"思春期の今だからこそ、自分の名前の由来を知ろう"
学級会で先生が持ち出した案件は、中学二年生にとっては少々気恥ずかしいものです。
親に今更そんな事を聞くのは照れるというあかねとなおの反応ももっともながら、
みゆきは逆にウルトラハッピーの答えがあるかもとしれないと期待しますが、
これらの反応と異なり、やよいはじっと目を落としてため息を漏らしました。
『名前か・・・』
一体どこで手に入れたのか、ウルフルンもまた姓名判断の本で自分の名前を調べています。
っていうか、何でウルフルンなんて名前が載ってるんだよwww
視聴者の突っ込みに代弁するように自分でしっかりとツッコミながら読んでみると、
そこには散々な事が書かれていました。
「短期で凶暴、嘘つき。誰も愛さないから、愛されない」
俺様は一匹狼だとのたまいながら、ウルフルンは腹立たしげに本を引き裂きました。
仕事で忙しい母のために、やよいは味噌汁を作っています。
帰宅した千春ママと一緒に夕飯を作りながら、自分の名前の由来をさりげなく尋ねると、
「やよい」という名前は祖父母の提案を押し切って、父がつけたものだと知りました。
どんな意味が込められているかは、名付けた本人に聞いてみないとわかりませんが、
それは今となっては永遠の謎。黄瀬勇一パパは既に故人となっており、
遺影の中から娘と妻を見守るのみです。
それでも勇一パパは、生前名前の由来をやよいに語った事があるようですが、
彼が天に召されたのはやよいが5歳の時。覚えていなくても無理は無く、
頭を撫でてくれた手の感触は覚えていても、それ以上の事は思い出せません。
みゆきは自室でキャンディのお世話をしながら、その名の由来を尋ねると、
「どうしてもキャンディ」だという以上の深い意味は無さそうです。
そして帰宅した星空博司パパに、自分の名前の由来を聞きに行きました。
その頃「お好み焼き あかね」は大忙し。あかねはお店を手伝いながら
大悟父ちゃんに名前の由来を尋ねますが、
てんてこ舞いの状態のために今は素っ気ない答えしか返って来ません。
その夜は、れいかもなおも、それぞれ名付け親である祖父、父に
自らの名の由来を尋ねるのでした。
そして、やよいは辞書を引いて「やよい」という言葉を調べ、
昔の暦で3月を表すと知るものの、それ以上の意味は分かりません。
写真の中から見守ってくれている父は、一体どんな意味を込めたのか・・・
不意に幼き日の記憶が、やよいの脳裏にフラッシュバックしました。
教会?石畳の道?確かに何かあった筈ですが、思い出す事は出来ません。
『パパ・・・パパは私の事、どう思ってたの?』
クラス会での発表の時がやって来ました。
みゆきは自分の名前について
「どんなに辛くても幸せを見つけられる子になって欲しいという願いが込められている」
と発表し、れいかは漢字で「麗華」としたためて、
「華のように麗しく美しい心を持ってほしいという願いが込められている」と、
それぞれ皆が納得するような由来を披露します。
そしてやよいは、遠慮がちに立ち上がった後、次のように発表しました。
『昔の暦で3月の事で、草木が芽吹く時期だから、
生き生きとした日が始まるという意味が込められているそうです』
いつも生き生きしていると納得するあかねに、笑顔を返すやよい。
しかしその表情はどこか作り笑顔のようで、着席した背中からは妙な寂しさが伺えます。
帰り道、やよいは先程の発表の内容について、
名付け親の父が既にこの世におらず、母も知らないために自分で調べたと打ち明けました。
ちなみにあかねの由来は「呼びやすいように『あ』から始まる名前」、
もしくは生まれた時の茜色の空のように、綺麗な心を持ってほしいから。
なおの由来は「真っ直ぐな子に育ってほしいから、一直線のなお」
という、それぞれ単純ながらも名付け親の想いがストレートに伝わるものです。
実は幼い頃に名前の由来を聞いていた筈なのに、
それが思い出せない事がモヤモヤしているのでしょう。
『時々思うんだ。パパは私の事どう思ってたんだろうって』
ふと疑問を口にするやよいに、みゆきは即答します。
『そんなの決まってるよ。パパはやよいちゃんの事を愛してた。絶対に誰よりも』
もう一度お母さんに聞いてみれば、お父さんとやよいの愛のエピソードがわかるかもしれない―
やよいにも、笑顔が戻って来ました。
キッズファッション関係の仕事に就く黄瀬千春ママは、
今日は「父の日記念 パパといっしょにファッションショー!」の運営に当たっています。
電話を受けて会場の外へ出た折、雨の中傘をさして佇むやよいの姿を認めました。
そして仕事中の母に遠慮して、帰ろうとするやよいを引き留めます。
仕事中に訪ねてきた事を謝るやよいに、
千春ママはカバンの中から古い紙片を取り出しました。
かつてはパパの宝物で、今ではママの宝物にもなっているというその紙片を開くと、
「パパありがとう」の絵と、折り紙が挟まっています。
これはやよいが幼い頃、父の日に贈ったものです。
『仕事で疲れて帰って来ても、やよいの顔を見るとホッとする。
やよいとお風呂に入ったり、公園のベンチでアイスクリームを食べたり、
やよいといるだけでとっても幸せを感じる。だからお礼を言いたいのは俺の方だ』
在りし日の勇一パパは、これを貰った時の事をそう千春ママに話していました。
そしてもう一つ、やよいと勇一パパには秘密の出来事があったらしいのですが・・・
目の前の父と子のファッションショーの光景、手を繋いで歩く父子の姿、丘の上のあの場所。
再びやよいの記憶がフラッシュバックしますが、未だ思い出す事が出来ません。
優しいパパが大好きだという、ファッションショーでのインタビューの光景を
いつの間にかウルフルンが忌々しく見下ろしています。
『愛だの優しいだのくだらねぇんだよ!』
たちまち辺りはバッドエンドに染まり、
母を案じたやよいが取り落した折り紙は、無情にもアカンベェと化しました。
異変を察して駆けつけた4人と共に、変身。
戦いの場を会場の外へと移し、上から叩きつけるハッピー、
下から蹴り上げる4人と、優勢に思われる戦いぶりでした。
しかしウルフルンの激が飛ぶと一転、一人ずつ反撃を喰らいます。
『やめて・・・パパに贈ったプレゼントで、みんなを傷つけないで・・・やめて!!』
目の前で4人が次々と殴り飛ばされ、払い飛ばされる光景に見かねて飛び掛かるものの、
振り返ったアカンベェに勇一パパの笑顔と折り紙が重なり、手が止まりました。
ピースもまた殴り飛ばされ、雨に濡れた石畳を滑って行きますが・・・
石畳の上の水に描かれる2つの軌跡を見て、
厚い雲の合間から陽が差すように、あの日の事が思い出されました。
差し込む陽、石畳に落ちる木の影、そして教会の鐘の音。
勇一パパと手を繋いで、あの日あの時この道を歩んだ記憶が、蘇ります。
『パパ、結婚式しようよ!やよいとパパの結婚式。早く!』
幼いやよいが父を急かして、一緒にバージンロードを歩いた日の事。
『まるでやよいの未来の結婚式を見ているようだな』
やよいと父の秘密の出来事、そして名前の由来。あの日の記憶が浮かんできます。
千の春と書くママの名前「千春」のように、
春のように優しい人になって欲しいという願いを込めて、「やよい」と命名した事。
ピースの脳裏に、父と過ごした日々の記憶がはっきりと思い出されてきました。
いっしょにお風呂に入ったり、ベンチでアイスを食べたり、公園の蓮池のほとりを歩いたり。
これまで影がかかっていたような父の姿も、はっきりと像を結んでいます。
そして教会から肩車されて降りてくる幼き日の自分を見た気がしました。
いや、ピースはそれを実際に見ていました。
『ごめんね、すぐに思い出せなくて。パパは私をあんなに愛してくれたのに。
あんなに、いっぱい・・・』
ピースの頬を伝う一筋の涙。しかし、その顔は笑っています。
『私はパパからいっぱいの愛をもらったおかげで、人に優しくしようって思える。
優しさはきっと、人から人へと伝える愛の表現なんだ!』
晴れ間が差したと思われた空は未だ厚い雲に覆われ、雨はまだ止んでいません。
しかし、ピースの目には強い意志が現れています。
愛のかけらもねぇ攻撃でとどめだと言い放つウルフルンに対しても、
『あなたに愛が無いのなら、パパからもらった愛を受け取って!』
これまで自分で呼んだ雷にビビり続けていたピースが、
怯える事なく耐え抜いて放ったピースサンダーによって、アカンベェ撃退。
ウルフルンには愛が届いたのか。去り際の簡潔な捨て台詞からは伺えません。
元に戻った折り紙を拾い、大切に抱きしめるピース。空はようやく晴れはじめました。
『私、少しは優しい子になれたのかな?』
晴れた空を見上げて、ここであった事を千春ママに話すやよい。
父が願いを込めたように、パパの愛を感じた彼女は十分優しい子に育っています。
名前とは、親からもらう最初の愛情。それは見守るみんなも同じ事です。
自分の名前が大・大・大・大好き!になったと笑い合う黄瀬母子を
この大空の彼方から勇一パパはいつでも見守っている事でしょう。
・・・・・・(涙)。これはズルいです、マジで。
2週連続でなんちゅうもんを見せてくれたんや、なんちゅうもんを・・・
某京極さんのようにこちらも涙が込み上げてしまいました。
先日の母の日も素晴らしく、また過去の名前の由来に触れる話もまた良いのですが、
今回は故・黄瀬勇一パパが私と年齢が近いと思われる事と、
父の目線から見た娘の姿に、朝からやられてしまいました。
不意打ちだった先週とは異なり、絶対泣かせてくるだろうと腹をくくって臨んだのに・・・(苦笑)
今回はストーリーもさることながら、繊細な演出が目を惹きました。
帰宅が遅い母を待ちながら味噌汁を作る場面の直前、
警告するように鳴り響く踏切と、電車が来る方向を示す矢印からは、
やよいの寂しさと共に、決して戻る事が出来ない過去を暗示しているように見えます。
また下校中の描写の数々、蓮の葉に溜まった雨水が獅子脅しのように別の葉に垂れる描写は
上から下へ、親から子へ受け継がれている想いを象徴しているように、
雨に濡れる一枚の落ち葉からは、親(木)から離れた子(葉)を思わせます。
次いで軒先の巣で身を寄せ合い、親鳥の帰りを待っているような鳥の描写からも、
家族の絆を暗示しているように感じさせます。
これら印象的な演出のハイライトは、
徐々に記憶が明らかになるにつれて対比される描写でしょう。
誰もいない浴室、雨に濡れた公園のベンチと蓮池の光景が、
記憶が蘇ると共に父といっしょにお風呂に入った光景や、
明るい空の下で公園を歩いた日々と対比され、
冒頭からここまでずっと雨が降っている事とも相俟って
霧の彼方に隠れていた記憶が一気に晴れ渡ったような描写が印象的でした。
やよい=ピースが父との出来事を思い出すきっかけとなった、2本の平行線。
これは雨に濡れた石畳の上に、ピースの足が描いた軌跡で、
当然いつまでも残るものではなく、すぐに消えてしまいます。
実際、遠い記憶というものはこのように、うたかたのように儚く消えてしまうもの。
具体的に何があったのかなど、思い出す事は難しいですが、
その時に感じた想い、愛はいつか時を越えて受け継がれるのだと感じさせます。
今回ピースサンダーを放つ際、ビビらずにこらえた時には思わず身を乗り出してしまいました。
これまでの気弱な姿を見て来たからこそ、この成長がまるで自分の娘のように嬉しくなります。
それでなくとも先週のリレー本番の力走ぶりなど、
第1話の頃を思えば少しずつ、そして確実に成長している姿。
さらに強くなっただけでなく、敵であるウルフルンにも愛を贈ろうとする「優しさ」。
ラストで母に問うまでもなく、十分優しい子に育っている事が見て取れます。
先日の母の日回、独身の私でも親目線でみゆきを誇らしく感じたと書きましたが、
今回もまた、やよいだけでなく千春ママの事も
私自身が天の彼方から見守っているような錯覚を覚える程、
実際、子を持つ父の気持ち、妻を持つ夫の気持ちはこうなのかと
勇一パパの目線ににシンクロした気がします。
やよいの名前の由来、黄瀬親子の一連のやりとりもさることながら、
他の4人の名前の由来や家族の描写も印象的です。
はっきりとした意図が語られるみゆき、れいかは当然ながら、
一見ぞんざいな日野夫妻、頑固おやじそのものといった緑川源次父ちゃんからも、
そこには明らかに親の想いが滲み出ていました。
4人それぞれが名付け親の意図した通りに育っている事からも、それが窺い知れます。
特にみゆきは「どんなに辛くても幸せを見つけられる子になって欲しい」という意図の通り、
不安を口にしたやよいに対して即座に反応していました。
『そんなの決まってるよ。パパはやよいちゃんの事を愛してた。絶対に誰よりも』
どんな時でも、すぐに幸せな答えを見つける事が実際に出来ています。
そして特に深い意味が無さそうだった「キャンディ」という名前。
飴玉のように甘く可愛い妖精という事かもしれませんが、
「can」「day」何かが出来る日、と読むのは深読みでしょうか・・・(笑)
さて、ウルフルン。今回の姓名判断での一人ツッコミには笑わせて貰いましたが、
彼を取り巻く悲しい事情が少しずつ見え隠れしているようで気になります。
自分の名前について読んだ後、愛など必要ないと言いながら本を引き裂いた姿からは
「愛などいらぬ!」と叫び愛を封印した男、聖帝サウザーが重なりました。
ファッションショーでの親子愛を否定する発言や、「愛のかけらもねぇ攻撃」からは、
まさしくサウザー同様愛に飢え、愛に絶望しているようにも取れます。
今回は撤退時の捨て台詞が短いため、
果たしてピースの「愛」をどのように取ったのかはわかりません。
しかし、いつか分かり合える日が来るような気がします。
ウルフルンの姓名判断の本だけでなく、小ネタ的にも楽しめました。
母の仕事場を訪ねたやよいを案じて後を追って来ている4人が塀に隠れる際、
傘がさかさまになってしまったみゆきが悪戦苦闘しながら直す様は妙に可愛らしかったです。
名前の由来発表会で、やよいの次に出番が回って来たのは「中田ぜんじろう」君。
その名前の由来を是非聞いてみたいと思ったのですが・・・(笑)
何よりもっとも驚いたのは、千春ママが電話で名前を出した「来海先生」
デザイナーの来海さくら先生、カメラマンの来海龍之介先生、
どちらもファッションショーという現場に来る可能性がありますし、
ハートキャッチの世界と繋がっているのではないかと想像力が働きました。
(実際に「来海先生」が姿を見せなかったところも、想像させる意味では良かったと思います)
来週は毎年恒例のゴルフ中継でお休みとなりますので、
私も実家に帰り、父に何かしてあげようかという気持ちになりました。