闇に浮かぶ涙。それはミラージュ様の左目の雫模様へと変わります。
ミラージュ様は泣いてなどいません。ブルーを睨み付け、冷たく乾いた笑いと共に立ち上がります。
『よくもここまで来たわね、ブルー』
世界を不幸にしても幸せになれないという、ファンファンの説得ももはや届きません。
『ブルー。私が不幸になったのも世界が不幸になったのも、全部あなたのせいなのよ』
『ブルーは悪くないよ!ブルーはいつでもみんなの幸せを願って来たんだよ』 ブルーを庇うラブリーの言葉は、ミラージュ様の癇に障りました。
『私を棄て、アクシアに封じただけじゃ飽き足らず、今度は私を消そうと言うのねッ!?』
ブルーを縛り上げて宙吊りにし、ミラージュ様は左目の涙模様に手を触れます。
『幸せは一瞬の幻。やがて消えて、不幸になる』
床に零れ落ちた涙の雫は、床を満たす涙の海と化しました。
『ならばいっそ、一思いに・・・私が世界中の幸せを消し去ってあげるわ!』
ミラージュ様自身が囚われた姿が映り込む巨大な鏡、ディープミラー。
それを背に、翼を広げたミラージュ様とラブリーが向き合います。
『私かお前か。不幸か愛か。決着をつけましょう』
『ミラージュ、幸せは消せないよ。あなたが何をしたって絶対に消せない!』『調子に乗るんじゃないわッ!』
同じ男を愛した女同士の戦いの火蓋が、切って落とされました。
ライジングソードとミラージュ様の杖が交錯し、火花が上がります。
幻影帝国の女王を名乗るだけのことはあり、流石の強さを誇るミラージュ様。
ラブリーの剣戟を杖で軽々と受けながら、鏡の反射を利用して背後から光弾を叩き込みます。
そして水中へ倒れたラブリーの顎に杖を引っかけて持ち上げ、冷たい瞳で睨みました。
『あっけないわね。この程度の力で、愛だ救うだ守るだ・・・笑わせるわッ!』
杖を振り払い、反撃に転じるラブリーの拳も、ミラージュ様はものともしません。
『お前に愛の何が分かるの?世界の真実の何がッ!』
4人に分身したミラージュ様に、背後から、左右から攻撃を叩き込まれ、
文字通り手玉に取られるラブリー。
四身の拳とかwwあの、1人お持ち帰りしてもいいですか 3人のミラージュ様が、本体と思しきミラージュ様に向けて生贄を運びます。
そしてメインのミラージュ様から憎悪の一撃を受けたラブリーの悲鳴が、響き渡りました。
『この世の真実は、悲しみ、苦しみ、迷い、痛み。全て不幸で占められている』
一人に戻ったミラージュ様の駄目押しが、倒れたラブリーへ迫ります。
『幸せなんて、世界を知らない人間の儚い夢にすぎないのよ』
いつしか幻影帝国には稲妻が轟き、雨が降り始めました。
ハニー、フォーチュンと合流を果たしたプリンセスは、ミラージュ様の部屋を見上げて
今そこで死闘を繰り広げているであろう親友の事を案じます。
『ラブリー、無事でいて・・・』『無駄なあがきはやめなさい。お前がいくら頑張ったところで、不幸こそが世界の真理』
ミラージュ様の言葉に応じ、周囲の鏡が輝き始めました。
鏡の向こうでは、キュアテンダーが一人奮闘しています。
そして世界各地では、人々が鏡に閉ざされ、動く者無い光景が広がっています。
『世界に残るプリキュアもやがて力尽き、そしてみんな永遠の眠りにつくのよ。
世界は確実に破滅へと近づいているの』
ミラージュ様は睨み付けるラブリーの胸ぐらを掴みながら、
『あなたにそれを止めることは出来ないッ!』
同じくらい強い瞳で睨み返し、ラブリーを投げ飛ばし、逆さ釣りに拘束します。
ラブリーは目の前の巨大な鏡に、同じように拘束されているミラージュ様の姿を目の当たりにします。
『偽りの愛は消え、かりそめの幸せは潰え、そして世界は終わるのよ』
その動けないラブリーに、容赦なく赤黒い雷が打ち付けられました。響き渡る悲鳴。
苦痛に耐えるラブリーの視線に、鏡の中の悲しげなミラージュ様が映ります。
ラブリーの目は、負けていません。しかし雷撃のダメージは大きなものでした。
痛々しい絶叫を上げるるラブリーを、鏡の向こうから高みの見物で見守っている者がいます。
『よく持ちこたえたが、そろそろジ・エンドか』
戦いの場、ミラージュ様の部屋だった室内にも雨が降り始めました。
ミラージュ様の涙のような雨がもたらす海に、静かに斃れるラブリー。
魂を冥府へ運ぶ渡し守カロンのように、ミラージュ様は舟を漕いで斃れたラブリーを見下ろします。
『感じる・・・世界の悲しみの涙を。世界が不幸に包まれて行く姿を・・・私の願いは叶うのよ!』
ミラージュ様は満足そうに勝ち誇り、笑みを浮かべました。
『・・・違うでしょ』 その足元から、震えながら、しかし強さを秘めた声が聞こえてきます。
『あなたの本当の願いは・・・』 ミラージュ様を強い目で見据えて、ラブリーが立ち上がりました。
世界を不幸に染め、ブルーを絶望の淵に追いやる。それが願いだと主張するミラージュ様。
そんなのは嘘だと反論するラブリー。ミラージュ様に傘を眼前に突き付けられても、怯みません。
『私はあなたの攻撃を受けて、あなたの本当の気持ちが、その想いの強さが分かった。
本当は、ブルーのことが好きで好きでしょうがないってことが!』『何を言うかッ!馬鹿馬鹿しい!』
激昂したミラージュ様に傘で殴り飛ばされても、ラブリーは少しも怯みません。
『馬鹿馬鹿しくなんてないよ!だって、それがあなたの本当の気持ちだからッ!』『お前に何が分かるッ!!』
両者の主張が激しく交錯します。
『私には、あなたの悲しみが、苦しみが分かる。
だって・・・だって!私も、ブルーの事が大好きだから!』 その言葉に、ミラージュ様は息を呑みました。しばしの静寂。そして、ラブリーを睨むミラージュ様。
雨足が、強くなりました。
壁を埋める無数の鏡。その一つが砕け落ちて生じた波紋が、
静かに対峙するラブリーとミラージュ様の心を象徴するように、小舟を揺らします。
『ブルーはお前をただプリキュアとして利用しているだけ。
お前がブルーをいくら愛したって、ブルーはお前を愛する事は無いのよ』
嘲笑とともに傘を眼前に差し向けられても、ラブリーは目を逸らしません。
『それでも・・・いいよ』 予想外の答えがミラージュ様に影を投げかける中、
ラブリーはブルーと過ごした時で得た事を、自らも時折影を纏いながら語ります。
『これまでブルーと一緒に過ごした時の中で、私は自分が本当の自分でいる幸せを学んだの。
それまで見えていなかった、見過ごしていた世界が、
ブルーと一緒にいるとキラキラと輝いて見えてきた。
心を幸せで満たすって、こういう事だと、ブルーは私に教えてくれたの。
その想いは、ブルーへの愛が叶わないと解ったからって、消えたりしないよ』 息を呑むミラージュ様に、ラブリーは続けます。
『あなたも同じはず。一度見た幸せは、どんな苦しみや悲しみの中でも無くなったりしないはずだよ!』 ミラージュ様にかかる影が消え、左目下の涙模様も薄れたように見えます。
そして巫女だった頃の思い出が、胸の内に沸いて来ました。
花畑でブルーと手を重ねて語らった、遠い日の幸せな記憶。
ミラージュ様が顔を上げた先には、その愛した男が優しく微笑みかけてきます。
昔と変わらぬ微笑みを向けられ、改めて巫女だった頃の記憶が浮かんできます。
愛する人と共に過ごす幸せ。
その美しい思い出は、ブルーが消え、闇に一人取り残された記憶に塗りつぶされ
我に返ったミラージュ様に、再び憎悪の炎が燃え上がりました。
『ミラージュ、ブルーを信じて!ここまで会いに来たブルーの想いを分かってあげて!
二人で愛したこの世界を、これ以上不幸にしないで!』 闇に覆われたミラージュ様の心に、ラブリーの呼びかけは届きません。
『・・・お前に何が分かるッ・・・愛ゆえの悲しみを知らぬお前にッ!』
サウザーかw 聖帝様のような嘆きと共に翼を広げると、辺りに烈風が吹き荒れます。
『愛は悲しみを呼ぶ力。最後には不幸をもたらすだけ!』
『違う!愛は幸せになるための力だよ!』『ぬかせぇえッ!!』
激しい空中戦を繰り広げる、ラブリーとミラージュ様。
しかしミラージュ様には動揺があるのか、今度はラブリーが優勢です。
ミラージュ様を水に叩き落とし、巨大な鏡に向けて投げ飛ばし、叩き付けました。
そしてラブリーはミラージュ様の瞳をしっかりと見据えて訴えます。
『ミラージュ!あなたはブルーの世界を不幸にして自分は一人の世界に閉じこもって、それで満足なの?』『この世は不幸。それが全てよ』
『強がらないで!ミラージュ。あなたはずっと悲しんでいたんでしょ?』 そしてブルーもアクシアに触れながら悲しい目をしていた事を、ミラージュ様に告げます。
『ブルーの幸せには、ミラージュ、あなたが必要なの!あなたじゃなきゃダメなの!』 ブルーの傍らにいるべきは、私では無くあなた。複雑な目を浮かべながら、ラブリーは続けます。
『私は、みんなに幸せになって欲しい。
ミラージュ、あなたにも幸せになって欲しいの!
誰かが不幸でいるのに、幸せなんて感じることは出来ないの!』『きれいごとをッ!』
抗うミラージュ様の額に自らの額を重ねて、ラブリーは力強く言い含めます。
『私はね・・・私はみんなに幸せになって欲しいのよ!』 ミラージュ様の瞳に、光が宿りました。
そしてラブリーはイノセントフォームへ。ミラージュ様の姿を閉ざしていた鏡が砕け散ります。
杖も消え、得物を失ったミラージュ様の手を、ラブリーがしっかりと掴みました。
『愛する事を怖がらないで、ミラージュ』『私が・・・もう一度、愛する事が出来る・・・ブルーを、この世界を。・・・私が・・・』
ラブリーを見上げるミラージュ様の目に、涙が浮かびます。
それは左目下の涙模様が象徴する悲しみの涙ではなく、愛の喜びを感じた涙。
刹那、ディープミラーが動きました。激しい憎悪の波動がミラージュ様を襲います。
『憎しみで全てを焼き尽くせ!』
ミラージュ様は怯える少女のように涙を流しながら、悲鳴を上げます。
その身体から溢れた憎悪の炎が辺りを覆い、幻影帝国を焼き尽くして行きます。
そして自分自身をも燃やし尽くしてしまいそうな業火の中から、ミラージュ様が覚醒しました。
『愛があるから胸が痛む。愛さなければ苦しむことも無かった。
この世が愛から逃れられないのであれば、この世を壊してしまえばいい・・・憎めッッ!』
それは彼女の意志なのか。何者かに言わされているような言葉と共に、
ブルーを救出したラブリーの姿を見て逆上し、襲いかかります。
スーパーサイヤ人みたいな(笑)ミラージュ様とラブリーは、
ドラゴンボールのような激しい空中戦で拳を交えます。
『キュアラブリー!お前さえ倒せばッ!』
『やめてミラージュ!このままじゃ、あなたも世界も壊れてしまう!』『構うものかァッ!』
憎しみの炎に包まれたまま、涙を撒き散らしながら、ミラージュ様は絶叫と共に攻撃を叩き込みます。
泣きわめく子どものような攻撃を受け、倒れたラブリーに追い打ちが迫るその時!
ラブリーは迫りくるミラージュ様を受け止め、抱きしめました。
『何・・・放せッ!放せぇぇええッ!』
なりふり構わず辺りを燃やす力を、ラブリーはミラージュ様の生命そのものだと肌で感じ取ります。
『ミラージュ。私はあなたを救って見せる!ブルーのため、全ての命の愛のために!』 ラブリーの背から、美しい蝶の羽根が広がりました。
それは焦土と化した幻影帝国、かつてのブルースカイ王国を、優しい光で包み込みます。
『ミラージュ、あなたは強い。それは愛する力が残っている証!
その力があれば、幸せは必ず貴方のもとへ戻ってくる!』 愛を取り戻すことに怯えているのでしょうか。ミラージュ様は駄々っ子のように取り乱します。
『何を言う・・・幸せなど、幸せなど消し去るのだァッ!』
ラブリー目がけて放たれる、自暴自棄のような攻撃。
それをプリンセスが受け止め、ハニーとフォーチュンがラブリーを介抱します。
世界の幸せを取り戻し、愛を届けるため、
四人揃ったプリキュアの、イノセントプリフィケーションの歌声が響き渡ります。
歌い終わると共に、身も心もボロボロになったミラージュ様へ突進する四人。
それは打ち倒すための突進ではありません。
ミラージュ様と共に小さな勇気、愛の光、星の瞬き、尊き命を育み分かち合う舞です。
心を重ねて、響きあうメロディを、ミラージュ様と共に奏でる四人。
両親と、王国の全てを失ったプリンセスが、ミラージュ様と共に舞い踊り、
かつて姉を奪われた憎悪に囚われていたフォーチュンが、ミラージュ様と手を取り合い、
おいしいご飯を食べる幸せを分け与えるようにハニーがミラージュ様の頬に口づけし、
そして同じ男を愛したラブリーが、ミラージュ様を優しく抱きしめます。
呆然とした、否、憎悪も愛も、まっさらになったような瞳を浮かべ、
幻影帝国の女王、クイーンミラージュは光に包まれて行きました。
ブルースカイ王国を覆う暗雲は晴れ、世界各地で鏡に閉ざされた人々も、
プリキュア墓場で無念の眠りについていたプリキュア達も、皆開放されました。
300年もの間、憎悪に囚われていた憐れな少女の心も。
青空に舞う、黒い羽根。それは青空に溶け込むように次第に薄れて行きます。
全てを失った少女に寄り添う足音。少女が顔を上げた先には、ずっと慕い続けてきた神がいます。
神は膝を落とし、身も心も傷ついた少女をしっかりと抱きしめました。
『ミラージュ。君を愛している。300年前からずっと・・・もう君を放さない。絶対に』
かつて幻影帝国の女王を名乗った少女の目に、溢れる涙。
その涙が左目の涙模様を洗い流すと共に、巫女の姿を取り戻しました。
そして、神と巫女は唇を重ね・・・
『良かったね・・・ミラージュ、ブルー・・・本当に良かった』 ラブリーは涙を流しています。声を震わせながら。
これで、良かったはずなのに。これを、望んだはずなのに。
胸の痛みを覚えながら、愛の名を持つプリキュアの目から、涙がとめどなく流れます。
しかし、これで平和が戻ったわけではありませんでした。
鏡の向こうからミラージュ様を意のままに操っていた者が動き始めます。
『ブルーよ。お前に見せてやろう。身も心も焼き尽くすような、不幸を』
その矛先は、ラブリーというよりもブルーに向いているようですが・・・
彼の赤い瞳に、胸の痛みに耐えながら微笑むラブリーの姿が映り込みました。
ハピネスチャージプリキュアで最も好きな一編と言われたら、私はこの43話を挙げます。
同じ男を愛した女同志の情念が、音を立てて交錯する凄絶な展開。
そして同じ男を愛したからこそ分かる苦しみと悲しみ。
それを救い出そうとするラブリーと、救った故の失恋。
めぐみ=ラブリーの「人助け」ゆえの己を省みぬ危うさがここに結実する結果となります。
しかしなぜこの話に惹かれるかと言われれば、
ミラージュ様の心象風景をそのまま描き出したような背景の美しさと、
それ以上に美しいラブリーとミラージュ様の作画、
その美しい絵で激しく動く熱いアクションパートの圧倒的な水準です。
ラブリーのミラージュ様とブルーに対する熱い気持ちも心を動かされますが、
何より今回の絵の美しさは群を抜いていました。
次回44話にも印象的な作画の場面はありますが、
全編通して圧倒される今回の方がより印象に残っています。
その美しさと熱さには、リアルタイム視聴時に思い切り魅せられてしまい、
いつかこの感動を綴ってみたいと思っていました。
ところが久々に観返し、いざその機会が回ってくると、思うように筆が進みません。
これ以上私が何かを差し挟む余地など無く、完全に圧倒されてしまったように思います。
ということで、あれこれ深読みしたり解釈したりするよりも、
印象に残った場面場面について、雑多ながら挙げて行きたいと思います。
まずドラゴンボールや北斗の拳を連想させる戦い方や台詞の数々。
いきなりこれかよ、と言われるかもしれませんが、私世代には胸熱なのでご容赦ください。
ミラージュ様の四身の拳(違)の上と左右から襲い来る意外性に目を奪われ、
光の軌跡が宙を交錯する熱い空中戦に、手に汗握り、
そしてとどめは「スーパーサイヤ人」状態のミラージュ様(笑)。
愛の苦しみを訴える台詞は聖帝サウザー様を思わせますし、
理屈抜きでおっさん世代の胸を熱くさせる展開でした。
お子様と一緒に観ていたお父さん方も、思わず惹きこまれてしまったのではないでしょうか。
もっとも「スーパーサイヤ人」などと形容しましたが
このミラージュ様は心身を襲う痛み故か、ずっと泣き続けています。
「敵の首領」「悪の親玉」という威厳は既に無く
ただボタンを掛け違えてしまった気の毒な少女に過ぎません。
『幸せなど、幸せなど消し去るのだァッ!』
その言葉と共に放つ自暴自棄攻撃をプリンセスに受け止められた時のミラージュ様は、
全てを失ったような表情で愕然としています。
身も心もボロボロに成り果てたミラージュ様をこれ以上痛めつけるのは、
いくらイノセントプリフィケーションが癒しの技とはいえ、観るに堪えないものがあります。
そのためでしょうか。普段はちゅどーん!ちゅどーん!ちゅどーん!ドカーン!と
勢いよく4連発の攻撃が畳み掛けられるところ、
今回だけ通常と異なる演出が施されていた事に、優しさを感じました。
本来はこういう技なのかもしれません。
キュアテンダーや
ファントム、そしてこの後の「あの少年」に放った折にも、
今回と同じような抱擁があったのではないかと想像しています。
もっとも、あの長い歌パートの間、
ボロボロのミラージュ様がずっと「待っていた」図を想像するとシュールですが(笑)
前回はラブリー以外の3人、
前々回はハニーがメインで活躍したため、
今回はその分ラブリーの比重が高く、他の3人が目立つ場面はほとんどありません。
しかしその中で、前述のミラージュ様の攻撃を受け止めた時のプリンセスの表情が目を惹きます。
この時、プリンセスは悲しみともとれる何とも切ない表情をしています。
故郷を蹂躙し、大切な人たちを踏みにじった者に対する思いと、
その者の痛み苦しみを目の当たりにして、何とかしてあげたいという複雑な気持ちが伺えます。
そしてひめ=プリンセスも、
以前誤解とは言え誠司への恋心に悩み、
その痛みを知った経験があるからこその同情心だったのでしょう。
あの経験が無かったら、このプリンセスの表情も無かったように思います。
そして「影」の使い方も目を惹きました。
『それでも・・・いいよ』 このラブリーとミラージュ様が向き合う場面からかかる影が、互いの心象を巧みに彩っています。
ブルーと過ごして学んだ幸せを語るラブリーもまた、
逆光で影しか見えない構図で立つ等、薄々失恋の痛みを感じつつあることが伺えます。
対して顔の左側から当たる光で右側に影を掛けてラブリーを睨むミラージュ様は、
その左からの光によって、涙模様が薄れて見えます。
続けて昔の記憶を呼び起こすと共に、右側に架かる影も消えています。
初代8話に代表される、光と影を効果的に用いた演出はこれまでも観られましたが、
個人にかかる影を活用するのは珍しく、これも作画の美しさと相俟って印象深いものになりました。
そしてミラージュ様に語りかけるうちに、ラブリーは次第に失恋を意識し始めています。
ブルーの傍にいるべきはミラージュ様であって、ブルーもそれを望んでいる事に気付いています。
「みんなに幸せになって欲しい」「あなたにも幸せになって欲しい」
このラブリーの言葉は、今までの彼女以上に、自己犠牲的なニュアンスが感じ取れます。
みんなの幸せ。あなたの幸せ。では「私」の幸せはどうするのか?
この時点でラブリーには答えが出ていません。
ラストシーンで胸の痛みを覚える姿は、それまでミラージュ様に宿っていた痛々しさを、
そのままラブリーに移植したように受け止められます。
彼女自身の幸せを得るには、次回以降さらなる試練が待ち構えていますが、
この「痛み」もまたラブリーが幸せを知るための通過点と言えそうです。
やっぱりまとめるのが難しく、無駄に長くなってしまいました・・・
とにかく「今回は圧巻」だと言いたかったので、最後にもう一度、言わせていただきました。
と思ったら、これを言うのを忘れてました。
元の姿に戻った直後のミラージュ様、かわえええええええ(おい)