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Go!プリンセスプリキュア 第29話『ふしぎな女の子?受けつがれし伝説のキー!』 [Go!プリンセスプリキュア]

 初代の頃より、プリキュアは「伝説の戦士」と称されて来ました。即ち現在活躍している少女達以前にも、プリキュアを名乗る少女がいた筈ですが、過去のプリキュアについては長らく明らかになりませんでした。
 先代の存在が初めて描かれたのは、ハートキャッチにおけるキュアフラワーこと薫子さんと、キュアアンジュでしょうか。以降、ドキドキ!のキュアエンプレス、ハピネスチャージのキュアミラージュと、3年連続で描かれることになる過去のプリキュア達。
 しかし、彼女達は果たして幸福だったのか?その生涯を想うと、少し悲しくなった一編でした。
  
 夏休みが終わり、久々に級友と再会した生徒達でにぎわうノーブル学園女子寮。しかしキーを奪われてしまったはるか、みなみ、きららの顔は冴えません。トワとゆいちゃんが皆を励ますものの、現実問題、キーが無いとプリキュアに変身できません。もし今、ディスダークが襲ってきたら・・・
『私が戦います。皆さんのキーも取り返して見せますわ』
 トワとパフの申し出によって、はるか達の表情は少しだけ明るくなりますが、心に覆いかぶさる暗い霧は晴れません。重い沈黙が流れています。

 その夜。パフは不思議な夢を見ました。
『甘いにおいがするパフ』(台詞は一部異なりますがだいたいあっています)
 においに導かれた先には、花が咲いています。そこから光が生まれると、次は海から、その次は星から光が生まれ、三つの光がパフの前に現れました。夢の中で、パフはそれをどこまでも追って行きます。
 夜が明けて目を覚ましたパフは、夢で嗅いだにおいを嗅ぎ取りました。あれは、正夢・・・?

 パフに先導されてにおいを追うはるか達。
『鼻が利くのさ。犬だから』(台詞は一部異なりますがだいたいあっています)
 キーの想いがパフの夢に現れたのかもしれませんが、詳しい事は分かりません。
『絶対みんなをキーの所に連れていくパフ』
 木立を抜けて浜に出たところで、パフはにおいを見失いました。そしてパフに続いて木立を抜けたのはトワとゆいちゃん、アロマだけ。いつはぐれたのか、はるか、みなみ、きららの姿が見えません。

 はるか達もパフ達を探して森を彷徨っています。すると、木の向こうに人影が見えた気がしました。トワではないかと後を追うと、霧が立ち込めて行き・・・

 気が付くとはるか達は、宮殿の中庭のような不思議な空間に迷い込んでいました。卓上にはティーセットが並んでいます。そして、花のように清楚な少女・チエリが、声をかけてきました。
“あら?お客様かしら。ごきげんよう”
“ここはね、私たちの庭よ”
 人魚のように麗しい少女・ユラが続き、
“それより、一緒にお茶はどうだい?今日はスコーンがとても上手に焼けたんだ”
 木の上からは、気さくな少女・セイが声をかけてきます。
 今はお茶している時間ではないと困惑するも、身体は正直です。はるかのお腹が鳴り、ご相伴にあずかることになりました。

『どういうことだ?ロックが三人、キーが九つ。私の知らないうちに一体何が?』
 いつの間にかこんなことになっていれば、シャットさんが困惑するのも当然です。ロックは引き続きシャットさんを蚊帳の外に置き、九つのキーを特製の檻へと閉じ込めました。キーの持つ夢の力は絶望へと変換され、ゲージが一気に満タンになります。
『さあて、準備完了だ』
 ロックの狙いは、果たして・・・?

 謎の少女達と、ひと時のお茶会を楽しむはるか達。しかしなぜここに迷い込んだのかを問われると、目を伏せるしかありません。はるか達は、夢を守るための大切な鍵を失くした事を打ち明けます。まるで謎の少女達の誘導尋問に導かれるように。
“聞かせて。あなた達の夢って、なあに?”

 世界を舞台に活躍するトップモデル。父や兄のように人の役に立ちたい。そして、素敵なプリンセスになる事。きらら、みなみ、はるかの夢を、謎の少女達は微笑みながら評価します。
“みんな素敵な夢”“叶うといいわね”“君たちなら出来るさ”
 しかし、キーを失った今では・・・俯くはるかに呼応するように、空に雲が立ち込め始めます。はるかだけでなく、みなみときららも目を伏せる一方で、チエリが彼女達の夢を語りました。
“私たちにもね、夢があるの。とってもとっても、大きな夢。でも・・・”
 真っ直ぐな瞳ではるか達に向き合っていたチエリですが、その言葉とともにユラ、セイと共に、少しだけ目を伏せます。すると、轟く雷鳴と共に、突然ゼツボーグが姿を現しました。追い打ちをかけるように、地面から伸びる黒い茨が、ディスピアの姿へと変貌します。
 変身できないこの状況では、レベル1初期装備でラスボスと戦うようなもの。襲い来るゼツボーグからは逃げる事しか出来ません。チエリをはるかが、ユラをみなみが、セイをきららが、それぞれ手を引いて走りますが、キーが無い状況では不安しかありません。

 その不安が具現化するように、逃げるはるかの影から茨が伸び、足を絡め取りました。その間にゼツボーグが追いついて来るも、なんとか茨を振りほどいて再び逃げます。しかし窮地を脱したわけではありません。壁に隠れてゼツボーグをやり過ごしますが、見つかるのも時間の問題です。戦うこともできず、一体、どうすれば・・・。
 チエリ達も、はるか達の不安が伝染したように、不安そうな顔を浮かべています。不安に満ちた彼女達の隠れている場所をディスピアが感じ取り、ゼツボーグに指示を出しました。

『なんとか・・・なんとかしなきゃ』
 どうすればいいのか、答えはありません。それでもはるかは、なんとかするという気持ちを棄てません。
『どうやっても!変身できなくても、逃げられなくても、なんとかしないと。でないと全部終わっちゃう。私たちの夢も、この人たちの夢も。そんなの駄目!絶対みんなで助かるの!』
 みなみときららにも、ようやく明るい表情が戻って来ました。と同時に襲ってくるゼツボーグから、チエリ達を逃がしますが、はるか達の手足は茨に絡め取られてしまいました。
 斧を振りかぶるゼツボーグを、冷たく見下ろすディスピアの瞳。この絶望的な状況下でも、はるか達の瞳は曇りません。
 夢を叶えるまで終わらない、諦めないと、ゼツボーグを強く見据えています。
『守りたい夢が『叶えたい夢がある』『絶望なんかに負けない夢。それが!』
『私たちの力!!』
 想いの強さに比例するような強い光がはるか達から発せられ、ゼツボーグを怯ませます。両手両足を拘束している茨も解けました。

“ありがとう、フローラ、マーメイド、トゥインクル”
 その名を呼ばれ、驚き振り返ると、チエリも、ユラも、セイも、誇らしげに微笑しています。そしてはるか達にキーを差し出しました。なぜキーを持っているのかは後回し。今は窮地を脱することが先決です。そのキーを使い、変身するはるか達。
“お願い。みんなの夢を守るために”
 茨はトゥインクルが引き受け、ゼツボーグはフローラとマーメイドで迎え撃ちます。巧みに茨を誘導し、ゼツボーグに絡め憑かせて動きを封じた隙にモードエレガント。フローラルトルビヨン、マーメイドリップル、トゥインクルハミング、三発同時に叩き込んでゼツボーグを仕留めます。
 次の関門はディスピア・・・と思った矢先、その姿が忽然と消えました。同時に借りもののキーが力を失い、はるか達の変身も解けます。

“ありがとう、皆さん”
 振り返ると、そこには先代のプリンセスプリキュアとしてのチエリ達がいます。ここが彼女達の記憶の世界であり、かつてのホープキングダムだと明かします。
“あなた達はきっと私たちの夢に引き寄せられてきたのね”
“ところが私たちの不安とあなた達の不安”
“その二つが重なって、絶望の幻影が生まれてしまったようだね”
 先代の姿に息を呑んでいたはるか達は、キーを取られてしまった事を謝ります。
“でもあなた達は絶望の幻影に打ち克つ事が出来ました。この戦いに一番大切なこと。もう分かっていますね?”
 顔を見合わせ、頷くはるか達。先輩に向けて高らかに宣言します。
『絶望しないこと。自分やみんなの夢を守りたいって気持ちが、私たちの戦う力!ですよね!』
 はるかだけではありません。みなみも、きららも、先ほどまでの不安とは打って変わって自信に満ちた表情で応えます。
“もう、不安はないわ”
 後輩達の頼もしい姿を見届けて、先代の三人は天に還り始めます。
“闇はまた復活するわ。今度はさらに大きな力を持って”
“でもその戦いは、もうあなた達次第”
“忘れないで。君たちの想いがきっと夢を切り開く”
 消えゆく先代達に、はるかは最後に問いかけます。
『あなた達の夢って何だったんですか?』
“ホープキングダムが永遠に希望溢れる世界でありますように・・・”
 キーをはるか達に託し、先代プリンセスプリキュアは紺碧の大空に溶け込んでゆく雲のように消えて行きました。

 気が付くと、はるか達はノーブル学園の浜に戻っています。いつの間にか夕暮れ。トワ達とも無事に再会を果たしました。先代の強い夢が宿る新たなキーは、サクラ、サンゴ、ギンガ。新たなキーを抱きつつ、改めて彼女達の夢、ホープキングダムが永遠に希望あふれる世界を守るために、奪われたキーを取り戻す決意を固めます。

 同時に新たな脅威が訪れようとしていました。
 ロックが絶望で満ちたゲージをホープキングダムに投げつけると、城そのものがゼツボーグとなって、まるで音吉戦艦のように(笑)飛び発ちます。一羽のカラスが、それを監視するように見送っています。

 不意に、夢が浜の空が割れました。ゼツボーグと化した城が、姿を現します。
『さて、楽しいゲームの始まりだね』


 まず、先代プリンセスプリキュアに変身する三人少女が非常に印象深いです。
 私は個人的にトゥインクルことセイが好みだったりするのですが・・・。ややワイルドさを感じさせる容姿と、気さくな態度、口調。どこかきららに似ているようで異なる個性が魅力的です。それだけに、今回限りの登場になってしまったのが残念至極!もっとも、一度限りの登場だからこそ強く心に残るのかもしれません。冒頭で触れたキュアエンプレスもそうでしたから・・・

 前述の通り、きららとセイは容姿・雰囲気ともに似ています。みなみとユラも同様ですが、はるかとチエリは容姿・雰囲気ともに少々異なります。どちらかと言えば、チエリははるかが憧れて目標とする花のプリンセスに似ているような気がします。
 では、はるかはなぜキュアフローラの名を受け継いだのか。これは推測ですが、チエリもひょっとしてはるかのように発展途上のプリンセスだったのかもしれません。救国の英雄となったことで、あの落ち着いた物腰を身につけたとすれば、それも理解できます。現に最終回後のエピローグにおけるはるかは(あえて詳細は現時点で伏せておきます)、チエリを髣髴とさせていたように思えました。

 チエリ達先代の三人は、お茶会の場で夢について問いかけています。きららはトップモデル、みなみは人の役に立つ事、はるかは素敵なプリンセス。みなみはこの後夢が変わりますが、この時点で目指すべきものは父や兄を目標とした地に足を付いた夢です。
 この問いかけで、キーを失い不安に囚われていたはるか達に、改めて原点を見つめさせたのでしょう。同時に先代の彼女達も、後輩の姿を見て自らの不安を払拭したのかもしれません。

 不安。それは今回、全編を通して覆いかぶさっています。はるか達だけでなく、導く存在であるチエリ達にも、不安の色は濃く伺えました。ディスダークを封印し、グランプリンセスとなり、ホープキングダムを建国したと伝えられる彼女達。

 果たして彼女達は、幸せな生涯を全うできたのでしょうか。

 彼女達の夢は“ホープキングダムが永遠に希望溢れる世界でありますように”です。
 それが未来に於いて破られる事を知っていたとすれば、不安を抱いたまま天寿を迎えたことになります。それでは彼女達の生涯は、あまりに悲しいです。
 
 しかし私はプリキュアは何よりも肯定的な物語であって欲しいと願っています。
 ゼツボーグを退けた現役のプリンセスプリキュアを迎える、先代のプリンセスプリキュアの三人は、皆誇らしげな笑みを浮かべていました。同時に自分の名を受け継いだはるか達の力量を目の当たりにして、後顧の憂いが無くなった安堵の表情とも見受けられます。これを見届けたことで、彼女達の不安も無くなり、夢が叶うと確信したのでしょう。
 
 はるか達を試したのはチエリ達ではありません。おそらく、「大いなる存在」のような超越者だったのだと思います。チエリ達もまた、今回のエピソードで後任を導けるのか、試されていたのかもしれません。人を育てることが人生最大の事業とも言います。現役のプリンセスプリキュアを勇気づけ、指針を示す事で、先代のプリンセスプリキュアもまた思いを遂げられたのだと思います。

 はるか達の不安が招いたと語られている、今回のゼツボーグとディスピア。中でもディスピアは、本物のディスピアとは異なる存在で、特に何をしてくるでもなく、黙って見つめているだけ(はるか達の隠れ場所を指摘したりはしましたが)なのですが、その威圧感といったら(笑)。ディスピア様、あのお声が怖さを更に引き立てているとはいえ、見た目だけでも貫録十分です。
 それはさておき、不安の象徴のような茨が、はるかの影から延びた事が気になります。みなみやきららから同時に伸びてもおかしくない状況でしたが、はるかが一層の不安を抱いていたという事なのでしょうか。
 しかしはるかは、茨に動きを止められて状況下でゼツボーグに追い込まれても、自らの力で茨を振り払いました。諦めていたらおそらく解けなかった筈です。不安を、「何とかしよう」という気持ちが上回ったから解けたのでしょう。ここ一番の窮地に追い込まれたり、どんな不安な状況でも、決して最後の光を失わない。はるかの芯の強さが改めて感じられた次第です。(それ故に、はるかを絶望させてしまった38話の破壊力も凄まじいのですが・・・)

 そしてまさかのスカーレット変身なし!
 まあここ数話は彼女に焦点が当てられており、次回は単独で頑張りますので、良しとしましょう。
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MP

第20話でも見られた「先代プリキュア」、その事が再び取り上げられた話です。

キーをロックに奪われてショック状態のはるか・みなみ・きららが「記憶の世界」に呼ばれ(こんな時でもはるかの食い気は止まらんな)、そこでチエリ・ユラ・セイの3少女に出逢いますが、変身出来ない状態でディスピアとゼツボーグに襲われるも、「絶望に負けない夢」の力によって新たなキーの登場、そしてあの3少女が先代のプリンセスプリキュア。「絶望に打ち勝つ」ってのは一種の試練、「ドキドキ」のミユキ…いやエンプレスのエピソードに似てます。

今回登場した先代トリオ、先代フローラことチエリが藤田咲さん、先代マーメイドことユラがゆきのさつきさん(「雪乃五月」改め)、先代トゥインクルことセイが清水香里さんでした。藤田さんと清水さんはプリキュア初登場ですが、ゆきのさんは「5 / GoGo!」のルージュ妹→メロディママ→サニーママに次いでの登場、そして藤田さんは2年後の現在、現代のプリキュア・キュアマカロンです。

次回はロック編のラスト、そして「強化変身」に必要なアイテム登場回です。
(こないだ配信の「ハピチャ」もシャイニングメイクドレッサー初登場回、そして「まほプリ」はレインボーキャリッジ初登場回が次)
by MP (2017-05-13 11:37) 

悩める父メフィスト

三作とも順調なご視聴、何よりです。ところどころに 新作ネタを仕込まれた文章、楽しく拝読しました。

折り返しで大きな山場があるのはシリーズ共通してるとは思いますが、30話台は作品ごとに構成に特色があるように思います。楽しみですね。
by 悩める父メフィスト (2017-05-15 22:46) 

スティクス

>悩める父メフィストさん
少しモチベーションが下がりかけたところでコメントいただき、支えになりました。ありがとうございます。
私が書いた内容についてご意見を頂けると嬉しいですし、やり甲斐があります。(小ネタへのツッコミ、ありがとうございます(笑))

並行再視聴すると、同じ話数での比較が出来てなかなか興味深い体験になりました。次の山場は38話でしょうか。楽しみ&難しさを今から感じていますが、それまでの日常回も楽しみにしています。
by スティクス (2017-05-16 23:29) 

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