ニンジン、ジャガイモを切って粉チーズを振り、余熱したオーブンに入れ、おいしくなあれとおまじない。リボンがひめのために丹精込めて作った魚のパイが、香ばしく焼き上がります。折よくお腹を空かせたひめが厨房へとやってきました。しかしパンケーキ腹だったひめは魚のパイに不満を漏らし、パンケーキが食べたいと駄々をこね始めます。呆れて言葉を失うリボンに、ひめは「うらポジ」で文句を続けました。
『いいでしょ別に!私が食べるものなんだから、私が選んだって』 絶句しながらも、怒りを押し殺して我慢するリボンに対し、ひめはパンケーキの要求を止めません。しまいにはポルンのように駄々をこね、あろうことか魚のど真ん中にフォークを突き立てるという、一番やってはいけない事をします。リボンは一瞬とても悲しい顔をした後、遂に堪忍袋の緒が切れました。
『もう結構ですわ!文句を言う子には食べさせません!』
『何よ!パンケーキくらいちゃっちゃと作ってくれればいいでしょ!』『だまらっしゃい!自分では卵も割れないお子ちゃまがァアッ!』
(真琴「呼びました?」) 互いに一歩も譲らず、ひめとリボンは激しく火花を散らします。
『きょーうはハッピーサンデー♪ひーめとたのしいにっちようびー♪』 そんな事とは露知らず、めぐみは相変わらずの変な歌を歌いながら大使館へやって来ると、中から言い争う声が聞こえてきます。耳を澄ませる間もなく、直後ひめが飛び出してどこかへ走り去って行きました。
先程のリボンの料理は、めぐみが美味しくいただきました。しかし、せっかくの料理をないがしろにされたリボンの怒りは、未だ収まりません。
『でも、ひめ今頃お腹すかせてるだろうね』 めぐみの言葉を聞いて窓の外を見るリボンは、どこか心配そうですが・・・
『そんなの放っておけばいいんですわ。ひめにはいいクスリです』
その頃、ひめは
ウエスターさんや
ウルフルンみたいに、王族とは思えぬ姿を晒しながら、食物を求めて町をさまよっています。それに反し、誠司とゆうゆうはロードワークに精を出しています。誠司は鍛錬のために走り込んでいますが、ゆうゆうの目的は「お腹を空かせてご飯をおいしく食べる」というものです。
そこに減量中のボクサーのようにフラフラになったひめが登場。ゆうゆうと見るや凄まじい勢いで駆け寄り、
『ゆうこ~!飴を飴をちょうだい~!』 空腹でやつれているため、シャブの禁断症状のようにも見えます(笑)。良い子は手を出しちゃダメ。ゼッタイ。
しかし今はハニーキャンディ―の手持ちがありません。肩を落とすひめを、ゆうゆうは代わりに自宅へと引きずって行きました。文字通りに(笑)。
大使館に残されためぐみはひめを心配していますが、リボンはまだ背を向けたまま。
『早く探しに行こうよ。リボンだって本当は心配しているんでしょ?』『私、ひめの心配なんかしてませんですわ』
そうは言ってもめぐみのキュアラインが鳴ると、ひめからではないかと気になる様子。しかしその連絡はひめからではなく、誠司からでした。誠司はひめがゆうゆうの家に行ったことを伝え、まためぐみから今回の一件について聞き、事情を察します。そして、ひめとリボンのために頑張っちゃおうと張り切るめぐみの手綱を締めます。
『お前ちょっと強引すぎるぞ。ちゃんと2人の気持ちは考えたのか?』
しかしその忠告はめぐみに届いていないようで、ひめを迎えに行こうとリボンを誘います。しかしリボンは拒否。それでもブルーに諭されて、ようやく重い腰を上げました。
そうと決まれば善は急げ。めぐみと一緒にいざおおもりご飯へと向かいます。
ひめはおおもりご飯の弁当を、エビフライを尻尾ごと食べるなど一気に平らげて大満足。ゆうゆうに命の恩人だとお礼を言います。その言葉にゆうゆうも嬉しさを抱くも、顔を曇らせます。
『でも、お家の人は今頃きっと、悲しい思いをしてるんじゃないかな?せっかくご飯を作ったのに、ひめちゃんに食べてもらえなかったんだから』
その言葉に、ひめも少し後悔し始めました。先程突き立てたフォークと、リボンの寂しそうな後姿が脳裏に浮かびますが、それを振り払うように言いました。
『私の気持なんか無視なんだもの』 そんなひめに、ゆうゆうは料理の手伝いをしたことがあるのか尋ねます。美味しく食べるのが勤めで、手伝いなどするわけがないと言うひめに、ゆうゆうは店の手伝いを頼みます。ひめは弁当をもらった義理もあり、快く引き受けました。
その頃、愛のかおりに昼寝を邪魔されたナマケルダさんが動き始めました。
大森一家で切り盛りする弁当屋はいつも大繁盛。大森夫妻が腕を振るう厨房も活気に満ちています。ひめはプリカードであっという間にかわいいコックさんに変装し、お手伝いに気合を入れます。ところが、意気込みとは裏腹に、ひめに与えられた仕事はジャガイモの皮を延々と剥くだけでした。包丁やフライパンをカッコよく使うのが料理だと思っていたひめに、ゆうゆうは下ごしらえの大切さを説きます。キッチンの前で料理するのは最後の最後。目玉商品のコロッケのために、皮剝きが大切だと、ひめと一緒に剝きながら説明します。初めて挑戦するひめは当然下手で、ピーラーを使っても厚く剝きすぎ、身が削れています。
『料理って、思ってたよりもずっとめんどくさいね』『そう?私は美味しいものを食べるのと同じくらい、作るのも大好きだよ』
ゆうゆうが剥いた芋は、身がしっかり残っています。自分が剥いた芋と比べて、ひめは自信が無さそうです。
料理する人は食べてくれる人に少しでも幸せになって欲しいという気持ちを持っており、ひめの家の人も同じ気持ちだと思うと諭します。それでもまだ、私のこと何もわかってないと意地を張りるひめの手を取り、
『でも、そうでなきゃこんなに大変なことできないでしょ?』
ゆうゆうは一緒に皮を剥きました。
『お料理を作るときは、誰だって食べてくれる人のことを思っていると思うな』
『リボンも、私のために・・・?』 料理を作るリボンの後ろ姿や、リボンと一緒に食べた時の事、そしてリボンの笑顔を思い浮かべながらピーラーを動かすと、ジャガイモはきれいに剥けていました。
『ひめちゃんも誰かのことを考えてお料理したのね?』
そしてご褒美に揚げたてのコロッケをくれました。下ごしらえした結果は、こうしておいしい形になります。
『あとでこれ、お土産に持たせてあげるね。ケンカしちゃったお家の人と一緒に食べるといいよ』
『じゃあ、そうしてみようかな・・・』 ひめは少し照れながら、呟きました。
そこにリボンを連れてめぐみがやって来ます。しかしひめは素直になれず、
『何しに来たのよ』『私は悪くない』と後ろを向いてしまいました。
その時、愛の源はおおもりご飯だと狙いをつたナマケルダさんが、サイアークを率いて襲って来ます。
『うちの店にカビなんて生やさないで!』
普段のおっとりした顔つきとは異なり、店の前に仁王立ちするゆうゆうが、眼光鋭くナマケルダさんを睨みます。この状況下で言い争っている場合ではなく、ひめはリボンと向き合い、変身します。
ゆうゆうを逃がした後、まずはチョイアークを蹴散らして行きます。その時、
『二人とも、上ですわ!』
サイアークが襲いかかるのをリボンが注意してくれたおかげで未然に防ぎました。ナマケルダさんはあくまでおおもりご飯の破壊にこだわり、サイアークをそちらへ差し向けます。バリアを張って防ぐプリンセスにラブリーも加勢、さらにリボンも加わって、みんなでおおもりご飯を守ります。
『まったく、どうして君たちはそんなに頑張るのかね』
『あなたこそ、どうしておおもりご飯を壊そうとするのよ?』 誰かのために料理を作る馬鹿げた努力で愛が生み出されるため、それを壊すと言うナマケルダさんに、プリンセスが強く反論します。
『バカげた努力じゃない!私は知らなかった。料理を作る人たちがあんなに苦労して食べる人の幸せを願ってたなんて・・・私ワガママだった。作る人の気持ちなんて、考えたもしなかった。でも・・・今ならわかるの』 傍らのリボンへ目を向け、
『その気持ちは、食べる人を思う愛情だったんだって』 そしてサイアークを一気に押し切りました。
『だから、その愛を馬鹿にしないで!』 駄目押しで新しいプリカード、マカデミアフラダンスを披露。駄目押し・・・?ハワイアンアロハオエの心地良い旋律とフラダンスが、チョイアーク達を骨抜きにしました。つられてラブリーとリボンも、さらにサイアークとナマケルダさんもまったりまったり癒されます。ナマケルダさんが我に返った時には既に遅く、その隙をついたラブリーのピンキーラブシュートでサイアークは浄化され、辺りを覆っていたカビも消えました。
『料理に注ぐ愛情など、私には必要ないですぞ』
捨て台詞を残し、ナマケルダさんも引き上げて行きます。
大繁盛のおおもりご飯を見つめながら、ひめはリボンに謝り、コロッケを差し出します。リボンの機嫌も戻り、プリカードもゲット。めでたしめでたしと家路に向かう道すがら、ひめは空腹を訴えました。
『でしたら、今日の夕飯は・・・』
『パンケーキ!』 ワガママではなくリクエストだと主張するひめと、却下するリボンの間に、再び火花が散ります。
『ケンカするほど仲がいいって、このことだね』 トゲの無い二人言いあいは、帰り道の間ずっと続くのでした。
ヒメルダ殿下はなかなかワガママなようで(笑)。料理をした事があるかと問われた彼女は、
『するわけないでしょ。私は美味しく食べるのがお勤めなんだもの』 と、あっさりと即答しました。悪気は無い発言ですが、これは「パンが無ければお菓子を食べればいい」というマリー・アントワネットのものとされる言葉を連想します。自分のまわりの世界しか知らない視野の狭さがこのような発言をもたらすのですが、これはひめだけの責任とは言い切れないように思います。
王族の一員として人の上に立つ者が、自覚なくこのような発言をしてしまうのが命取りだと気が付かない。そのような人間に育ててしまった周囲の責任もあると思いました。とはいえ、私も時にリボンが厳しすぎるなどと書いたりしたので、発言がブレてしまっているのですが・・・
『私の気持なんか無視なんだもの』 今回のひめにはこんな発言もありました。しかしこの時の言い方からは後ろめたさを感じさせ、自分も逆にリボンの気持ちを無視している、無視していたという自覚があったのだと思います。彼女は世間知らずでワガママではありますが、決して人の痛みに鈍感で無神経な子ではありません。誰かのために料理を作ることを馬鹿げた事と扱き下ろし、それを壊したいというナマケルダさんの発言に、プリンセスは強く反論していました。これはナマケルダさんの発言同じことを、リボンに対して無自覚に行っていたことを反省した結果だと思います。
そんなひめを省みさせるための、「実際にやらせてみて学ばせる」というゆうゆうの手法が光ります。芋の皮むきというのはやってみると案外面倒なもので、私も適当にむいて多少皮が残っている芋で肉じゃが作ったりしてしまうこともありますから・・・(笑)。この時ひめが皮をむいた芋で作ったのが、ラストでリボンに差し出したコロッケなのだと思います。ひめが作ったとまでは言わないけど、手伝いをした料理でリボンに詫びるということで、同時に感謝も伝えられているように感じました。
そしてプリキュア視聴者層であるお子様たちにも、料理を作るまでは出来ずとも、ちょっとしたお手伝いなら出来ると示唆しています。例えば今回ひめがねだるパンケーキなどは、お子様が実際にリクエストしたくなるものですが、ホットケーキミックスと卵を使えば簡単にできます。卵を割ったり、ダマにならないように粉と一緒にマゼマゼしたり、親御さんと一緒に実際にチャレンジすることで料理の楽しさを知る入り口になるかもしれません。
お子様へのアピールといえば、ひめを反面教師に据えることで、「フォークを料理に突き立てる」など、やってはいけないことを教える内容にもなっています。また、何気なく嫌いなメニューを嫌だと言ってしまうことについても、その前にちょっと作った人のことを考えてみようというメッセージも伺えます。もっとも、私にも苦手なものはありますので、そこはすみませんとしか言えないのですが(苦笑)
ところで、第1話の感想からここまで、あえてゆうゆうの素性に触れず進めてきましたが、今回ちょっとだけ触れて見ます。この時既に××××××だった筈で、おおもりご飯の前に仁王立ちする際の顔からは一歩も退かないという決意が伺えます。状況によってはここで秘密を明かし、自ら戦く覚悟もあったのかもしれません。もっとも、戦う力を持たない普通の少女が家を守るために恐怖を押し殺して立ち向かう顔、とも見て取れますが、先の展開を知っているからこそ、そのように観てしまうサガでしょうか・・・
それにしてもナマケルダさん。弁当屋の襲撃という
コブラージャさんばりの発想には笑わせて頂きました。
【今回のおめでとうメッセージ/キュアイーグレット】
いわゆる「お嬢様」ではなくても、育ちの良さが滲み出るお行儀の良いご挨拶が、舞らしく上品で素敵です。
ただ、意外とアピール上手なのでしょうか?画面の引きまで結構粘っていたように見えましたが(笑)
あと、今回の料理の食材が
「茄子」ではなくて本当に良かったです。