衰弱したフェアリートーンを助けるには、メイジャーランドを訪ねるしかありません。
響は自分だけに聞こえるクレッシェンドトーンの声が言う事を、奏とエレンに打ち明けました。
メイジャーランド出身のハミィとエレンも、クレッシェンドトーンの存在を知りませんが、
考えていても始まりません。とにかくメイジャーランドへと行ってみる事になりました。
ハミィは天に向かう虹色の鍵盤を作り出し、その彼方がメイジャーランドへと通じています。
おっかなびっくり足を踏み入れる響でしたが、すぐに慣れてスイーッとその上を飛んで行き、
奏もエレンに手を引かれるままにメイジャーランドへの空の旅へと出発しました。
その一部始終は、トリオ・ザ・マイナー達が目撃しています。
彼らはすぐさまメフィストへ報告し、プリキュアを倒すチャンスだと進言しますが、
クレッシェンドトーンを目指していると知ったメフィストは、捨て置くよう指示しました。
メフィストは響達が目指す場所がどんなところかを知っており、
放っておいても太刀打ちできずに自滅するだけだと考え、
むしろマイナー達には響達の不在中に音符を集めるよう指示します。
『今日こそプリキュアの、最期だ・・・』
いつになく重々しく、渋く決めるメフィスト。
しかしその顔と口調には、どこか己の過去を省みるような、複雑なものが見受けられます。
宙に舞うコンサートホール、ハミィが魚を取った思い出の湖、
セイレーンが子供の頃迷子になって泣いちゃった場所など、
上空から見下ろすメイジャーランドの美しさに目を見張る響達。
しかし今回は遊びに来たわけではなく、早速アフロディテに謁見します。
アフロディテは初めて本当の対面をする響と奏、そしてここまで導いてきたハミィを労い、
続けてクレッシェンドトーンについて説明を始めました。
クレッシェンドトーンとは世界のすべての音を生み出した音の精霊であり、
フェアリートーンもクレッシェンドトーンから生まれたものです。
クレッシェンドトーンが宿る伝説のアイテム、ヒーリングチェストは、
ある時強大な闇がメイジャーランドを襲った際に奪われてしまいました。
以来ヒーリングチェストは決して近づいてはならないと言われる禁断の森、
「魔境の森」へ封印されてしまい、
これまで封印を解かんと幾多の者が挑んだものの、誰一人として成功した者はおりません。
それでも、アフロディテはクレッシェンドトーンが直接呼びかけたのには意味があると考え、
3人の力を合わせてヒーリングチェストを取り戻すよう命じました。
ここで決めなきゃ女が廃ると、いつもの決め台詞で引き受ける響達。
フェアリートーンを救いたいという心に反応してモジューレが光り輝き、
アフロディテの力と合わさる事で、フェアリートーン無しで変身を遂げました。
必ずヒーリングチェストを手にしてフェアリートーンを救うと誓い、魔境の森へと急ぐ3人。
大いなる試練を予感しながら送り出したアフロディテも、皆を信じて待つしかできません。
メイジャーランドとマイナーランドの狭間の空間こそが魔境の森の入口です。
混沌とした入口に、メロディは意を決して一歩踏み出しますが、真っ暗で何も見えません。
と、次の瞬間、その中へと引きずり込まれて行く3人とハミィ。
気がついた時、みんなが異なる空間に分断されていました。
枯れ木が立ち並び、霧が立ち込める、不安を掻き立てるような空間。
そして、3人それぞれの前にモアイの顔を持つ筋骨隆々のゴーレムが立ちはだります。
拳に真っ向から拳をぶつけるメロディ、巧みに拳を交わし続けるリズム、
対等に渡り合うビート、それぞれの持ち味を活かして立ち向かうも、
受けて立つゴーレムはそれぞれの特性、弱点を読み取り、
どんなにあがいたところで闇の力には太刀打ちできないと言い放ちます。
『やってみなきゃ、わかんないじゃない!』
『私達は負けない!例え離れ離れになっていても』
『絶対フェアリートーンを助ける!』
互いに分断されていても、それぞれが強い意志を持って歯向かう3人に、
ゴーレムの口から迸る赤い液体が襲いかかります。
汚い攻撃だなぁ・・・『かつて多くの者がヒーリングチェストを求め、魔境の森に挑んだ。この俺も。
しかし、どんな強靭な心の持ち主も闇の力に心を奪われ、闇の下僕になった・・・』
衝撃的な事実を語り、プリキュアの敗北を確信するメフィスト。
同じ頃、アフロディテは3人を信じています。
『あの3人なら、必ず乗り越える筈。どんなに離れていても、3人の心は通じているのだから』
立ち上がる3人に、ゴーレムは仲間を信じている事こそ弱点であり、
一人一人では何の力も無いと言い放ちます。。
しかし、離れた場所にあっても3人はそんな言葉に惑わされません。
『例えバラバラでも!』抗うメロディに、
『仲間を信じる心が私達の力になる!』リズムが続き、
『私達の心のビートは誰にも・・・』ビートの決め台詞に続いて
『止められない!!!』3人同時に、別々の場所でゴーレムに鋭い一撃を叩き込みました。
このまま3人の快進撃は続く、と思われますが・・・
その時、空の彼方からあの洗脳装置が降って来ました。
たちまち悪のノイズが3人を襲います。
『友情、愛情、信じる心。そんなものはまやかしだ!忘れてしまえ!』悪のノイズに苦しみながらも、メロディは今どこかで同じように戦っているリズムとビートに、
否、「奏」と「エレン」に呼びかけました。
『奏、聞こえてる?私、嬉しかったよ。
子供の頃みたいにまた奏と仲良しになれて。
時々ケンカもするけど、私は奏とお喋りしたり、ピアノを弾いたりしている時が一番幸せなんだ。
私また、奏の作るケーキが食べたい』
『エレン、そこに居るよね。
エレンは誰よりも悩んだり苦しんだりしてたよね。 でも、憎しみの心を断ち切ってプリキュアになってくれた。私達の友達になってくれた。
信じていれば、想いは通じるんだよね?』
「奏」も「エレン」も、メロディの、いや「響」の言葉に耳を傾けます。そして
『私達はどんな事があっても、ずっと、ずっと、ずっと・・・友達なんだぁっ!』
砕け散る洗脳装置。と同時に、分断された3つの世界が一つになりました。
ようやく合流を果たす3人。しかしそれはゴーレムも同じ事です。
業を煮やした3体のゴーレムは合体して巨大化、さらにハミィとフェアリートーンを盾に取り、
容赦なく攻撃を仕掛けてきます。
手の出せないプリキュア達を目の当たりにしたハミィは、
見かねて自分に構わず戦うよう訴えますが、3人はハミィを見捨てるなどできる筈がありません。
それでも容赦なく攻撃を叩き込まれて、ついに変身が解けてしまう3人。
『みんな・・・立って・・・立ってニャ!』
溢れる涙と共に訴えるハミィの前で、響が、奏が、エレンが無残に倒れ伏しました。
『こんな下らない命のために、自らを犠牲にするとは愚かな奴らだ』
吐き捨てるようなゴーレムの一言が、3人の闘志に火をつけます。
『許さない・・・絶対に、許さない・・・!』
『よくも・・・くだらない命って言ったわね!?』
『必死に・・・生きようとしているのに・・・』
命に大小は無く、かけがえの無い命を踏みにじる行為を前に、
まるでスーパーサイヤ人(笑)のようなオーラを纏い、3人は再び立ち上がります。
『絶対に許せない!!!』
再び3人はプリキュアの姿を取り戻しました。
フェアリートーンの力を借りずとも、3人にはハーモニーパワーがあります。
互いに手を取り合い、3人の力を合わせて繰り出す友情の力、パッショナートハーモニー。
ゴーレムはその直撃を受けても意に介せず、一笑に付しますが、
ハミィの呼びかけと共に、3人のハーモニーパワーがハート型のト音記号となって
波動を伝わり、ゴーレムの胸を打ち抜きました。
『轟け!3人のハーモニーパワー!響き渡れ!』
その身体を虚空に散らしながら、
ゴーレムは最後に意味ありげな高笑いを残して消えて行きます。
『だがこれは終わりではない。始まりだ!』
ゴーレムが消えると同時に魔境の森も消え失せ、穏やかで美しい光景が広がりました。
目の前の岩山の頂には、天の逆鉾よろしく鍵が突き刺さっています。
促されるままに鍵を引き抜くメロディ。
その鍵が指し示す方向に扉が現れ、鍵が扉を開けると、
奥に鎮座するヒーリングチェスト、その中からクレッシェンドトーンが現れました。
フェアリートーン達はクレッシェンドトーンの招きに応じてヒーリングチェストに収まり、
その鍵盤をメロディが鳴らすと、フェアリートーン達は無事に回復します。
『私は信じていました。またプリキュアとして、成長しましたね』
帰還した3人を労うアフロディテに、ヒーリングチェストを献上しようとする響。
しかしアフロディテは、クレッシェンドトーンが3人を選んだとして、
ヒーリングチェストを響達に委ねます。
満月の下、虹色の鍵盤を辿って加音町へと戻る響達。
『あの3人なら、ヒーリングチェストの力を使いこなせるかもしれない・・・』
果たしてチェストを響達に遣わしたアフロディテの真意とは、一体・・・?
いわゆる「販促回」にあたる今回ですが、まず第一にメフィストの発言が印象に残り、
メイジャーランドとマイナーランドの今後の展開が大いに気になりました。
メフィストが語る内容は、あまりにも簡単に流されてしまいそうですが、
「この俺も」かつてヒーリングチェストを求めたという事が重要な意味を持ちそうです。
マイナーランドの王として邪魔な存在を葬るために魔境の森へ挑んだのではない事は、
その後に続く「どんな強靭な心の持ち主も闇の力に心を奪われ、闇の下僕になった」からして、
それが
かつてのメフィストである事が伺えます。
という事はもともとメイジャーランドに属し、ヒーリングチェストを奪還するための勇者として
挑んだ結果、
例の洗脳装置の餌食になってしまったと観るのが妥当と思えます。
そうなると、メフィストの以前により大きな絶対悪がメイジャーランドを襲い、
ヒーリングチェストを奪い去った後、メフィストが悪堕ちしたという時系列になりますので、
彼を操る巨悪の存在が明確になったように思えました。
『友情、愛情、信じる心。そんなものはまやかしだ!忘れてしまえ!』
ゴーレムが口にする台詞、これは
かつてメフィスト自身が口にした言葉ですので、
メフィストを操り、ゴーレムを操る者の考えが如実に表れた言葉なのでしょう。
そして、メフィストのそうした事情をおそらく知っていると思われるアフロディテが、
多くを語らない事が事情を複雑にしています。
果たして彼女はどこまで知っていて、何かを隠しているのか・・・?
今までも、そして今回も見せる思わせぶりな表情の数々が、大いに気にかかりました。
ヒーリングチェストの封印を解く鍵も妙に禍々しいデザインをしており、
これにも何か意味があるのか、また新たな謎が生まれたように思えます。
さて、
響と奏は一度セイレーン時代のエレンによって分断される経験をしています。
その
エレンにしても、彼女の立ち位置そのものがハミィやメイジャーランドと分断されていたと言えます。
3人はいずれも一人での戦いを強いられた事があり、
このために今回は分断されたと言えども決して屈しなかったと考えました。
今回のストーリーに問題が無いとは言えません。
しかし分断された状況で互いを信じ、心を通わせることで悪のノイズやゴーレムといった、
襲い来る相手を打ち破って行く展開は、王道の展開ではありますが、
王道だからこそ燃えるものがありますし、王道だからこそ見ていて爽快感があります。
そして、響がこの物語の主人公たりうる姿勢が見受けられ、この点でも心強さを感じました。
リズムやビートに真っ先に呼びかけるのはメロディであり、
しかも「キュアメロディ」としてではなく「響」として「奏」と「エレン」に呼びかけます。
今戦っているのはプリキュアとしてではありますが、
いざ困難に陥り、友情を否定する相手に対して、友達として呼びかける姿から、
プリキュアである前に響として、奏やエレンと過ごした日々を大切にしたい。
そしてこれからも大切にして行きたいというような意志が伺え、
「プリキュアである前に日向咲」
かつて
SSで咲がはっきりと言い切ったこの言葉が思い起こされました。
そしてエレンに呼びかける際のメロディのあまりのイケメンぶりに改めて惚れ直しました(苦笑)
欲を言えば、洗脳が解けて初めての帰還となるエレンが
裏切ってしまった祖国に対する後ろめたさを感じる場面が欲しいと思いました。
アフロディテにしても何らかの言葉をエレンに対してかけて欲しかったのですが、
そこはエレンの古傷に触れるような真似をしなかったのだと好意的に解釈する事にします。
また、パッショナートハーモニーを3人で放つからには
さぞやラブラブでお腹いっぱいになりそうなものになるのかと思いましたが・・・
こちらはわりと普通で、ちょっと肩透かしを喰らった気分です。
おそらく今後新たな技が展開されることでしょうし、
ヒーリングチェストを用いた戦いぶりもあると思われますので、
「ラッキークローバー・グランドフィナーレ」「ハートキャッチオーケストラ」のようなインパクトのある大技が出る事を期待しています。