図書室へ本を借りに来たみゆきは、一冊の本が落ちているのに気が付きました。
表紙をめくると、そこにはガラスの靴の絵が描かれています。
という事はシンデレラ?そう考えながら絵に触れると、
みゆきの指が、それだけでなく全身が本へ吸い込まれてしまい・・・
一緒に居たキャンディが気付いた時、みゆきの姿は無く本だけが取り残されていました。
亜空間を落ちて行くみゆきに灰が吹き付けられ、暖炉に着地した時にはすっかり灰まみれです。
しかし「灰かぶり」とはシンデレラの事でもあります。
周囲を見回すとお城があり、いつの間にか小間使いのような服を纏っている事に気が付くと、
これはシンデレラの世界だと確信したみゆきは、戸惑いどころか目を輝かせるのでした。
『もしかして、あたし・・・シンデレラになっちゃった?』『無い!無い無い無い!』
そう口走りながら教室の窓から飛び込んできたのは、マジョリーナではなくポップです。
同時にキャンディも、大変だと叫びながら本を手に教室に駆け込み、慌てて取り繕うあかね達。
ポップはキャンディが持っている本が探していたものと知って、まずは胸を撫で下ろしました。
この本は「はじまりのシンデレラ」
ページをめくると、そこには鼻歌歌いながらどこぞのミュージカルのようなポーズを決めて
楽しそうに掃除しているみゆきの姿が挿絵として描かれています。
本来ならばつらそうに掃除しているはずなのですが・・・(笑)
さて、この「はじまりのシンデレラ」とは
世界中全てのシンデレラの物語と繋がっている幸せの大元であり、
もしもこれがバッドエンドに染まるような事になれば、
全てのシンデレラがバッドエンドに改変されてしまうという代物です。
既にそれを嗅ぎつけたマジョリーナ達三幹部が、本を奪うべく学校へ姿を現しました。
ところが我先にと本を奪おうとする三幹部達、本を守ろうとしたキャンディ、
そしてあかね達4人が揉み合いとなり、みんな仲良く本の中へと吸い込まれて行きました。
ただ一人残ったポップは、本の登場人物になってバッドエンドから守るよう皆に託します。
シンデレラとなったみゆきは、王子様と結ばれるハッピーエンドを想像して胸を躍らせています。
しかし、シンデレラの世界にはあの人たちが必要不可欠です。
果たして意地悪な姉その1とその2、そして意地悪な継お婆ちゃんが現れ、
この話をバッドエンドにしようと企みました。
対するみゆきも絶対幸せなシンデレラになると誓い、
作品世界を舞台にした戦いの火蓋が切って落とされます。
みゆきが綺麗に洗い上げたシーツに、意地悪な姉その1の影が映り・・・
まるで犬のようにプルプル泥水を跳ね飛ばして洗濯物を汚し、
意地悪な姉その1は嬉しそうに吠えました。
続いてみゆきがピカピカに磨き上げた廊下を、
無遠慮に意地悪な姉その2が汚れた足で踏みつけて行きます。
あの、やってることが単なる嫌がらせレベルなんですけど君たち・・・(笑)
次は料理の邪魔をしようと、意地悪な継お婆ちゃんが背後に迫りますが、
お婆ちゃんが手を下すまでも無く鍋から妖しい煙が立ち上り、
焦ったみゆきは次々と食器を破壊しました。この自滅には、意地悪な継お婆ちゃんも呆れ気味です。
そんなこんなしているうちに、お城からの招待状が届きました。
盛り上がる意地悪な姉たちの会話に耳をそばだてていたみゆきも意気込みます。
『キター!いよいよだ!』ところが意地悪な継お婆ちゃんが紐を引っ張ると檻が降って来て(なんと古典的な・・・)
その中に閉じ込められてしまいますが、それでもみゆきはまだ余裕です。
檻に閉じ込められるのは違っていても、ここまではストーリー通り。しかし・・・
『魔法使い役のやよいでーす・・・ごめんなさいシンデレラ。捕まっちゃいましたぁ』頼みの綱だった魔法使い役のやよいが同様に捕まっていると知って
その希望は打ち砕かれました。ミノムシのように吊るされて、力なく謝るやよい。
その間に陽はあっという間に沈んで月が昇り、
意地悪な三人組は意気揚々とお城へダッシュして行きました。
そろそろ舞踏会が始まると言うのに、これではみゆき達は動けません。
そこにあかねとなおの声がしました。彼女達の役はなぜかネズミさん。
あかねはその役回りに不満そうではありますが、
2人でやよいを縛っているミノムシの葉っぱを齧って救出し、
トカゲさん役のキャンディも、馬車となるカボチャを持って登場しました。
魔法使いが解放されればもうこっちのものです。
はじけろホイ★もといチチンプイプイのプイ!で雷と共に魔法を使い、
あかねとなおのネズミさんは馬車を牽く駿馬へ、
薄汚ねえシンデレラだったみゆきも、きれいなドレスを身に纏って見違える姿になりました。
ガラスの靴を履くのを忘れずに、12時で魔法が解ける事にも注意して、
いざカボチャの馬車でお城へと向かいます。
お城への道中、空に浮かぶ満月に見とれていると、意地悪な姉その1の声が響きました。
『そう、満月といえば狼男』
意地悪な姉その1が衣装をはぎ取ると、何という事でしょう!
その正体はウルフルンだったのです!(バレバレだっつーの)
ウルフルンの吐く息は猛烈な風に馬車を押し返しました。
馬車は壊れ、あかねとなおの魔法も解けてネズミに戻ってしまい、
これでは舞踏会に間に合いそうにありません。
お城へ向けて夜空を走るウルフルン。シンデレラ、大ピンチです。
『シンデレラのお話、この先どうなっちゃうでござるか!?』
ポップには、やきもきしながら事を見守るしか出来ません。
煌びやかな宮殿、華やかな大広間、そして高々と掲げられた「道」の書(笑)
そして待ち受けるは凛々しく着飾ったれいか王子。役者は揃いました。
『みなさん、今夜は私の花嫁を決める舞踏会へようこそ!
・・・誰も、来ません』折角の舞踏会場はなぜかガランとして誰もいません。
それもそのはず。他の招待客は意地悪な姉と継お婆ちゃんが追い返したためでした。
口々に踊りの相手を申し出る三人組にドン引きしながらも、
流石はれいか、そこはやんわりと断ります。
しかしシンデレラは馬車を壊されて来られないと聞かされ、息を呑みました。
そのみゆきシンデレラはこの程度で諦めません。
ガラスの靴を脱いで手に持ち、キャンディ、あかね、なおを抱えて城へと走り続けます。
『まだ!まだ終わりじゃないよ。馬車が無くたって、舞踏会に辿り着いて見せる!』シンデレラをバッドエンドになどさせないという想いを胸に、熱いBGMをバックに走るシンデレラ。
木の根に足を取られて転んでしまいますが、丁度その時、
中々お城に来ない事を心配した魔法使いやよいが、ほうきに乗って様子を見に来ました。
意地悪な三人組の求愛から、助けを求めて逃げるれいか王子様。
そこにほうきに跨ったシンデレラが、気合の雄叫びと共に突っ込んできました。
その勢いで意地悪な三人組はすっ飛ばされ、ようやくシンデレラと王子の対面の時です。
『私と、踊っていただけますか?』同性相手だというのにみゆきは頬を染め、やよいは空気を読んでその場を退き、
手を取り合った王子とシンデレラが大広間へと向かいます。
実はダンスを踊った事が無いと告白するれいか王子ですが、それはみゆきシンデレラも同じ事。
いつもEDで踊ってるじゃんという事はとりあえず置いておいてなんとかなるなる!2人きりの舞踏会を、心行くまで楽しみました。
うたかたのようなひと時は、瞬く間に過ぎて行きます。もう11時55分。
間もなく魔法が解ける時間です。ストーリー通りに事を進めるには、
魔法が解ける前に城から出て、さらにガラスの靴を落として行かなければなりません。
みゆきはは去りゆくシンデレラを、れいかは追う王子様を演じながら大階段に差し掛かると、
先程飛ばされて行った3人がしぶとく戻って来ました。
行く手を塞ぐ3人にネズミのあかねとなおが飛び掛かり、
そこに魔法使いやよいが追い打ちをかけようとしますが、
ネズミに髪の中に入られてのたうち回るマジョリーナに押されてしまい失敗。
しかし全員コテンパンにしてやると意気込むウルフルンも、
マジョリーナとアカオーニにぶつかって、三人仲良く蒲田行進曲の如く階段落ちしました。
目を回した魔法使いやよいが、れいか王子に介抱されて思わずキュン♥となる等
いらんドラマ展開(笑)を交えながらも、シンデレラの脱出シーンは無事終わろうとしています。
しかしそうは問屋がおろしません。
ウルフルンは意地悪な姉の格好のまま、ガラスの靴をアカンベェと化しました。
これでは王子に拾わせる事が出来ません。
みゆきシンデレラは話を滅茶苦茶にさせぬよう(既に滅茶苦茶な気が・・・)
スマイルパクトを構えますが、やよいとれいかは元の世界に置いて来ており、
あかねとなおはネズミの姿。やむなく一人での変身・応戦を余儀なくされます。
5つの光も揃わず、一人だとイマイチ決まりませんが、今はこの場を乗り切る事が先決です。
ところが、なぜかアカンベェは襲って来ません。その目的は12時までの時間稼。
ちょこまかと逃げ回り、素早い動きでハッピーを翻弄します。
かと思えば時折反撃も交え、良い様にあしらわれている内に、残り時間が1分を切りました。
この危機にキャンディは一計を案じ、アメデコルを使いました。
何が起きるかと思えば、空から大量の飴玉が降って来てアカンベェを押し潰します。
文字通りの、飴の雨。ダジャレに突っ込む間もなく、
いつになく気合十分のハッピーは単身でプリンセスフォームへと姿を変えました。
『みんなの大好きなシンデレラを、バッドエンドにしちゃダメなんだから!』その根底にあるのはシンデレラへの深い共感と愛です。
愛が籠った一撃、シンデレラハッピーシャワーで見事アカンベェを浄化しました。
その技の勢いは強すぎ、反動で家まで飛ばされて行くハッピー。
元に戻ったガラスの靴はれいか王子の手に収まり、12時の鐘の音が鳴り響きました。
一応、ストーリー通りです(笑)
そしてストーリー通りに、れいか王子が従者を伴いシンデレラの家を訪ねました。
ところが従者が差し出したガラスの靴は、16文はありそうなビッグサイズ。
従者の正体はウルフルンとマジョリーナで、
家の中からは姉その2を演じたままアカオーニが飛び出して来ます。サイズはぴったり!
『嬉しいオニ!新婚旅行は鬼が島オニ!』
しかし喜ぶのも束の間、無理に履いたためかガラスの靴は砕け散り、
その間にキャンディが本物のガラスの靴を馬車から見つけ出しました。
争奪戦の果てに、本物は首尾よくみゆきの足へ収まり、
れいか王子はみゆきシンデレラの手を取って、無事ハッピーエンド達成です。
と、同時に皆元の世界に戻りました。三幹部達が引き上げた後、
みゆきはみんながいたからハッピーエンドになったとにお礼を言います。
逆にみんなも頑張り屋のみゆきはシンデレラに相応しいと感じていました。
ところで、肝心の「はじまりのシンデレラ」はといえば・・・
大筋はあっているもののキュアハッピーが加わってしまい、話が少し変わってしまいました。
もっともっと楽しいシンデレラになったと割り切れば、それもアリなのかもしれません。
またまたカオスかつ楽しい一編に、まずは大いに笑わせて貰いました。
みゆき達のシンデレラは後述するとして、三幹部の異様なキャラ立ちには爆笑させられました。
昨年のトリオ・ザ・マイナー達も無理やりな女装がありましたが、
彼らにはまだバリトンというお似合いの者がいましたので、オネエ言葉で話すウルフルンとアカオーニ、
塩沢ときのような頭で自ら「お婆ちゃん」を名乗るマジョリーナの強烈さだけが残ります。
掃除・選択・炊事の邪魔が単なる嫌がらせレベルだったり、(炊事は単なる自滅ですが)
紐を引っ張って檻に閉じ込めたり、夜空を走るウルフルンだったり、
そして皆が皆で足を引っ張り合ってしまうガラスの靴争奪戦、新婚旅行は鬼が島発言など、
突っ込みどころ、ツボにはまるポイントがあまりに多すぎて挙げきれません。
その中でもインパクトが強かったのは、マジョリーナの「結婚したい」という台詞でした。
これは単なるその場のノリなのか、それとも・・・?
若返った姿であれば十分望みはあると思いますが(笑)
突っ込みどころ、ツボにはまるポイントが多すぎるのはみゆき達も同様で、
贅沢すぎるフルコースを堪能した気分です。
みゆきシンデレラ、魔法使いやよいの可愛さはもちろんの事、
やはり目を惹くのは凛々しいれいか王子様でした。
宝塚のようなカッコ良さだけではなく、三幹部に追い回されて、
結果的にシンデレラに助けられてしまうという逆転現象なども楽しめますが、
何と言っても「道」が掲げられた城の大広間(笑)
そして思わず同性に頬を赤らめてしまうみゆきとやよい等、
あらぬ妄想を掻き立てられてしまいます。
その分あかねとなおが割を食った感が無くもないですが、
なかなかどうしてネズミ姿の可愛さ、美しい牝馬の姿もイケていたと思います。
そんな中、傍観者として立たざるを得なかったポップの視点が
第三者的で見方によっては意味深でした。
「この先どうなっちゃうのか」という台詞からは、先が見えない話に対する漠然とした不安、
ひいてはこのスマイルプリキュアがどのように進んで行くのかという
終盤に差し掛かった今だからこそ感じる今後の行く末の懸念とも感じました。
間もなく物語が終わってしまう事への一抹以上の寂しさ、
どんな困難が彼女達の行く末に待ち受けているのかという懸念、
そして、どんな答えを出すのかと言った期待・・・
何気ない台詞でしたが、例年この時期に感じる複雑な想いを端的に感じます。
もっとも、ポップの「なんて卑劣な!」には笑わせて貰いましたが(笑)
作品世界の役割を忠実に演じるとは、与えられた運命からは逃げられないと見る事もできます。
とすれば、運命を書き変えようとした三幹部達の行動は果たして悪だったのか?
今回はギャグ回かつカオス回でありながら、問題提起があったのかもしれません。
悪役としての役割を義務付けられている狼、鬼、魔女が
自分たちが生きるために物語を書き変えたいと願ったとしたら・・・
目的と手段はともかく、今回彼らは皆彼ら自身の幸せを願って行動していました。
それは即ち彼らのハッピーエンドであり、彼らのバッドエンドではありません。
そもそもバッドエンドやハッピーエンドとは絶対的な価値観ではなく、
相対的な価値観ですから、誰かの幸せは誰かの不幸で、その逆もまた成り立ちます。
そんな彼らが仮に報われない最期を報われるとしたら、
真の意味でのウルトラハッピーにはならないのではないか?
今回は思い切り笑って楽しんだ反面、そんな疑問も頭をもたげて来ました。
「運命」といえば、奇しくも今回のプリキュアに続く題名の無い音楽会は
ベートーヴェンの第5番、いわゆる「運命」として知られる曲がメインでした。
その中で興味深かったのは、この曲の持つ「運命」を
「Fate」として解釈する風潮が欧米にはあるという談話です。
同じ「運命」でも「Fate」は否定的な、「Destiny」は肯定的な意味に捉えられるとの話に、
悪役としての宿命を義務付けられているウルフルン達の「Fate」が
果たして「Destiny」になり得るのだろうかと考えさせられました。
みゆき達のみならず、歴代のプリキュアが辿った運命は、
物語の終幕を終えてみればいずれも「Destiny」だったと思います。
中にはせつな、ゆり、エレンのように「Fate」に圧し潰される苦難を味わった者もおりますが、
最終的にはそれを乗り越えて自らの運命に打ち克っています。
またシンデレラの世界を忠実になぞるべきだったのか、
ラストで改変されてしまった物語に問題は無いのかといった疑問が少しありますが、
やはり作品世界を忠実に演じるのでは、
プリキュアとしての道を切り開いた事にならなかったと思います。
これまでの作品が語っている通り、プリキュアとは受け身のヒロインではありません。
既に決められている「シンデレラ」という作品世界のレールであっても
大きく逸脱せずに独自の視点でハッピーエンドへ導いた彼女達であれば、
必ず最大多数の最大幸福をもたらすウルトラハッピーへの道を示してくれると信じています。
次回は
ブラTマソ君に続くあかね回とは、ややタームが早い気もしますが
残りの話数を考えると次回が彼女の最後のメイン回でしょうか。
全員があと一回ずつメイン回を受け持ち、クリスマスに続く最終決戦・・・
おそらくこういう流れでしょう。解っていても、寂しいものです。