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プリキュア5 第35話『ナッツの鍵とこまちの心』 [Yes!プリキュア5]

「夢を諦めるな」
そう言ってくれた人が目の前で夢を諦めようとしていては、言われた方としても報われません。 
歴代の敵キャラクターの中でも、特に精神攻撃に秀でたブラッディ氏。
その巧みな話術にナッツが屈しようとするのを目の当たりにしたミントの叫びと、
基本守りのプリキュアである彼女が見せる奮闘、
そしてラストのモノローグから続く新たな小説の書き出しが印象的な一編です。
  
原稿をめくるナッツ(人間体)を前に、こまちは緊張した面持ちです。
そして4人はナッツハウスの階下で固唾を呑んで見守っていました。
これまで幾度と無くダメ出しを受け続けたこまちの処女作「海賊ハリケーン」は、
7度目にしてようやく良い評価をしてもらう事が出来ました。
ナッツは特に鍵で扉を開ける希望に繋がるラストシーンを評価した後、
自身が首から下げる鍵に目を落とし、自らに言い聞かせるように呟きました。
『希望の鍵、か・・・』

その夜、ピンキーたちをコレットに休ませた後、
再び鍵を手にして寂しい目を浮かべるナッツ(珍獣姿)を茶化すように、
ココがその鍵を奪い取ります。
使えない鍵を持っていてもしょうがないとはしゃぎながら逃げ回るココを捕まえて
(これが小々田先生と人間姿のナッツだったら少々ヤバい描写でしたが)
鍵を取り返すナッツに、ココはいつまでも昔の事にこだわってても意味は無いと
一転して真面目に問いかけます。
大事なのはこれからだというココの言葉は、今のナッツには伝わりません。

そしてナイトメアでは・・・
カワリーノは失敗した上に出勤もしていないハデーニャさんに苦言を呈し、
これまで沈黙を守ってきたブラッディ氏に出撃を要請します。
かつてカワリーノはブラッディ氏の部下であり、
私など足元に及びませんと慇懃に言い放つカワリーノを口だけは達者と言いながらも
ブラッディ氏は自分のやり方で結果を出すと出撃していきました。

原稿をポストへ投函し、コンクール入選を願い手を合わせるみんな。
お願いして夢を叶えられる程世の中甘くないと、一人斜に構えるナッツをみんなは注意しますが、
当のこまちは一つの作品を書き上げただけで満足していては作家になれないと、
襟を正して次回作に取り掛かる事を決めました。
とはいえ、冒険小説とは違う感じの物を書こうと構想を抱くも、まだテーマは決まりません。
しかし、そんなこまちの姿勢はうららに影響を与え、
明日のトーク番組の仕事に俄然やる気を出しました。
そして出演用の衣装を買いに行くうららに付き合い、
丁度本屋へ行くつもりだったこまちも共に、みんなで買い物へ行くことになりました。

買い物の合間にも赤い服を推すりんちゃんと青い服を推すかれんの間に久々に火花が散り
うららはどちらの顔も立てる等、少々気苦労が絶えません。
そしてのぞみは中二にもなって迷子になっており、
その背後から怪しいサングラスの男が忍び寄りますが・・・
それは小々田先生、どうみてもバレバレです。(ダーク小々田の面影が既にありました)
かつてはこのように変装し、国を抜け出して世界の色々な物を見て回った事を、
そしてナッツにいつも止められていた事を思い出しました。

こまちと共に本屋を訪れるナッツも、同じ事を思い出しています。
外の世界に興味を持ちながらも、コレットとピンキーを守る役目を優先して
王国を出ようとしなかったナッツのために、ココは土産で本を渡していました。
その事を語る小々田先生に、のぞみもナッツの笑顔を見てみたいと語ります。
『ナッツはいつも自分は笑っちゃいけないんだって思い込んでるように見えるもん』
だからいつかナッツも交えたみんなで笑い合おうと、小々田先生も約束しました。

こまちとナッツは買い物を終え、集合場所に来ますがまだ誰も着ていません。
ナッツの目には、光る緑やそよぐ風、笑い合う人々といった平穏な光景が映っています。
普段気付かないけれど、平穏な光景を共に見つめるこまちですが・・・
『大事なものは失って初めて気づくものだ。
 全てを失った後に残っているもの。それが絶望と言うものだよ。わかるだろう?』
いつの間にか、集合場所の広場に置かれたピアノの前にはブラッディ氏が座っていました。
ブラッディ氏はナッツが首から提げている鍵に目を留め、
パルミエ王国の門の鍵を下げている事は己への戒めだと指摘し、
コワイナーの仮面を床に落とすと辺りの空間そのものがコワイナーとなって
周囲に結界を張り、2人を包み込みます。
『ドリームコレットを貰いに来た。渡してもらえるかね?』
『渡さない!』
『君に聞いていない』
ブラッディ氏にとってこまちは眼中に無く、辺りのパイプ椅子がこまちを襲います。
ナッツはこまちを庇った拍子に珍獣姿となってしまい、
こまちは単身変身して立ち向かいます。

ブラッディ氏はこまちがプリキュアと知り興味を抱くも、
相手をしているヒマは無いと無数のコワイナーの腕をけしかけます。
ミントが無数の手を相手にしている間に、ブラッディ氏は自らが滅ぼした
パルミエ王国の最後の様子をナッツに語り聞かせ、ナッツの心を淡々と攻めていきます。
『それが私の仕事だったからね。与えられた仕事はきちんとやり遂げるのが大人というものだ。
 君はどうかね?君は王子だったね。国民を守る事は出来たのかね?』
あくまで口調は穏やかで、紳士的な態度を崩さないブラッディ氏の言葉に
ナッツは何も出来なかったと自分を責め始め、そんな事無いと叫ぶミントの言葉も届きません。
その頃結界の外側に異変を察知したみんなも駆けつけ、変身する4人。

『何故王国は滅びたのだろうね。君はどう思う?』
淡々と続くブラッディ氏の問いかけに、ナッツはどんどん自分を見失っていきます。
カワリーノの策略にハマってしまったとはいえ、門を開けてしまったのはナッツの責任。
自分さえいなければ・・・自己嫌悪に陥るナッツには、
無数の手を振り払いながらあなたのせいじゃないと叫ぶミントの呼びかけも届きません。
そしてミントは奮戦空しく腕に掴み取られ、
結界の外でも4人が無数の手を相手に苦戦を強いられています。
『君は今、関係の無い世界の者たちを巻き込んでいる。
 このままでは、この世界もパルミエ王国のように失くなってしまうぞ?
 君のせいで・・・』
ブラッディ氏の言葉はナッツの心をどんどん追い詰め、
これ以上みんなを巻き込めないと、みんなと過ごした他愛のない日々を思い出すナッツは
遂に屈してコレットを差し出そうとしますが・・・

『夢を、夢を捨ててしまうつもりなの!?』
ミントの叫びがナッツを思い留まらせました。
そして、かつてナッツがこまちに掛けた言葉で、ミントはナッツを叱咤します。
『夢を諦めるな。ナッツさんが私に行った事よ!
 パルミエ王国を蘇らせるんでしょ?それがあなたの夢でしょ!?』

気合一閃、ミントは拘束を断ち切り、ナッツに迫る無数の腕をミントシールドで弾きます。
ミントは懸命にナッツとコレットを守り、
コレットは力のある者が所有すべきだと説くブラッディ氏に反論。
『ドリームコレットはその力を知り、畏れ、敬い、
 全てを投げ打ってでも尽くす者にこそ相応しいのよ!』

そしてナッツに振り返り、それが出来るのは真っ直ぐで優しく強い心を持つ
あなただけだと語りかけるミント。しかし・・・
『心などでコレットを守る事は出来んよ』
ミント必死の防戦も空しく、ミントシールドは力を増す無数の手にかき消されますが、
丁度結界を破って4人が駆けつけました。

結界を破られた事は想定外でも、あくまで余裕の態度を崩さずに
ブラッディ氏はかえって興味深そうに無数の腕をけしかけます。
しかしどんなところであっても仲間を助けるためなら駆けつけ、
みんな一緒に心から笑い合える日を願い、どんなに大変な事でもやり遂げてみせると
力強く言い返すドリーム達には通じませんでした。
迫る無数の手はアクアトルネードが、ルージュバーニングが、レモネードシャイニングが退け、
そしてクリスタルシュートによってコワイナーと共に結界が消え失せます。
プリキュアの力を目の当たりにして引き上げるブラッディ氏。
脅威は去りましたが、ナッツの心は・・・

夕暮れのナッツハウスで、ナッツ(人間姿)は首から提げる鍵に目を落としています。
ナッツハウスを訪れたこまちは扉を開けようとして少しためらい、
そして意を決して中へ入りますが、ナッツとは目が合わせられませんでした。
しかしナッツを励まそうと切り出そうとした時、ナッツが先手をとってお礼を言います。
『あの時こまちがいなかったら、あいつの思い通りになっていた。
 自分が今これから、何をするべきか解っていたはずなのに・・・』
過去を振り返っても仕方が無いとココにも指摘されたと言いながら鍵を握り締めるナッツ。
こまちはナッツの方へ向き直ろうとしますが、またしても先手を取られました。
『少し顔色が悪いぞ。夜はちゃんと寝ているのか?』
あまりに顔が近かった事もあり、赤くなってもじもじしながら寝不足気味と答えるこまちに、
ナッツは小説を書くのは良いが無理は良くないと諭します。
『作家になる夢が叶うまで、こまちの書いたものなら何度だって読むし、
 俺に出来る限りのアドバイスをする。だから、こまちは自分の事をもっと大切にしろ』
その言葉を聞いて、こまちの目に涙が浮かびました。

―私は、泣くことしかできなかった。励ましたかったのに、励まされて・・・
  彼の優しさに涙が止まらなかった。
  優しさ故に、彼は自分が許せないのだろう。
  王国の鍵は、いつも彼の胸に重く下がっている。
  あの鍵の重みを、少しでも軽くしてあげたい―
こまちのモノローグは、そのまま次回作の本文として書き始められます。
今度はどんな小説なのかと問うかれんに、こまちは少し戸惑いながらも笑顔で答えました。
『これは・・・一人の女の子が、心惹かれる相手に出会う物語よ』


既に姿を見せていたにもかかわらず、ブラッディ氏がその実力を見せ付ける今回、
巧みな話術と精神攻撃を得意とする敵幹部は他のシリーズでもあまり例が無く、
他にはせつなを巧みに言葉攻めしたノーザ「さん」くらいでしょうか。
しかしノーザ「さん」とは異なる落ち着きと老獪な語り口、
紳士的な態度が印象深く、個人的にはかなりお気に入りの敵キャラクターです。
最も後に怪人化した際は異様に貧相で残念でしたが・・・

さて、そのブラッディ氏に淡々と心の弱みを付け込まれて己を責め続けてしまうナッツは、
本人もラストで告白するように、ブラッディ氏と比べてまだまだ未熟です。
(それが悪事であっても)与えられた仕事をこなすのが大人だと言い放つブラッディ氏に対して、
国民を守るという王族の義務を果たせなかった負い目を引きずり、
さらに目の前で痛めつけられるミント、結界の外で苦戦する4人を
ある意味人質のように扱われては屈しそうになるのも解らなくはないですが、
果たしていつものナッツならそう易々とコレットを渡す気になったでしょうか。
ブラッディ氏の言葉には「言霊」のような効果もあるような気がします。

「自分を励ます最上の方法。それは誰かを励まそうとする事」
というマーク・トゥエインの言葉があります。
ブラッディ氏を退けた後も、ナッツは失意からは回復していません。
しかし意図したことでは無いとは言え、結果的にこまちを励まし案ずる事で
いつものナッツに戻ったように見受けられました。
それはこまちも同様で、原稿を7度も書き直したり、
次回作の話題も上ったことで、作家としてやっていけるのかといった不安も抱いた事でしょう。
応募作を投函した際の心境からは、不安が無いとは言い切れません。
その不安な心は目の前で屈しかけているナッツを励ます事で
迷いを振り払ったように思えます。

今回ミントは、ドリームコレットはその力を知る者にこそ相応しいと言い放ちますが、
既に最終回の構想がこの時点であったとすると意味深な発言でした。
コレットに限らず、すべてを可能にする強大な力とは、
確かにその力の恐ろしさも含めて知っている者で無いと持つことは出来ません。
実際デスパライアは最終的にコレットの力を手にしたものの、
己の信念を見失ってしまいました。
強大な力は、管理する側にも強大な意思の強さが必要だと言う様な教訓も感じられます。

それにしても、買い物途中のカップル風のはしゃぎっぷりを見せるのぞみとココ、
長年連れ添った2人のような関係を見せるこまちとナッツには、
なぎさと藤P、咲と牛乳といった一方的な憧れとは異なり、
放映当時ずいぶんと複雑な感情を抱いたものでした。(苦笑)
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