルクイーンは彼方へと旅立ちました。
そしてハッピーの手元には、プリキュアの本がもたらされました。
これから切り開くべき未来の象徴のように、中身は全て白紙です。
『女王様の言ってた通り、自分たちの未来は自分たちで決めるクル』
プリキュア達もまた、自分たちの未来を自分達の手で切り開こうと誓いを新たにしました。
目の前に広がる現実は過酷です。
絶望の巨人が吠える度に世界はどす黒く、バッドエンドに染められて行きます。
ロイヤルキャンディは地平線を圧するような巨大な相手を止めるべく、飛びたちました。
そして絶望の巨人をきっと睨み付けるや、圧倒的な力で巨人たちを抑え込みます。
これが、女王の力・・・
その時、遂にピエーロ自身が姿を現しました。
ピエーロの負の力を得て、再び巨人たちが動き始めます。
ロイヤルキャンディも懸命に力を振るい、抑え込み続けますが、
その足元に蠢く影から、無数の異形の怪物たちが現れました。
怪物たちはピエーロの指示の下、プリキュアの本を狙って襲って来ます。
『みんなで力を合わせて、未来を守ろう!』
迎え撃つ五人の戦士達。世界の命運を左右する戦いが、始まろうとしています。
『全てを絶望に。世界を最悪の結末、バッドエンドに染めるのだ』
『そんな事、絶対にさせないクル』
光の女王と闇の皇帝、相対する二人の周囲で、
プリキュア達の全力の戦いで怪物たちは次々と蹴散らされて行きます。
皆の渾身の力と技が炸裂し、
マーチがサニーに呼びかけて、炎と風を合わせた「ファイヤーシュート」を放てば
ビューティの呼びかけに応じたピースとの、氷と雷の「サンダーブリザード」が、
魑魅魍魎どもを根こそぎ葬り去って行きます。
そしてハッピーシャワーシャイニングが、怪物達の頭上に雨あられと降り注ぎました。
しかし、一掃したと思いきや、怪物たちは何度でも蘇って来ます。
これではきりがありません。疲労と焦りを滲ませるプリキュア達に、ピエーロの主張が響きます。
『考えるな。考えてもお前達にはどうにもできない。
敵わないものに逆らうな。自分の無力さを嘆き悲しめ。
明るい未来など無い。叶わない夢など見るな』
『そんなことない!』
ハッピーはピエーロの言葉に抗うように怪物を蹴散らしますが、直後返り討ちに遭いました。
『ピエーロ。あなたは一体・・・なんなの?』
肩で息をしながら、問うハッピー。ピエーロの答えは「怨念」でした。
『生きとし生ける者、全ての負の感情が私を生み出していく。
お前達にもある筈だ。憎しみ、怒り、悲しみ、孤独。
それはお前たち人間が存在する限り、沸き続ける。絶望の物語だ』
ピエーロの言葉が続く間にも、次々と劣勢に立たされていくプリキュア達。
『負の感情はやがて無限の絶望となり世界を覆う。全てを無くし、怠惰に身を委ねろ』
未来は闇。そう言われた皆を、次々と光が襲って行きます。
『怨念・・・負の感情』『世界中の悲しみの力が集まったモン』『それが・・・ピエーロ・・・』
『そんな敵と、どうやって戦うの・・・』『絶望の、物語・・・』
抗う術を失って、倒れ伏す五人。
光はプリキュアの本を持つポップをも襲い、取り落した本の白紙のページが開きました。
そのページに、あの黒絵の具が滴り落ちて・・・
ハッピーの内から激しい鼓動が突き上げ、瞳は光を失い、バッドエナジーが立ち上りました。
倒れ伏した五人から立ち上るバッドエナジーは止まりません。
ポップの悲痛な叫びが、荒野にこだましました。
『一番大切なものは、絶対に守るクル!』
ロイヤルキャンディは動かぬプリキュア達を前にぐっとこらえながら、
胸元のミラクルジュエルに光を集め始めました。
怪物達がロイヤルキャンディに集中砲火を浴びせる様を見かねたポップは、
プリキュア達へ必死に呼びかけますが、その声は届いているのか・・・
光を失ったハッピーの目は、全く反応を見せません。
ハッピーは深い闇の中、ぬかるんだ地面を重い足取りで歩いていました。
その行く手には倒れた四人の姿が。それは次第に地に沈み始めました。
『絶望・・・本当の・・・終わり』
そしてハッピーも倒れ込み、深淵へと沈み込みました。
一度絶望に落ちればそう簡単には戻って来られないと言われても、
ロイヤルキャンディは一心に皆を想い、希望の光が届けば救い出せると信じて耐え続けます。
『悲しみ、怒り、孤独、寂しさ。誰にでもある弱い心。世界中の悲しみ。
人がいる限り、沸き続ける。絶望の物語。私達にはもう、どうする事も・・・』
深い深い底へと落ちて行くハッピーの耳に、キャンディの叫びが聞こえたような気がしました。
ハッピーを、否みゆきを、あかねを、やよいを、なおを、れいかを呼ぶ声が。
微かに聞こえてくる声が、希望を捨てちゃ駄目だと、遠い彼方で叫んでいます。
『希望・・・?希望って何・・・?』
うっすらと目を開いたハッピーは、目の前に広がる漆黒の闇の中に、か細い光を見出しました。
そして薄れゆく意識の中、はっきりとキャンディの声を聞いて、
ハッピーの瞳に再び光が宿りました。
『キャンディの声が聞こえる!』
『明日を諦めない』
『未来は自分たちの手で』
『切り開いていくんです』
ハッピーだけではありません。みんなの瞳も輝きと、抗う心を取り戻していました。
『私たちは絶対に、諦めない!』
しかし、浮上しようとしたハッピーの足を、闇が底へとぐいっと引き寄せました。
『希望とは何だ。見えない。触れない。そんなものは存在しない。絶望に落ちろ』
その頃ロイヤルキャンディも、孤独に戦っています。
一心にみんなを信じ、あと少しで届くと信じて猛攻を耐え続けています。
『希望は、ある!今わかった。私の希望は・・・』
闇の手に絡め取られても、懸命にあがき続けるプリキュア達。
絶望に飲まれる事を拒み、まだ終わりじゃないと信じて、
体が動く限り絶対に負けないと、闇の先に見える希望の光へ手を伸ばし、上を目指し続けます。
キャンディの名を叫んで浮上するハッピー。
しかし無情にもさらに太い手が再び闇の底へと引きずり込み、再び沈みそうになりますが・・・
その時、手が差し伸べられました。プリキュアの本が、輝きます。
『良かった・・・届いたクル・・・』
安堵した直後、ロイヤルキャンディはまともに攻撃を喰らいました。
そしてピエーロのとどめの一撃が迫ろうとした、まさにその時!
その背に翼を広げた五人の戦士が返って来ました。
『五つの光が導く未来!輝け、スマイルプリキュア!』
今まさに、改めて名乗りを上げる五人の戦士達。
力を使い果たし、妖精の姿に戻ってしまったキャンディをポップへ託して、
皇帝ピエーロと相対します。貴様らに輝く未来など無い。
そう侮っていたピエーロは、ハッピーが一撃で怪物を撃破したのを見て愕然としました。
ハッピーだけではありません。皆それぞれ一瞬で、一撃で無数の怪物を撃破します。
『キャンディが命がけで私たちの道標になってくれた。
キャンディのお蔭で私たちは、絶望の中に希望の光を見つける事が出来た』
ハッピーは、希望とは何かを見出しました。それは、友達。
ハッピーの周りを、まさに四人の「友達」が固めています。
『大切な友達が一緒なら、どんな大変な未来でも、笑顔で真っ直ぐ歩いて行ける。
それが私達、スマイルプリキュアだから』
全てをバッドエンドに塗りつぶすとのたまう言葉が終わらぬうちに、
マーチの鋭い蹴りがピエーロに炸裂!
蹴り飛ばされたピエーロにビューティが挑みかかり、
続けてピースの雷光が激しく突き上げて、サニーの炎が叩き落とす!
そして雄叫びと共に、ハッピーの凄まじい力が見舞われました。
ピエーロを倒した?荒く息をつく五人に、どこからかピエーロの声が響きました。
辺りを見回しても、その姿は見えません。
いや、上空にピエーロの巨大な姿が浮かび上がりました。
先程蹴散らした怪物達や、絶望の巨人から負の感情を集め、
地球を取り囲む程の巨大な存在となったピエーロが、立ちはだかりました。
この一年の集大成、と言ってしまうとまだ最終回があるため早計かもしれませんが、
キャンディが皆の道標となり、皆がキャンディのもとへ再び集う展開に
みゆき達がキャンディと過ごしたこの一年を振り返るような感慨を覚えました。
みゆき達だけでなく、視聴している私としてもみんなと一緒に歩んだような錯覚を覚える程、
色々な感慨を覚えた一編でした。
まずはロイヤルキャンディ、可愛いっすねぇ(笑)
前回のラストと予告で映った時にその可愛らしさは描かれていましたが、
実際に活躍する様を見ると胸が弾みました。
それでいてあの猛攻に耐え続ける姿には、
皆を強く信じるその想いと相俟って、神々しさすら覚えます。
愛らしい外見、あどけない顔とは裏腹に、
強い意志が伺える眼差し、美しく澄んだ輝きに満ちた瞳など、
既に女王としての威厳が滲み出ていました。
同じくキャンディの懸命の呼びかけによって起死回生を果たした
「怠け玉」関連のエピソードに類似していると感じた向きが無いでもありません。
しかし、あの深い闇の中にあって絶望を見せつけられた後に
「希望」を見出して再び戻って来る様は、
怠け玉の後の展開を経たからこその感慨がありました。
怠け玉以前にも、みゆき達は困難を乗り越えて来ましたし、「友達」を認識しています。
しかし、怠け玉以降特に5人それぞれ個々のエピソードを経て来た事で、
より一層彼女達の関係、そしてキャンディとの関係が深まった事を、私達は知っています。
先々週では三幹部との和解を果たした際に「友達になりたい」と語っていました。
希望とは友達だという今回の答えに繋がる、一本の線が明確にされたと思います。
希望の「希」は、希少、希薄、希ガス、希有など、
「ごく少ないもの」という意味を持っています。
今回、一面の闇の中に輝く「希望」の光は、実に小さいものでした。
希望とは、ごく少ない望みの事なのでしょうか。
確かに夢を叶えた人の方より、夢を諦めざるを得なかった人の方が多いと思います。
例え夢を叶えても、その後の現実に圧し潰された人もいます。
現に私自身にも、そうした経験があります。
希望を追い求める事は無意味かもしれないと、思わずにはいられない事もあったと思います
それでも、求めようとしなければ決して求める事は出来ません。
前に進もうとしなければ、前には進めません、
たとえか細い望みであったとしても、向かおうとする事こそが尊いのだと、
改めてそう考えさせられました。
希望とはピエーロが主張するように、見えない触れない、存在しないものかもしれません。
しかし裏を返せば、それは絶望も同じ事と言えそうです。
同様に見えない触れない、存在しない。
希望を信じるか、絶望を信じるか、尺度の違いだけで、
実はピエーロが追い求めているものも、
「望みが絶える」という望みの一つかもしれません。
確かに負の感情は人や心がある限り、決して消える事は無いでしょう。
それを怨念として燃やすか、「負」を認識して時に戒めとして理解するか、
受け止め方は様々だと思います。
前作スイートプリキュアのノイズも、人が存在し得る限り消える事は無い
「悲しみ」が生み出した存在でした。
それだけに、悲しみを受け入れて共存を選んだスイートの物語と
どう差別化を図るのか、最終回で何を描き出すのか、期待しています。
ところでプリキュアの終盤戦は、
ラス前2話のアクションが充実している事が最早定番となっています。
今回もその定石に違わず、充実したアクションが大へん見ものでした。
怪物達を前にした、個々それぞれの奮闘ぶりに早速手に汗握ったと思えば、
(個人的には駆け抜け様に無数の矢を射ていた、ビューティの戦いぶりが気に入っています)
これまでありそうでなかった、炎と風、氷と雷の「合わせ技」!
やや遅きに失した感が無くも無いですが、満を持しての披露には胸が熱くなりました。
そして合わせ技に匹敵する威力の技を一人で繰り出すハッピーの叫びっぷりの熱さ!
これが怪物との、いわば「前哨戦」に過ぎないのが凄いです。
翼を得ての復活劇から先の、ピエーロ相手の鋭い戦いっぷりの数々!
さながらドラゴンボール(と、前にも言った気がしますが・・・)のような熱さは
終盤の戦いに相応しく、見応え十分でした。
今の時点で決着がついていないところを見ると、次回は果たしてどうなるのでしょうか・・・
一切のアクションを用いずに纏め上げたスイート、
愛のこぶしを「くらえ」と繰り出したハートキャッチ、
この二作が続いた後だけに、やはり優しい結末を用意しているのか、
はたまた一層熱いバトルを盛り込んで来るのでしょうか・・・?
次回予告は、この一年の出来事をスナップに纏めるた
マックスハート最終回予告と同様の手法が用いられていました。
すなわち、この予告では次回に何が起こるかが全く読めません。
この一年の締めくくりに何が待ち受けているのか、泣いても笑ってもあと一話。
みゆきの、あかねの、やよいの、なおの、れいかの、そしてキャンディの
みんなと過ごしたこの一年のまとめを、括目して待ちたいと思います。