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スイートプリキュア第3話『ジャジャ~ン!響は音楽嫌いニャ?』 [スイートプリキュア♪]

私の中学時代の音楽の先生は、科目名に「楽」があるのは音楽だけだと言っておりました。
そして「音楽」は時に「音学」であるけれども、
「音が苦」ではないという言葉は今も覚えています。
学問である前に、楽しんでしかるべき音楽を、楽しむ事を忘れてしまった響。
響が音楽好きだった事を思い出すテーマに形を借りて、
殻に閉じこもった自分の心に素直になり、自分の心を開く一編です。
  
目覚まし時計が鳴り響く、北条家の朝。
響は朝に弱いプリキュア主人公の伝統をしっかりと受け継いでおり、
ハミィに時計を止めさせて二度寝を満喫しようとしたところ、
その至福の時はスピーカーから響く大音量で破られました。
タクトを振る団パパ本人はヘッドホンをしているつもりですが肝心のプラグが刺さっておらず、
どうも彼は音楽以外の事に関しては天然のようです。
苛立ちに輪をかけるように、テレビの占いでも今日の響の運勢は最悪。
「ドアに注意」「イライラで友達ともケンカ」という内容にため息を付く響に、
朝食を前にした団パパはタクトを振りながら音楽用語を交えて語りかけます。
普段の会話で音楽用語を使われるのが嫌いだと言っているの響に対し、
団パパは嫌いと好きは同義だと我冠せず。
そんな父に愛想笑いを返して、響は家を後にします。

有楽町マリオンのようなからくり時計が音楽を演奏し、鍵盤が意匠された道、
自然に楽器を手にしている子供、そして平日の朝っぱらから鼓笛隊の行進(笑)と、
加音町はウィーン以上に音楽一色の町でハミィにとって夢のようですが、
音楽嫌いの響には頭痛の種でしかありません。
その登校の道すがら、学校の注目の的である王子先輩が響に声を掛けました。
今夜のコンサートへの誘いに返事を濁す響。父が指揮をするから嫌だとは言えません。
そして練習のため先に行く王子先輩を見送った響を、
王子先輩に密かに憧れている奏は羨みます。
その事を響に指摘されて赤くなる奏かわいいよ奏
優しくて勉強も出来る上、ピアノも上手だという王子先輩への憧れを口にしますが、
音楽が嫌いだと切り捨てる響はつれなく先に行ってしまいました。
ハミィ曰く、心にト音記号を持っているのは音楽を愛している証拠なのですが、
響は嫌いなものは嫌いだと取り合いません。
しかし響は途中で足を止め、学校から聴こえてくる調べを知らず知らず聞き入っていました。
それを察した奏は、響の手を引いて音楽室の練習風景を見せに行きます。

音楽室ではピアノの王子先輩以下、2本のヴァイオリンとヴィオラ、チェロの
ピアノ五重奏曲の形式で行われている演奏を、団パパが北条先生として指導しています。
(あれ?響が登校するときにはまだ朝食に手もつけていなかった気が・・・?)
一通り演奏を終え、先生に意見を求める王子先輩。
その問いに答えず、北条先生は再びタクトを振り上げます。
答えがもらえなかった王子先輩は戸惑いながらも再び演奏を始め、
北条先生の指導姿は普段奏が見た事のない雰囲気を漂わせていました。
そして響も、口では嫌と言っても心は音楽を楽しんでるのは奏にはお見通しです。
しかし響は小学校三年の演奏会の時から音楽をやめると言い出しており、
その事には触れて欲しく無さそうです。
あの時何があったのか訊ねる奏にハミィを押し付け、一人先に教室へと向かいました。

そんな日に限って一時間目から父が受け持つ音楽の授業で、
響は最悪だと漏らして音楽室へ向かいました。
ハミィは奏に音楽嫌いの理由を尋ねますが、実は奏にも良く解りません。
その奏に今夜のコンサートの誘いを掛ける北条先生。
響も一緒に行く、という奏の答えに嬉しそうな顔を浮かべ、
これからも響の事をよろしくと奏に頼みました。
北条先生自身は音楽の世界で天才と呼ばれる存在で(なぜそんな人が中学の教師を?)
響の母は世界的ヴァイオリニストとして演奏旅行中。
そして響は今は音楽をやっておらずとも、学園ナンバーワンの運動神経。
幸せな一家と評する校長に、北条先生は苦笑いを返します。

放課後、奏は響を音楽王子隊(笑)のコンサートに誘うも、当然断られます。
北条先生は響の音楽嫌いをずっと気にしてると思うと言う奏に、
響は私を誘って行くとか勝手に決めないでと相変わらずつれない態度を取りました。
響と子供の頃は一緒に歌っており、この前もハミングしていた事を指摘して、
奏は改めて5年前の出来事を聞こうとしますが、
響は話を切り上げ、一人下校して行きました。
その様子を、時計台からエレン様が見下ろしています。
音符の回収ついでにコンサートを乗っ取り
皆を悲しませてやろうとセコイ悪巧みを企てるエレン様。
もっともその最中、からくり時計の楽しげな音楽が鳴り響き、
長調の音楽が嫌いなエレン様とトリオ・ザ・マイナーは耳を塞いで嫌がっておりました。
こんなところをアジトにしては、一時間おきにこんな目に遭いそうですが・・・(笑)

『もう嫌!』
響は自室に閉じこもって鍵を掛け、ベッドに突っ伏し涙を浮かべてあの日を思い出しました。
『あの頃の私はパパの事が大好きで、パパやママに喜んで貰いたくて、
 必死に練習して、それなのに・・・』
玄関のチャイムが鳴り、涙を拭いて起き上がる響。
しかし急に部屋のドアが壊れてしまい、開かなくなっていました。
朝の占い「ドアに注意」の通り、最悪の一日になろうとしています。
北条家を訪れた奏とハミィも、響の部屋のドアが開かない事を知りました。
奏がケーキを持ってきたと聞いて響は目の色を変えますが、
我に返ってケーキをダシに演奏会の事を聞き出そうとしていると邪推します。
奏はそんなつもりではないのですが、響はそう決め付けて意地を張り
あの時の事を言いかけてもやっぱり口に出来ません。

『いつもの響はどこに行っちゃったのよ?』
『優等生の奏に私の気持ちは解らないよ』
『解る訳無いでしょ?何も教えてくれないんだもん』
『どうせ言ったって何も変わらないもん』
ドア越しの言い争いはエスカレートして行き、意地を張る響に奏も堪忍袋の緒が切れました。
『ああそうですか!じゃあもう聞かない!ずっと音楽嫌いって言ってれば!?』
『ええ、そうさせてもらいますよ!』
そして音楽を愛する心が必要だというプリキュアを辞めるとまで言い出す響。
しかし奏は言い争っていても響を見捨てる事はしませんでした。
これが最後。もう二度と聞かないと前置きして、
もし響が音楽を嫌いになった原因があの演奏会にあるのなら、
一緒にその原因を解決したいと響に本音を言います。
響の弾くピアノが大好きで、もう一度聞きたいという奏に、響はようやく重い口を開きました。

あの日、響は団パパと二人で遊園地に行く約束をしていたのですが、
急遽代役としてピアノの演奏会に出る事になり、準備不足をカバーすべく練習して
本番でもミスをせず演奏をやり遂げましたが、団パパの反応はそっけないものでした。
『今日の響は音楽を奏でてないね。その答えは自分で考えなさい』
会場の外で雨に打たれ、一人しゃくり上げる幼い響は、
傘を持って労いに来た奏に抱きつき、堰を切ったように泣き出して訴えました。
『私、もうピアノも歌もやめる!』

音楽の天才である父は才能の無い私にピアノを弾いて欲しくなかったと考えている響に、
奏はその時の言葉がどういう意味だったのか聴きに行こうと誘います。
しかし響は自信が無く、鍵が壊れている事を理由に動こうとしません。
そんな響を、部屋を出られないのを鍵のせいにして、
音楽をやめたのは父のせいにしていると叱咤する奏。
そして響に心の扉を開けて自分の想いをちゃんとぶつけるよう言い放ちます。
奏に反発してノブを握る響。響に思いのたけをぶつけるようにノブを握る奏。
2人の気持ちが合わさった時、自然とドアは開きました。
扉が開くや否やケーキを引ったくり、立て続けに3個平らげた響は、もうウジウジしていません。
ここで決めなきゃ女が廃ると、父の許へ向かう決意を固めました。
口の周りにクリームをつけたままですが(笑)

本番前、不安そうにリハーサルをする王子先輩に対しても
北条先生はあの言葉を投げかけています。
『今の演奏は音楽を奏でてないね』
その父の発言に目を三角にする響ですが、北条先生は王子先輩に、
本気で音楽家を目指しているのなら、その答えは自分で見つけるよう促します。
すっかり呆れている響。そしてまもなく開演時間になろうとしています。
『王子君。音楽って何だろうね?』
不安そうな王子先輩に、北条先生は謎かけのように問いました。
開演のブザーが鳴り、客席を前に不安を隠せない王子先輩は、
先ほどの北条先生の言葉が気になっています。

ところが指揮者の北条先生の代わりに出てくるエレン様の美しさにどよめく場内。
エレン様は制止する北条先生を振り払い、ステージにタクトが転げ落ちます。
かつてのイース様のように堂々と聴衆に名乗りを上げた後
チェロにくっついている音符を見つけて「見ーっけ♪」と喜ぶエレン様かわいいよエレン様
セイレーンの姿となって、チェロをネガトーンと化し、
不幸のメロディによってたちまち聴衆と王子隊のみなさんを悲しみに暮れさせます。
音楽を使って人を不幸にする事に憤り、変身する2人。

開口一番2人がかりで蹴りかかるも、逆に殴り飛ばされて激しく壁に叩きつけられる2人。
セイレーンはもっと皆を悲しみのどん底に叩き落とすようネガトーンを煽りますが、
その前に唯一人無事な北条先生が立ちはだかりました。
ネガトーン相手にも「君は音楽を奏でていない!」と言い放つ姿に呆れ気味のメロディ。
何で北条先生は落ち込まないのか疑問を抱くセイレーンに、
素晴らしい音色しか入ってこないと断言して、これが本物の音楽だとピアノを弾き始めます。
長調の音楽を嫌がって耳を塞ぐセイレーンとトリオ・ザ・マイナー。
メロディは父が楽しそうにピアノを弾く姿を目の当たりにして、
あの時早く遊園地に行きたくて嫌々演奏していた事を思い出し、
音楽とは「音を楽しむ」事を解って貰いたくてあんな事を言ったのだと気付きました。
父の気持ちが解って力が沸いてきたメロディ、
メロディの元気な姿を見てリズムにも力が沸いてきました。
立ち上がってネガトーンを投げ飛ばし、
続けてパッショナートハーモニーでネガトーンを元のチェロへと戻しました。
セイレーンもすぐにアンコール公演をすると捨て台詞を残し、
トリオ・ザ・マイナーと共に引き上げていきます。

先ほど落ちたタクトを拾い上げ、北条先生に返してお礼を言うメロディ。
戦闘中の窮地を救っただけでなく、音楽の意味を気付かせてくれた
父へのお礼も込められているようです。
そしてコンサートも無事再開され、響には指揮を執る父の姿が誇らしく見えました。
『奏・・・私も音楽を楽しめれば、もう一度音楽と向き合えるかな?』
当の奏は演奏途中で安らかな寝息を立てており、その答えは聞けません。
しかし響は、演奏を聴く内、「音」を自然な笑顔で「楽」しんでいました。


前回でも見受けられたように、今回も響の繊細な内面が描かれていました。
一見気の強そうな見た目や性格ながら、実は繊細で傷つきやすいという一面は
なぎさを見ているようでつくづく懐かしさを感じます。
傷つきたくないという気持ちは前回でも存分に感じられていますが、
今回の問題も基本的には前回同様、父の本心を事を聞くのが怖くて、
音楽の天才である父に蔑まれているのではないかと響自身が思い込み、
閉じこもってしまった事が原因でした。
冒頭で触れたとおり、ストーリーの構成自体は音楽嫌いになった理由を突き止め、
再び素直になるというものですが、この心を閉ざしてしまった響の姿を
壊れた部屋の扉に置き換えての描写はなかなか優れていたと思います。

朝の占いが見事的中する上に、部屋の鍵が壊れるなどと言う事態は普通考えにくく、
奏と心が通じ合うと同時に戸が開くという展開は、
前回登場した響と奏と同じ境遇の2人の少女の存在同様、
偶然にしてはベタで出来すぎな展開という声もあるかもしれません。
しかし何だかんだ言っても響を心配している奏、
傷つく事を恐れて殻に篭り、奏に反発するような意地を燃やして心を開く響。
この二人の距離感を解りやすく描写した事は評価したいです。

ところでいわゆる「ブラック家族」に位置づけられる響が
王子先輩に全く憧れを抱いておらず、奏の方が惹かれているという点が新鮮でした。
今までのプリキュアシリーズの伝統に反して、
恋焦がれる奏を響がからかう、あるいはサポートするという展開があるとすれば、
ここまでで描かれている2人の性格を考えるとどのようになるのか想像しづらいです。
響と奏に悪い虫が付いて欲しくないとう気持ちはありますが(苦笑)
想定外の展開があるのならば期待したいものです。

さて、響の音楽嫌いの原因となっていた北条団パパは
仮にもプリキュアシリーズに登場する「親」ですので、
例えば音楽に厳格であるために娘を省みず、
それが響の音楽嫌いを招いてしまうというような人物ではありません。
音楽とは何なのか、音楽を奏でるとはどういう事なのか、
音楽の楽しみとは何なのかを娘(生徒)に説明するのではなく、
娘(生徒)に考えさせる姿勢からは、音楽以外の事も自分で考え、
自分で身につけて欲しいというような考え方が伺えます。
朝食を前にタクトを振っているという変な行動にもインパクトがあり、
天然でありながらネガトーンに真っ向から立ち向かう物怖じしない姿も印象に残ります。
しかし一方で、音楽家を目指す者の親としては良い父かもしれませんが、
普通の娘の父としてはいかがなものか、少々疑問を感じてしまいました。
王子先輩のように本気で音楽家を目指す者に対してはあの突き放しは良いかもしれませんが、
響はピアノの演奏に秀でていたものの、音楽家になろうという意志は伺えません。
演奏会の日の幼い響は、ほぼぶっつけ本番による不安と、
父との遊園地の約束が反故になるかもしれないというような、
寂しさが入り混じった顔で必死に練習していました。
そんな状況で演奏会を乗り切った娘に対して、あの対応は少々酷だと思います。
響は折角の遊園地の日の前に代役を務めただけですし、
あの後遊園地に行くという約束もうやむやになったと思われます。
大事なものを感じてもらいたいという親心はわかりますが、
そのために娘との約束を破るような形になってしまっては響が傷つくのも無理はありません。
奏との関係のように、今後も父とも一悶着あるかもしれませんが、
徐々に互いを分かり合うような場面が見られる事を期待したいです。

そして音楽の描写にも注文したい点が見受けられます。
ピアノ五重奏曲(今回の王子隊のような編成)では通常指揮者がつく事は無く、
折角メインテーマが音楽であり、ヤマハがスポンサーに付いているのであれば、
演奏会の形式などをもう少し考証してもらいたいと思いました。
子供向け番組であればそう目くじらを立てる事も無いのかもしれませんが、
例えば初代~MHにおいてはラクロスの描写をかなり掘り下げて描いており、
ラクロスを知らなくてもその魅力が伝わって来ました。
一連の音楽の場面も本物のように描く事で、
音楽の魅力を伝える一助になるのではないでしょうか。

音楽の魅力といえば、立場は違えどセイレーンをはじめとする
マイナーランドの連中も「短調の」音楽を愛していると見受けられます。
ひょっとしてこの物語の最終的な敵として、音の無い世界にしようと企む存在が現れ、
メイジャーランドとマイナーランドが手を携えて音楽を守る為に戦う、
といった展開ではないかと予想しましたが、果たしてどうなる事でしょうか・・・?

少々辛い評価をしているようですが、
スイートプリキュアのシリーズは個人的にとても楽しんで見ています。
響と奏のツンデレぶりにはニヤニヤが止まらず、
エレン様は存分に魅了してくれますし、ハミィとセイレーンの関係も気になります。
そして元気になったメロディを見てリズムも力が沸いてくる等、3話目にしてここまでの
ラブラブっぷりを見せ付ける2人は、一体どこまで登り詰めてしまうのでしょうか(笑)
期待の裏返しとでも言うべきか、私も響同様に
素直になれていないのかもしれないと少々反省させられました。
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むむい

親子間のやり取りに余所者が口を挟むのはどうかしてるでしょ。。。

音楽が嫌いになろうが彼女の勝手でしょうと思う。
by むむい (2012-11-06 09:35) 

スティクス

>むむいさん
はじめまして。そして、辛いご意見にどうお答えしたものか悩みました。
納得の行く答えでは無いかもしれませんが・・・
確かに、現実でおっしゃる通りの事があればお節介かもしれません。
しかしプリキュアはフィクションであり、ファンタジーです。
プリキュアと言う作品世界に於いて、主人公達が他人への非干渉、
冷めた見方をしていたとしたら、
それは私の心を惹くものでは無いと思います。
お節介でも、過剰な口出しであっても、むむいさんの望むようなものとは
少なくとも私が観たいものとはかけ離れています。
そんなに冷めたプリキュアが観たいのか、疑問に思いました。
大変失礼な変身で恐縮ですが、何故このご意見が投稿されたのか、
それを考える事も私にとって意味があるものと受け止めたいと思います。
by スティクス (2012-11-06 22:44) 

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