アフロディテの下に、メイジャーランドの女性騎士がトリオ・ザ・マイナーを捕らえたとの情報が、
お付のオウムによってもたらされました。
謁見の間へ出向いてみると、確かに縛についたバリトンとバスドラ、
そして平伏する騎士の姿があります。
アフロディテに名を問われたその騎士が名乗る名は・・・
『私は、かつてメイジャーランドの三銃士と謳われた英雄の一人。ファルセット様だ!!』
騎士の衣装をかなぐり捨てて立ち上がるのは、大方の予想通りファルセットです。
同じくバリトンとバスドラも縄を切って立ち上がり、
奇襲を受ける形になったアフロディテは、そのままマイナーランドへと拉致される羽目に・・・
オウムの報告を受けたメフィストが事態を察した頃には時既に遅く、
メフィストの眼前でアフロディテはマイナーランドへと連れ去られる所でした。
妻の名を叫ぶ王、夫の名を叫ぶ女王。吹き荒ぶ風が、メイジャーランドの花を散らします。
調べの館のオルガンは、完成に近付いているとはいえ、まだ微妙なチューニングが必要です。
一刻も早い完成と、それまでの間不幸のメロディ完成阻止に意気込む響達。
その矢先、水鏡からファルセットが呼びかけてきました。
妙ににこやかな呼びかけとは裏腹に、水鏡の向こうには捕らわれたアフロディテ、
そして彼女に鋭い爪を向けるバスドラとバリトンの姿があります。
アフロディテを人質にモジューレを要求する手口を前に、
響と奏は
前回一瞬でも悪の心が消えたバスドラとバリトンに対して呼びかけます。
『こんな酷い事をして、何とも思わないの?』
『誰かを悲しませたところで、結局は自分も悲しい想いをするだけじゃない』
バスドラとバリトンに戸惑いの色が浮かび、
『ノイズは不幸のエネルギーを手に入れるためにあなた達を利用しているだけよ』
かつての上司、そして
同様に利用されていたエレンの言葉を受けて、
いよいよ彼らの戸惑いは募るばかり。
その状況を察したのか、ファルセットは一方的に要求を突きつけて会話を打ち切りました。
『とにかくマイナーランドへ来るのだ。迷っている時間は無いぞ』
『ぬわーーっっ!!』
水鏡が消えた調べの館に、突如響き渡る雄叫び(笑)。
メフィストが駆けつけました。父の姿に安堵して駆け寄るアコ。
メフィストも派手な登場が恥ずかしかったのか、はたまた娘への照れ隠しか、
軽く咳払いをした後、必ずアフロディテを助けるとアコを宥めます。
メフィストはトリオ・ザ・マイナーの行動はかつての自分が蒔いた種であり、
自分ひとりでマイナーランドへ踏み込む決意を口にしました。
アフロディテの身の安全のためにはモジューレを渡すという最悪の状況も
考慮しなければならないと案じたエレンは、
そうなればノイズが完全復活してしまうと音吉さんに諭され、
モジューレを固く握り締めて決意を新たにしました。
響と奏も顔を見合わせて頷き、マイナーランドにみんなで乗り込む決意を固めます。
「モジューレは絶対に奪わせない」「アフロディテも必ず取り返す」
両方やらなくっちゃあならないってのが、プリキュアのつらいところです(嘘)
音吉さんに見送られて、響達はいざマイナーランドへと赴きました。
マイナーランド。そこは淀んだ空気に包まれて、混沌を絵に描いたような奇怪な世界。
宮殿に捕らわれたアフロディテの前に、案じたとおり響達がやってきました。
『私の事なら心配いらないわ。それよりもモジューレは決して渡してはいけません』
人間界に戻るよう毅然とした態度で言い含めるアフロディテを鼻で笑うファルセットの前に、
次々と滑り降りてモジューレを掲げる4人。
前回の失策を繰り返さぬためか、しっかりと本物である事を確認した上で
ファルセットは改めてモジューレを要求しました。
アフロディテ開放が先だと主張する響の要求は一蹴され、
バスドラとバリトンの鋭い爪が、アフロディテに突きつけられます。
それでも響は、顔色を変えるアコを冷静に制して、
ファルセットと堂々と駆け引きを続けます。
『もしもアフロディテ様に手出ししたら、この場でト音記号ごとモジューレを破壊するわ!
私達はプリキュアになれなくなるけど、あなた達も不幸のメロディを完成できなくなるわ!』
苦虫を噛み潰したようなファルセット、不愉快そうにギャーギャー喚き散らすノイズ。
そのノイズの意志をファルセットは代弁し、
モジューレさえ手に入ればアフロディテを帰すと約束。
響も了承し、フェアリートーン達にモジューレを託します。
フェアリートーン達は、モジューレを両陣営の中間点に置きました。
怪訝そうなファルセットに対して、響はさらに交渉を続けます。
『もしもあなたたちがアフロディテ様を解放することなくモジューレを奪おうとするなら、
私達はモジューレを取り戻してプリキュアになる。そして・・・必ずあなた達を倒す!!』
しかし響の意気よりも、ファルセットの奸計の方が上を行きました。
交渉に応じる素振りを見せた矢先、突風を巻き起こして響達を壁に吹き飛ばし、
暴風の中、余裕の態度でモジューレに歩み寄るファルセット。
そしてバスドラとバリトンにアフロディテ始末を命じました。
命令どおり、威勢よく爪を振りかざす2人ですが、いざ事に及ぶとなるとやはり及び腰です。
その隙にメフィストがバスドラとバリトンをねじ伏せ、
ファルセットがそちらに気を取られた隙を突いてハミィがモジューレを4人に投げ返しました。
『みんな!今こそノイズを倒す時!』
いざ変身してファルセットと、ノイズと対峙します。
プリキュアと相対したファルセットは、
メイジャーランド国王夫妻に対してバスドラとバリトンを差し向けました。
ノイズが力を貸す、という名目の下、空には雲が立ち込め、
赤黒い稲妻がバスドラとバリトンを直撃。
稲妻に打たれた2人の目は、血に飢えた野獣そのものです。
『いよいよ俺様の本当の強さを見せるときが来た』
ファルセットが放つドラゴンボールばりのエネルギー弾の破壊力は強烈です。
身をかわしたとはいえ、その弾がもたらす爆風の威力を目の当たりにした4人は
一気に決めるべくミュージックロンド×2、ハートフルビートロック、そしてスパークリングシャワーを
ファルセットに叩き込みました。久々の3拍子、そしてフィナーレ。
その爆風の中でも、ファルセットは平然としています。
間髪入れずメロディは、単身ファルセットに徒手空拳の戦いを挑みかかりました。
しかし素早い攻防のやり取りの末、ファルセットの鞭がメロディを打ち据え、
さらに電撃を送り込むというえげつない攻撃を受けて倒れ、
メロディを受け止めた3人に対しても容赦なくファルセットの追い打ちが加えられます。
一方メフィストはアフロディテを庇いながら、バスドラとバリトンの攻撃に耐え続けていました。
『バリトン。バスドラ。やめるのだ!・・・もはや私の言葉も届かぬ野獣となってしまったか』
説得が届かぬと悟り、反撃に転じようとするメフィスト。
しかしその脳裏に優しい笑顔を浮かべていた頃のバスドラの、バリトンの姿が浮かび、
手を出す事が出来ません。そのまま2人に殴り飛ばされてしまったメフィストは
駆け寄るアフロディテに自分の過ちのために彼らをこうしてしまった事を語りました。
『バリトンたちがこんな風になってしまったのは、元を糺せば私のせいなんだ』
彼ら3人は、かつてはメイジャーランドに使える三銃士でした。
ところがメフィストが
ノイズに操られて帰参したあの日、
彼らをマイナーランドの幹部トリオ・ザ・マイナーにしてしまったのは他ならぬメフィスト自身です。
彼らを変えてしまったメフィストはアコや皆の愛を受けて元に戻れたものの、
未だ元に戻らぬ彼らに対し、ずっと負い目を感じていた事でしょう。
『私がこいつらにしてやれることは・・・』
とどめを刺すよう指図するファルセット、拳を振り上げるバスドラとバリトン。
逃げてと叫ぶミューズの声も聞かず、メフィストは彼らから逃げません。
『バスドラ。バリトン。これが私の償いだ。
ノイズが叩き込んだ悪のエネルギーよ、私の身体に入るがいい!』
バスドラとバリトンの拳を、メフィストは拳で受け止め、
そのまま悪のエネルギーを自らの体内へと移していきました。
苦しむメフィストとは反対に、バスドラとバリトンには徐々に表情が戻って行き、
呆けたように腰を落とすと同時に人の姿を取り戻しました。
『後を、頼むぞ・・・』
そしてメフィストは自らの身体と共に悪のエネルギーを滅ぼすべく、
止めるアフロディテを振り切って自らに聖なる雷を放ちました。
『バリトン、バスドラ!かつての、優しかったお前達に、戻ってくれ・・・』
妻と娘の悲痛な呼び声が響き渡る中、
誇り高きメイジャーランドの国王は地に倒れ伏すのでした。
メフィストの決死の行為を嘲笑うように、ノイズの鳴き声が響き渡ります。
『まったく、悪のエネルギーを吸い込んで己自身にとどめを刺すとは愚かだな』
ノイズの嘲り、ファルセットの発言に怒りを燃やし、もう一度力を振り絞って立ち上がる4人。
しかしファルセットの鞭は強力で、分割して4人を打ち据えて縛り上げ、
さらに稲妻を送り込むというえげつない攻撃になす術もありません。
ファルセットはこの状況に、既にプリキュアとメフィストは倒したも同然とみて
バスドラとバリトンにアフロディテを討つよう命じました。
未だ戸惑う2人を説得するプリキュア達。
『お願い。メイジャーランドに居た頃のあなた達に戻って!』
踏ん切りがつかない2人に業を煮やし、ファルセットは自らとどめを刺そうと、
アフロディテにその鞭を向けます。が・・・
バスドラとバリトンがアフロディテの盾として、その身を投げ出しました。
『貴様らよくも・・・裏切り者は消えてしまえ!』
苦しむバスドラとバリトンの姿を見ても、かつての同士ファルセットは眉一つ変えないどころか
その髪を逆立ててさらに電撃の威力を増しました。
『ヒャッハー!いいぞ、悲鳴こそ最高の音楽だぁ!!』
この光景を、もはやプリキュア4人は正視できません。
『アフロディテ様、すみません・・・』
メロディだけでなく、4人の心は同じです。
同時に変身を解き、モジューレを差し出しました。
『モジューレを差し出すというのか?だがそのせいで、世界がどうなるか・・・』
『わかってる!でも、目の前で苦しむ仲間を放ってはおけない。
仲間の苦しみの上に幸せの世界なんて築けない!』
メロディ、いや響の「仲間」という言葉に、倒れたバスドラとバリトンの目に涙が浮かびました。
しかしノイズは無慈悲に、淡々と、己の目的を遂行します。
けたたましい雄叫びを上げると共に、モジューレからト音記号を抽出。
周囲の篝火に火が灯って行き、遂に4つのト音記号が楽譜に収まりました。
不幸のメロディ完成を宣言し、高笑いするファルセット。
そしてノイズの鳴き声、いや禍々しいまでの笑い声が、
篝火と共にマイナーランドに響き渡りました。
今回のアバンタイトルを見た時、あっさりと謁見の間まで不審人物の侵入を許すなど、
メイジャーランドには警備をする者すらいないのかと突っ込みたくもなりましたが、
トリオ・ザ・マイナーの過去の姿である「メイジャーランド三銃士」の逸話を見てから、
その認識が徐々に変わってきました。
英雄であり、騎士である彼らこそが警護を担当していた、という事は
メイジャーランドを守るべき者は現在不在という事になるのでしょう。
警護をしていた者たち自身が侵入者になるとはなんとも皮肉な展開です。
もっとも、あっさりとこんな簡単な手に引っかかるオウムとアフロディテは
少々抜け過ぎているかもしれませんが・・・。
不用意な行動が原因で世界の危機を招くという点で、
フィーリア王女に匹敵する逸材と言えそうです(笑)
トリオ・ザ・マイナーの過去の姿、メイジャーランド三銃士という設定は、
かつて「アニメ三銃士」を見て育った私としては色々と想像が膨らみます。
照らし合わせるとバスドラ=ポルトス、バリトン=アラミス、ファルセット=アトスでしょうか。
それはさておき、ファルセットもメイジャーランド三銃士の一員として描かれていたところを見ると、
彼もまた操られている事が明白です。
さらに今回、アフロディテに謁見した際自ら「かつて三銃士の一人と謳われた英雄」
と名乗っているところを見ると、本人にもその自覚がある事が伺えます。
三銃士を名乗る以上、彼らの間にはいわゆる「桃園の誓い」のような
絆があっても不思議ではありません。にもかかわらず、これでもかというほど外道に振舞い、
「仲間」という響の訴えや、主君であったメフィスト、アフロディテの声に応じないのは
それだけ彼の受けている洗脳が強力なのでしょうか。
おそらくファルセットは3人の中で最も優しく繊細であるが故に、
ノイズの影響をもろに受けてしまっているように思えます。
だからこそ、我に返ったときに罪の意識に苛まれなければ良いのですが・・・
今回バスドラとバリトンは我に返った際、身を挺してアフロディテの盾となった事で
償いを果たしたと言えそうです。そうするとファルセットが我に返ったとき、
今回のバスドラとバリトン以上に凄惨な代償が待ち受けていそうで心配になりました。
償いといえば、メフィストの誠実な振舞いはまさに王たる者にふさわしく、
中でもアフロディテとミューズの呼びかけに背いてでも
バスドラとバリトンから目を逸らさずに責任を取る様は見事なものでした。
ただ、同時にファルセットに呼びかけていたらどうなっていた事か、
ファルセットだけが一人取り残されてしまったようで少々残念な気もします。
メフィスト、バスドラ、バリトンといった、いわば「大人」が見せた償いとは
いずれも自己犠牲の伴うものです。
それに対して響が切り出したのは「子供」ゆえの青い理想論かもしれません。
現に私が冒頭で挙げたなぎさの台詞も同様でしょう。
現実には理想論だけでは片づけられないものもありますし、
「小を捨てて大を得る」ではなく、「小を捨てずに大も得る」と欲張る事など
高望みなのかもしれません。
しかし、理屈では片づけられない想いの強さは見るものの胸を打ちます。
響の、そしてなぎさのこれらの想いは、大人になるにつれて忘れてしまう
大切なものを思い出させてくれたように感じられました。
それにしても響の駆け引きの上手さと胆力は見事なものです。
前回、プラフの駆け引きが見てみたかったなどと書いてしまった私ですが、
プラフどころか真っ向勝負でこれだけの交渉を成し遂げるなど、
今回の響の格好良さには本当に惚れ直した次第です。
ファルセットとの一騎打ちアクションも見ごたえがあり、
この響の活躍があと数回で終わってしまう事が、今更ながら寂しくてなりません。
次回は毎年恒例クリスマスの筈ですが、ここまで不穏な予感が立ち込めている以上、
これまでにない緊迫したクリスマスになりそうで気がかりです。
言葉を発しないために、これまでのどのラスボスよりも意志が伝わってこない、
だからこそ不気味さが際立つノイズが成長した姿ともども、
どんな波乱が待ち受けているのでしょうか。
「変身をあと2回残している。この意味がわかるな?」などとは言わないと思いますが(笑)