『私の名前は星空みゆき。ハッピーな事が大好きで、
いつも笑顔でいれば、きっとキラキラした未来が待ってるって信じてます。
だから毎日、ウルトラハッピーを探しています。でも、ウルトラハッピーって何なんだろう?』クリスマスムードに包まれる街を、みんなとの待ち合わせ場所へ向かう途中、
転んでしまったみゆきは、その際取り落したキャンディを女の子に拾ってもらいました。
その子が首から下げている鏡が、みゆきの遠い日の記憶を呼び起こします。
目の前の子と同じくらいの年頃だった頃、「誰か」と一緒に過ごした時の記憶が―
畜生!畜生!畜生!
ここはバッドエンド王国。
最後通告を受けながら敗戦したウルフルンはアジトにも戻れず、
暗い森の中、悔しさを噛みしめながら冷たい雨に打たれていました。
俺は一匹狼、風の向くまま気の向くまま、などと開き直るも、
ジョーカーに言われた"昔に戻りたいんですか?"という言葉が耳から離れません。
かくなる上は、最後に一つ残った黒ッ鼻を手に、
全ての始まりとも言うべきキュアハッピーを標的に定め、暗い情念を燃やしました。
みんなと落ち合ったみゆきは、さっきの子が持っていた手鏡が
小さい頃大切にしていたものに似ていたと語り、しばし幼き日の記憶を紐解きます。
笑顔の大切さを知る事が出来た時の事、そして初めて仲良くなった友達の話を―
幼ない頃の一時期、みゆきは博司パパの仕事の関係で、
祖母タエさんの家で暮らしていた事がありました。
人見知りが激しかった当時のみゆきは、日がな家の中で一人絵本を読んで過ごしており、
それを心配したタエさんがくれたのが、例の手鏡です。
『笑う門には福来るって言ってね。
ネガティブだってぶっ飛ぶ 笑っていたらきっと、楽しい事がやって来るわ』
手鏡は早速みゆきの宝物になりました。鏡に映る様々な表情はみゆきに勇気をもたらし、
ある日手鏡をお守りにして、外へと足を踏み出しました。
初めて一人で歩くみゆきを取り巻く、穏やかな農村の風景。
ふと、垣根の向こうから、おままごとをしている子供達の声が聞こえて来ます。
しかしみゆきには、その輪に踏み込む勇気はまだ持ち合わせていませんでした。
子ども達もみゆきに気付き、名前を尋ねますが、怖気づいたみゆきは答える事が出来ません。
そして子ども達がみゆきの手鏡に興味を示した事で、
大切なお守りが取られてしまうと思ったのでしょうか。
みゆきは挨拶すら出来ぬまま、その場から逃げるように走り去りました。
木漏れ日が差す森の中、大きな木の下で、
みゆきは誰ともお友達になれなかった事を嘆きながら、鏡に問いかけました。
『鏡よ鏡よ鏡さん。私の、お友達はどこですか・・・?』木々のざわめきや、小鳥のさえずりしか聞こえない、人気の無い森の中です。
不意に鏡に光が映り込みました。見上げると、いつからそこに居たのでしょう。
高い木の枝に、不思議な少女が座っていました。
今となっては、その子の名前を思い出す事が出来ません。
いや、それ以前に名前を聞いていなかったのかもしれません。
幼い頃のみゆきはそれからも、大きな木の下で不思議な少女と落ち合い、
沢山おしゃべりして、沢山遊びました。そのキラキラした時間はみゆきの宝物になり、
不思議な少女と遊んだ出来事を、絵日記にして描き始めました。
そして完成した絵日記を手に大きな木へ向かう途中、いつぞやの子ども達と鉢合わせました。
再び怖気づき、思わず後ずさりしてしまったみゆきの耳に、
そよ風と共に不思議な少女の声が、聞こえたような気がしました。
『笑って・・・』その声に勇気を貰い、みゆきは思い切って顔を上げ、恐る恐る口を開きました。
『こ・・・こんにちは』引きつった笑顔で固まるみゆきを、子ども達は暖かく迎えてくれました。
みゆきも改めて名前を名乗り、描きあげた絵日記を見せたりするうちに、
いつしか自然に子ども達と仲良くなる事が出来ました。
その一方、みゆきの事をそっと見守っていた不思議な少女は、
まるでみゆきに友達が出来た事を安堵するかのように、優しい笑みを浮かべ、そして・・・
みゆきはそよ風を感じた気がしました。しかし、不思議な少女の姿はどこにも見当たりません。
『勇気を出して笑顔で一歩踏み出したら、キラキラ輝く未来が待っていた。
私、その時分かったの。暗い顔をしているとハッピーが逃げちゃう。
笑っていたら、きっと楽しい事がやって来るんだって』それからみゆきは少しずつ、初対面の子とも話せるようになり、新しい友達も出来ましたが、
不思議な少女はそれっきり、二度とみゆきの前に姿を現す事はありませんでした。
さらにタエさんをはじめ、周りの子ども達も誰一人あの少女の事を知りません。
みゆきは今では、あの少女は鏡の妖精だったのではないかと考えていました。
そしてあれ以来、毎日ハッピーを探すようになりました。
小鳥に挨拶し、花を愛で、蝶を追いかけ・・・
以来、今に至るまで本当のウルトラハッピーを追い求めるようになったのでした。
これが、みゆきと手鏡、不思議な少女にまつわる過去の物語です。
みゆきのルーツと言うべき抒情的な思い出話に耳を傾けるれいか達。
しかし、その頃・・・幸せな匂いを嗅ぎつけたウルフルンが、
ハッピーもろとも全てをブッ壊そうと、街に現れました。
一緒にお買い物したり、買い食いしたり、楽しい時を過ごすみゆき達。
おもむろに、みゆきは振り返ってみんなの名前を呼びました。
『うふふ。呼んでみただけ』みんながここにいる事実。何気ない日々の、何気ない幸せ―
その時、先程キャンディを拾ってくれた女の子が、
お母さんと逸れて迷子になっているのを見つけました。
その女の子、ゆらちゃんのお母さんを探しにみんなで手分けして出発し、
みゆきは残ってゆらちゃんの面倒を見る事になりました。
泣き止まないゆらちゃんに、みゆきは鏡の事を聞いてみます。
それはお母さんが泣き虫のゆらちゃんのために、おまじないを込めて贈ったものでした。
そんなお母さんを、ゆらちゃんも大好きだと胸を張っています。
『誰かの優しい気持ちって、心が温かくなるね』それを感じている時は、とても幸せな気持ちになれる。
そう考えたみゆきは、ふと自分が追い求めるウルトラハッピーについて、何かに気付きました。
その矢先、ウルフルンが周囲をバッドエンドに染め上げました。
ピエーロ復活を告げる時計の針は「17」。残すところあと一つです。
みゆきは目を血走らせたウルフルンにいつもと違うものを感じながら、単身変身します。
一方のウルフルンも煉瓦に黒ッ鼻を使い、家のハイパーアカンベェと融合して襲って来ます。
いつも以上の猛攻撃に、ハッピーは壁に叩きつけられて反撃の隙がありません。
『てめえら見てるとな、イライラするんだよ!ムカついて仕方ねえ!』
『あなたは一体なんなの?どうしてそんなに・・・』苛立ちと怒りを露わにしたウルフルンに問うハッピー。
しかしウルフルンは感情のままにブチまけます。
『いつもスマイルだの友達だの、そんなもん上っ面だけの戯言だろうが!
てめえらは一人じゃ何にも出来ない癖に、偉そうに知ったかぶって群れやがる!』
それを鬱陶しいと切り捨てるウルフルンに対し、
ハッピーは胸に手を当てて、言い含めるように語りかけます。
『友達は、大切だよ。友達の優しさを感じる度に、私は嬉しくなる。幸せな気持ちになれる』下らないとウルフルンに否定されても、ハッピーは微笑を浮かべたまま続けます。
『私みんなが大好き。みんな誰かを守りたいって優しい気持ちがあったからプリキュアになった。
だから、あなたには下らなくても、私たちにとってはとっても大切なものなの』あかねが、
やよいが、
なおが、
れいかが、
それぞれプリキュアになった日の事を思い出しながら続けるハッピー。
聞く耳持たぬウルフルンが叩き下ろす両こぶしを受け止めて、
転校初日の事、そしてこれまでの出来事を想い返しながら、ウルフルンへ説き続けます。
『いつも、誰かの優しさがあったから、臆病な私も自分の一歩を踏み出す事が出来た。
きっとみんなもそう。誰かの優しさがあったから一人じゃ無理だって思える事にも立ち向かえた。
友達だけじゃない。お父さんやお母さん、家族。
クラスのみんなや、先生。それに、大好きなキャンディ。
みんなの優しさがどんな時でも私を励ましてくれる。前に進む勇気をくれる。
私の心を温かくしてくれる。私をウルトラハッピーにしてくれる・・・!』この一年の出来事が、ハッピーの脳裏に去来します。
しかし、ウルフルンは頑なにそれを拒み、全部ぶっ壊すという考えを捨てません。
『みんなの優しさを・・・壊させない。それだけは・・・絶対に・・・私が守る!!!』ハッピーから、新たな力が立ち上りました。
先日のサニーと同じものを認めて躊躇うウルフルンごとハイパーアカンベェを蹴り上げ、
上空での激闘を経て、地に蹴り下ろすハッピー。
その目は強い意志を湛えてウルフルンを見据えています。
『その目で俺を・・・観るんじゃねえ!』
反撃に転ずるハイパーアカンベェを、まばゆいハートから繰り出す光、
プリキュア・ハッピーシャワー・シャイニングが照らしました。
と同時にハッピーも力を使い果たしたのでしょうか。
膝をつき、肩で息をしながら、ウルフルンに改めて問い直しました。
『あなたたちこそ、何をそんなに・・・』その時、もう負けられないと拳を振り上げ、手負いの獣の反撃がハッピーを襲います。
しかし間一髪。4つの光が駆けつけてハッピーを護りました。
そしてロイヤルレインボーバーストを受け、ウルフルンは無念の敗退を喫しました。
残るデコルもあと一つです。
ゆらちゃんのお母さんも無事に見つかりました。手を振って見送るみゆき達。
丁度、空から雪の結晶が降りて来ました。今宵はホワイトクリスマスになりそうです。
『私ね、みんなのお蔭でウルトラハッピーが見つかったの。
それはね、人を思いやる優しい心だと思うんだ。
私がウルトラハッピーって思った時には、いつも誰かの優しさで心が暖かいの。
だからね、これからはみんなから受け取ったその優しい気持ちを色んな人に分けて行きたい!』クリスマスの街を雪が、イルミネーションが彩る中、
ふとみゆきは「そよ風」を感じた気がしました。
そして、光の中に「誰か」を見たような気がしました。
みゆきはその相手に微笑みを浮かべて頷き返します。
『私の名前は星空みゆき。ハッピーな事が大好きで、
みんなと笑顔でいれば、きっとキラキラした未来が待ってるって信じています。
みんな笑顔でウルトラハッピー!』※私はこの時点で劇場版を観ておらず、
その内容についても一切知らないという事を、念のためお断りしておきます。
まず今回は冒頭に挙げた通り、クリスマス時期にそれを前面に出さない展開が新鮮でした。
たまにはこういうのもあって良いと思います。
作中でははっきりと描かれずとも、背景は明らかにクリスマスムード一色で
おそらくみゆき達は始まったばかりの冬休みを、
みんなでクリスマスと一緒に楽しもうと待ち合わせていたと推察されます。
今までの作品ではクリスマス時期はシリーズ最終盤にあたるため、
最後の日常エピソードかつ、日常ストーリーの総括的な意味合いを持っていました。
それは今回も同様ですが、みゆき個人のまとめが結果的にウルトラハッピーのまとめに、
さらにはみんなと過ごしたこの一年間の総括に当たるという構成が目を惹きました。
ウルトラハッピーについては、シリーズ初期の時点から
「青い鳥」のように身近に見出せるものでは無いかと言われていました。
そしてその通り、今回みゆきが気付いたウルトラハッピーも、
今まで彼女がごく自然に行い、ごく自然に回りにもたらしてきた「ハッピー」と何ら変わりません。
だからこそ、それこそがウルトラハッピーだと気づけた事は大きいと思います。
本人が自覚せずともハッピーをもたらしていた事を、自覚する事によって、
より多くのハッピー、即ちウルトラハッピーに繋がるのは自明と言えそうです。
それを踏まえると、みゆきという人間の持つ魅力が大きく伝わって来ました。
今回誰かの優しさを「もらっている」時に心が暖かい=ウルトラハッピーだと導きましたが
今までもみゆきは「もらう」以上に誰かに「与えて」来ています。
与える事を意識せず、逆に受け取る事を感謝し、
そこに幸せを見出してさらに多くの人へ幸せを分け与えたい。
彼女は改めて意識せずとも、無意識のうちにそれを既に行っています。
だからこそそれを自覚した今、より深い愛情を持って周囲へ分け与える幸せが増すと思います。
それは即ち、今後の進退が気にかかる三幹部の今後を占う事にも繋がるような気がします。
『あなたたちは一体なんなの?』『何をそんなに・・・?』
これらの台詞からは、ウルフルンがなぜそこまで頑なになるのか、
その背景を知ろうという意図が伺えました。
これまで
一緒にゲームしたり、
ロボットごっこ?したり、
子どもになって遊んだりした事はありますが、そうした交流とは別に、
彼らの行動原理について気を巡らせた事は何らかの進展がありそうです。
現にみゆき自身がウルフルンの心境に理解を示しつつあるようにも思えました。
以前感想で触れた事もあるのですが、ウルフルンはとかくみゆき達の友情を羨み、
逆に孤独な自分を悲しんでいるように見受けられます。
程度の大小は異なりますが、今回描かれた幼い頃のみゆきも同様の境遇でした。
子ども達が仲良さそうなのを羨み、そこに入り込む勇気が無く、
友達が出来ない事を一人鏡に向かって嘆く姿は、
ウルフルンに重なると言っては過言かもしれませんが、同じものに見えて来ます。
ウルフルンからも、これまで以上にみゆき達を羨む心情が感じられました。
ハッピーの言葉を頑なに否定するのは、憧れている事の裏返しのように見受けられます。
下らないと撒き散らし、全部ぶっ壊すとのたまう姿からは、
ハッピーの言葉に共感しつつある自分の心を否定しているようでなりません。
人見知り・孤独を克服できたみゆきと、克服できないウルフルン。
この両者は果たして歩み寄れるのか、それとも分かり合えないのか・・・
残りはあと1話かもしれないので、どう描かれるのか気になります。
今回の前半部はとても印象的でした。
以前タエさんの家を訪問したエピソードのような、民話のような抒情性が幻想的で、
かつ少し切ない余韻を残すところもまた民話的です。
あの少女は何者だったのでしょうか。
みゆきは「鏡の妖精」だったのではないかと推察していますが、
私は鏡である事から、ミラクルピースを生み出したやよいのような、
心の中のもう一人のみゆき自身を映し出しているのではないかと考えています。
みゆきに似ていないのはまあ、勘弁してください(汗)
また、以前タエさん宅を訪問したエピソ―ドで起きた「不思議な風」を起こしたのは
あの少女だったのか?などといった想像もできるのも楽しいですね。
さて、みゆきに本当の友達が出来た時、不思議な少女は笑みを残して姿を消しました。
その際、目元が映っていない事と、うつむいているようにも見える事から、
無性に寂しさ、切なさが感じられます。
みゆきに友達が出来た事を喜ぶ半面、もう私の役目は終わった・・・そんな心境が伺えます。
だからこそ、時を越えてみゆきがこの少女を思い出した事で、
彼女は再び存在を許されたのではないでしょうか。
ラストシーンのみゆきは「何か」を見て笑みを浮かべています。
それが何なのかは観ている我々の想像に委ねられています。
あの不思議な少女を見たのかどうかは、みゆきにしかわかりません。
ひょっとしてイルミネーションに目を奪われたための笑みかもしれません。
しかし後者だとしても、小鳥のさえずりや花の美しさ、蝶を追う事に
小さなハッピーを見出していたみゆきですから、
イルミネーションにハッピーを認めたと考える事も出来ると思います。
笑う門には福来ると、タエさんはおっしゃっていました。
不思議な少女も、最後にみゆきが聞いた声は「笑って」というものです。
これもまた、「スマイル」の名を冠する今作に相応しく、
そして一方で今後の最終決戦の厳しさを予想させます。
笑う事によってハッピーを手にする一方、
「ネガティブだって吹っ飛ぶ」では無いですが、
困難に立ち向かい、乗り越える武器としての意味合いもあるのではないかと感じました。
もう一つ、最終決戦の厳しさを予想させたのは「名前を何気なく呼んでみただけ」です。
この他愛も無い日常、ありふれた光景、ささやかな幸せが失われるのか、
そしてそれを取り戻すための闘いがいかに厳しいものになるのか、懸念が高まりました
ところでウルフルンが黒ッ鼻を発動する際、球面に映り込んだ顔は歪んでいました。
かの
「大凶顔」と同じようにインパクトがある、少し怖い顔ではありますが、
この顔は「口角」が上がっていました。
前後のウルフルンの表情や台詞回しを考えると、この時の彼が笑っていたとは思えません。
厳しい顔をしていたと思われますが、そんなウルフルンが「笑って」いるように見えるのは、
彼のみならず三幹部側にも、救いのある結末をもたらすのではないかと思いました。
しかしながら、この年末年始を挟んでの三幹部との最終決戦。
3年前のウエスターさん&サウラーとの戦いや、
2年前のクモジャキー&コブラージャさんの時のように、
気を揉んだ状態で2週間待つのがしんどいです・・・
そしてピエーロ復活を告げる時計の針をあと1つ推し進めるバッドエナジーとは、
ひょっとして三幹部が発するのではないか、という嫌な予感がします。
ともあれ、2012年もプリキュアと共に良い年を過ごせました。
この作品に感謝しつつ、本年の「スマイルプリキュア」カテゴリーの更新を終えたいと思います。
また2013年も引き続き、宜しくお願い致します。