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映画 Yes!プリキュア5GoGo! お菓子の国のハッピーバースディ♪ [プリキュア劇場版]

本日はケーキを食べる日らしいので、一人でケーキを喰いながら
この作品を見返した私にとっては、少々耳の痛いものでした。
ええ、もちろん空しい事は良~く理解しております。
さて、それはさておき「食べても食べても無くならず、決して太らないお菓子の国」
という世界はお子様にとって、全ての劇場版世界では最も行ってみたい国でしょう。
そして確かに子供向けではありますが、尽きない欲望に対する教訓も感じさせます。
仮にもしも「お酒の国」などがあって、いくら飲んでも悪酔いせず、
2日酔いにならないとすれば、私もガバガバいってしまうかも・・・
そしてもう一つ、のぞみファンが血の涙を流した作品(?)でもありました。
  
ブザーと共に幕が開き、映画の始まりを待ちわびたお友達にミルクがご挨拶します。
『みーんなー!こーんにーちわー♥』
声が小さいとダメ出しした後、2度目の元気な挨拶に、ミルクも目を輝かせて嬉しそう。
と、その時!大変なことが起きました。突如大怪獣シロップが襲ってきたのです。
まるで海苔を張り付けたような太い眉という凶悪な姿で暴れ回り、
このままでは映画館が乗っ取られてしまう―
『そこまでだ!』
危機一髪のその時、我らが小々田先生とナッツが駆けつけてくれました。
『怪獣シロップ!我々二人が助けに来たからには、貴様の思い通りにはさせないぞ!』
ナッツのノリがいまいちなのは置いておき、おもむろにミラクルライトを取り出す2人。
映画館の皆の応援を得て、ココナツ・メタモルフォーゼを披露します。
説明しよう。ココとナッツはみんなの応援を受けると変身できるのだ!
『大いなるシュークリーム。キュアココ!』『安らぎの豆大福。キュアナッツ!』
単にモフモフになっただけじゃないかという大怪獣の突っ込みを他所に、
大技スーパーシュークリームが、さらに駄目押しのスーパー豆大福が炸裂!
こうして大怪獣シロップは退治され、黒子に片付けられたのでした。
改めてミラクルライトについて、大怪獣の中の人シロップも加わり注意点を説明します。
ピンチの時に応援すると素晴らしい奇跡が起きるのですが、
ライトを近くで見ないように、そして振る時は周りに注意して振るようにしないと・・・
人にぶつかったり、ライトが飛んじゃったりして大変な事になってしまいます。
現にココがそんな事をしていたせいで、ナッツとシロップが重大な被害に遭いました。
昨年のココに続き、今年はナッツとシロップが劇画調で倒れ、
加害者となってしまったココはがっくりと肩を落としました。
さて事前の注意事項はここまでで、いよいよ本編のはじまりはじまり~。


ナッツハウスのベランダで、のぞみは微笑を浮かべて微睡んでいました。
『もう食べられないよ・・・』
この寝言で、どんな夢を見ているのかは明白です(笑)
みんなは飾り付けに、ケーキのデコレーションに、料理作りに勤しむ中、
のぞみのほっぺたをつついて(こらこら)小々田先生が起こしに来ます。
『おはよう。眠り姫』
やや寝ぼけ気味ののぞみを、大いびきかいて凄い寝相だったとからかう小々田先生。
からかわれたと知ってむくれるのぞみ。開始早々このバカップルめ
小々田先生は改めて眠り姫のようだったと例え、その物語を簡潔に説明し、
『キスで起こして欲しかった?』
眠り姫に憧れていたのぞみを再びからかいました。このバカップルめ
その頃階下では、シロップが最後のイチゴを置くのをみんなが固唾を呑んで見守り、
無事にデコレーションケーキが完成しました。
『のぞみ姫。みんなが待ってるよ』
そう、今日はのぞみの14回目の誕生日です。

『コホン。のぞみ、お誕生日、せーの!おめで・・・』
りんちゃんの音頭でパーティを始めようとした矢先、
突如空からオーブンが降って来ました。そのタイマーが鳴ると同時に扉が開き、
中から少女が飛び出してきて小々田先生に飛びつきます。
小々田先生は少女と旧知のようで、みんなに紹介しようとした矢先、
今度はブンビーさんの笑い声が響き渡りました。空が暗くなり、悪役に相応しい登場、
と思いきや馬鹿笑いしすぎてむせる声がオーブンの中から聞こえる等、
ブンビーさんは期待を裏切らず、オーブンの中から登場します。
『やあ諸君。まずは一言、ハッピーバースディ』
タキシードでビシッと決めているものの、今日はエターナルとは関係無く、
少女を迎えに来たアルバイトです。一応丁重な態度を取るものの、
受け入れられないと知るや誕生日プレゼントと称して
ホシイナーボールをのぞみのバースデーケーキに埋め込みました。
せっかくのケーキを台無しにされ、変身する5人。

ケーキの攻撃を受け止めるドリーム、跳び上がって攻撃を畳み掛ける
ルージュとレモネードの勇姿を見て、少女は彼女達がプリキュアであると察しました。
既に幾多の戦いを潜り抜けて来た5人の息はバッチリで、
ルージュとレモネードの攻撃に怯んだところへサファイヤアローを、
次いでエメラルドソーサーとファイヤーストライクで両足を崩し、
シューティングスターでホシイナーを地面に倒します。
さらにプリズムチェーンで縛り上げ、レモネードにドリームとアクアが手を添えて
3人がかりで文字通りホシイナーを振り回し、投げ飛ばしました。
そのままフルーレを召喚し、レインボーローズエクスプロージョン。
ホシイナーを撃退し、元に戻ったケーキを受け止めるべく、
のぞみ達は落下点へと走りますが・・・ケーキを受け止めたのはブンビーさんでした。
今日の所はお前たちの勝ちだと言い捨てて、ケーキを戦利品として退散。
楽しみにしていたケーキを取られて、のぞみはすっかり涙目です。

『ケーキなら、私にお任せ下さいませ♥』
少女はスカートの裾を持ち上げて、お姫様風にお辞儀をして
助けてもらったお礼と共に、デザート王国の王女チョコラだと自己紹介しました。
デザート王国。そこは別名お菓子の国と呼ばれ、甘々でワクワクのお菓子が沢山あります。
耳を疑うのぞみに、ナッツも本当だと補足説明。
しかも、どれも美味いと聞いて、のぞみ達の目は一気に輝きました。
デザート王国への交通手段はチョコラが乗って来たオーブンです。
ミラクルライトでオーブンを大きくしてみんなを中に入れて、スイッチオン。
『ちょっと熱いですわよ♥』
いや、本当に熱そうです(笑)。必死に内側から戸を叩いて訴えるみんなを他所に、
いざチョコラの音頭で、おいしい楽しいお菓子の国へレッツゴー!
もっとも、オーブンの中は洒落になっていないようですが・・・(笑)

無数のお菓子が成す天の川の上を飛んでいたと思えば、
巨大なプリンの上にオーブンが着地しました。
と同時に扉が開いて跳ね出され、無数のプリンの上をトランポリンのように跳ねながら
盛大に花へ顔を突っ込んだのぞみを除いて、無事に板チョコの地面へと着地しました。
その花はクリームパイで出来ており、それだけでなく家も川も草も全てお菓子。
女の子にとっては夢のような国です。
チョコラはお菓子の城をスペシャルハッピーバースディの会場に提供し、
のぞみ達はいざ張り切ってお菓子の城へ行く事決定しました。
ところが、楽しそうな彼女達の様子を水晶玉で伺う者の姿があり・・・

ブンビーさんは玉座の間で、プリキュアをおびき寄せた功を主張して誇らしげです。
その報酬を要求するも、玉座に控える女王の左右に控える側近ビターとドライは
報酬は奪って来たケーキだと言い放ちました。
これにはブンビーさんも納得が行かず、正当な報酬を要求するも、
ビターとドライにおっさん呼ばわりされた挙句強制的に追い出されてしまい、
そして女王は舌なめずりをしながら静かに立ち上がりました。
『さあ、おいしいお菓子を食べるとしよう。プリキュアのお菓子をね・・・』

ここでようやくオープニングが始まります。オープニングをバックに
店頭に並ぶ日用品も全てお菓子だと言う事に目を奪われたり、
ジュースの川にストローを刺して呑んだり、シロップとナッツを荷物持ちにして
色々なお菓子を持ってきたり、キャンディの花畑に目を奪われたり、
お団子の剣を二刀流で構えたり、などなど、とにかくみんなは楽しそうです。
が、楽しそうなみんなを見る度にチョコラが悲しげな目を浮かべている事に、
みんなはまだ気づいていません。

お菓子を食べがらお城へ向かう途中、ふと、かれんが気になる一言を漏らしました。
『こんなにお菓子を食べて、太らないかしら?』
皆の足が止まり、のぞみは今にも泣きだしそうな顔で振り返ります。
『かれんさん・・・それは言わない約束でしょ?』
『嗚呼・・・私、食べてしまった。お菓子を食べてしまった!』
さながらミュージカルのようなうららにつられて、りんちゃんも続きました。
『わかっているの。わかっているのよ・・・これ以上食べたら・・・
 太る!という現実が待っている事を』

『さようなら、お菓子の皆さん。皆さんの事大好きだけど、もうお別れです』
涙目でお菓子に別れを告げるのぞみ、りんちゃん、うららを前にして、
かれんは奇妙な罪悪感を抱いてしまったようです(笑)
『なんか、ごめんなさい・・・』
しかしそれは杞憂でした。デザート王国のお菓子はいくら食べても太らず、
食べたら美味しいという幸せが心に残るだけというチョコラの説明を聞いて、
のぞみ、りんちゃん、うららは再び喜び勇んでお菓子を求めて駆けて行きました。
呆れ気味に見送るくるみの両手にも、しっかりとお菓子が握られています。

目の前に広がるお菓子の庭園に目を輝かせるのぞみ達。
ここをパーティ会場にと提供すると言っていたチョコラは、
デザート女王への挨拶がしたいと小々田先生とナッツに取次ぎを頼まれた途端、
目を逸らして口ごもってしまいました。
そこにやってくるビターとドライは丁重な態度で歓迎の意向を示し、
パルミエ王国の2人の国王を迎えます。
ここで2手に別れ、小々田先生とナッツ、2人にお世話役として付き従うくるみ、
デザート女王にお菓子を届ける仕事を貰った事のあるシロップはチョコラと共に謁見に、
のぞみ達はビターとドライに城を案内してもらう事になりました。
しかしチョコラの不安そうな態度、そしてお菓子の国の住人であるにもかかわらず
お菓子を否定するような発言を漏らすビターとドライの不審さに、
のぞみ達はまだ気づいていません。

のぞみ、りんちゃん、うららはドーナツがタンポポの綿毛のように飛ぶ草原を訪れました。
りんちゃん、うららは見事ドーナツをキャッチしますが、のぞみはキャッチできません。
そんなのぞみに2人はドーナツを半分こして渡し、3人仲良くドーナツを食べます。
その頃、上級生組はプリンを堪能していました。
『食欲をそそる風味。舌触りが滑らかで甘すぎない。上品な味だわ』
『濃厚なのに後味さっぱり。口の中でとろけるような柔らかな口どけ。
 このバランスは、まさに黄金比率』

グルメ漫画の如き感想と共に、互いに食べさせっこをするこまちとかれん。
見ていてこっちも甘くなるような、上級生組の一幕です。

続けてのぞみ達はココのためにシュークリームの木の実の収穫に励みます。
今日はのぞみがプレゼントをもらう日ですが、ココの喜ぶ顔が見たいと
せっせと収穫するのぞみに、ドライは水を差すような一言を挟みました。
『そんなもので喜べるんですか?珍しくも無いお菓子なんかで』
ココはシュークリームが大好きだけど、それだけでなく気持ちが大事と答えるのぞみ達に
ドライは飲み物はいりませんかと切り出します。得体の知れない企みを感じさせながら・・・
一方うららとこまちは、のぞみのために色々なお菓子を集めています。
こちらに付き従うビターもまた、水を差すような一言を挟みました。
『他人を喜ばせて何になるわけ?何か損じゃん』
疑いも迷いもせず、別に損ではなく喜んでもらえれば嬉しいと即答するうららとこまちに、
ビターはたい焼きを勧めます。ドライと同じく、何か企てを感じさせながら・・・

ドライに連れられてかれんとりんちゃんはジュースの滝を訪れました。
かれんは当然グレープジュースに手を伸ばすも量の多さに困惑気味です。
突如、りんちゃんとかれんの立つ足場が崩れ落ち、滝壺へと落ちて行きました。
同じ頃うららとこまちも、池から飛び出した巨大なたい焼きに飲み込まれてしまい・・・

そしてみんなを案内してきたチョコラは、謁見の間を前にして二の足を踏んでいます。
それでも意を決し、戸惑いがちに扉の取っ手を掴んだところ、
チョコラの不安な心境を見抜いたのか、小々田先生が先手を打ちました。
『チョコラの良い所は、人の目を見てはきはき話す所。
 今日は目を逸らしてばかりいるね。何か困った事があるなら、力になるよ』
目線を合わせて優しくしてくれる小々田先生、同じく協力を申し出るナッツに、
チョコラは勇気を出して切り出そうとした矢先、謁見の間の扉が開き
中からチョコラを急かす女王の声が聞こえてきます。
『お母さまが待ってますわ。どうぞです・・・』
作り笑顔のチョコラに招き入れられ、玉座の間へと足を踏み入れた小々田先生達は、
柱が無残に食い荒らされている光景に息を呑みました。
女王は皆にも食べるよう勧め、当然断る小々田先生。
ナッツもまた王が城を食べるという行為を糾弾しますが、
王はどうしようと勝手だと、女王は聞く耳を持ちません。
そしてこの城の味にも満足できなくなったと言いながら皆の足元を封じ、
ミルク、ナッツ、シロップが捕らわれの身になりました。
『お前は誰だ!?』『見てのとおり、私はデザート女王・・・』
小々田先生の知るデザート女王は、優しい人物の筈でした。
女王を操る黒幕に対して、女王の姿を借りる卑怯者、臆病者と罵る小々田先生。
にらみ合う2人。直後、チョコラの悲鳴が響き渡りました。

のぞみはいつの間にかいなくなってしまったみんなを探すうち、
こまちとうららが集めたお菓子に出くわしますが、一人で食べても美味しくありません。
その時、木にすがって泣くチョコラの姿を目にしました。
泣いている子を放っておくことなど、のぞみには出来ません。
優しく事情を尋ねようとしたのぞみの背後に、謎の青年戦士が現れました。
『キュアドリーム。お前の仲間は間もなく息絶える。お前が最後のプリキュアだ』

かれんとりんちゃんはドライによって凍てつく吹雪の中に、
こまちとうららはビターによって灼熱の砂漠へと連れ込まれていました。
彼ら曰く、美味しいお菓子を食べたいというボスのために、
それぞれ冷蔵庫、オーブンへと連れ込んだとの事。
謎の戦士を前に単身変身するのぞみに続き、
それぞれが引き込まれた世界において変身します。

軽い外見と態度らしく、ビターはミントとレモネードを軽々とあしらって
隙を突いてミントを爆風で吹き飛ばしました。
クールな佇まいのドライはあくまでクールに、
熱い情熱を秘めたルージュ、アクアと渡り合います。
ルージュはドライが投げたものを右手で受け止めたと思いきや、
途端に激しく弾き飛ばされました。攻撃を受けたルージュの右手はアイスに、
そしてミントがダメージを受けた脇腹はクッキーになりつつあります。
『私が最後ってどういう事?みんなをどうしたの?』
戦いながら問うドリームに、謎の戦士は魂胆を打ち明けます。
『お菓子になるのさ』

ビターに一方的に攻撃され、クッキーの岩に叩きつけられて
動きを封じられたレモネードに追い打ちの投擲攻撃が迫ろうとしています。
そこにミントが身を盾にして割って入り、その投擲を受け止めました。
『どうしてこんなひどい事をするの?』
『ひどい事ってこういう事か?』
先程レモネードの動きを止めた投擲が一気に爆発。
ビターのえげつない攻撃は着々と2人を追いつめて行きます。
そして同じ頃、ドライを相手にルージュとアクアも苦戦を強いられていました。
『お菓子などに釣られてくるから、そのような目に遭うんだ』

一方、風船ガムのようなものに閉じ込められたミルクとシロップは
脱出を試みて懸命に体当たりするものの、一向に手応えがありません。
その時、メルポがフォークをもって登場。割れる訳がないと高をくくっていたミルクですが、
蓋を開けてみればあっさりと割れ、メルポは誇らしげにフォークを構えて胸を張りました。
ともあれ脱出できた今、ミルクはココを助けるべく飛び出して行きました。

『お前はチョコレートにして食べてやろう』
謎の戦士に掴まれたドリームの腕は、みるみるチョコレートへと変貌して行きます。
そこへ駆けてくるナッツ、シロップ、メルポ。
謎の戦士は彼らに無慈悲に攻撃を叩き込み、
チョコラと共にオレンジジュースの川へと落としました。すぐ先は滝です。
ドリームは一瞬謎の戦士を睨みつけた後、
落ちて行ったチョコラ達を追って滝壷へと身を躍らせました。

あれだけの高さの滝から落ちたにもかかわらず、皆大事には至らなかったようです。
『当分オレンジジュースは飲みたくないロプ』
川下のジュース工場と思しき場所で国民達に介抱してもらった後、
シロップは騙されたとチョコラを非難し、
チョコラは何も言い返せず、目に涙を溜めて駆け出して行ってしまいました。
泣いたって駄目だと頑ななシロップに、マドレーヌを差し出す国民。
その優しい味に感心するシロップに、これはチョコラが作ったものだと明かします。
『本当に悪い子だったら、優しい味のお菓子は作れないナツ』
メルポもまた、先程のフォークはチョコラがくれたものだと明かし、
チョコラは悪い子ではないと訴えました。

『私の夢はお母様のような立派な女王になる事でした。でも、もう無理ですわ・・・』
川べりで膝を抱えて泣くチョコラに、母はどんな人なのか、ドリームは優しく問いかけます。
お菓子作りを教えてくれて、話を聞いてくれて、笑って、優しくしてくれて・・・
チョコラの語る女王は、優しく立派な母親でした。
ところがある日、ムシバーンと名乗る者が女王に取りつき、
女王の身体を盾にとって脅した事、そして怖かった事を打ち明けます。
しかしドリームもまた、今怖い想いを抱いている事を素直に打ち明けました。
『いつもは力を合わせて助け合う仲間がいてくれる。でも、今は離れ離れ』
ドリームも色々な物を押し殺していたのでしょう。
膝を抱えて涙が浮かぶのを見たチョコラは、
チョコレートと化した腕をミラクルライトで治療しました。
チョコラがお母さんが好きなように、私もみんなの事が大好きだと
再び立ち上がるドリーム。もう彼女は泣いていません。
一緒に頑張ろう、助けに行こうと手を差し出し、
チョコラもその手を掴んで立ち上がりました。
そしてシロップもまたわだかまりを捨てて、王宮へと乗せていく事を申し出ます。

シロップの背に乗って再び王宮へ向かうドリーム達を、
案の定謎の戦士が待ち伏せていました。
シロップの背後から攻撃を受け、ドリームとチョコラは背中から落下。
後から行くというナッツとシロップの言葉を信じて、
ドリームとチョコラはミラクルライトの力でなんとか無事に着地します。
王宮の前で再び相対したドリームに、謎の戦士はもはや手遅れだと言い放ちました。
事実ルージュとアクア、レモネードとミントは追いつめられつつあります。
『希望は無い。お前達もおとなしくお菓子になるのだ』
ドリームはチョコラに手を握るよう促しました。その手は震えています。
『震えているでしょう?でも私、みんなのためなら頑張れるから。
 チョコラもお母さんのためなら頑張れるよね?』

その手を握り返すチョコラに、お母さんの所で待ち合わせと約束して
ドリームは一気に謎の戦士へ飛び掛かりました。
そしてチョコラも意を決して走り出します。

『仲間はもう助からない。痛い目を見るぶん、損をするだけだ』
謎の戦士に王宮内へと蹴り込まれても、ドリームは負けじと立ち上がります。
『損とか得とか関係無い!
 大切な人を、大好きな人たちを、あきらめる事なんて出来ないよ!』

そしてチョコラも母を諦めず、長い長い階段を駆け上って行き、
ナッツは墜落したシロップに触れ、諦めずみんなを案じています。
その頃「冷蔵庫」では、完全にアイスと化したルージュとアクアを見下ろし、
ドライは冷たく呟きました。『下らない・・・』
「オーブン」では、レモネードを最期まで守ろうとしたのでしょうか、
しっかりと彼女を抱きしめたまま、共にクッキーと化したミントを前に、
ビターの高笑いが響き渡ります。

『私、嬉しかった』
激しい戦いを繰り広げながら、ドリームは心の中で独白します。
『みんなが私の誕生日をお祝いしてくれる。嬉しかったの』
腕だけでなく、背中などもチョコレートへと変わって行き、
『乾杯したり、お喋りしたり、楽しい事いっぱいの、パーティにしようよ』
隙を突かれて背後から強烈な一撃を叩き込まれても・・・
『どんなプレゼントより私、みんなの笑顔が嬉しい』
その身がチョコレートへと化して行くドリームを、謎の戦士は容赦なく追いつめます。
『みんなと一緒にいたいの。りんちゃん、うらら、こまちさん、かれんさん』
追いつめられたドリームの頬を、涙が伝いました。
『だからみんなで、ケーキ食べようよ』

『しょうがないな。今日はのぞみの誕生日だもん。やっぱお願いは聞いてあげなきゃね』
『ええ、本当のぞみには、敵わないわ』
ルージュとアクアを覆うアイスが徐々に溶けて行き、
最後に頬に残ったアイスを払い残るアクアを前に、愕然とするドライ。
同様にレモネードとミントを覆っていたクッキーも崩れ落ちました。
『ドリームの声が聞こえる・・・』『私達を呼ぶ声が』
早く行ってあげなきゃと拳を合わせるレモネードとミント、
ルージュとアクアも同じく拳を合わせ、反撃開始。
一転してドライを圧倒して眼鏡を叩き落とし、2人同時に冷気の弾をかわします。
『頑張る事は無駄じゃない。例えそれが格好悪く見えても!私達はパーティをするのよ!』
今日みんなでケーキを食べるのがのぞみの願いなら、叶えてあげたい。
ドライにはケーキを一緒に食べる事の意味が解りません。
『気持ちを伝えるのよ!!』
熱い情熱と真心をこめて、手を取り合う2人が放つ
ファイヤーストライクとサファイヤアローによって、ドライは倒されました。
『情熱に、真心だと・・・?』

『のぞみさんと一緒にケーキを食べるんだから!』
『ケーキ?なんだそれ!?』
ビターの発言も尤もですが(笑)『エクレアに』『レモンパイ!』
さらにどら焼きと、のぞみの好きな物いっぱいのお誕生日にすべく
ミントとレモネードの反撃は続きます。それにしても戦闘中の台詞とは思えませんが(笑)
『みんなの笑顔だと?そんなの何の得にもならねえだろうが!』
『損とか得とか関係ないの!』
レモネードに似合わぬアッパーカットまで繰り出す猛攻に追い込まれ、
苦し紛れの反撃に転じようとしたビターですが、
その腕をミントに取られて投げ飛ばされました。
『みんなの笑顔を守るためなら私達、無限に力が沸いてくるの』
『馬鹿馬鹿しい、大事なのは自分だけだ』
続くビターの投擲攻撃を、ハデーニャさんの攻撃を全て受け止めた時を髣髴とさせる
見事な腕さばきで全て弾き飛ばすミント。そして自分だけが大事なのではなく、
自分もみんなも大切だとミントとレモネードは手を取り合いました。
優しい気持ちと強い心で伝える、プリズムチェーンとエメラルドソーサーによって
ビターもまた砂漠に沈みました。
『優しい気持ちと・・・強い、心・・・。ふざけるな・・・』

4人が危機を脱するきっかけとなったドリームは、逆に危機的状況に陥っていました。
『さあ、全てを諦め、運命を受け入れろ。私を満足させてくれ・・・』
謎の戦士に今まさに唇を奪われそうなお菓子にされそうな状況下。
その時、ドリームを呼ぶ声が届き、謎の戦士を振り払いました。
『みんなを助けるまで、私はお菓子になんてならないわ!』
『さっさと諦めてチョコレートになっておれば、絶望を味あわずに済んだものを・・・』
おもむろにサングラスを外す謎の戦士。その下の素顔を見てドリームは目を疑いました。
『ココ・・・なの・・・?』
小々田先生が持つパルミエ国王の力を利用し、黒いフルーレを出すダーク小々田。
『あなたは誰?』
目の前の小々田先生ではなく、その背後の操る者へとドリームは問いかけます。
『私の名前は、ムシバーン』
この戦いを水晶玉越しに見物している者が、代わって答えました。
『この者の身体は私が支配した。私の意のままに、命じたまま動く』
ココと戦う事などできないと後ずさりするドリームに、
操られたダーク小々田は容赦なく襲いかかります。
『ココ!私を思い出して!』
『無駄だ。お前の言葉は届かない』

回廊を急ぐチョコラは、出会いがしらにくるみとぶつかりました。
『お母様が悪い人に取り付かれて。私どうしたら言いかわからなくて、ごめんなさい』
『ごめんなさいは後で聞くわ。早く悪い人のところへ連れて行きなさい』

その間にも辛い戦いは続いています。
届かないと知っていても、幾度となくココの名を連呼するドリーム。
チョコレートと化した腕で黒いフルーレの切先を受け止め、
剣閃に跳ね飛ばされてもなお、ココを信じてその名を叫ぶものの、
ダーク小々田は無情に剣を振り上げます。
『私は、ココを信じているから』
『終わりだ・・・やれ』
無慈悲に投げかけられるムシバーンの言葉。
そして、剣はドリームの頭上へと振り下ろされました。

刃はドリームの頭の手前で寸止めされています。
頭を押さえて悶え苦しむダーク小々田は、未だ洗脳が完全に溶けず
ムシバーンに煽られてドリームに剣を向けるも、
剣を取り落して頭を抱え、苦しみもがき続けます。
そのダーク小々田に、いや眠れるココに、ドリームは唇を重ねました。
『ココ!私を、思い出して・・・』
ダーク小々田の胸元の宝玉と、ムシバーンの前の水晶が共に砕け散ります。
唇を話したドリームの目の前にいるのは、いつもの小々田先生でした。
ドリームの目から溢れる涙。そして飛びつき、抱きしめます。
チョコレートになった身体も元に戻り、ココもまた元に戻りました。

ムシバーンは苛立ちを抑えられず、何故だと連呼しながら立ち上がります。
『勇気など下らん、希望など下らん、ましてや愛など!』
ムシバーンは女王の玉座の後ろから姿を現して、目を閉じたままの女王に、
刹那寂しげな目を向けた後、まるで慕うように跪いてその手にそっと触れました。
そこに、チョコラとくるみが駆け込んで来ます。
『お母様に触らないで!』
この時彼が何とも複雑な目をしていた事など、チョコラもくるみも知る由もありません。
『あなたが黒幕。デザート女王を操っていたムシバーンね!』
『ならばどうするのかね?』
立ち上がり、振り返るムシバーンにくるみは戦いを挑みます。
『決まってるでしょ。私があなたを倒すのよ!』

戦っている間に女王を助けるようチョコラに指示し、
ローズは真っ向からムシバーンに挑みました。
凄まじいパワーの持ち主同士の戦いが幾本もの柱を叩き折る中、
チョコラはようやく玉座に、目を覚まさぬ母の元へと辿り着きます。
しかし先ほどのココと同様、何度チョコラが呼びかけても女王は目を覚ましません。
女王は永遠に操り人形だとのたまうムシバーン、
人を者扱いしないでと抗うローズ、2人は激しい攻防を続けています。
『例え体は取られても心は誰にも奪えない。
 お母さまの心、誰にも消す事は出来ませんわ』
チョコラが涙を流すと共に、女王の胸元の宝玉にもヒビが入ります。
『私、お母さまに教えて頂きたい事が沢山あるんですのよ。
 おいしいお菓子、優しい笑顔、大好きな人の事・・・まだまだ、全然足りないのですわ!』
母を見上げ、語りかけるチョコラの言葉に、徐々にヒビが大きくなって行きます。

『私の邪魔をする者は、容赦せぬ!』
『親子の会話を邪魔しているのはそっちの方でしょ!
 このミルキィローズの底力見せてあげるわ!』

パレットを取り出し、ローズ渾身のメタルブリザードがムシバーンを打ち据えます。
『お母さま・・・大好きですわ!』
そしてチョコラが未だ目覚めぬ母にすがりつくと共に宝玉は完全に砕け散り、
同時にムシバーンも柱をブチ抜いて瓦礫に埋まりました。
力を使い果たしてミルクに戻ってしまったローズの前で、
目を覚ました女王にすがって泣くチョコラ、親子の対面が果たされます。

しかし、まだ終わってはいません。瓦礫をかき分け、再びムシバーンが立ち上がりました。
『なぜ邪魔をするんだ。美味しいお菓子を食べたい。それが我が望み』
そんな事のためにみんなを苦しめたのかというチョコラに、
ムシバーンはその苦しみを声高に訴え、ゆっくりと迫ります。
『そんな事だと?いくら食べても満たされない苦しみがお前達に分かるかぁ!』

『わからないよ!例えどんな理由があっても、人を傷つけちゃダメなんだよ!』
その時、ココを抱えたドリームが駆けつけました。
そしてルージュも、アクアも、レモネードも、ミントも到着し、
遂に5人がムシバーンと対峙します。

ムシバーンは女王から心のこもったあらゆるお菓子を受け取ったものの、
満足できるお菓子は一つも無かったと吐き捨てるように言い放ちました。
女王は味の問題ではなく、お菓子に込められた気持ちを受け取る心が無かった事、
それが無ければ世界のどこにも満足できるお菓子が無いと、
まるでムシバーンを哀れむように涙を流しながら諭しました。
その涙に動揺し、後ずさりするムシバーン。しかし・・・
『黙れ!黙れ!黙れ!何が心だ。何がお菓子の国だ。
 ろくなお菓子も作れぬくせに!要らぬ!この国も、お前達も、全て要らぬわ!』
ムシバーンはまるで聞き分けのない子供のように逆上し、溜めた力を爆発させました。
この国ごと消すというムシバーンには、もはや女王の呼びかけも届きません。
王宮ごと山が裂け、その後には不気味な塔がそびえ立ちました。
皆は女王の力で辛うじて脱出し、その光景を見下ろしながら地に降り立ちます。

国土を薙ぎ払い、破壊していくムシバーンに対抗する術は無く、
もはやプリキュアに頼る他は無いと女王は光の環の中へ5人を招き入れました。
最後の戦いへと赴く5人にチョコラも加わり、国民達とココ、ナッツ、ミルク、シロップが
手を振って見送る中、光の環は塔の頂上目指して登って行きます。
荒廃していくデザート王国を頂上で眺めるムシバーンの背中は、
どこか哀愁が感じられます。

『事ここに至ればもはや言葉など不要。私の全てを飲み込む欲望が上か、
 お前達の愛と勇気と希望が上か。結着をつけるのみ』
ムシバーンを前に勇ましく構えを取るプリキュア達。
ドリームだけが、一瞬悲しい目を浮かべていますが・・・
最後の戦いの火蓋が切って落とされました。
5対1。それでもムシバーンは強いです。
『お前達の勇気はこんなものか!希望は!そして愛は!そんなものなのか!』
並み居るプリキュアを次々とあしらい、
光の弾と共に皆を激しく塔の頂上へ叩きつけるムシバーン。
続けて光の壁が迫って4人を弾き飛ばし、光が逃げ場のない頂上を覆い尽くしました。
叩きつけられた4人が見たものは、チョコラを庇って倒れたドリーム、
そしてドリームを揺すって涙するチョコラでした。
『これで希望は無くなった。勇気も、愛も!』

しかし、希望は無くなりません。愛と勇気も。
これまで泣くばかりだったチョコラが、ミラクルライトを握りしめて立ち上がりました。
『私は力も無いし、弱虫ですわ。でもドリームは私の事を友達と言ってくれました。
 私は大好きな友達を守りたい。私の勇気と希望と愛はちょびっとかもしれないけど、
 みんなお願い。ミラクルライトに願いを込めて、キュアドリームに新しい光を!』

今こそミラクルライトを灯し、プリキュアに力を与える時。
なぜか音頭を取るのが女王というのはさておき(笑)
文字通り皆が一体となって(劇場のお友達も一緒になって)
ドリームコールが鳴り響く中、光の中で新たな力を得たドリームは微笑しています。
『何故笑う?』
『嬉しいの。みんなが応援してくれるから頑張れる。
 みんなが応援してくれる限り、わたしは負けない』

天使の羽根を持つドリーム、シャイニングドリームは、
応援など腹の足しにならぬと剣を構えるムシバーンに、
美味しいお菓子を食べる方法がわかったと答えます。
『お菓子は一人で食べてもおいしいよ。
 でも、みんなと分け合って食べれば何倍もおいしいお菓子になる』

そしてみんなの願いを受けて輝くフルーレ、スターライトフルーレを構えました。
『私は楽しい事、嬉しい事、悲しい事、全部みんなと分け合いたい』
下らんと連呼して向かってくるムシバーンを受けて立つシャイニングドリームは、
剣劇を繰り広げながらも常に笑顔です。
『みんながいるから、お菓子が美味しくなる!
 みんなが応援してくれるから、力が沸いてくる!』

壮絶な剣劇の果てに正面から切り結び、そして・・・
プリキュア・スターライトソリューション。
無数の光がムシバーンを貫き、シャイニングドリームはその背後に着地しました。
ムシバーンは剣を取り落し、その身は光となって消え始めます。

『何でもない筈の力がこんなパワーに。お菓子もそうなのか?
 みんなで分け合えば、本当に美味しさが増すのか?』
振り返ったムシバーンは、敗れたとはいえ満足そうです。
そしてシャイニングドリームは瞳に悲しみを湛えて立ち上がり、ムシバーンを倒したのに、
否、倒さなければ分かり合えなかったという悲しさか、涙を流しています。
シャイニングドリームの瞳に無言の答えを見つけたムシバーンは、
最期に安らかな表情を遺して虚空へと溶けるように消えて逝きました。
塔は消え失せ、王宮も、荒れた国土も元に戻ります。
しかし、満たされぬ苦しみを抱いた気の毒な男は、もういません。

そしてのぞみの誕生会の仕切り直しが盛大に始まりました。
チョコラが女王と一緒に作ったケーキを囲み、
正気を取り戻したビターとドライが給仕をする、国民勢揃いのパーティが始まります。
『のぞみ、お誕生日、せーの!おめでとう!』
クラッカーの音と共に、のぞみの誕生会は再び始まりました。
ドライと仲良くやっているりんちゃんとかれん、
ビターと談笑しているこまちとうらら、
モフモフ状態のココに口づけしようとするのぞみを穏やかじゃない目で見るくるみ、
ダーク小々田の衣装を着せられているナッツ、
うららのステージも催されたりといった賑やかな誕生会は、
のぞみにとって忘れられない思い出となった事でしょう。


何の因果か、よりによってクリスマスイヴにこの作品を見返している私は
ある意味ムシバーンに似ているのかもしれません(苦笑)
ともかく、まずは作画の美しさと充実したアクションの数々に目を奪われます。
冒頭、微睡んでいるのぞみからして見事な美麗さで、
以降全編を通して高いクオリティのまま続くのは流石劇場版というべきか、
唯一の2年目の劇場版という事もあって
(MHも2度映画化していますが、これは1年で2回ですので・・・)
動かし方も手慣れた感があります。
今作のゲストキャラクターであるチョコラもとにかく可愛らしく、
その仕草や台詞回しとも相俟って大変魅力的なキャラクターでした。

ただ私としては、ムシバーンのキャラクター性に惹かれます。
本人が登場するのは本編の3分の2を過ぎてからという状態で、
歴代の映画ボスの中では登場シーンが短い部類に入るのですが、
それにもかかわらず苦しみを抱いた彼の姿は大変印象的です。
そして本編中の随所に見られる台詞回しや構成が、
それとなくムシバーンの境遇を暗示している点に、作り込みの見事さを感じました。

例えば「デザート王国のお菓子はいくら食べても太らない」
という、ある意味女性には魅力的な設定は、受け止め方によっては
食べても食べても満たされることが無いとも、「飢え」を満たせないとも考えられます。
また食べても太らないという事は、自制する必要を説いているとも見受けられます。
ムシバーンは全てを呑みこむ欲望を持っていました。
その欲望を抑える事を知り、独り占めではなくみんなで分かち合う事を知る。
ドーナツ半分こや、プリンの食べさせっこの場面など、
一見みんなの仲睦まじさを描いているようにも見えますが、
この時点でこの作品の答えともいうべき「みんなで分かち合う」を描いています。
ムシバーン、ビターとドライが主張する「損得勘定」に関しても、
戦いの中でドリームやレモネードが主張するだけでなく、
楽しんでいる前半部であっても「ココの喜ぶ顔が見たい」、と
シュークリームの実を収穫する場面で見受ける事が出来ます。

ムシバーンが苦しんだのはお菓子が食べられなかった事ではなく、
誰も彼の事を理解してくれなかった事だと思います。
もっとも彼自身にも、自分を受け入れてもらえるような努力を怠ったと言えますし、
そのために行った数々の所業は罰を受けるべきものです。
しかし、「心を込めてお菓子を贈った」と言うデザート女王であっても、
果たして彼の事をどれだけ考えていたのか、それは一方通行ではなかったでしょうか。
それでもデザート女王の気持ち自体は伝わっていたのは間違いないでしょう。
ムシバーンがデザート女王に向ける寂しげな目や紳士的な振る舞いは、
デザート女王に対する申し訳ない気持ちと、
満足できない苦しみがせめぎ合っているように思えます。
その内面はデザート女王はもとより、チョコラもローズも知る事はありませんが、
王宮内で対峙する直前の寂しげな表情が、それを端的に物語っていました。
おそらくこの時点で、彼は倒されることを望んでいたのではないでしょうか。
ローズ、プリキュア、そしてチョコラをあえて挑発するような台詞の数々、
デザート王国を破壊しようとしたのも、仮に誰も止める事が出来なかったとしたら
彼は全てを破壊した後、自決するつもりだったかもしれません。
途中からムシバーンの気持ちに気づいたのか、
シャイニングドリームとなってからのドリームの表情は
安らかな反面深い悲しみを感じさせます。
かつてデスパライアに手を差し伸べた折も
結果として封じる事でしか彼女の魂を救う事が出来ませんでした。
ムシバーンも同様で、倒す事でしか救う事が出来ず、
苦い勝利を噛みしめた後のシャイニングドリームの涙は悲しく、同時に美しいです。

もう一点、ムシバーンの描写で気にかかるのは、
チョコラの成長を喜んでいるようなフシが見受けられる点です。
「愛と勇気も同じこと」と宣言してミラクルライトを振るチョコラを見る彼は
妙に誇らしげに見えました。デザート女王へ向けるまなざし、
そしてチョコラへのこうした態度から、まさかムシバーンとデザート女王が夫婦、
その娘がチョコラ、という事でしょうか・・・?
もしくはデザート女王を密かに思慕し、想い人の娘であるチョコラにも
等しく愛情を向けているのか、私としては後者のように思えますが、
いずれも想像の域を出ませんのでこの辺にしておきます。

さて、長々とムシバーンを取り巻く状況を綴ってしまいましたが、
これまでの、そしてこれからのシリーズでも現時点で唯一の
「のぞみとココのキス」
私は血の涙を流す程ではありませんが(笑)複雑なのは確かです。
ともあれ冒頭の「眠り姫」の伏線を張っているだけに、
「姫」と「王子」の立場を逆転して描いたこの場面は印象深いものでした。
唇を離した後の、余韻を抱くようにそっと唇に触れるドリームの仕草も何とも言えず、
ここまで公認の物を見せつけられては素直に祝福するしかありません。
もっとも冒頭のバカップルのようなやり取りは苦笑させられましたが・・・

舞台挨拶でも「ダーク小々田」がかっこいいと言われていた通り、
確かに暗黒面に落ちた小々田先生の姿には独特の魅力があります。
プリキュアシリーズに於いては味方サイドのキャラクターが
操られたりして悪側へ転ずるのは、現時点ではこれ以外に見られません。
「雪空」におけるブラックとホワイトがやや近いですが
メビウスが扮したフレッシュ勢の面々といった変化球もありましたが、
普段悪の姿を想像しづらい者がダークサイドへ堕ちた姿は造形的にも魅力的でした。
あの舞台挨拶の場に私がいたら、
ダーク小々田の方がかっこいいと手を挙げていたかもしれません(笑)

のぞみとココ、チョコラの境遇が中心のため、
他のメンバーの登場場面がやや少ないのですが、
皆それぞれ個性を発揮しつつ、時に普段見られないような仕草を見せ、
それでいて「やっぱりりんちゃんだ」「やっぱりくるみだ」というべき場面も多く
決して描き足りないという印象は受けません。
りんちゃんは誕生会を仕切ったり、ドリームの呼びかけに真っ先に応えたり、
そして王宮に駆けつけた時の柱に片足を乗せたポーズの格好良さがたまりません。
うららはこれまでも時折見せたミュージカルのような大げさな振る舞いの印象が強く、
小柄なレモネードにもかかわらず強烈にパワフルなアクションが目を惹きます。
こまちはプリン食べさせっこもさることながら、レモネードを庇うように抱きしめながら
クッキーと化した場面が一番の見せ場でしょう。続く攻撃の見切りっぷりも見事でした。
かれんはデザート王国到着直後の絵柄が異常に可愛らしいのが印象的で(笑)
「なんか、ごめんなさい」の言い回しやグレープジュース等、流石はかれんと言えます。
そして何よりこの4人は既に長い戦いや苦しい窮地を乗り越えた経験があり、
それを裏付ける成長が随所に感じられるのが心強いです。
ビターやドライの「損得」に関する問いかけに対して、
全く迷わずに即答するあたりは、「悪夢の招待状」事件5最後の戦い
そして5GoGo中盤の危機を乗り切っただけのことがあります。

途中ミルク姿で閉じ込められたりと、くるみの出番もさほど多くはありません。
彼女がミルキィローズに変身するのは開始1時間近くも経った終盤です。
それでもくるみらしい振る舞いで存在感を際立たせ、
何よりムシバーンとの凄まじい一騎打ちが有り余る存在感を示していました。
もっとも、ナッツがいないのにメタルブリザードを放つのはご愛嬌というべきか(笑)
見応えのあるアクションの締めに相応しかったので、見なかった事にしましょう。

そしてブンビーさん。冒頭に少し登場しただけですが、
タキシードで決めた姿が様になっていました。
さらにEDの背景では、戦利品のケーキを一人で食べている姿が描かれています。
期待した報酬と違えども、これまで働いてきたナイトメアやエターナルと異なり、
明確な見返りがありました。
きっと労働の対価として得たケーキの味は忘れられない事でしょう(笑)

私は初代からプリキュアシリーズを観続けてきましたが、
フレッシュより前は一人で楽しんできました。
しかしこうして楽しみ方を分かち合うようになってから、
さらに楽しめるようになった手応えを感じています。
しんどい事も多いけれど、得られた物はそれ以上にあります。
シャイニングドリームが本編中で語る、分け合うものの中には
「悲しい事」も含まれています。今年は本当に辛い一年であり、
心が折れそうになった事も何度もありました。
喜びを分かち合う事で喜びを共有し、
悲しみを分かち合う事で一人の苦しみを皆で理解し受け止める。
この映画は「お菓子」はあくまで一例として、
世の中さまざまな事を分かち合う事の必要性を訴えた作品であり、
観る度に新たな発見や感想を抱かせる大変深い内容だったと思います。

それでは、私はこれから一人でシャンパンを開けてローストチキンでも食べますか・・・
(まるで成長していない・・・)
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まるっさ

まさにプリキュアシリーズ最高のエンターテイメント作品・見ていて最も楽しかった作品だったと思います、劇場版5GOGO。 ミラクルライトの使い方も一番うまく、今でも劇場が一面の赤い花畑状態だったのが記憶に残っておりますw

もちろん泣けたのは鏡の国の方なのですが、内容やラスト、キャラの魅せ方などトータルバランス的にはこちらが好きで、これに『雪空のともだち』『花の都』を合わせたのが個人的に劇場版プリキュアベスト3となっております。(順位はそのときのフィーリングで変化w)いや、お菓子の国もレモネードをかばった姿で共にビスケット化したミントの姿にはうるっときました。

しかしこの映画、なんといってもシャイニングドリームのカッコよさにつきるかと思います。息を呑むような神々しさ、発する台詞全てが神セリフ、そして個人技では最高峰であろうスターライトソリューション! そもそもBGM自体が神!!・・・はさることながら本編が終盤に近づきつつあることもありましたが、まるで我々から巣立っていくような純白のドレスに身をまとった花嫁にさえも当時思えたものです。しみじみ。

BGMといえばこの作品の特徴として『一つのテーマ曲を元にしたさまざまなアレンジが随所で使われている』ところでしょうか。他には『花の都』もそうでしたが、この手法によって映画館で初めて接する作品がより馴染み易くなっている気が個人的には致します。ほら、例えばゲッターロボとかで必殺技出すときにOPあるいはそのインストVer.が流れたら燃えるじゃないですか・・・そんな感じで(おい)。

それにしても長峯監督・・・鏡の国といい、ハートキャッチ最終話といい、花びら散らすの好きですねw ラスボスの『救済』も含めて結構この映画とハートキャッチ最終話はイメージが重なります。ソースは無いですが、今となっては逆にシャイニングドリームも無限シルエットみたいに全プリキュアの集合体にさえ思えたりします。ともかくコッペさまの人間体変身も含め個人的に『ハートキャッチ』=『プリキュア5・2』の認識さえあったりしますw

その他キャラに関しては以降すっかりミラクルライトマスターと化したチョコラ姫w 年頃ゆえ果たして自分は『人間扱い』なのか『不思議生物・・・もとい妖精さん』扱いなのか悩んでるのでは?とDX2の立ち位置を見て勝手に想像したりもしますが、とにかく可愛いので劇場版キャラでは一番好きです。
そして大友の妄想をかきたてる、のぞみ×りんちゃんさん×うららの(飛び散る火花が見えそうな)暖色下級生組とうらこま寒色上級生組のやりとり・・・絶対狙ってますよww あとはOPといい結構シロップくるみのからみがあったのも個人的には良かったします(笑)。

ともかく貴方様のおっしゃられる通り、(作り手・見る側両方の経験から)成熟したキャラ描写が堪能できるのもこの映画がホント楽しく感じられる理由かなと、繰り返しになりますが思います。

それでは、まだまだ語りたいことのある映画ではありますが、この辺で。
by まるっさ (2011-12-25 16:01) 

スティクス

>まるっささん
確かにエンターテイメント要素で考えても随一の作品ですね。
私も同感です。鏡の国(というよりもダークドリーム)があまりに人気ゆえに
やや損をしている作品かもしれません。
実際、映画としての完成度で見ると、私もこちらの方が上だと思います。

シャイニングドリームの神々しさは凄いですね。
全てを受け止めてくれそうな度量を感じさせるばかりでなく、
のぞみらしさ、ドリームらしさを失わず、さらに常に悲しみを湛えた瞳。
そして今言われて初めて気づきました。
なるほどウエディングドレスですか・・・改めて血の涙が出そうですが(笑)、
物語の終了、そして私たちの手を離れる、という点からも
淋しさだけでなく娘の巣立ちを見送るのはこういう事かと感じました。

BGM、確かに燃えますよね。
この作品でもそうですし、前作のダークプリキュア5戦での反撃時といい、
雪空でもそうでした。ちょっとしたアレンジが新鮮になりますね。

>花びら
言われてみれば、確かに(笑)
ハートキャッチのラストシーンも凄かったですから。
そしてシャイニングドリームが集合体というご意見、
この場面で他の4人が映っていないだけに、そういう見方もありそうですね。
ここはほかの4人が映っていても、ムシバーンとの一騎打ちという性格上
違和感が出てしまうので難しかったと思いますが、
集合体というのも一つの解釈になりそうで参考になりました。

それにしてもチョコラは可愛いですよね。
不思議生物扱いしてしまうのが失礼というか、
(そういってしまうと不思議生物に失礼なのですが)
DXシリーズでの登場もありましたので、
別の再見で出会える事を楽しみにしています。

キャラクター達の絡みも含めて、成熟して円熟した作りが
安定した質の高さを保った作品だと思います。
何より、観る度に発見があることがその証拠ですし、
私もこの作品を観る目が改めて変わった気がして、収穫がありました。
by スティクス (2011-12-25 20:00) 

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