・・・失礼しました。もちろん嘘です。本日は4月1日、エイプリルフール。
エイプリルフールが取り上げられるのは意外にもプリキュア史上初となった今回、
やよいの何気ない嘘はどんどん大きくなって行き・・・
やよいには気の毒ですが、取り返しのつかない事態に焦る様と、
みんなとの温度差が楽しめた一編となりました。
『良い子のみんな、おはよう!君の目覚めを世界中の人が待ってるぞ!さあ、起きるんだ!』
開始早々、いきなり何かと思いきや、これがやよいの目覚まし時計です。
時計を止めて二度寝しようとしたやよいは、
朝食がホットケーキだと聞いて飛び起きました。(お前はシロップか)
しかし食卓に並んでいるのはトーストと目玉焼きで、黄瀬ちはるママはにこやかに謝りました。
そう。今日は4月1日、エイプリルフールです。
『ところでママ。私ボーイフレンドが出来ちゃった♪』な、なんだってー!どこの馬の骨だそいつわ!これは当然やよいの仕返しの嘘。ちはるママが見事にひっかった事で味をしめ、
今日は楽しい嘘をついてしまおうと気楽に考えますが・・・
これがあんな出来事に発展しようとは、この時思いも寄らなかったでしょう。
その頃バッドエンド王国では、アカオーニがせっせとお絵かきしています。
エイプリルフールにかこつけて、鬼が桃太郎をやっつける嘘の紙芝居を
子供達に見せようと張り切っていますが、よく考えればちとおかしな話です。
やがて世界がバッドエンドになれば鬼が桃太郎を倒す話が本当になると
ウルフルンが指摘しますが、少々オツムの弱いアカオーニにはよくわかりません。
ともかく、今日は人間どもを嘘で困らせると意気込み十分です。
昇降口でみゆきに出会ったやよいは、ちょっと驚かせる程度で嘘をつきました。
『(みゆきちゃんを驚かせちゃおう。うふふっ♥)
あのねみゆきちゃん、ずっと言えなかった事があるんだけど・・・私、転校することになったの』ところが表情と仕草がサマになっていたため、みゆきとキャンディはその嘘を真に受けてしまい、
その反応に調子に乗ったやよいは、明日転校する事になったと重ねて嘘をつきました。
さらに驚くみゆきの反応を楽しんだ後、
『はい、嘘でした♪今日はエイプリルフールだから、嘘をつい・・・』この辺でネタばらししようと振り返ったところ、そこにはみゆきの姿はありません。
みゆきはやよいの転校話に舞い上がり、早速その事をあかねに相談していました。
『何やてー!?やよいが転校!?』思わず大声を上げて、周囲の注目を集めてしまったものの、
あかねはかつて転校生だったため、やよいの気持ちに理解を示し、
同じく転校生だったみゆきと2人だけの秘密にしようと念を押しました。
やよいは早く嘘だという事を打ち明けようと、
廊下でみゆきとあかねに追いついて本当の事を言おうとしますが、
言い終わらぬうちに真に受けているあかねとみゆきに遮られてしまいました。
転校生の境遇について語られたり、同情されたりと
早く本当の事を言ってしまいたいやよいの内心とは裏腹に、
みゆきとあかねは違った意味でやよいを励まします。
『もう何も言わんでええ』『大丈夫だよ。やよいちゃんには私達がついてるから』『だから、さっきの話は・・・』未だ本当の事を切り出せぬまま、ホームルームが始まりました。
やよいの焦りは次第に募って行きます。
ホームルームが終わった後、みゆきとあかねはそっとなおとれいかに打ち明けました。
驚いた2人がやよいを見ると、ため息をついていた為に信じてしまったのでしょうか。
音楽室へと移動する際、やよいは意を決して嘘だったと白状しようとしますが、
その場になおとれいかも加わって、ますます切り出し辛くなりました。
あかね、みゆきの転校生の気持ちを代弁した言葉に思わず頷いてしまい、
『(私何言っちゃってんのよ!早く嘘って言わないと!)』内心では相当焦っているにもかかわらず、言い出し辛い雰囲気は高まるばかり。
『(このままじゃ私、本当の嘘つきになっちゃう・・・)』『やっぱ、正直に言うしかないよ。たとえどんなに怒られても』授業が終わった後、スマイルパクトを眺めながら呟くやよいの姿は、新たな誤解を生みました。
5人でプリキュアが続けられなくなる事に責任を感じているのだと解釈されてしまい、
言い出し辛い雰囲気は、一層顕著なものになりつつあります。
『やよいさんが抜けた分は、私達が頑張りますから。
たとえ離れ離れになっても、私たちの気持ちは一つです』れいかに続き、皆がやよいをひしと抱きしめる、実に素晴らしい光景ではありますが、
やよいにとってはますます言い出せない状況に追い込まれてしまいました。
昼休み。やよいはいつもの東屋に姿を見せず、屋上で一人絵を描いています。
直接話す勇気はなくとも、漫画ならば正直に伝えられるのではないかと、
「転校はエイプリルフールのウソなの!ごめんなさい!!」
という台詞と共に、キュアピースがみんなに謝る絵を仕上げました。
ところが丁度その時突風が吹き付け、ご丁寧にそのページだけが風に飛ばされてしまい、
やよいは再び途方に暮れました。そこに、みゆきが迎えに来ます。
みゆきとあかねに導かれるまま教室へ入ると、クラスメイト達が拍手で出迎え、
黒板には「さよならやよいちゃん そしてありがとう」の文字が書かれていました。
すっかりお別れ会の舞台が整っており、やよいはますます窮地に立たされます。
その頃、鬼が桃太郎を退治する紙芝居を読む気満々のアカオーニが学校上空に登場。
先程やよいが飛ばしてしまった漫画が、その顔にへばりつきました。
『最後まで普通に過ごしたいと言う気持ちも分かります。
でも例え悲しくてもちゃんと挨拶をした方が良いと思い、お別れ会を開かせて頂く事にしました』もはや嘘だったなどと言い出せる雰囲気ではありません。
さらに花束、色紙の贈呈と、どんどん追いつめられて行き、
一言コメントを求められたやよいは、後が無くなりました。
『(もしも今、正直に告白したら・・・)』『ついていい嘘と、悪い嘘があります!』『スジが通ってないよ、スジが!』『バカにせんといてや!』『もうやよいちゃんを信用できない!』4人だけでなく、クラス全員に吊し上げを喰らう様を想像してしまったやよいは、
今にも泣き出しそうです。
『(怒られるし嫌われるし、きっともう誰も私と話してくれない。
プリキュアだってもう一緒に出来ない)』目を潤ませるやよいを見て、別れが辛いのだと考えた皆が励ましますが、
それは今のやよいにとって傷口に塩を揉みこむようなもの。
遂に居たたまれなくなり、泣きながら教室を飛び出してしまいました。
校庭の隅で泣くやよいの下に、おせっかいで余計悲しい思いををさせてしまったと
謝りに来る4人。やよいの涙の本当の理由には、まだ誰も気づいていません。
そこにアカオーニが現れて、先程やよいが描いた漫画を見ながら
嘘の素晴らしさを教えてやると、白紙の未来を黒く塗りつぶしました。
泣いていたやよいも涙を拭い、5人一緒に変身。
アカオーニも通称コンダラをアカンベェと化しました。
注:MH7話、HC4話にも登場したコンダラとは、グラウンドの地ならしに使うローラーで、巨人の星のOP
「思い込んだら試練の道を♪」のくだりで飛雄馬が引きずるシーンを「重いコンダラ」と誤解されたことから付いた俗称です。アカオーニはアカンベェにパンチを指示。
皆が上からの攻撃の備えた隙を突いて、実は嘘だと蹴りを繰り出しました。
続けてローラー攻撃を指示。プリキュア達が跳び上がった矢先、
再び嘘だと宣言し、今度はパンチを繰り出します。
嘘を巧みに利用した攻撃に、ピース以外の4人は怒りを露わにします。
『さっきから、嘘ばっかりついて!』『嘘つきは泥棒の始まりって言うやろ!』『私はウソは大嫌いだ』『嘘ではなく、正々堂々と勝負しなさい』アカオーニを糾弾する皆の言葉が、ピースの胸に突き刺さります。
追い打ちを掛けるように、嘘は最高だとピースに同意を求めるアカオーニ。
先程の漫画を取り出し、嘘はどんどんついて良いと、
嘘にだまされた仲間を笑ってやれと煽り立てます。
『私の大切な友達を笑わないで!』アカオーニに反論するも、ピースの様子がおかしい事にようやく皆も気づきました。
正直に打ち明けて欲しいと言いますが、ピースはなお及び腰です。
『もし正直に話したら・・・怒られて、嫌われて・・・』『私、例えどんな事があってもピースの事、大好きだよ』転校してきた初日のやよいを思い出し、
あの時とても嬉しかったと語りかけるハッピーに、ピースは遂に決心しました。
『転校というのは、嘘なの』エイプリルフールの嘘だったと、皆はようやく理解しました。
そしてサニーはハッピーの早とちりを注意しますが、
『ごめんなさい。でもサニーだって「わかるわかる、わかるで」って言ってたじゃない』こちらもおあいこです。転校しないと知り、嘘を許すも何も、誰も怒る者などいません。
『良く正直に言ってくれました』逆に褒められ、安堵とともにピースの瞳に涙が溢れました。
君は本当に泣き虫だなぁ・・・さて、これでも一応戦闘中です。
律儀にそのやりとりを見守ってくれていたアカオーニとアカンベェも流石に待ちくたびれ(笑)
再び襲いかかって来ました。
『私、皆から一杯優しさを貰った。その優しさが私に本当の事を言う勇気をくれた』パンチ攻撃を宣言するアカオーニに、再び身構える4人。
その前に一人、ピースが躍り出ました。
パンチ攻撃は案の定嘘。ローラー攻撃が迫る中、ピースは1人アカンベェに挑みます。
『私分かった。皆を悲しませる嘘なんて、絶対ついちゃダメなんだって!』ローラー攻撃をかわしてドロップキックを浴びせかける等、
ピースにとっておそらく初めてとなる、まともなアクションを披露しました。
そして仕上げはピースサンダー。
雷にビビるのは相変わらずですが、勢いのままアカンベェを撃退しました。
教室に戻ったやよいは、クラスメイト達の前で頭を下げました。
戸惑い気味な空気が流れるものの、
みゆき、あかね、なお、れいかの取り成しもあって、皆快くやよいを許しました。
やよいも生徒達に囲まれて目を潤ませ、一件落着ウルトラハッピー、と思いきや・・・
『でもうち、今回の事でやよいの事、ちょっと嫌いになったな』『うん、私も好きじゃないね』『私も、やよいさんの事嫌いです』焦るやよいに、みゆきの言葉が続きますが、どうも彼女は嘘が下手です。
『えーと、えーと・・・私も』もちろんこれは4人がついた嘘。
それも「嫌い」の反対ということは、「大好き」という事です。
これでおあいこ。笑い声に包み込まれる教室の外には、桜の花びらが舞っていました。
追いつめられ、焦りまくるやよいには気の毒ですが、
周囲との温度差の数々の描写には今回も楽しませてもらいました。
やよいの心の中の描写も楽しく、最初の調子に乗った様から
困りまくってあたふたしているところまで、
まるでミニイカ娘を見ているような(笑)何ともいえない可愛いらしさがありました。
また冒頭のヒーロー描写に、すわ何事かと思えば目覚まし時計だったり、
アカオーニの絵が
前回のキャンディに毛が生えた程度のレベルだったり、
仕込まれているネタの数々も前回に負けじと秀逸で、こちらも楽しめました。
そして9話目にしてようやく登場したプリキュアの親、
黄瀬ちはるさんを担当するのは氷上さん。
桃園あゆみさんに続けて2度目の母親役を演ずるのはプリキュアの歴史上初めての事で、
こうなると
来週登場する日野家の両親や、他の親たちの声も気になって来ます。
これまでエイプリルフールが取り上げられなかったのは「4月1日」が春休み中のため、
学校生活の中でありえない日付になるためだと思います。
昨年のホワイトデーともども、この点がやや気がかりではありますが、
作中世界と現実世界の時間感覚は必ずしも一致しないと考える事にします。
さて、こうした日常エピソードの中に教訓をしっかりと交えている点がプリキュアならではです。
勇気を出して謝るという事だけでなく、素直に謝る相手を寛容に許すという事が、
本編だけでも何度も散りばめられており、わかりやすいメッセージになっていると思います。
事実冒頭の黄瀬母娘の嘘のやりとりでは互いに謝っていますし、
お別れ会を開いてやよいを悲しませてしまったと誤解している4人もすぐに謝っています。
また、早とちりを指摘されたピースも、同意していたサニーもそれぞれ謝り、
そしてすぐに互いを許しあっていました。
今回の騒動の発端は、確かに嘘をついたやよいにありますが、
話を聞かずに突っ走ったみゆき、あかね、なお、れいか全員にも少しずつ責任があります。
それを責め立てる事をせず、上手に水に流して笑い合う展開に持っていた流れは
ラストの桜の花びらと相俟って爽やかな印象を残しました。
恨みっこなしの締めの描写が印象的で、春の訪れに相応しい場面になったと思います。
怒られる事、嫌われる事を恐れていたやよいの気持ちはよくわかります。
それに向き合う形となった4人、特にハッピー=みゆきの
「例えどんな事があってもピースの事大好きだよ」という受け答えは的確でした。
ここで「どんな事があっても怒らないよ」と言わせないところが上手いと思います。
仮に悪意が無かったとはいえ、結果として悪い事になってしまった以上、
責任は取らなければなりません。
例え本当に怒るべき事をしでかしていた場合に、それこそ「スジが通ってない」事になりますので
「怒らない」と言わせなかったのは、その可能性を見越しての台詞回しだと感じました。
さて、寛容に許す事について述べさせていただきましたが、例外ももちろんあります。
やよいに宛てた色紙に「ケンカできなくなって淋しくなるよ~!」と書いた木村さとし君、
「泣かしてゴメン」と書いたかずや君、「大人になったら会いに来て」と書いたけんじ君、
そして「君の笑顔一生忘れません」と書いた岡部かつとし君。
以上4名は放課後、体育館裏まで来るように。