『ここにいるプリキュアは皆、絶望しながら倒れた』
敗れたプリキュアを閉じ込めた鏡が、墓標のように立ち並ぶ空間。
フォーチュンは剣を向けるファントムの背後に、姉を封じた鏡を見つけます。
『ファントム・・・あなたを倒す。この命に代えても!』 怒りと共に、構えを取るフォーチュン。死闘の火蓋が切って落とされました。
ぴかりが丘のサイアークは、ラブリー、プリンセス、ハニーの奮戦で片づけました。沢山サイアークを倒した事でプリカードも沢山入手し、あと少しでファイルがいっぱいになるところまで来ています。ラブリーとハニーは、願い事をプリンセスに譲る意志を示しています。
『私の願い叶えていいの?』『もちろんだよ!』『あともう少し、頑張ろうね』 そこにぐらさんが血相を変えて飛んできました。フォーチュンがファントムと一緒に消えてしまったと聞いて、ファントムの恐ろしさを知る皆の顔色が変わります。中でも一番心配そうにしているのは、フォーチュンに罵倒され続けたプリンセスでした。そしてフォーチュンを探して飛び立ちます。
鏡に眠る姉の前で、フォーチュンはファントムと激闘を繰り広げています。しかし善戦しているもののファントムは強く、反撃が続けざまにフォーチュンに襲いかかります。
プリンセスはフォーチュンの名を叫びながら必死に町を探し回るも、どこにも気配が見当たりません。その時ブルーから、これまでファントムがプリキュアを連れて行った空間に連れて行かれたのではないかと連絡が入りました。その場所は、神でもわかりません。
『神様お願い!フォーチュンを見つけて!私、フォーチュンに言わなきゃならない事があるの!』 プリンセスはキュアライン越しに、ブルーに懇願します。
『その思いがあれば、道が開けるかもしれない』
しばしの間をおいて、ブルーは皆をクロスミラールームへと呼び寄せました。
次第に追い込まれて行くフォーチュン。しかし、まだ目は負けていません。いや、憎しみの光を失っていないというべきか。鋭く睨み付け、蹴りつけ、攻撃を叩き込みます。ファントムはそれを涼しい顔でかわし、フォーチュンの腕を掴みました。
『無駄だ・・・』
その腕を掴んだまま投げ飛ばし、剣からの波動を叩き込むと、遂にフォーチュンの変身が解けてしまいました。そして零れ落ちたプリチェンミラーを拾い上げます。
『返して・・・』 氷川いおなに戻ってしまった少女は、姉の形見とも言うべきプリチェンミラーを求めて力なく訴えます。
『あなたは・・・姉の仇!』 恨みに満ちた目で立ち上がり、プリチェンミラーに手を伸ばすも、今の彼女は空手の達人とはいえ、華奢な少女に過ぎません。
その姿に、ファントムはいおながキュアテンダーの妹だと悟りました。キュアテンダーはファントムをして強敵と言わしめる存在でした。しかし、いおなを庇って倒れた甘さが敗因だと扱き下ろします。
『姉を助けることはできない・・・もはや戦う力も無い』
ファントムはフォーチュンのプリカードを取り出し、いおなの目の前で燃やして見せました。
『お前の願いは、もう叶わない』
姉の墓標の前に跪くような恰好で座り込むいおなに、プリカードの灰が静かに降り注ぎます。大粒の涙が、いおなの頬を濡らします。それは、絶望の涙。
『鏡よ。みんなの想いに応えてくれ。道を開いてくれ。キュアフォーチュンのもとへ』
ブルーの指示の下、ハピネスチャージプリキュア達は一心にフォーチュンを想い、祈ります。特にプリンセスは、フォーチュンを強く想い、祈りを捧げました。
そのフォーチュンは、いおなは、絶望の瀬戸際にいます。刀折れ矢尽きた彼女は、ただ泣きじゃくるだけのか弱い少女でしかありません。
『いい絶望だ。お前達の不幸がミラージュ様を安堵させる。姉のキュアテンダーと同様に、絶望しながら鏡の中で永遠に眠れ』
涙で曇るいおなの瞳に映るものは、絶望。ファントムのとどめの一撃が迫ろうとしています。観念し、諦めと共に、いおなは静かに目を閉じました。
『フォーチュン!』 その時、弾丸マシンガンと共に希望が届きます。顔を上げたいおなは、プリンセスの勇姿を目の当たりにしました。続けてラブリーが、ハニーが、リボンとぐらさんが後を追って来ます。そしてぐらさんはいおなに飛びつき、泣きながら胸を殴りました。
(俺も殴らせて下さい。っていうか固そうな音がw。だがそれがいい) ラブリーとハニーがファントムに向き合う中、プリンセスはいおなに駆け寄り、膝をついて、これまで手に入れたプリカード全てを差し出します。
『フォーチュン!プリカード、全部あげる!』 突然の申し出に戸惑いを隠せないいおなに、プリンセスはありのままの心を曝け出します。
『アクシアを開けた事、どう謝ればいいか考えたわ。でもどう謝ったって、何度謝ったって、許される事じゃない。許してなんて言わないわ!これで償えるとも思わない!』 鏡に封じられたまりあの前で、その元凶となってしまったプリンセスが、罪の重さから逃げずに正面から向き合います。
『でも!私にできることはこれしか無いから!あげられるものはこれしか無いから!』 いおなにプリカードを渡し、プリンセスは戦場へと赴こうとします。
『待って!プリンセス。あなたにも願いがあるんでしょう?あなたの故郷ブルースカイ王国を、救いたいんでしょう』 足を止めたプリンセスの背に、いおなは問いかけます。
『大丈夫。プリカードはまた集められる。あなたの願いを先に叶えて!お姉さんを助けてあげて!』 そしてプリンセスは振り返り、いおなに深々と頭を下げました。
『本当に・・・ごめんなさい!!』『違う・・・違うわ・・・悪いのはあなたじゃ・・・』 その時、激闘の余波が伝わってきます。ラブリーとハニー二人がかりでも、ファントムに太刀打ちできぬと見るや、プリンセスはすかさず戦場へと向かいました。
『悪いのは・・・あなたじゃない。幻影帝国よ。あなたは世界を救うために、彼らと戦っている。もう充分償っているわ・・・』 駆けつけたプリンセスとともに、再びファントムへ挑むプリキュア達が、剣を抜いたファントムと交錯します。戦いの行く末を案じるいおなに、ぐらさんが静かに問いかけます。
『いおな・・・何を願う?』
プリンセスが差し出したカードと、いおながこれまで集めたカードを合わせれば、ファイルがカードで満たされ、願いが一つ叶います。
『姉さんを助けるか?』
まるでいおなを試すように、鏡の閉ざされた姉の姿が映ります。が・・・
『助けたい・・・でも、それじゃあお姉ちゃんを助けられてもみんなを助けられない』 向こうではファントムに苦戦を余儀なくされている三人の姿があります。
『なら、ハンターを消す事を願うか?いっそ幻影帝国を滅ぼすと願うのもありかもしれねえ』
『それでプリンセスの国を救える?ここにいるプリキュアや世界中の鏡に閉じ込められた人たちを全員助ける事が出来る?』『わからねえ。助けられるって保証はねえな』
その間にラブリー、プリンセス、ハニー三人とも、ファントムの返り討ちに遭い、変身を解かれて追い込まれてしまいました。
『それでは駄目な気がする。誰かを助けるとか、誰かを消すとか、そういう願いでは、どこかに不幸が残ってしまう』 いおなの願いは決まりました。プリカードで全て埋まったファイルを閉じ、
『私は、みんなを助けたいの。みんなの願いを叶えたい。この手で、何より今、友達を助けたい!』 そしてプリカードに願います。
『私にプリキュアの力を』と。
『それでこそいおなだぜ!』
ぐらさんをこしょこしょすると、新生キュアフォーチュンのカードとともに、
バンダイ様の新商品フォーチュンピアノが登場。そして新たなキュアフォーチュンが、その姿を現します。
『夜空に煌めく希望の星!キュアフォーチュン!』『再びプリキュアになったところで何になる。俺はプリキュアハンター。プリキュアを倒す狩人だぞ。愚かな』
『・・・そうね。愚かだわ。私はずっと、あなたへの憎しみで戦ってきた。姉の仇を討つために。でも今は守りたい。世界の全てを。こんな私に大切なものをくれた、友達を』 助けに来てくれた「友達」を守るように立ち、ファントムを見据えるフォーチュン。その目は力強さが溢れるものの、憎しみは伺えません。そして改めて、ひめに呼びかけ、
『あなたには酷い事ばかり言って・・・』 振り返り、深々と頭を下げました。
『私の方こそ、ごめんなさい』 言葉に詰まるひめに、ちょっと照れた笑顔でお礼を続けます。
『ありがとう』『・・・フォーチュン』 初めてフォーチュンに向き合ってもらい、ひめの目にも涙が浮かびます。
ファントムの不意打ちを弾き、対等に渡り合うフォーチュン。プリキュアになると言う願いを叶えたのはプリカードですが、今の強さを引き出しているのは、彼女自身の想いです。
『友達を想うフォーチュンの愛が、新たな力を、奇跡を生みだしたんだ』
クロスミラールームでブルーが見守る前で、フォーチュンは静かにファントムへ歩み寄ります。
『私は幸せだわ。姉から愛をもらって、友達から優しさをもらって。私もこんな風に誰かを幸せにしたい』『幸せなど幻。この世界は不幸に滅ぶ運命だ!』
ファントムが打ち出す波動を片手で受け止め、反論します。
『滅ぶのが世界の運命なら、私が変えるわ!このキュアフォーチュンが、希望の星になって、不幸を打ち砕く!』 文字通りファントムの剣を打ち砕き、
またまたバンダイ様の新商品フォーチュンタンバリンからのスターライトアテンションを叩き込みます。
『敗れるわけには行かないッ!ミラージュ様のために・・・』
耐えるファントムを、フォーチュンの力が押し切りました。
『星よ!天に還れ!』 ファントムが落としたプリチェンミラーを慈しむように抱くフォーチュンに、めぐみ達が駆け寄ります。しかし、まだ終わっていません。肩で息をしながら、ファントムは辛うじて立っています。
『何をしているの?』
その時、巨大な鏡の向こうからクイーンミラージュ様が姿を見せました。
この話がリアルタイムで放映された当時、私は感想再開を考えたほど印象深い一編でした。ひめの誠実な謝罪、それに対するいおなの答え。第一話から描かれ、ここ最近特に険悪になっていた両者(というよりいおな)が和解する展開に、心が洗われた気分になったものです。
ひめの良いところは、どんなに逃げ回ったり泣き言を言ったとしても、最後の一線だけは決して譲らないという強さだと思っています。故意ではないとはいえ、重過失を犯してしまった責任は重いです。その責任の重さから目を背け、めぐみやゆうゆうに打ち明けられずにいましたが、その問題を前回までに克服した今、最後に果たすべき責任は「今まで自分に憎悪を向けて来た相手とどう向き合うか」「その相手を苦しめている問題のきっかけを作った自分がどう償うか」でした。
ここで思い出すのは、さだまさしの「償い」です。私はこの曲をよく知っている訳ではありませんが、数年前とある裁判で、裁判官が被告を諭すために引用したという話が心に残っていました。ここで引用はしませんが、改めてその歌詞を読み返してみると、その内容がひめといおなに重なって見えます。
謝り切れない過失を犯した罪は、どう償えばいいのか。一体何が出来るのか。
結果的にプリカードという「物」を償いとして差し出したひめですが、真にいおなに差しだしたものは「誠実さ」だと思います。果たして私は、ここまで誠実に向き合う事ができるのかと、考えさせられた一編でもありました。
同時にいおなにとっても、誠実に対しては誠実で向き合う必要があります。ここで仮に姉を助けたらどうなったのか。ひょっとしてキュアテンダーの実力ならば、ファントムを退けたかもしれません。そしておそらく、ひめもいおなの姉が助かった事を祝福してくれる事でしょう。「お姉さんを助けてあげて」という、ひめの誠意を無にしたわけでもありません。しかし、いおなにとっては納得いく答えでは無い筈です。
ひめに対して、今まで理不尽とも言える態度を取って来たことを、今の彼女は悔やんでいます。ひめに応えるため、ひめを助けるために出した「再びプリキュアになる」という選択肢は、文字どおりファントムからの窮地を助けましたが、同時にひめの心も助けています。これ以上無いほど「あなたは罪を償った」「あなたの気持ちはよくわかった」と伝わる答えは無かったと思いました。
今回は巧みに鏡を織り交ぜた場面構成も見事です。特に、随所にまりあを封じた鏡を効果的に使っており、それがいおなの心境を映し出しているようで印象的でした。ところで鏡に封じられたプリキュア達の中に、キュアマーチ似の子がいたのは気のせいでしょうか・・・
いおなには気の毒ですが、彼女の絶望を抉り出すようなファントムとの戦いも見応えがありました。その中、目を惹いたのは、ファントムに腕を掴まれた時のフォーチュンです。ぴかりが丘最強と言われる彼女の腕は、よく見るとかなり華奢でした。細腕といってもいいくらいです。空手を嗜んでいるとはいえ、本来彼女は普通の少女です。そんな彼女が憎しみを胸に一人戦わざるを得なかったこと自体が悲劇だったと思います。だからこそ、その悲劇の元凶であるひめとの和解が一層際立って感じられました。
先程「物」とともに「誠実さ」を差し出したと書きましたが、もう一つ「愛」も分け与えていると見て取りました。プリンセスがいおなに差しだしたプリカードは、ラブリーとハニーに譲ってもらったものも含んでいます。それは二人からプリンセスが受け取った愛であり、それを結果的にいおなにも分かち合っています。これ以降、ハピネスチャージプリキュアチームが四人になるにあたり、プリカードが皆を繋ぐ希望になっているという事も興味深いです。
そして今回、絶望しかかっていたいおなの前に現れたプリンセスの頼もしい事!今までフォーチュンは逃げ回っていた姿しか見ていなかった筈です。そんな彼女からすれば、大きく成長したと実感した事でしょう。同時にこの上なく頼りがいのある、希望の象徴のようにも。
『友達が戦ってるのに、私一人逃げる訳ないでしょ!』 いおなに謝罪した後、ファントムに向かって啖呵を切る姿からも、逃げ回っていた頃のひめを思うと感無量です。罪からも逃げず、いおなからも逃げず、真摯に向き合った姿からも、彼女の誠意が伝わって来るようです。
第一話から登場しているにもかかわらず、「満を持して」フォーチュンの変身バンクが披露されました。ただ、これは新たなフォーチュンの変身なので、個人的には今までどのような変身を行っていたのか気になります。どこかに裏設定でも転がっていないものでしょうか・・・
あと、「おしりでタンバリン」という伝統も受け継がれていました。そういえばファントム、あなた
前世でもおしりでタンバリン叩く子にやられた気がしますが・・・(笑)
今週は仕事上で顧客から理不尽なクレームをつけられて、少々凹んだものです。その状態でこの話を観る事が出来て、誠意とは何だろうと考えることができて良かったです。まだ解決していないのですが、来週はこの気持ちをバネに、私も逃げずに向き合って行こうという気になりました。
【今回のおめでとうメッセージ/キュアビューティ】
殺伐とした冒頭シーンを癒す一服の清涼剤のような、癒しのオーラと共に水の妖精さんことキュアビューティ登場。こちらこそ宜しくお願いいたしますと言ってしまいそうな癒され感と汚れの無さは流石です。
さすがに
彼女の代名詞「道」は絡めませんでしたが(笑)。
別の意味で代名詞とも言える「鏡」は、本編の方に沢山出て来ましたけれど。