まりあママが久々に帰国し、クリスマスの北条家は親子3人揃いました。
響のために大量のプレゼントを買い込んだまりあママに負けじと、
団パパもよーしパパご馳走作っちゃうぞと大張り切りです。
(またとてつもないごった煮かもしれませんが・・・)
パーティのその前に、明日はクリスマスコンサートが開催されますが、
出演予定の北条夫妻はそちらの方もばっちりです。
ところがコンサート運営スタッフの響はといえば・・・
この状況ではクリスマスを楽しむ心境にはなかなかなれません。
両親にはコンサート運営の関係で奏の所へ行くと言い残し、家を後にしました。
奏が待つ町の広場は、それだけでなく加音町全体はクリスマスムード一色で、
雪も降り始め、ホワイトクリスマスになりました。
道行く人は何も知らず、クリスマスを楽しむ姿は平和そのもの。
しかし響と奏には、懸念を払拭する事はできません。
『ノイズはどうしてずっと何もしてこないのかな?』
『分からないわ。伝説の楽譜が完成したのに不幸のメロディを歌わない。どうして・・・?』
ト音記号が抽出され、用をなさなくなってしまったモジューレに目を落とす響と奏。
雪は静かに、降り続けています。
エレンとアコを加えた4人で、調べの館で今後の事を案じていも
ハートのト音記号を取り戻す術も無く、ノイズが襲ってきたらどう戦えばいいのかと、
答えを出す事は出来ません。
音吉さんは明日はクリスマスだと明るく振舞いますが、
4人は今それどころではありませんでした。
しかし音吉さんが自信たっぷりなのには理由があり、
長い事修理調整を続けたパイプオルガンが、ようやく完成したのでした。
クレッシェンドトーンもその聖なる音で邪悪な者に対抗できると太鼓判を押すものの、
そう簡単に行くのかと、響達はイマイチ自信が持てません。
その時、調べの館に王子先輩以下王子隊、聖歌先輩以下スイーツ部、
そして奏太、和音がコンサートの準備を手伝うために詰めかけました。
町の人たちが楽しみにしている恒例のコンサートのために一丸となったみんなを前に、
いつしか響達にも自然と笑顔が戻ってきました。
そして翌日。調べの館を舞台にコンサートが開催されます。
響達はサンタ衣装に身を包み
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!お客さんを整理したり、スイーツ部総出でお菓子を配ったり、お茶を提供したり、
運営スタッフとしての仕事を楽しんでいますが、
その輪の中にアコは加わっていません。
父メフィストはあれから目覚めず、ノイズがいつ襲ってくるかわからない状況では、
とても笑う事など出来ないというアコの気持ちは当然です。
『今はクリスマスコンサートを成功させて、みんなに喜んでもらって、幸せになってもらうの』
『不幸のメロディを聴いてもいないのに暗い顔をしてたら・・・』
『それこそノイズの思う壺だわ』
そんなアコを響が、奏が、エレンが、今できる事を
一緒に前を向いて頑張ろうと促す事で、アコもようやくその輪に加わりました。
客席は聴衆で埋まり、間もなく本番が始まります。
指揮者の団パパ、ソリストのまりあママに早くスタンバイするよう急かす響を、
北条夫妻は舞台袖で優しく抱きしめました。
『響は頑張り屋さんだからな。ごめんよ、こんな事ぐらいしかできなくて』
『覚えておいてね。パパとママは、世界で一番響を愛していると・・・』
唐突な事に最初は戸惑いがちだった響も、嬉しそうに呟きます。
『パパ・・・ママ・・・ありがとう』
ところが王子先輩の挨拶でコンサートが始まろうとした矢先、
調べの館にファルセットが現れました。
楽しければ楽しい程、壊された時の不幸は大きくなると、
これまで沈黙を保っていたのは老若男女が大好きな
クリスマスというこの日この時を待っていためと高らかに語りあげると共に、
不幸のメロディのプレゼントと称してファルセット自身が歌い始めました。
阿鼻叫喚となる客席を前に、音吉さんはオルガンを弾き
その聖なる音によって不幸のメロディは中和された、と思われましたが・・・
この場にはノイズも来ていました。鋭い雄叫びで調べの館の屋根をブチ抜き、
その影響でオルガンの演奏も止まり、ファルセットの歌を止める者は誰もいません。
不幸のメロディは加音町に広がり、さらに世界を覆い尽くして
人々が皆、嘆き悲しみ泣き叫ぶという惨状に・・・
その不幸のエネルギーはノイズに吸い込まれて行き、
さらにファルセットの持つ楽譜からも音符が吸い込まれて行きました。
大量の不幸のエネルギー、そして音符を吸収したノイズの姿は、
羽根が、足が、尾が、そして首が、次々に巨大化して、禍々しい怪鳥と化しました。
音吉さんが恐れていた最悪の事態、ノイズ完全体の誕生です。
『忌まわしい音楽。耳障りな鼓動。消えろ。全て消えてしまえ!』
ピーピーさえずるだけでなく、言葉を発するようになったノイズが巻き起こす音波に
耳を塞ぐ響達。とっさに音吉さんはオルガンに駆け寄って鍵盤を弾きますが、
わずかに防護壁が響達4人とハミィを包むだけで、
人々全てを守りきる事は出来ません。
耳を塞いで苦悶の形相のまま、人々は次々に石へと化しました。
北条夫妻も、南野親子も、聖歌先輩も王子先輩も、みんな、みんな・・・
6時の針を指したまま動かなくなった時計塔が見下ろす町も、
同様に石と化した人々で埋め尽くされ、動く者の姿はありません。
『心地よい静寂だ・・・』
今聞こえる音は、月を背にしたノイズの笑い声だけです。
変わり果てた家族を、先輩を目の当たりにした響達に、
4人を守るのが精いっぱいだったと力不足を詫びる音吉さん。
その音吉さんとクレッシェンドトーンは、ノイズにとって仇敵そのものです。
不意にノイズの一撃が襲いかかり・・・あたり一面砂煙が立ち込めました。
これぞ不幸のどん底だと嘲るファルセットですが、
ノイズはまだ止めるべき音を感じ取っていました。
全ての音を絶やすべく、次の標的に選んだのはメイジャーランドです。
もはやこの楽譜は用済みだと、伝説の楽譜をネガトーンへ変えるファルセットに
怒りを新たにするものの、今の4人は変身する術を持ちません。
そして、ノイズとファルセットがメイジャーランドへ向かうのを止める事が出来ません。
『それではプリキュア諸君。永遠に、さようなら』
ファルセットが台詞を吐き捨てると共に、ネガトーンが4人に襲いかかりました。
生身の4人がこの攻撃を受けたらひとたまりもありません。
その窮地は、辛うじて無事だった音吉さんが
ヒーリングチェストの鍵盤を弾く事で防護壁を張り、回避しました。
しかしネガトーンはそのまま防護壁を殴り続け、ヒビが入り、長く持ちそうにありません。
ところが、響はネガトーンの姿に何かを感じ取りました。
遂に防護壁は破れ、その余波で倒れる奏、エレン、アコ、そして音吉さん。
響だけは違いました。
『ごめんね、伝説の楽譜・・・』
ネガトーンも予想外の発言にためらう中、響はネガトーンに歩み寄ります。
『あなたはずっと今まで幸せのメロディをみんなに届けてきたんだよね?
きっと誰よりも、みんなを楽しませてきたんだよね?
音楽は人を楽しませるものなのに、ごめんね・・・
私に力が無いばかりに、あなたをこんな目に・・・』
己の無力を詫びる響の言葉にネガトーンの目が穏やかになりますが、
悪の心はまだ消えていません。
突如、響に襲いかかるネガトーン。響は身じろぎもしません。
そして、拳は寸止めされています。
悪の心に取りつかれた伝説の楽譜も、狭間で苦しんでいます。哭いています。
『悔しいよね?私も悔しい。いつもみんなに助けられて、励まされて、元気をもらってた。
なのにみんなを、大切な人たちを、守れなかった!私、私・・・』
響の目から溢れる涙。その涙が、音を立てて滴り落ちます。
『このままで終わらせたくない!』
『そうよ。まだ終わってないわ!』
『まだできる事がある筈!』
『心のビートは、止められないわ!』
奏が、アコが、エレンが、次々と立ち上がり、響の手を取りました。
響は一人ではありません。そして4人の鼓動は今この時も力強く脈打っています。
『私達の鼓動が刻まれる限り、終わっていない。だから私達は・・・』
『絶対に諦めない!!』
直後、ネガトーンを形作る楽譜のページがめくられて行き、
新しいページに4つのト音記号が浮き上がりました。
ト音記号は再び4人の胸に宿り、そしてモジューレへと宿りました。
今こそ、プリキュア復活の時です。
『音吉、私達は大切なものを忘れていたようですね。
音楽は今あるものが全てではない。新しく生み出す事が出来る』
『ハートのト音記号は音楽の始まり。あの子達は新たなメロディを奏で始めたのですね』
クレッシェンドトーンも音吉さんも成し遂げなかった境地に達し、
光の中に復活した4人のプリキュアが、再び立ち上がりました。
ネガトーンの目尻も下がり嬉しそうですが、邪悪な力は未だ張り付いたまま。
苦しんでいる伝説の楽譜を助けるべく、
スイートセッションアンサンブル・クレッシェンドで邪悪な力を打ち砕きました。
音符は既に記されておらず、幸せのメロディを歌う事もできません。
それでも伝説の楽譜は無事に元通りになりました。
石になった人々を調べの館の外へと運び出し、
いざノイズを追ってメイジャーランドへ。
『みんなはノイズの力で石になってしまったが、幸せのメロディを歌えば元に戻る筈じゃ』
パイプオルガンの鍵盤を弾くと、何という事でしょう。
調べの館が浮き上がり、翼を広げ、虹色の鍵盤に導かれて
メイジャーランドへと出航します。
メロディは忘れません。本番前、父と母に抱きしめられた事を―
尊敬する両親、先輩、友人、弟、家族・・・
リズムも、ビートも、ミューズも、みんなの姿を胸に刻みつつ、決意を胸に飛び発ちます。
『みんな、行って来ます。メイジャーランドへ、みんなの幸せを取り戻すために!』
さらば加音町。空の彼方メイジャーランドへ運命背負い、今飛びたつ。
必ずここへ帰ってくると決意を胸に、加音町を後にしました。
冒頭に触れた通り、今回の世界を取り巻く状況は
シリーズ始まって以来の恐ろしいものとなりました。
これまでも
世界そのものが壊滅したマックスハート、
世界どころか宇宙が壊滅したスプラッシュスター、
キュアローズガーデンが焼け落ちるとともに現実世界も破壊された5GoGoといった、
世界崩壊系はありましたが、いずれも人々が直接巻き込まれた描写はありません。
全世界が一斉に管理下に置かれたフレッシュ、
砂漠化と同時に人々がクリスタルと化したハートキャッチのように、
人々が巻き込まれた描写は前年と前々年で描かれていますが、
前者は管理された後の虚ろな姿を、後者はいきなりクリスタルとなっているため、
人々が直接惨劇を被る場面は割愛されてきました。
それだけ今回はショックが大きく、さらに近しい人々が巻き込まれ、
これまで不幸の音波で苦しめられた経験の無い北条・南野両夫妻や
聖歌先輩までもが嘆き悲しむ様は痛々しいものがありました。
状況を考えると和音も巻き込まれたと観るのが当然ですが、
なぜか彼女の姿が無かった(もしくは私が見つけられなかった)のは
和音ファンの私としては良かったというべきでしょうか。
おなじみの人が嘆き、苦しむ姿のまま石にされてしまうという姿は衝撃的でした。
しかしそれをさらに上回る、まさかの「調べの館発進」は
予想の斜め上どころか相当上を行っていました(笑)
だからパイプオルフガンの修理に時間がかかっていたのか、と妙に納得してしまい
宇宙戦艦ヤマトを連想して本文で悪乗りしてしまったのですが(苦笑)
最終決戦の舞台がメイジャーランドである以上、
パイプオルガンごと持っていくという点では理にかなっていると思います。
果たしてパイプオルガンが、そして調べの館がどんな役割を果たすのでしょうか・・・
さて、これらの描写に目を奪われたものの
本番前の北条一家、そして伝説の楽譜に呼びかける響の姿には感銘を受けます。
当初は必ずしも家族とうまくいっていない感があった響ですが、
まりあママとは17話で、
団パパとは33話で、改めて家族の絆を描いています。
しかし一家3人揃って一体となったのは初めてです。
その直前、北条夫妻は窓の外でアコに呼びかける響の姿を
誇らしげに見守っていました。その姿を誇らしく思うと共に、
頑張りすぎる性格を心配し、いつでも頼って構わないという「甘え」を許したのでしょう。
皮肉にもこれがしばしの親子の別れになるばかりか、
直前の両親の優しい姿が一転、石と化してしまう姿を目の当たりにしてしまいますが、
「帰る場所がある」「愛し受け入れてくれる家族がいる」と認識した事で、
今後待ち受けるであろう辛い戦いの支えになると思いました。
そしてネガトーンと化した伝説の楽譜へ呼びかける場面では、
ただ響だけが相手を哀れみ、そして信じ抜く事ができました。
これは決して奏やエレン、アコが相手を受け入れない訳では無く、
響がかつて「両親の愛情を受けていないと思い込んでいた子」だった事、
そして奏とケンカ別れしていた時の孤独な心境を持っていた事が大きいと思います。
今はネガトーンとなっているけれども、元は伝説の楽譜であり、
人々を楽しませていたと、そこまで思いを巡らせられるのは
これらの寂しさや悔しさを知るからこそであり、
自分の弱さを知る者こそ強いと言えるような強さを響に感じ取る事が出来ました。
そんな響に真っ先に手を差し伸べられる奏がいるからこそ、響は頑張れる。
もちろんアコもエレンも同様ですが、奏の存在がいかに大きいかも改めて感じました。
ネガトーンにこのように接する事が出来ましたが、
果たしてノイズやファルセットにも通じるのでしょうか。
そんな中、石にされた人たちを前にした音吉さんの発言が気にかかります。
普通この手の状況では「ノイズを倒せば元に戻る」というのが定番ですが、
「幸せのメロディを歌えば元に戻る」と言っていました。
この事から何らかの歩み寄りがあると考えますが、果たして・・・?
心臓の鼓動からト音記号が生まれるという点も、
響の名前の由来を考えると意味が感じられます。
彼女の名前は音楽ではなく、生活音の響きが由来でした。
もとを糺せば音楽とは木々のざわめきであったり鳥のさえずりであったり、
それら周囲に満ちた音を楽しむ事から発展したものでしょう。
リズムを刻むビートを表すのに、最初は心臓の鼓動に合わせて物を叩き、
やがて打楽器から色々な楽器へと広がって「音楽」へ発展する。
音楽の始まりは鼓動であり、そこから新たな楽譜のスタートとなるト音記号が誕生する。
サブタイトルでは「奇跡」と銘打っていますが、これはむしろ「必然」と言えます。
手垢のついた言い回しですが、奇跡は自ら手繰り寄せてこそ価値があると言います。
それを成し得た彼女達ならば、これから先の困難も乗り越えていくと確信させられます。
また今回は2011年最後の放映でもあります。
「今できる事を頑張ろう」「一緒に前を向いて」とアコに呼びかける台詞の数々は、
忘れる事など出来そうにもない程の災害に見舞われた年の最後に、
改めて伝えたかったメッセージなのかもしれません。
あの時は本当に明日も知れない状況に置かれましたが、
確かに今できる事をみんなで前を向いて頑張った日々でもありました。
私にとってはあの時の事を忘れない、忘れさせないメッセージとして
これらの台詞を受け止めました。
ところでスイーツ部に咲に似た子がいたような気がしましたが、
この子今までいましたっけ?これまで気づかなかったのは私だけでしょうか?
またファルセットを演ずる奈良さんの歌い方の上手さにも感嘆し、
やっと喋ったノイズも、流石中尾さんと言うべきラスボスの風格に満ちていました。
そして次回、クレッシェンドトーンと音吉さんを待ち受ける運命も気になります。
まさか「おじいちゃんのことかーーーっ!」と
ミューズがキレるような事態にはならないと思いますが(笑)