王子先輩が廊下を歩くだけで女子生徒の歓声があがる、おなじみの光景。
取囲まれている先輩を踊り場から見つめる奏は、
今日の王子先輩はいつも以上にキラキラに輝いて見えていますが、
響に言わせればいつもと同じにしか見えません。
キラキラ、キラキラ、キラキラ・・・と完全にあっちの世界に行ってしまった奏に、
音楽王子隊の「はくしゃく」、「ばろん」、「ないと」の3人が声をかけて来ました。
何といっても凄いのは、これが3人の本名だという事で、
『いつ聞いても凄い名前・・・』
テレビの前のお友達の声を代弁するように、響の突っ込みが入りました。
さて彼らの用件は、間もなく誕生日を迎える王子先輩の誕生パーティで、
奏の実家ラッキースプーンを会場として使いたいという事でした。
奏にとっては願っても無い事、張り切って引き受けます。
その日は丁度定休日のため、南野夫妻も快諾。
そして南野一家はラッキースプーンという店名に込められた願いを確かめ合いました。
スプーンは幸運をもたらすラッキーアイテムであり、
食べる人に幸せと幸運を拾って欲しい、そういう願いが込められている事をハミィと奏に語り、
『これで王子先輩に幸せになってもらいたいの。そしたら・・・』
奏はまたしてもあっちの世界へとトリップしてしまいました。
そこは王宮の玉座の間。文字通りの王子様に献上したカップケーキを褒められて、
一緒に踊る事を妄想し、照れ隠しで響を叩きまくる奏。
たまらずハミィの肉球を触らせると、今度は肉球の触り心地に
最高に「ハイ!」ってやつだアアアアアアハハハハハハハハハハーッ状態になってしまう始末。
駄目だこいつ・・・早くなんとかしないと・・・
そんなこんなではありますが、王子先輩のために最高のカップケーキを作り、
最高の誕生パーティにすると、奏は並々ならぬ意欲を燃やします。
一方セイレーンは
前回の偽ミューズ作戦の失敗の苛立ちを、
公園の木で爪を研いで紛らわせていました。
ただの黒猫だと思って、ネコジャラシで気を引こうとする子供を威嚇するなど、
大人気ない一面を見せつつ、みんな不幸になればいいと吐き捨てるセイレーン。
王子隊メンバーと響、奏が、パーティの打ち合わせをしているのを耳にして、
まとめて不幸にする好機とほくそ笑みます。
さて、奏は広辞苑のように厚いレシピ集を持ち出し、やる気満々です。
ラッキースプーンで沢山幸せを掬って欲しいと、文字通り気合のレシピを見せるべく、
響とハミィに試食してもらいながらケーキ作りに精を出しました。
ところが・・・
後日、何人分を用意するかを博尺先輩に相談しようと音楽室へ向かった折、
「姫に元気が無い」とため息を付く王子先輩の発言を聞いてしまった奏の心に動揺が走ります。
王子先輩には「姫」というお相手がいる?またまたあっちの世界にトリップ。
王子様の踊りの相手を、まだ見ぬ「姫」に奪われたショックから、下校した後も立ち直れません。
奏は自室で枕に顔を埋め、響に促されても動かず、ハミィの肉球にも無反応です。
『私、カップケーキ作るのやめる』
すっかり投げやりな奏を、一喝する響。
『王子先輩の幸せを願う奏の気持ちって、そんなものなの?
ラッキースプーンで幸せになって欲しい。その気持ちは嘘だったの?』
その気持ちはもちろん嘘ではありませんが、踏ん切りがつかないのもまた事実。
そんな奏に、響はお菓子作りが苦手ながらも出来る限りの協力を申し出て、
ハミィもまた、文字通り猫の手も貸すと申し出ました。
『奏の気合のレシピ、私達にも見せてよ』
ようやく、奏のやる気に火がつきました。
そして迎えたパーティ当日。王子先輩本人には内緒のまま飾りつけも進み、
この店で次の演奏会の打ち合わせという理由で誘い、驚かせる計画です。
奏は王子先輩のために見事なカップケーキタワーを作り上げ、
そしてハミィもスプーンに音符が潜むのを見つけました。
ラッキースプーンは本当にラッキーを呼ぶようです。ところが・・・
王子先輩をセイレーンが待ち伏せしていました。
エレン様の姿になって、わざとらしく足が痛いと訴え、
心配し病院に連れて行こうとする王子先輩に、家に送るよう頼み込みます。
全く疑う事もなくエレン様を抱きかかえ
(俺と代われ)エレン様が指し示す方向へと連れて行きますが、
その一部始終は原チャリで帰宅途中の美空ママが目撃していました。
パーティ会場には男女を問わず大勢の生徒達が押しかけ、
王子先輩の人柄は広く慕われている事が伺えます。
誰にでも、困っている人に手を差し伸べずには居られないと言う王子先輩。
しかし今はそれが裏目に出て、エレン様を抱きかかえたまま、
言われるがままに川辺へと誘導され、そのままエレン様に眠らされてしまい・・・
王子隊の面々も、約束の時間に遅れている事を気にし始めます。
また捨て犬等を見つけたのではないかと勘繰るも、連絡が無いのもおかしいです。
ちなみにこの際、第4の王子隊メンバー「きし」先輩が唐突に現れて、
またしても響の突っ込みが入るという一面もありますが、
ともかくみんなで王子先輩の捜索に向かいました。
そして、先ほど王子先輩を目撃した美空ママの証言の元、響と奏は河原へ向かいます。
『ゆっくり眠りなさい・・・パーティが終わるまでね』
木に寄りかかるように眠る王子先輩を、不敵に見つめるエレン様。
と、ここまではクールな美少女敵キャラだったのですが、
倒れ掛かってくる王子先輩の下敷きとなって、その衝撃で猫姿になり、
小さな猫の状態では王子先輩の身体を押しのけて抜け出せません。
端から見れば、王子先輩に押し倒されたような状況。
そこに響と奏が駆けつけて、特に奏は何を想像してしまったのか、
真っ赤になってとんでもない勢いで問い詰めます。
『王子先輩になななな何したの!?』
『ちょ・・・ちょっとだから・・・』
ようやくエレン様姿になって抜け出したものの、奏に口を挟む隙がありません。
『だから何をしたの?何をしたの?何をしたの?何をしたの?
この泥棒猫』
『やっかましいわ!やっかましいわ!やっかましいわ!やっかましいわ!』
奏とエレン様の間に、実に、実に低レベルな言い争い(苦笑)が繰り広げられますが、
ハミィの持つスプーンに音符が潜んでいるのをエレン様は見逃しません。
ネガトーンと化したスプーンによって、王子先輩は不幸の音波を浴びせられ、
悪夢にうなされ始めました。
よりによって誕生日に王子先輩を不幸にした事に憤り、変身する2人。
早速ネガトーンへと挑みかかろうとしたメロディは、唐突に石に躓いて転んでしまい、
リズムもまた風に飛ばされてきたビニール袋が顔に絡みつく等、異様に運が悪く、
2人同時に向かって行こうとすると、同時にバナナの皮を踏んで転倒する始末。
きちんとバナナの皮をゴミ箱に捨てるプリキュアに(笑)
頑張って準備した事が全部無駄になっていい気味だと言い放つエレン様。
『そんな事のために王子先輩の誕生日を利用するなんて・・・』
憤るリズムにネガトーンが迫り、また不運でやられてしまうと目を背けるハミィですが、
リズムは負けずに攻撃をしっかりと受け止めていました。
続けてメロディも、再び石につまづいても持ちこたえ、
2人がかりでネガトーンを投げ飛ばします。
そしてミラクルハートアルペジオとファンタスティックピアチェーレで撃退。
目を覚ました王子先輩は、何事も無かったように立っているエレン様を目の当たりにしました。
足が痛いとは嘘だった、などと疑うことも無く、
素直に足が治って良かったと喜ぶ先輩に恥じ入ったのか、
エレン様は顔を赤らめて目を伏せ、走り去って行きました。
そして、王子隊の面々が迎えに来ます。
遅れていた誕生パーティが始まり、プレゼント攻勢に出る女子達に
負けじとケーキタワーを渡しに行こうとする奏ですが、
折角のタワーの上のケーキは、半分になっていました。
カップケーキをもっと食べたいというみんなの声に応えて、
奏太が配って回っていたという状況に、一瞬緊迫した空気が張り詰めますが・・・
奏は奏太を怒鳴ることも無く、手伝ってくれた事のお礼を言いました。
ケーキタワーのプレゼントは無くなっても、お祝いの気持ちは届けられます。
ちなみに、王子先輩の「姫」とは拾った子犬の事で、奏の心配も杞憂に終わりました。
そして王子先輩からは、プレゼント以上に大切な友人達が
幸せにカップケーキを食べている姿を見られたのが一番嬉しいとお礼を言われ、
この場のみんながラッキースプーンで幸せを掬う事が出来ました。
前回の予告で、エレン様を抱きかかえる王子先輩、押し倒された形のエレン様を見た時、
ネタとして楽しめそうな一編だとは思っていましたが、まさかこれほどとは・・・(笑)
開始から5分と経たない内に、何度と無くぶっ壊れる(褒め言葉です)奏に
笑いが止まりませんでした。
キラキラ、キラキラとトリップしてしまったり、王子様とのダンスを妄想したりは
「ひまわりって呼んで」の咲や、
藤Pとのケーキ入刀を妄想したなぎさに通じるものがありますが、
それに続く肉球によるハイテンションぶりは奏ならではのもので、
まさかこんなところに
肉球フェチという設定を活かして来るとは・・・侮れません。
音楽王子隊のメンバーの名前のインパクトも強烈で、
「王子」以下「博尺」「馬論」は漢字も明らかになりましたが、
残りの二人はおそらく「内戸」「岸」といった漢字なのでしょう。
(追記:後で知りましたが、正確には「無戸」「貴志」のようです。)
奇面組のようなありえない名前の数々に思わず突っ込みたくなるのを、
響が見事に代弁してくれるのも小気味良かったです。
彼女は今後突っ込み役としての地位を確立していくのでしょうか?
当初は想像できなかったのですが、案外似合っているようにも思えます。
そしてエレン様。登場早々爪を研いだり、ネコジャラシに誘われたり、
子供に当り散らしたりしたかと思えば
王子先輩をたぶらかす悪役ぶりもしっかりと務めていました。
これが(偶然とはいえ)押し倒されてから再びギャグキャラとなり、
奏との低レベルな言い争いからは
2週前のシリアスな姿が想像できません。
また、ネガトーンを生成するためだけに黒猫姿になった後、
再びエレン様姿になって、この姿でネガトーンを指揮する姿も新鮮でした。
バスドラがあのままネガトーンを生み出せるので、
エレン様姿で「出でよネガトーン!」をやっても良いと思いますが・・・
今回のエレン様を見ているとメフィストの洗脳効果に疑問が残りますが(苦笑)
これが結局はセイレーン=エレン様の素の性格なのでしょう。
立場はともかくとして、性格までは変えられないと言うのは、
深読みすればメフィストも同じ事ではないかと考えさせられました。
立場は敵側の親玉ですが、あのように軽い性格のため、
やはり
何らかの形で利用されている線が強そうです。
バナナの皮で滑るといった古典的描写や、その後ゴミはゴミ箱に捨てる等、
戦闘中の表現もインパクトが強く、楽しませてくれる一方で、
「運」と「不幸」について、そして奏太に対する奏の態度などにメッセージ性を感じさせます。
運が悪いというのは、確かにその人のせいではなく、
不運としか言いようの無い事態に陥る事も多々あります。
しかし、そこから抜け出そうと務めることで、幸運を掴むきっかけはあるでしょうし、
そもそも不運に浸ったまま行動しなければ幸運を得る事はできません。
奏があのまま投げやりのままだったとしたら、
王子先輩の「姫」の意味も知らず、誕生パーティも無になってしまい、
誰も幸せを掬う事など出来ませんでした。
今回、響は奏を励ます際、少し強めに言っています。
『ラッキースプーンで幸せになって欲しい。その気持ちは嘘だったの?』
奏にとって嘘ではなかった筈ですが、本当でもなかったのではないでしょうか。
奏は王子先輩を幸せにする事よりも、王子先輩に自分が褒めてもらいたいために
パーティ準備やケーキ作りに励んでいたのは否定できません。
立ち直るきっかけは、手伝いを申し出てくれた響やハミィの姿に打たれたのも勿論ですが、
実は自分のためだったと知らしめられたからこそ、
真に王子先輩のために立ち上がれたのだと思います。
そして奏太がケーキを配ってしまったと知った際、一瞬緊迫した空気が流れましたが、
これも
当初の奏ならば、頭ごなしに奏太を怒鳴りつけた事でしょう。
しかし、そもそもケーキタワーはみんなに食べてもらうために作ったもので、
王子先輩に褒めてもらうためだけに作ったものではありません。
奏太がみんなの事を思って動いたと察してからは、大人の対応を取っていました。
第6話からだけでなく、今回の一編の中でも奏が変わっている事が感じられます。
また、ラストでハミィは、みんなが幸せを掬う事が出来たと口にしますが、
この場に居ないエレン様も、不幸一辺倒ではなく幸せを掬えたと考えたいです。
足が痛いと言ったのは狂言でしたが、それを王子先輩に気づかれる事も無く、
仮に気付かれていたとしても王子先輩の性格からして、罵倒するような事は無かったでしょう。
退散する前、エレン様は顔を赤らめていますが、
王子先輩の懐の深さに触れたからだけでなく、欺いた事を恥じているようにも思えます。
そして恥を知る事が出来るのならば、
いつかきっと悪の道から抜け出せると信じたいものです。
音符を回収した後のハミィの台詞も意味深です。
「だいぶ音符が集まってきた」から「もうすぐ幸せのメロディが完成する」
に変わっており、中盤で早くも楽譜が完成してしまうのでしょうか。
と言う事は、中盤以降の目的が全く異なるものとなるのか、それとも・・・