赤い月が煌々と燈る下、歌おうと促すドドリーにも耳を貸さず、
ミューズは一人物思いにふけっています。
ドドリーはミューズの迷いはわかるとした上で、
プリキュアに相談すれば力になってくれると切り出しますが、
ミューズは口元を歪め、ドドリーを振り切って月夜へと飛び立ちました。
その苦悩を理解する者は、本当は誰もいないのでしょう。おそらくドドリーでさえも・・・
一方同じ空の下とはいえ、トリオ・ザ・マイナーは呑気なものです。
七輪に炭火で網焼きの焼肉と、ある意味贅沢な晩餐を満喫していました。
とはいえ、彼らにも
前回の失敗を報告しなければならないという目先の問題はあります。
誰が報告するかを互いになすり合っているうちに、
先手を打つようにメフィストの怒号が響き渡りました。
いつものように鏡からではなく、メフィスト本人登場にうろたえるマイナー達。
メフィストはもう彼らに任せておけないと音符収集を自分でやると宣言し、
彼らをマイナーランドで楽譜を守るという閑職に事実上の左遷を言い渡しました。
不幸の楽譜を完成させて世界中に悲しみをばら撒くと
自信たっぷりのメフィストの高笑いが響く最中も、
マイナー達の懸念は肉が焦げるという程度のものでした(笑)
学校からの帰り道、ミューズの守りたいものとは何なのか考える響たち。
プリキュアとしてみんなの幸せを守るのであれば、
幸せのメロディを完成させたい筈なのに、音符を集めているようには見えません。
クレッシェンドトーンに聞いてみようとしてみても、
相変わらず肝心なところでは眠っています。
一人寂しそうにドングリを見つめているアコの元へ、
奏太が竹馬の上達ぶりを見せつけに来ました。
アコは自慢げな奏太を、へっぴり腰だといつものように素っ気なく切り捨てた折、
大きな木の上に登って降りられなくなってしまった子猫を見つけました。
竹馬で助けようとするも、あっさり転倒する奏太から竹馬を借りたアコは、
足場を高くして軽々と飛び乗り、巧みに竹馬を操って子猫に手を伸ばします。
『おいで。大丈夫、怖くない』
これまで見せた事のない優しい笑顔で手を伸ばすアコに、
子猫も思い切って飛び降りて無事救出に成功。
その一部始終を見ていた響達は、普段見られないアコの優しさを知りますが、
当のアコは赤くなり、照れを隠すように竹馬を奏太へ押し返して走り去りました。
ラッキースプーンのテラスでお茶をしながら、
奏は先ほどのアコの後ろ姿にミューズを重ね合わせ、
何かを守りたいという気持ちは優しさであり、
それを持っているミューズも優しい人ではないかと考えていました。
響もこれまでミューズが手を貸してくれた事を思い出しますが、
誰の観方でも無いという発言の意味が解りません。
素直になりたいけれど、なれないのではないかと切り出すエレンも、
かつてのセイレーン時代と同じだと言われて真っ赤になりました。
ともかくいつの間にか起きたクレッシェンドトーンも、
ミューズが心を開く時を待とうと穏やかに言い含めました。
その時は、そう遠くなさそうです。
さて音楽の町に相応しく、今日も加音町の街角では
街の皆さんによるアンサンブルが行われています。
ところがそこにメフィストが現れ、聴く者を和ませる音楽など不愉快なだけだと、
ヴァイオリン、フルート、ギターをネガトーン化。
キングギドラのような3つ首のネガトーンが街中に悲しい音を響かせました。
不幸の音が街を圧していると察する響たち。
そして音吉さんもメフィストの来襲を懸念しています。
メフィストの活躍ぶりは、マイナーランドでもトリオ・ザ・マイナー達が観戦しています。
『よぉーし、いいぞメフィスト!』
バスドラがメフィストを呼び捨てにしているのを聞いて驚くバリトンとファルセット。
バスドラも口を滑らせたのに気付き、興奮してつい、
と言い訳したあと「様」をつけて改めて声援を飛ばします。
広場に駆けつけた響達は、再び加音町に現れたメフィストの姿に驚くも、
ただ自分たちをおびき出すためだけに町のみんなを苦しめた事に憤り、変身。
早速ネガトーンと激しく渡り合い、即座にパッショナートハーモニーを打ち出しました。
メフィストもマイナービーム(なんと直球ストレートなネーミング(笑))で受けて立ち、
拮抗する2つの力は、メフィストに軍配が上がりました。
押し返されて倒れた3人にとどめの一撃が迫ろうとしているその時、
ミューズが屋根を飛び越えて颯爽と駆けつけ、防音壁で3人を守ります。
ミューズとは初対面となるメフィストは、
これまで邪魔をされた事の数々を苦々しく思いながら、
何者で何が目的なのかを問いますが、ミューズは拳を強く握り、それには答えません。
ネガトーンの標的はミューズに代わり、次々と襲いかかる攻撃をかわしつづけるも、
流石のミューズも次第に追い込まれて行きます。
メフィストは避けるばかりで反撃しないミューズを、
音楽の女神の名を名乗る割には見かけ倒しだと蔑み、
直撃を受けて倒れたミューズを見下ろして高笑いを上げますが・・・
『ミューズをそれ以上馬鹿にしないで!』
先程ミューズに助けられたメロディたちが、今度はミューズのために立ち上がります。
『ミューズは何かを守る為に頑張っている!』
『大切なもののために頑張る優しい心の持ち主なの』
『それ以上ミューズを馬鹿にしたら・・・』
3人が手を繋ぐと共に、ハーモニーパワーが次第に高まって行きました。
『私達が絶対許さない!!!』
『守りたい?下らん。この世に守る価値のあるものなど何もない』
一笑し、ネガトーンを3人へネガトーンを差し向けるメフィスト。
しかし高まるハーモニーパワーはネガトーンを突き飛ばし、
そのままクレッシェンドトーンとともにスイートセッションアンサンブルの体勢へ。
ネガトーンを撃破した後もその勢いは止まらず、
そのままメフィストへと突っ込んでいきます。
メフィストは受け止めようと放った攻撃を跳ね返されて狼狽を浮かべ、
同時にミューズの顔色が変わりました。
『メフィスト覚悟!』
突如、ミューズがメフィストとの間に割って入り、庇うように両手を広げました。
思わず軌道を逸らすクレッシェンドトーン。
そしてスイートセッションアンサンブルの力はそのまま消え失せ、
突然投げ出されて尻餅をつくメロディ達。
ミューズがメフィストを庇った事は、マイナーランドで観戦していたマイナー達も、
メイジャーランドで様子を伺っていたアフロディテにも意外でした。
しかし、アフロディテは何やらミューズの素性に思いあたるフシがあるようです。
『キュアミューズ。あなた、まさか・・・?』
ミューズの行動に、メロディ達はおろかメフィストさえも戸惑いを隠せません。
それでもメフィストは気を取り直してフェアリートーンを旋風で飛ばし、
その中に収められた音符を全て一気に吸い取りました。
『礼を言うぞキュアミューズ。お前のおかげで全ての音符を奪い取る事が出来た』
ミューズは言葉を発せず、ただ歯を食いしばり耐えるしかありません。
『これで不幸のメロディは完成する』
何とか阻止しようとするメロディ達を尻目に、
メフィストは音符と共に、旋風を巻き起こして引き上げて行きました。
『ミューズ。あなたの守りたいものってメフィストだったの?』
仮面の下の瞳に苦悩を滲ませながら、背を向けるミューズ。
『なぜ黙っているの?』
その問いに答えず、背を向けたまま立ち去るミューズを追って
慌ててドドリーが追いかけました。
果たしてミューズの正体は?目的は?
そして、このままでは不幸の楽譜が完成し、世界は悲しみに包まれてしまう・・・
大きな懸念を残したまま、次回へと続きます。
今更言うまでもありませんが、
ミューズは言葉を発しないという制作上の縛りがあります。
そのために彼女の内面に関しては、代弁して喋るドドリー以外では
表情や仕草で表すしか表現する術がありません。
そのドドリーにしても、ここ最近はミューズと完全な意思の疎通が出来ていないようで
実質的には表情と態度から読み取るしか無いのですが、
その表情づけが実に秀逸でした。
ドドリーの気遣いはわかっていても、思うように出来ない苛立ちを見せる冒頭から、
メフィストと相対し、初対面の言葉を交わされた際の複雑な表情、
そしてメフィストを庇ったが故に音符を奪われた結果に繋がってしまった苦悩と、
メロディ達に全てを語れない歯がゆさ。
これらは言葉を伴わないが故に、見ていて直接心に響いてくるような印象を受けました。
中でもメフィストにとどめの一撃が迫ろうとする瞬間の表情と、
メフィストを庇った直後の表情のインパクトがありました。
特に後者は、頭で考える前に体が動いてしまったとでもいうような、
自分でもこのような行動を取ってしまった事に驚いているようにも見え、
冷静に思えた彼女の内に秘めた心境がにじみ出ているようにも思えます。
ミューズの正体については次回で明らかになるようですので、
ここでいろいろと推察を巡らす事はとりあえず置いておき、
本編中気にかかった点を挙げてみたいと思います。
まずアコの振る舞いの内、奏太が来る前に寂しそうにドングリを見つめていますが
これは何を意味しているのでしょうか。
ドングリは「種」であり、「果実」でもあります。
親である「木」が生んだ子のようなものですが、木を「大人」と見ると、
ドングリは大人の傍を離れなければならない子供の暗喩のように思えます。
子供なのに大人、すなわち親や家族と離れている(と思われる)アコが
ドングリと自分を重ね合わせているように思えました。
だからこそ、この寂しげな表情の直後の優しい笑顔が光っており、
その逆として寂しげな振る舞いもまた印象的です。
メフィストの発言のうち、「この世に守る価値のある者など何もない」
というものも気にかかりました。
現在並行して観ている5GoGoに於いて館長が口癖のように言う言葉に近く、
普通であればよくある悪役の台詞だと流すものなのですが、
今回はそのメフィスト自身が「守られている」事に意味がありそうです。
すなわちメフィストも守られる価値がある者であり、
今後の彼の描かれ方、そして進む先がどうなるのか、気になります。
唐突にメフィストを呼び捨てにしたバスドラの正体も意味深です。
ついうっかり口を滑らせたような言い訳っぷりと、
直後のバリトン、ファルセットの反応がわりと軽い事も相俟って
以降はあまり引っ張られる事はありませんでしたが、
バスドラがメフィストの配下ではない事の伏線と思われます。
それをバリトンとファルセットも知らないように見えるので、
おそらくバスドラだけがマイナー達の中で特殊な存在なのでしょうか・・・?
メフィストを操る者がいるとすると、バスドラはその配下で、
メフィストを監視する意味合いを持っていそうです。
ただ、かつてスプラッシュスターでは
No2と目されたゴーヤーンが真のラスボスだったと言うどんでん返しがありましたが、
さすがにバスドラがラスボスというのは無さそうな気がします。
ゴーヤーンもアクダイカーンの腰巾着のようで一見強そうには見えず、
かき氷で頭痛になったり、
屋台でお面を売っていたり、
キントレにつきあわされて悲鳴を上げたりといったコミカルな一面もありましたが、
満と薫の粛清に一役買ったり、
フラッピとチョッピを連れ去ったりと、
仕事は常に確実にこなしており、そこに恐ろしさを秘めていました。
その点バスドラは仕事の結果があまりにアレなので、多分違うとは思うのですが・・・?
さて全く話は変わりますが、色とりどりのカップケーキをアピールするためか、
スイートにおける食べ物の描写は丁寧で、以前でも
すき焼きと
食後のうどんをすする様がグルメ番組並みのクォリティで描かれていました。
今回の焼肉も、肉の上に脂が浮いている等表現が細かく、
思わず食べたくなるような見事さで、ミューズの表情ともども
プリキュアシリーズのスタッフの皆様の力量に感嘆した次第です。
そのため、このような質の高さを持つ皆様に作り上げられた、
大波乱が予想される次回の展開が大いに楽しみになりました。
(まさか仮面を外したところで次回に続く、とかは無いと思いますが・・・)