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Go!プリンセスプリキュア 第18話『絵本のヒミツ!プリンセスってなぁに?』 [Go!プリンセスプリキュア]

 トワイライト様が実際にフローラたちと拳を交えるのは、実はこの18話が唯一で、これが最初で最後です。ブラックプリンセスはトワイライト様では無いと私は考えますので・・・
 それだけにトワイライト様の圧倒的な強さ、戦う姿の美しさを、美麗な作画で描き切ったアクションシーンが見事で、この一回に賭ける制作陣の気合が伝わって来るようです。
 そしてトワイライト様と花のプリンセスを対比させることで、はるか=フローラが目指すプリンセスとは何なのかを描き出す、中盤の前哨としてふさわしい一編です。
  
 はるかがパフの髪を結っているところに、ゆいちゃんが珍しく興奮気味にやって来ます。なんでも絵本作家の望月ゆめ先生が夢ヶ浜へやってくるとのこと。ゆめ先生は、はるかのバイブル「花のプリンセス」の作者。絵本作家を目指すゆいちゃんだけでなく、はるかにとっても憧れの人です。
 しかし望月ゆめ先生は、花のプリンセスを50年前に刊行して以来、一度も人前に姿を見せておらず、その素性は謎に包まれています。果たしてどんな人なのか・・・はるかはまだ見ぬ憧れの先生に胸を躍らせました。

 トワイライト様が奏でるヴァイオリンの音色が響くディスピアの御前。立て続けに新たなキーがプリキュアの手に渡った事について、ディスピアはシャットさんやロックではなく、トワイライト様を咎めるように問いかけます。突如、ヴァイオリンの弦が切れ、演奏が止まりました。
『少々戯れが過ぎたようですわ・・・でもご安心くださいお母様。今度は私の手で必ずやプリキュアを倒してご覧にいれます』
 自ら出撃するトワイライト様に、ディスピアは思わせぶりにキーを差しだしました。

 望月ゆめ先生の原画展とサイン会が行われる美術館には、既に大勢の人が集まっています。50年前の作品なのに、今もこんなにファンがいることに改めて驚くはるか達。
『それが絵本のいいところなのよ。小さなころに出会った絵本はその人に大きな影響を与えるの』
 ゆいちゃんもまた、幼い頃に読んだ絵本が、絵本作家という夢へのきっかけでした。そしてはるかも「花のプリンセス」が今に至るプリンセスへの夢の原点となっています。

「花のプリンセス」の物語とは―
 "花に囲まれた城に、とても優しくてみんなに愛されているプリンセスがいました
 彼女が笑うとどんなところでも花が咲き、みんなが笑顔になったと言います。ところが・・・
 彼女の人気に嫉妬した小鳥が、隣の国の王子に会いに行く途中のプリンセスに嘘をつき
 恐ろしい魔女の住む森へ連れて行ってしまいました。
 しかし彼女は魔女を恐れず、嘘をついた鳥の事も絶対に責めませんでした。
 己の行いを恥じた鳥はプリンセスを助け、泣きながら謝罪しました。
 「助けてくれてありがとう。鳥さんも笑って」プリンセスは怒るどころか、笑顔で鳥を許します。
 鳥に笑顔が戻ると共に、魔女の森は消え、お花畑になりました。
 そしてプリンセスは、鳥たちと仲良く旅を続けるのでした"

―という、優しいお話です。しかしプリンセスが王子に会えたのか、結末ははっきりと描かれておらず、はるかはそれが気になっています。そしてその理由を直接作者に尋ねようと思っていました。
 サイン会の長い列に緊張して並ぶはるかとゆいちゃん。そしていよいよ、順番が回って来ます。

『あら、ごきげんよう』
 ノーブル学園の制服を来たはるかを見て、品の良い老婦人がノーブル学園流れの挨拶を賭けてきました。緊張しながら挨拶し、本を差し出してサインを求めるはるかに、先生は快く応じてくれます。それだけでなく、何度も読み返した跡がある本を見て、逆にお礼を言ってくれました。はるかは思い切って長年の疑問を尋ねます。
『あの!花のプリンセスは王子様に会えるんですか?最後どうなるんですか?』
 すると先生は静かに本を閉じて、はるかに謝りました。
『ごめんなさい。私はその質問には答えられないわ。私はこの絵本の結末を書くつもりは無いの』

 はるかはどうしても諦めきれず、イベントが終わって帰る途中の先生を出待ちして、改めて最後まで書かない理由を尋ねます。
『その本がたくさんの子供たちに読んでもらえるようになったからよ』
 この本はもともと先生の娘のために、プリンセスのような人に育ってほしいと言う願いを込めて書いたものだと語りました。最初は結末を書くつもりでしたが、本を読んだ子ども達から寄せられた感想には、それぞれが想像したプリンセスの未来が描かれていました。そして先生の娘もプリンセスの素敵な未来を想像していました。
『想いの数だけ物語はある。そういう本でいいと思ったの』
 そしてはるかにも、こうあってほしいという結末がある事を示唆します。
『それがきっと、あなたにとっての花のプリンセスなのよ』
 先生の意図を知り、はるかも笑顔で納得。その時―

 突如、冷たく気高い笑い声が響きます。辺りは黄昏。その名を冠するトワイライト様の時間です。
『どんなに美しくとも所詮は作り話。真のプリンセスである私から見れば、空しいだけですわ。プリンセスを名乗る哀れな者達。この私がお相手致しますわ』
 トワイライト様がディスピアから受け取ったキーを杖に差すと、周囲にたちまち青い焔とステンドグラスが広がり、人々は皆、額へと閉じ込められます。ゆいちゃんとゆめ先生も例外ではありません。
『さあ、宴の時間よ・・・』
 トワイライト様は冷たく美しい笑みを浮かべ、額から絶望のエナジーを吸い上げ始めます。
『額に閉じ込められたままより、私に使われた方が幸せというもの』

 変身し、トワイライト様に対峙する三人。しかし決め台詞の「お覚悟はよろしくて?」が、トワイライト様の神経を逆なでします。
『高貴な者への振る舞いを知らぬ愚か者たち・・・その罪、その身でしっかりと味わうがいい!』
 トワイライト様が杖をかざすと、無数の黒い十字架が現れて周囲を囲みます。
『絶望の音色を奏でなさい!』
 トワイライト様は三人がかりの攻撃もモノともせず、軽やかな身のこなしで受け流して行きます。
『まずは貴女ね、キュアマーメイド。気品と立ち居振る舞いはなかなか。だけど私には勝てない!』
 マーメイドの攻撃を杖で受け止め、杖で体勢を崩し、十字架に向けて蹴り飛ばしました。十字架から立ち上る絶望の炎に身を焼かれたマーメイドの痛々しい絶叫が響き渡ります。それに怯まず挑むトゥインクルも善戦空しく、カポエラのように華麗な足技に翻弄され、同じく十字架へ叩き付けられました。
『その才能の輝きも、私のまえには星屑同然ね、キュアトゥインクル』
 悲鳴を上げるトゥインクルに冷たく言い放ち、残るフローラへと静かに歩み寄るトワイライト様。フローラは勇気を振り絞って挑みかかりますが・・・
『貴女よ、キュアフローラ。気品も才能も持ち合わせない貴女のような存在が、プリンセスの名を汚す』
 フローラは十字架にこそ叩き付けられなかったものの、至近距離からの強打を受けて倒れ伏しました。深手を負い立ち上がれない三人のプリンセスを、生まれながらのプリンセスと称する者が、見下すように見つめます。
『高貴なる者は生まれた時から高貴な者。私は絶望を統べる母ディスピアの娘。ディスダークの黒きプリンセス。貴女は違う・・・終わりね。全ての夢はここで消え去る』

 それでも夢を守るプリンセスたちは、力を振り絞り立ち上がります。
『あなたが何を言おうと私たちはプリンセスプリキュアなんだから!』
 ドレスアップキーを差し、バブルリップル、ミーティアハミング、ローズトルビヨンの三つを同時に畳み掛けます。が・・・
『偽物どもがッ!』
 三人の同時技さえも、トワイライト様には通用しません。
『プリンセスとは私のような唯一無二の存在。いくら努力を重ねたところで・・・届きはしないッ!』
 青い焔に押し返され、闇のプリンセスの圧倒的な強さの前に、再び倒れ伏す三人のプリンセス。

『かわいそうに。こんなものがあるから報われない夢を見てしまったのね』
 トワイライト様はパフから「花のプリンセス」の絵本を取り上げ、冷たい笑みを浮かべました。
『夢から覚ましてあげますわ』
 本へ火を放つトワイライト様。フローラの夢の原点が、灰と化そうとしています。
『やめて!!』
 フローラは残る力を振り絞ってトワイライト様の手から本を叩き落とし、身を挺して炎を消しました。
『トワイライト、確かにあなたは凄いよ。私、あなたと出会ってからプリンセスってこんな人の事を言うんだって思ってた。でも望月先生の話を聞いて、それだけじゃないかもって。同じプリンセスでもみんなの中にいろんなプリンセスがいて、私にも・・・』
 そして顔を上げ、トワイライト様に向けて強く宣言します。
『私だけが目指せるプリンセスがあるかもしれないって思ったの!』
『私だけのプリンセス?何を言っているの』
 その強い目に一瞬気圧されるも、トワイライト様は杖を鞭のように用いてフローラの腕を絡めます。

『魔女を恐れない強さ、相手を思いやる優しさ、そして世界に花咲かせる心の美しさ!小さい頃からずっと憧れてきた花のプリンセス!それが私の目指すプリンセス!』
 フローラの想いの強さに圧されるようにトワイライト様の杖にヒビが入ります。そして本からはフローラの想いに反応したように新たなキー、リリィが出現しました。
 リリィのキーを使って放つ新たな技、リィス・トルビヨンの百合の花が、トワイライト様の杖から放たれる絶望のエナジーと交錯。圧し負けたのはトワイライト様でした。杖が砕け散ります。

 得物を失っても、トワイライト様の誇りと自信は失われません。
『勝てるつもりかしら。お前達の夢は、ここで潰えるのよ!』
『私は・・・私のプリンセスを目指す!』
 新たに手にしたリリィ、バブル、シューティングスターのキーを差し、モードエレガントから放つトリニティ・エクスプロジオンの奔流がトワイライト様に迫ります。そして、遂にトワイライト様を圧しきりました。
『この・・・私が・・・こんな・・・』
 トワイライト様は額に写る、美しく結い上げた銀髪が解けた自分の姿を見て愕然としました。そして屈辱を噛みしめるように向き直り、
『キュアフローラ。私は絶対に認めませんわ!プリンセスはこの私だけよ!』
 らしくなく負け惜しみのような台詞を残し、引き上げて行きました。

 柔らかな夕陽が照らす中、額に閉ざされた人たちも無事に元に戻ります。ゆめ先生は気が付いた時、花のプリンセスのような少女・キュアフローラを微かに目にしました。

『そうか・・・強く優しく美しく。同じなんだ。花のプリンセスもグランプリンセスも。私の夢がグランプリンセスに繋がるんだ』
 はるかは帰りのバスを待ちながら、手にしたキーを見つめます。

 ノーブル学園の学園長室。白金さんが学園長に、なぜ今になって個展を開いたのかと問いかけます。白金さんの前にいるのは、他ならぬ望月ゆめ先生でした。
『絵筆を置いて子ども達の未来を育てたいとノーブル学園を開いて50年。良い節目だと思ったの。今年の一年生も素敵な生徒ばかりね』
 ゆめ先生の建学の精神は、着実に生徒達に息づいています。


 まずは冒頭でも触れましたが、プリキュアVSトワイライト様の美麗な戦いぶりに目を奪われました。劇場版もかくやと思われるほど気合の入った美しい作画、流れるようなアクション、三対一をものともしない圧倒的な強さなど、これほど美しく見応えのある戦いはなかなか観られません。杖を巧みに操る姿と華麗な足技も美しく、時折見せる見下した笑顔にはゾクゾクさせられます。シャットさんとは美味い酒が呑めそうな気が(笑)。

 思えば満と薫はウザイナー召喚は一度だけ直接拳を交えたのは前後編の事実上一回、イース様もあの運命の直接対決の他はラビリンス三人組との三対三のみ、セイレーン時代のエレンも時折手を出すことはありましたが本格的な戦いはありませんでした。この傾向から、同世代の美少女敵幹部との戦いは、少ない機会をいかに劇的に描き出すかに重きを置いているように思えます。
 例外はハートキャッチのダークプリキュアと、ドキドキ!のレジーナでしょうか。前者は壮絶な死闘の果てに美しくも哀しい結末を迎え、後者はキュアエースとのガチすぎる戦いが観ていて本当に辛く、回数を絞ってその機会を盛り上げた方が、良い意味でも印象に残るように思います。

 さて、余裕たっぷりのように見受けられるトワイライト様ですが、実は内心焦りがあるようにも思えました。まずディスピアに珍しく咎められた際にヴァイオリンの弦が切れる描写は、焦りを象徴しているように感じられます。それでも言い訳をせずに出撃する等、誇りと自信は失われていません。
 しかしプリキュア達との戦いに於いても、次第に苛立ちのようなものが表に出て来ます。その最もたるものは二人称で、敵であるプリキュア、特に最も蔑視している筈のフローラに対しても、トワイライト様は常に「あなた」と呼んでいます。ところが杖を砕かれた後、三人に対して「お前達」という、トワイライト様とは思えないような言葉づかいをしています。
 これは圧された事の怒りだけでなく、自分のアイデンティティに対する不安も抱き始めたからではないかと思いました。既に先の展開を知った上で観ると、ディスピアの「娘」であることに誇りを抱いているトワイライト様の自信は、実は不安定な基盤の上に立つものです。フローラもマーメイドもトゥインクルも、目指すべき夢、それを目指すことがプリンセスへの道だと信じています。対してトワイライト様には立ち居振る舞いと容姿だけで十分すぎるほどの美しさを持っていても、ディスピアの「娘」という事実以外、プリンセスだと言い切れるものがありません。そこに抱いた不安が、彼女をしてらしくない台詞を言わせたように思えます。

 さて「花のプリンセス」の内容がここでようやく明らかになり、その優しい内容は、はるかがプリンセスへの憧れを抱くのに十分なものでした。そしてそのストーリーは奇しくもこの「プリンセスプリキュア」の展開や結末にもリンクします。「花のプリンセス」のプロットを基にして、シリーズの展開を構築していったのでしょう。「プリンセスは王子様に会えたのか」を読者それぞれに解釈させるということも、このシリーズの最終回のラストシーンをどう解釈するのか、視聴者の想像に委ねられていルことに繋がります。
 他にも「鳥」が演じる役割や、魔女の住む森などの共通項がありますが、トワイライト様も実は諫言に惑わされて檻に閉ざされている事、そして今回人を額に閉じ込めた事で、「花のプリンセス」と「鳥」の両方を演じている事も目を惹きました。

「強く優しく美しく」を、はるか=フローラがどう捉えているのか。トワイライト様に対して、これらのキーワードを交えて宣言する場面で、彼女の目指すものがはっきりと見て取れます。
「相手を思いやる優しさ」と「世界に花咲かせる心の美しさ」は読んで字の如くですが、「魔女を恐れない強さ」は、ディスピアの事では無く、惑わされずに自分をしっかりと持つ強さのことだと思います。

 ゆめ先生については、幸せの青い鳥はすぐ近くにいた、という有名な物語を思わせます。はるかにとって憧れの物語をつくり上げた人は、じつはすぐ近くではるか達を見守っていたという事。そしてはるか達の道を指し示す学園を運営し、プリンセスへの道を歩ませてくれている事。幸福とは身近なところにあり、自分のためでなく人のために幸福を求めると、計り知れないほど大きくなるという、この話の主題を内に秘めているように思いました。
 もっとも、ノーブル学園の創業には相当の費用が掛かったと思いますが、「花のプリンセス」の印税がそんなに多かったのでしょうか・・・ということを考えるのは野暮ですね。
 ただ、プリキュア5シリーズのサンクルミエール学園での理事長ことおタカさんもそうですが、学園長や理事長が謎の存在、というのはあまり現実的ではないですね・・・まあ、そこはファンタジーと割り切ることにします。

 ところで余談ですが・・・ゆいちゃんは小さな頃に出会った絵本は大きな影響を与えると言っておりました。私にとってその絵本が何なのか、全く思い出せないのですが、一体何を読んだらこんな極端な人間になったのか、謎です。小学校2~3年頃には「ズッコケシリーズ」や「乱歩の少年探偵団シリーズ」、また学研の「××のひみつ」シリーズなどを読んでいた記憶があるのですが・・・
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