みゆき達2年2組の文化祭の出し物は多数決の結果、ファッションショーに決まりました。
楽しそうだと期待を膨らませるみゆき達とは裏腹に、
一人豊島君だけが面白くなさそうに席を立ちました。
『ファッションショーが面白いのって、女子だけじゃん。俺やらねえから』
そう吐き捨て、ギターを背負い教室を後にする豊島君。
クラスに戸惑いが広がります。
『豊島君、文化祭の準備に参加してくれるかな?』『多数決で決めたのが良くなかったのでしょうか』『そんな事無いと思うけど・・・』『何がそんなに気に入らへんのやろう』夕闇迫る帰り道、みんな考えてもわかりません。それでも悩んでも始まりません。
『でも、せっかくの文化祭だもん。みんなで一緒にやりたいな』みゆきの一言で、みんなで文化祭を成功させる方法を考えようと前向きになりました。
やよいは
母・千春さんが本職のため、数々の資料を持って来たり
ショーの裏方の仕事などを紹介します。
女子のイベントと思いきや、男子も意外と輪に加わって興味津々。
ファッションショーのテーマとしてみゆきが提案する「絵本」といった
乙女チックな意見にも反対の声など上がらず、和気藹藹と計画が進んで行きます。
白雪姫チームや桃太郎チームなど、色々な衣装を揃えてステージに上がり、
裏方も全員が出演できるようにしようと、みゆきの意見は受け入れられて話は弾み、
猿蟹合戦チームで盛り上がる男子達など、教室はいいムードに包まれています。
(しかし宗本君。君は誰がどう見ても臼です。残念ですが・・・)
ところが教室に豊島君が入って来ると、空気は一変。宗本君達男子3人の顔が曇りました。
それでもみゆきは豊島君に誘い掛けますが、
やらないの一点張りでそのまま教室を出て行ってしまいました。
クラスメイト達は顔を見合わせ、教室内に戸惑いの空気が広がる中、
みゆきは一人、豊島君の後を追いました。
『豊島君も一緒にファッションショー盛り上げようよ。みんなでやればきっと楽しくなると思うから』廊下に追って来たみゆきに対し、興味ないと一蹴する豊島君。
先程の男子3人も追って来ている事に気付き、
一緒にバンドやろうと約束したのに、本気じゃなかったのかと声を荒げました。
彼らもバンドをやりたかったのは確かです。
しかし彼らだけの意見でクラス全体の出し物は決められません。
『・・・勝手だな』
言い捨てて、豊島君はそのまま背を向けて行ってしまいました。
このやりとりで、みゆきは豊島君が拘っていたものを知りました。
『けどなあ、それって豊島のわがままとちゃう?』『バンドやりたいのはわかるけど、クラスの出し物だしね』『やっぱり、もっと意見を交換した方が良かったのでしょうか』『でも、クラスみんなでバンドは出来ないし、全員一致の出し物にするのって難しいと思うけど』お弁当食べながら相談しても、妙案は浮かびません。
その時キャンディの『ファッションショーは面白くないクル?』という問いかけがヒントになりました。
『豊島君にも、ファッションショー楽しいかもって思ってもらえばいいんだよ』そうと決まれば、一致団結。豊島君を誘うための、あの手この手が始まります。
しかし豊島君は・・・その頃音楽室で、一人寂しくギターを鳴らし、深くため息をついていました。
まずは5人総出で豊島君の説得にあたります。
っていうか、こんな美少女5人組に説得されて落ちない奴はいません。
ところが、豊島君はこれを耐え抜きました(笑)
その間にも準備家庭科室では準備が着々と進んでおり、丈を測ったり、型紙を切ったり、
布地を調達したりと、男女関係なく、みんな楽しそうに作業を進めていました。
三匹の子豚用の豚鼻を作っていたあかねは一計を案じ、
一人屋上で弁当を食べている豊島君に、みゆき、やよいと一緒にアピールします。
『くだらねえ。てか似合いすぎだろ』
『せやろ!おおきに!って、豚鼻が似合う乙女がおるか~!』残念ながら豚鼻で気を惹く作戦は失敗?し、
お勧めのBGMをそれとなく尋ねようとするれいか、
照明の意見を貰おうとするなおも素っ気なくあしらわれ、
みゆきに至ってはセクスィーポーズでまで披露するも、豊島君の心は動きません。
しかし準備が進めば進む程、後からでは余計に入り辛くなってしまうものです。
みんなが心配している事を、豊島君は知る由も無いでしょう。
その逆に、豊島君の寂しい胸の内を知る者も、ここにはまだ居ません。
やよいは思い切って豊島君に羽根つき帽子を渡して勧めました。
何とも言えない戸惑いと、辛そうな表情を浮かべるものの、豊島君の答えは変わりません。
やよいを突き放したその態度に、遂に海より深いなおの心もここらが我慢の限界を迎えました。
『豊島、いい加減にしな!これはみんなで決めた事なんだから。
あんたの言い分は筋が通ってないよ!』豊島君の前に立ち、真っ向勝負で一喝しますが、彼もそう簡単には引き下がれません。
お前に関係ないと返された事で、なおちゃん、堪忍袋の緒が切れました!
一触即発のなおを、みゆきとあかねが押し留めている間に、教室を飛び出す豊島君。
飛び出したものの、無人の渡り廊下でその足が止まりました。
おそらく、もう解っているのでしょう。それでも、今更・・・
完成した衣装を試着して、盛り上がる教室。
全員がモデル、みんなが主役というみゆきの意見が功を奏し、男女関係なく楽しそうです。
しかし豊島君が入って来た事で空気は一変しました。
クラスの空気が凍りつき、豊島君もまたさっきまでの楽しそうな光景に息を呑みました。
それでも、みゆきだけは分け隔てなく豊島君に接しますが・・・
『豊島君も一緒にやろうよ。あともうちょっとで完成だけど、豊島君も・・・』『俺には関係ねえし!』
その言葉を遮り、あかねの窘めも振り切って、再びギターを背負って出て行ってしまいました。
最初はダンスをしたかったと言う岡田さんも、ファッションショーをやってみたら楽しかったので
勿体ないと口にしますが、本人がやりたくないならもう誘わなくてもいいのでは、
という意見も上がり、クラスのムードもその方向に傾きかけます。
『私はこのままじゃ、何かやだな・・・』この一言で、クラスの雰囲気は変わりました。
豊島君だけがのけ者のようになるのではなく、
誰一人欠ける事無くクラス全員が参加できる文化祭にしようと思い直します。
そしてみゆきは、もう一度豊島君の説得を試みるべく、後を追いました。
豊島君を探すみゆきの耳に、寂しげなギターの音色が聴こえて来ます。
『なんでこんな感じになったんだろう。俺だって、みんなと楽しくやりたいよ・・・』
豊島君が呟く本音を耳にするみゆき。と、その時マジョリーナが襲来しました。
出撃の前に策を練っていた折、音で相手の動きを封じるという事を思いついた
今回のマジョリーナの狙いは、豊島君が手にするギターです。
周囲をバッドエンド空間に包み、豊島君以下クラスメイト達からバッドエナジーを立ち上らせて、
ギターにをハイパーアカンベェ化。(おばあちゃんハイパーとの一体化大丈夫か?)
みゆきは駆けつけた4人と共に変身して立ち向かいます。
マジョリーナの戦法とは、ギターをかき鳴らしての音波攻撃という
キュアビート先輩が絶対に許さないと怒りそうな技です。
しかしアンプから鳴り響く大音響不協和音の威力は絶大で、
5人は戦うどころか、耳を塞ぐしかありません。
動けないプリキュア達を、ハイパーアカンベェの攻撃が襲います。
この危機にキャンディは、ギターとアンプを繋ぐシールドに目を付けました。
バナナデコルで大きなバナナを出し、何をするのかと思えば、
そのでかいバナナを食べ始めました。キャンディの意図は一体??
それは何と、バナナの皮をハイパーアカンベェの足元に投げて転ばせるという
実に古典的な手法でした。それにまんまと引っかかり、滑って転んですってんころりん。
そんなバナナ!?と中のマジョリーナも古典的な台詞で驚き、
実際にシールドは抜け、転倒したハイパーアカンベェの体がアンプを押し潰し、
結果オーライ、効果はバッチリです。音が消えればこちらのもの。
プリンセスフォーム→ロイヤルレインボーバーストの流れで撃退しました。
気が付いた豊島君は、意地を張るのをやめて素直にみゆき達に謝ります。
『俺ギターくらいしか取り柄が無くてさ。
ごめんな。本当はクラスでバンドするのも無理だとわかってたんだけど』
そんな豊島君にも、いや、豊島君にしか出来ない事があります。
その事を、みゆきはお願いしました。
『みんなで最高の文化祭にしようよ!!!』文化祭が始まり、2年2組の出し物、絵本の国のファッションショーが開幕します。
ピーターパンに扮した豊島君の音頭で始まるバンド演奏と共にショーがスタート。
お姫様、妖精、三匹の子豚、桃太郎、浦島太郎など、
男女の分け隔てなく、華やかに楽しく、ショーが進んで行きます。
やよいの赤ずきん、あかねのアラビアのお姫様、れいかのかぐや姫、なおのアリス、等々
舞台袖でそっと見守っていたみゆきは、振り返って目くばせする豊島君の表情に成功を確信。
そしてクラスメイト達の後押しを受けて、みゆき自身もステージへ向かい、
お姫様の衣装で豊島君と一緒にポーズを決めました。
(ちくしょおおおおおおおおおおお)『みんなで輝ける、最高の文化祭になりました。みんな笑顔でウルトラハッピー♪』クラス全員でカーテンコール。そこには確かにウルトラハッピーがありました。
実は今回の初見時、前半を観終えた段階では、色々と引っかかっていました。
豊島君の態度は確かにワガママと言われても仕方が無いかもしれませんが、
逆にみんなは豊島君の気持ちを考えようとしたのか、疑問を抱いてしまいました。
価値観の相違は仕方が無いとして、価値観の「押しつけ」こそが悪だと
これまでのプリキュアシリーズで描いてきた筈です。
途中までは、豊島君に参加を強要するように見えて少し疑問でしたが、
最後まで観て、そして2度3度と見返す事で違和感は払拭されました。
例えば途中で豊島君の意志を尊重して不参加を認めるという空気になりかけた時、
その通りにするという選択肢も考えられます。
しかし口や態度では反発しているものの、
豊島君が自分自身に対して苛立っている事を見ると、
ここで不参加だった場合、後々まで彼の心に後悔が残った筈です。
その後ろめたさはこれから先クラスメイト達と顔を合わせる度に募って行き、
豊島君のためにもクラスのためにも決して良い結果にならないでしょう。
不参加を認めれば、一時的に問題は解決しても、根本的な解決にはなりません。
問題の本質から逃げて目を背けるのでは、
2話前で迎えた危機と同じ事です。
そこに甘んじるのではなく、本当に皆が納得するためにはどうすれば良いか。
あの試練を乗り越えたみゆきだからこそ、
豊島君やクラスのためにも同じように行動し続けられたのだと思います。
とはいっても、前半の時点ではみゆきでさえも豊島君の気持ちが掴みきれておれず、
あかねやなおの発言には少々彼が気の毒に思えてくるものもあります。
感情的になっている状態では、筋を通せばいいと言うものでもありません。
なおを責めるようで恐縮ですが、仮にクラスの出し物が
「お化け屋敷」になったとしたら
おそらく嫌がったり渋ったりしたのではないでしょうか。
そんな自分に対しても、「みんなで決めた事だから」「筋が通っていない」と
言い切れるのか、少し気になりました。
振り上げた拳を下ろすに下ろせない状態になってしまった豊島君にとっては、
正論をぶつけられる程辛いものは無いでしょう。
あかねの豚鼻の時には、まだ彼も軽く茶化せる程度でしたが、
次第に豊島君の表情は辛く、苦しくなって行きます。
特にやよいに羽根帽子を手渡されたり、前述のなおに正論をぶつけられた時など、
自分自身に対する苛立ち、どうしていいのかわからないけれども、
今更意地を曲げる事も、貫く事も出来ないと言った苦しさが伺えます。
「勝手だな」という呟きは、自分自身に向けた言葉のようにも感じられました。
またホームルームにおいて、多数決の前に意見交換はおそらく無かったのでしょう。
れいかも少し気に病んでいましたが、ここでバンドをやりたい連中の意見を発言させ、
結果的にクラスの出し物としては難しいと納得させられれば、
ここまで豊島君がこじれる事は無かったと思います。
とは言っても、大人の会議ですら全てが丸く収まる結果にはならないもので、
それを中学二年生に求めるのは酷なことかもしれません。
しかし、多数決は万能ではないという教訓にはなったと思います。
豊島君が意固地になればなるほど、みんなで決めた事なんだから従えよ、
という風潮になりかねません。現に、そうした空気が一部に感じられました。
それでもクラスの誰もが豊島君を見捨てていないところが救いでした。
これが「本人が出たくないと言っているから~」では無く
「もうあんな奴放っておけよ」などという声が上がるとしたら(現実には上がる可能性大ですが)
そう簡単にはここまで纏まらないと思います。
プリキュアはあくまで子供達のための、清々しい作品であってほしいと思いますので、
この点では見ていて安心感がありました。
さて、今回はみゆきがひときわ際立っていました。
私がどこか引っかかりながら観ていた前半部では、
みゆきも「楽しいと思うから、だから豊島君もやろうよ」といった雰囲気で、
それが少し価値観の押しつけっぽく感じられたのですが、
後半では豊島君のやりたかったことと、今やらなければいけない事、
そして彼のやりたい事と、彼にしか出来ない事を受け入れて
ちょっと背中を押して、同時に少し引っ張り上げるという、
足し算ではなく掛け算としてファッションショーを成功させた手腕が鮮やかでした。
彼女はもともと転校生でもあり、あまりクラスメイト達と絡む描写が無かったため、
みゆきのクラス内での立ち位置が、これまで少し分かり辛いところがありましたが、
今回の一件でクラスの主導権を握れる主体性、さらに「絵本のテーマ」という
乙女チックな題材を提案しても、反発する声が上がらないところをみると、
キュアハッピーとしてだけではなく、星空みゆきという人間としても成長している事が伺えます。
また今回は前半最初の下校時、宵闇迫る時期の演出が印象深かったです。
沈み行く夕陽を背に歩く5人の顔は一様に逆光で暗く、
行く手の空は薄闇が迫っていました。
これはクラスの前途を案じしているような、暗い背景です。
それがみゆきの一言の後は一転し、暗い中に少しずつ街灯がともって行き、
歩いて行く先の夜空には一番星が輝く等、
暗い中にも希望が伺える事を暗示しているようで印象に残りました。
それにしてもマジョリーナ、老体に鞭打っての黒ッ鼻使用が少し心配です。
どうせならマジョリーナタイムで若返ってからでもいいんじゃないかと(個人的趣味ですが・・・)
とはいえ、戦闘中の様子は目元のラインと相俟って、
KISSのマネしてエアギターをノリノリで楽しんでいるようなコミカルさが
プリキュアのピンチにもかかわらず楽しかったです。
また今回は豊島君の悩みを糧に動くデザトリアンかと思いきや
不幸のメロディを撒き散らすネガトーンの要素もあり、
さらにラブギターロッドを思わせる(ビートが怒りそうな)攻撃など、
微妙に懐かしさが感じられました。
そしてここまで触れて来ませんでしたが・・・
2年2組の女子たち、ちと可愛すぎやしませんか?
てゆーかてゆーかてゆーか、岡田さん今までノーマークでしたが、可愛いじゃないですか(笑)
高飛車で近寄り難い存在かと思いきや、お姫様に憧れる等可愛い面があったり、
多数決でダンスが流れた時に少し残念そうな顔していても、それを水に流せたりと、
この時期までさほどクローズアップされてこなかったのが惜しいキャラクターでした。
妖精?になった2人の女子や、(うち一人はなおちゃんストーカー説のある金本さんですよね)
時計ウサギなど、これ思春期の男子が見たら悶えるだろ?ってレベルです。
男子もネタっぽい衣装からイケメンっぽい奴まで揃っていましたが、
まあ野郎については割愛します(笑)
そしてもちろん
前回に続く扮装を披露してくれたメインの5人も同様です。
赤ずきんやよいの可愛さはブレない盤石さでした。
あかねは妖怪になった前回の反動か、中東風お姫様衣装を見事に着こなし、
何気に胸元の露出がきわどいところ、女郎蜘蛛と共通している気がします(笑)
かぐや姫れいかの美しさには、何も言う事はありません。ああ!う・・・美しすぎますッ!(またか)
キリっとした衣装のイメージがあるなおの、まさかのアリスには意表を突かれました。
これはヤバいです。マジで。一番直球で来ました。
みゆきのお姫様はある意味定番とも言えるのですが、
衣装そのものよりも、クラスを纏め上げた達成感と、
みんなの後押しを受けて輝く様が実に麗しく見えました。
ただ、豊島君。ここまで君には同情しながら書き進めて来ましたが・・・
みゆきの好きな人だというピーターパン役だとぉ!?
おのれ爆発しろどうせなら絵本と関係無いですが、ステレオタイプのロッカーらしい
プレスリーみたいなヒラヒラや、鋲だらけのタイトレザーとかでも良かったんじゃないでしょうか。
ともかく、ファッションショーが終わったら、あとで体育館裏に来るように。
ファッションショー自体の楽しさ、華やかさの中に、
赤ずきんやよいの相手役としての「狼」、桃太郎チームの「鬼」、
ストーリーは解りませんが、明らかな魔法使いの姿も見受けられたのが気になります。
これはやはり、狼、鬼、魔女と一緒に同じステージでスポットライトを浴びられる、
即ち三幹部との共存や、分かり合える事の暗喩なのでしょうか・・・?
といった傍から何ですか?あの次回予告は(笑)
今回のように過去のシリーズに類似した設定を持ってくるかと思いきや、
「キュアキャンディ」「ミエナクナール」などの超変化球にも定評があるスマイルプリキュア。
その物語の可能性には、後半に差し掛かった今でも驚かされます。