Go!プリンセスプリキュア 第24話『笑顔がカタイ?ルームメイトはプリンセス!』 [Go!プリンセスプリキュア]
作中では夏の入り口にあたるエピソード。しかし、今の時期にこそ相応しい一編かもしれません。
何がわからないのかもわからない人に教えたりすることは困難が伴うもの。新人が羽ばたく今、世の中には今回のトワときららのような関係が見受けられることでしょう。
縁あってルームメイトとなった、自分への厳しさとプライドの高さを持つ二人。ここから始まる学園生活から、不安だけではない何かがスタートします。
爽やかな朝。トワは窓辺に佇みながら、凛と、優雅に紅茶を飲んでいます。
しかし実際はもうすぐ登校時間。同室のきららが着替えを促しますが、トワは自分で着替えた事すらありません。結局きららの手助けを得てノーブル学園の制服に身を包み、きららに手を引かれて初めての登校へと廊下を駆けて行きました。
トワはきららと同じクラスになり、転校生として自己紹介の壇上に立ちます。当然そこは異世界出身者のサガ。黒川エレン先輩や剣崎真琴先輩がやらかしたように、トワもまた期待通りのボケを大真面目に演じます。スカートの裾をつまんで一礼した後、
『ごきげんよう。私、このたびホープキングダムよりまいりました、紅城トワと申します。この世界の事はまだよくわかりませんが、皆様の希望の灯を守るために、全力を持って尽くしたいと考えています。どうぞ、よろしくお願い申し上げます』
クラスメイトが皆唖然として静まり返る中、きららはナイスジョークと誤魔化し、自分の隣の席が空いているとアピールします。隣がきららならば、ある程度はフォローできるでしょう。
『お手柔らかにね、トワっち♪』
いつの間にかトワにも、きららお得意のあだ名がつけられていました。
トワの「紅城」という苗字は学園長がつけてくれたものです。
『私、この学園で自分のなすべきことを見つけたいと思いますわ』
気負いがちなトワに、みなみとはるかは焦らないように肩の力を抜くよう助言します。ところでトワの加入により、キーが各3個。計12個揃いました。しかしトワは、自分のキーはディスピアが作ったものが変化しただけで、ホープキングダムを救うための12個には含まれないと俯きます。
『チッチッチッ!そう落ち込むことないって。きっと集まるよ。あと3つ!』
はるかはアロマの真似で切り出し、本人からお気楽だと言われますが、そこがはるかの良い所だとも皆が認めています。ちなみにきららはボアンヌのショー以来忙しくなり、仕事でこの場には居ません。トワは改めて、きららの「夢」について思いめぐらせます。
撮影後、きららは新しい雑誌を作るという女性編集者に声を掛けられました。メインモデルに推したいう、願っても無いチャンスをものにするため俄然張り切ります。
遅くまでノートに向かってプランを作り、バレエの授業中も大鏡に向かってポーズの確認。優雅に舞い、音楽の授業ではヴァイオリンを奏でるトワに対して、きららはウトウトしています。
そして数学の授業中、トワは中一レベルではない問題を解いて喝采を浴びる一方、きららは大きな欠伸を漏らしています。それを見たトワは眠気を覚ますため「大真面目に」パフにお茶を用意するよう命じます。焦ったきららは慌てて誤魔化した後、きょとんとしたトワを横目にため息をつきました。
ランチタイム中も、きららは疲労を隠せません。仕事だけでなく、トワの世話を焼く気苦労も大きそうです。そのトワは、食事を自分で運ぶ様子も無くテーブルに着席しています。
『まだお給仕されてきませんの』
『食事はみんな、自分で持ってくるの』
呆れるきららを尻目に、トワのファンになった生徒達が召使のように食事を持ってきてしまいました。寮では自分の事は自分でやるのがルールだと言われて、これからは自分でやってみると頷くものの、トワは未だ浮世離れしています。
しかも明日は寮の洗濯当番も控えています。疲れ気味のきららは、こんな時にとボヤき、
『何でも自分でやるの。ここはお城じゃないんだからね。これだからお姫様は』
と漏らしますが、それがトワにプライドに火をつけました。
『私だって洗濯でもなんでも自分で出来ますわ』
『あ、そう?着替えもお茶の用意も食事を運ぶのだって人にやってもらってたのに?』
少し言い合いになりかけたのをはるかが宥め、きららは仕事に行きました。
楽屋で準備しているきららをあの女性編集者が訪ね、メインモデル正式決定を継げます。きららは俄然はやる気を燃やします。
ところがその後の撮影では、やる気が裏目に出て目力が強く、表情が硬くなっています。笑顔を作ってもどこかぎこちなく、さらに撮影用の落ち葉に足を滑らせて転倒。衣装を破いてしまいました。気にしなくていいと言われても、きららは大きな失敗と受け止めています。
その夜、部屋に戻ったきららに、トワは夢について聞こうとします。しかし疲れ切ったきららはそのままベッドへ向かいました。二段ベッドの上と下、二人の距離は縮まりません。
一方ディスダーク。シャットさんはロックの成長を前に驚きを隠せません。絶望を集めるために人間を嘆き悲しませると発言する等、内面もより冷徹になっています。
『僕は変わらないよ。ただ面白い事がしたいだけなんだよね』
シャットさんに変わったかと聞かれたロックは、こう答えました。
翌日、洗濯当番のきららとトワは、シーツを干しています。しっかり広げて洗濯ばさみで留めているきらら。対してただ掛けただけで留めてもいないトワ。不意に白金さんが現れ、干し方を教えてくれます。
『今日は洗濯日和ですね。あなたの故郷もこんな空でしたか?』
『私の、故郷・・・』
吹き付ける風と共に、カナタと過ごした幼き日に想いを巡らせていると、その風がシーツを飛ばしてしまいました。シーツを追って走るきららを、トワもまた追いかけて行きます。
シーツは木に引っ掛かっていました。
『分からない事あったらちゃんと聞いて。聞かなくちゃわからない、でしょ』
言いながらシーツを外すと、その向こうには木々に囲まれた静謐な池がありました。二人で池の畔に腰を下ろし、トワはホープキングダムでの事を重ね合わせます。
『晴れた日にお花を摘んだり、妖精達とお話ししたりして遊ぶのが大好きでしたの。ここは少しだけ似ていますわ。まだ美しかったころの故郷、ホープキングダムに』
風がそよぎ、水面を揺らす中、トワはきららに尋ねました。
『笑うって、どうすれば良いのでしょうか?』
絶望の森に迷い込んで以来笑う事を忘れている気がする。だから笑い方を教えて欲しい。笑えば温かいものに近づける気がする。トワはそう問います。
『トワっち、もう笑ってたじゃん』
きららはトワが先日学園長室で見せた笑顔を指摘します。そして悪戯っぽくシーツを被せて
『笑うって言うのはねえ、こうするの』
トワを思いっきりくすぐりました。
『笑えてるんだからいいじゃん!余計な事なんか考えないでさ』
そしてきららは気づきます。笑い方を忘れて空回りしていたのは自分だった、と。
『ごめん、トワっち。ありがとう』
その言葉にトワも自然な笑顔を返し、きららもそれでいいと笑い返す。笑顔を知った少女と、笑顔を思い出した少女の優しい時間は、ゼツボーグ出現を告げるアロマの一方で破られました。
絶望の檻に夢を閉じ込められたのは、あの女性編集者。彼女の世界ナンバーワンのファッション誌を作るという夢が、ゼツボーグへと変えられています。現場に駆け付けた四人は、ゼツボーグを操るロックの変貌ぶりに驚きながらも、変身します。
ゼツボーグは手帳で攻撃を弾き、赤ペンを振り回す等、編集者らしい戦いぶりを見せます。その戦況をトゥインクルとスカーレットが息の合った戦いぶりで打開します。
ミーティアハミングの星で牽制し、スカーレットフレイムの炎で怯ませ、仕上げはフェニックスブレイズ。救出した女性編集者に、トゥインクルは一緒に頑張りましょうと自然な笑顔を向けました。
『リボンOK、ヘアスタイルOK!うん!今日のきららは昨日より1000倍かわいいよ!』
そしてトワも、自分でしっかり着替えと準備を済ませています。
『支度なら出来ておりますわ。行きましょう、きらら』
笑い合いながら、競うように教室へと登校する二人。これから良きルームメイトとして、互いを支えつつ成長していくことでしょう。
今回は「トワ回」かと思えば「きらら回」。この後のエピソードにも「はるか回」や「みなみ回」と思いきや、実はきららがメインだったという立ち位置が目立ちます。第8話でこの片鱗が見受けられましたが、その後のきららメイン回は「らんこ」と「ステラ」という濃すぎるキャラクターを追う事で自らの立ち位置を再確認する流れでした。
もちろんこれらもきららを描き出す手段の一つです。しかし本人が自覚せずとも意外なほど面倒見の良さを発揮するという事に、きららという子のキャラクターが動き出して行ったのかもしれません。
初変身となる第4話、第5話の時点では、きららがこのような路線を取るとは想像できませんでした。初期設定の枠を越えて自由に動き出して行った結果なのかもしれません。それは終盤の「かりん回」で着地することになりますが、そこに至るステップと言うべき転機だったと思います。
きららはトワを教えることで、自分も何かに気付いています。冒頭で触れたように、ちょうど今は新人が溢れかえる時期。二年目や三年目が新人に直接接する機会も多く、昨年まで教わる立場だった者が教える立場になることで、新たに学んだりできるものです。サブタイトルの「笑顔がカタい?」は、トワの事かと思わせて実はきららの事でした。
そしてトワは、前回ラストで自然な笑顔を見せたものの、本人はまだ「カタい」どころか笑顔そのものの作り方すら十分に認識していません。プリキュアに於いて笑い方がわからないといえば、劇場版プリキュア5のキュアビューティダークドリームのことを思い出します。
彼女もまた、笑い方がわからず、その事に傷つき涙しました。しかし笑顔とは意識して作るものではありません。きららが作中で語るように、余計な事を考えずに自然に浮かんだものが真実の笑顔と言えると思います。
前述のダークドリームは、最期に安らかな笑顔を浮かべて、桜のように儚く散りました。その時の彼女は「そんなのまだ習っていない」ではない、ただ思ったままの表情を浮かべた結果だった筈です。それは前回ラスト、そして今回ラストのトワもまた然りです。
責任感を持ち、罪と正面に向き合う事ももちろん大切です。しかしトワにとって失われた月日はあまりに長く、普通の女の子としての幸せを味わっても咎められるものではありません。それを叶えられなかったダークドリームの分も、彼女には幸せを掴んでほしいと願わざるを得ません。(もっとも、既にこの先のトワの歩みも知っていますが・・・)
きららは今まではっきりと明示されてはいなくとも、学業を疎かにはしてこなかった筈です。プリキュアになると決意した際、全てを200%の力で乗り切ると宣言していました。そのきららが、今回は授業に身が入らない素振りを見せています。それは笑顔がカタくなってから顕著でした。
『笑えてるんだからいいじゃん!余計な事なんか考えないでさ』
トワに向けたきららの言葉は、そのままきららが自身に向けた言葉のようにも捉えられます。自然ではなく、時には意識して笑顔を作らなければならない場面もあります。特にきららはモデルという職業上、どんなに辛くても、悲しくても、カメラの前に立ったら表情を作らなければなりません。
自然に浮かべた表情が険しいからこそ、色々疲れて気負い、自分で追い込んでしまったきらら。それが打開されたきっかけは、トワをくすぐって無理に笑わせてからです。嘘でもいいから明るく笑顔をでいることで、それが本当の笑顔になる事もあります。私も最近は忙しく、固くなりがちなのですが、あえて意識してみる意味で、今回このタイミングで視聴出来て良かったと思います。
もっとも、放っておくと文章がどんどんカタくなるのが私の悪いところで(苦笑)例によって少し砕きますね。
まず秋冬モノの撮影衣装を着たきららが可愛くてたまりません。ツインお団子ヘアで決めている際のキリっとした表情、続く不自然な笑顔も、普段のきららではなかなか見られない表情でした。
プリキュアシリーズに登場する大人の女性って、みんな美人でカッコいいですね。今回の女性編集者も業界人らしいサバサバ感にプロ意識が加わり、それでいて結構かわいい、という高スペックでした。今回限りの登場(だったと思いますが・・・)が惜しまれます。
そしてきららが掲載されている雑誌の表紙に、ただ名前が載っているだけなのに、「一条らんこ」という文字列が持つ存在感は一体なんなんでしょう(笑)。そして裏面の怪しい広告など、細かい所の遊び心も目を惹きました。
ところで、「トワっち」という名前で某ダークフォールの枯葉の男を思い出したのは、私だけでは無いと思いますが・・・。トワの性格上言わないと思いますが、「わたくしは紅城トワ。トワっちと呼んで下さい」などと言い出さなくて本当に良かったです。
何がわからないのかもわからない人に教えたりすることは困難が伴うもの。新人が羽ばたく今、世の中には今回のトワときららのような関係が見受けられることでしょう。
縁あってルームメイトとなった、自分への厳しさとプライドの高さを持つ二人。ここから始まる学園生活から、不安だけではない何かがスタートします。
爽やかな朝。トワは窓辺に佇みながら、凛と、優雅に紅茶を飲んでいます。
しかし実際はもうすぐ登校時間。同室のきららが着替えを促しますが、トワは自分で着替えた事すらありません。結局きららの手助けを得てノーブル学園の制服に身を包み、きららに手を引かれて初めての登校へと廊下を駆けて行きました。
トワはきららと同じクラスになり、転校生として自己紹介の壇上に立ちます。当然そこは異世界出身者のサガ。黒川エレン先輩や剣崎真琴先輩がやらかしたように、トワもまた期待通りのボケを大真面目に演じます。スカートの裾をつまんで一礼した後、
『ごきげんよう。私、このたびホープキングダムよりまいりました、紅城トワと申します。この世界の事はまだよくわかりませんが、皆様の希望の灯を守るために、全力を持って尽くしたいと考えています。どうぞ、よろしくお願い申し上げます』
クラスメイトが皆唖然として静まり返る中、きららはナイスジョークと誤魔化し、自分の隣の席が空いているとアピールします。隣がきららならば、ある程度はフォローできるでしょう。
『お手柔らかにね、トワっち♪』
いつの間にかトワにも、きららお得意のあだ名がつけられていました。
トワの「紅城」という苗字は学園長がつけてくれたものです。
『私、この学園で自分のなすべきことを見つけたいと思いますわ』
気負いがちなトワに、みなみとはるかは焦らないように肩の力を抜くよう助言します。ところでトワの加入により、キーが各3個。計12個揃いました。しかしトワは、自分のキーはディスピアが作ったものが変化しただけで、ホープキングダムを救うための12個には含まれないと俯きます。
『チッチッチッ!そう落ち込むことないって。きっと集まるよ。あと3つ!』
はるかはアロマの真似で切り出し、本人からお気楽だと言われますが、そこがはるかの良い所だとも皆が認めています。ちなみにきららはボアンヌのショー以来忙しくなり、仕事でこの場には居ません。トワは改めて、きららの「夢」について思いめぐらせます。
撮影後、きららは新しい雑誌を作るという女性編集者に声を掛けられました。メインモデルに推したいう、願っても無いチャンスをものにするため俄然張り切ります。
遅くまでノートに向かってプランを作り、バレエの授業中も大鏡に向かってポーズの確認。優雅に舞い、音楽の授業ではヴァイオリンを奏でるトワに対して、きららはウトウトしています。
そして数学の授業中、トワは中一レベルではない問題を解いて喝采を浴びる一方、きららは大きな欠伸を漏らしています。それを見たトワは眠気を覚ますため「大真面目に」パフにお茶を用意するよう命じます。焦ったきららは慌てて誤魔化した後、きょとんとしたトワを横目にため息をつきました。
ランチタイム中も、きららは疲労を隠せません。仕事だけでなく、トワの世話を焼く気苦労も大きそうです。そのトワは、食事を自分で運ぶ様子も無くテーブルに着席しています。
『まだお給仕されてきませんの』
『食事はみんな、自分で持ってくるの』
呆れるきららを尻目に、トワのファンになった生徒達が召使のように食事を持ってきてしまいました。寮では自分の事は自分でやるのがルールだと言われて、これからは自分でやってみると頷くものの、トワは未だ浮世離れしています。
しかも明日は寮の洗濯当番も控えています。疲れ気味のきららは、こんな時にとボヤき、
『何でも自分でやるの。ここはお城じゃないんだからね。これだからお姫様は』
と漏らしますが、それがトワにプライドに火をつけました。
『私だって洗濯でもなんでも自分で出来ますわ』
『あ、そう?着替えもお茶の用意も食事を運ぶのだって人にやってもらってたのに?』
少し言い合いになりかけたのをはるかが宥め、きららは仕事に行きました。
楽屋で準備しているきららをあの女性編集者が訪ね、メインモデル正式決定を継げます。きららは俄然はやる気を燃やします。
ところがその後の撮影では、やる気が裏目に出て目力が強く、表情が硬くなっています。笑顔を作ってもどこかぎこちなく、さらに撮影用の落ち葉に足を滑らせて転倒。衣装を破いてしまいました。気にしなくていいと言われても、きららは大きな失敗と受け止めています。
その夜、部屋に戻ったきららに、トワは夢について聞こうとします。しかし疲れ切ったきららはそのままベッドへ向かいました。二段ベッドの上と下、二人の距離は縮まりません。
一方ディスダーク。シャットさんはロックの成長を前に驚きを隠せません。絶望を集めるために人間を嘆き悲しませると発言する等、内面もより冷徹になっています。
『僕は変わらないよ。ただ面白い事がしたいだけなんだよね』
シャットさんに変わったかと聞かれたロックは、こう答えました。
翌日、洗濯当番のきららとトワは、シーツを干しています。しっかり広げて洗濯ばさみで留めているきらら。対してただ掛けただけで留めてもいないトワ。不意に白金さんが現れ、干し方を教えてくれます。
『今日は洗濯日和ですね。あなたの故郷もこんな空でしたか?』
『私の、故郷・・・』
吹き付ける風と共に、カナタと過ごした幼き日に想いを巡らせていると、その風がシーツを飛ばしてしまいました。シーツを追って走るきららを、トワもまた追いかけて行きます。
シーツは木に引っ掛かっていました。
『分からない事あったらちゃんと聞いて。聞かなくちゃわからない、でしょ』
言いながらシーツを外すと、その向こうには木々に囲まれた静謐な池がありました。二人で池の畔に腰を下ろし、トワはホープキングダムでの事を重ね合わせます。
『晴れた日にお花を摘んだり、妖精達とお話ししたりして遊ぶのが大好きでしたの。ここは少しだけ似ていますわ。まだ美しかったころの故郷、ホープキングダムに』
風がそよぎ、水面を揺らす中、トワはきららに尋ねました。
『笑うって、どうすれば良いのでしょうか?』
絶望の森に迷い込んで以来笑う事を忘れている気がする。だから笑い方を教えて欲しい。笑えば温かいものに近づける気がする。トワはそう問います。
『トワっち、もう笑ってたじゃん』
きららはトワが先日学園長室で見せた笑顔を指摘します。そして悪戯っぽくシーツを被せて
『笑うって言うのはねえ、こうするの』
トワを思いっきりくすぐりました。
『笑えてるんだからいいじゃん!余計な事なんか考えないでさ』
そしてきららは気づきます。笑い方を忘れて空回りしていたのは自分だった、と。
『ごめん、トワっち。ありがとう』
その言葉にトワも自然な笑顔を返し、きららもそれでいいと笑い返す。笑顔を知った少女と、笑顔を思い出した少女の優しい時間は、ゼツボーグ出現を告げるアロマの一方で破られました。
絶望の檻に夢を閉じ込められたのは、あの女性編集者。彼女の世界ナンバーワンのファッション誌を作るという夢が、ゼツボーグへと変えられています。現場に駆け付けた四人は、ゼツボーグを操るロックの変貌ぶりに驚きながらも、変身します。
ゼツボーグは手帳で攻撃を弾き、赤ペンを振り回す等、編集者らしい戦いぶりを見せます。その戦況をトゥインクルとスカーレットが息の合った戦いぶりで打開します。
ミーティアハミングの星で牽制し、スカーレットフレイムの炎で怯ませ、仕上げはフェニックスブレイズ。救出した女性編集者に、トゥインクルは一緒に頑張りましょうと自然な笑顔を向けました。
『リボンOK、ヘアスタイルOK!うん!今日のきららは昨日より1000倍かわいいよ!』
そしてトワも、自分でしっかり着替えと準備を済ませています。
『支度なら出来ておりますわ。行きましょう、きらら』
笑い合いながら、競うように教室へと登校する二人。これから良きルームメイトとして、互いを支えつつ成長していくことでしょう。
今回は「トワ回」かと思えば「きらら回」。この後のエピソードにも「はるか回」や「みなみ回」と思いきや、実はきららがメインだったという立ち位置が目立ちます。第8話でこの片鱗が見受けられましたが、その後のきららメイン回は「らんこ」と「ステラ」という濃すぎるキャラクターを追う事で自らの立ち位置を再確認する流れでした。
もちろんこれらもきららを描き出す手段の一つです。しかし本人が自覚せずとも意外なほど面倒見の良さを発揮するという事に、きららという子のキャラクターが動き出して行ったのかもしれません。
初変身となる第4話、第5話の時点では、きららがこのような路線を取るとは想像できませんでした。初期設定の枠を越えて自由に動き出して行った結果なのかもしれません。それは終盤の「かりん回」で着地することになりますが、そこに至るステップと言うべき転機だったと思います。
きららはトワを教えることで、自分も何かに気付いています。冒頭で触れたように、ちょうど今は新人が溢れかえる時期。二年目や三年目が新人に直接接する機会も多く、昨年まで教わる立場だった者が教える立場になることで、新たに学んだりできるものです。サブタイトルの「笑顔がカタい?」は、トワの事かと思わせて実はきららの事でした。
そしてトワは、前回ラストで自然な笑顔を見せたものの、本人はまだ「カタい」どころか笑顔そのものの作り方すら十分に認識していません。プリキュアに於いて笑い方がわからないといえば、劇場版プリキュア5の
彼女もまた、笑い方がわからず、その事に傷つき涙しました。しかし笑顔とは意識して作るものではありません。きららが作中で語るように、余計な事を考えずに自然に浮かんだものが真実の笑顔と言えると思います。
前述のダークドリームは、最期に安らかな笑顔を浮かべて、桜のように儚く散りました。その時の彼女は「そんなのまだ習っていない」ではない、ただ思ったままの表情を浮かべた結果だった筈です。それは前回ラスト、そして今回ラストのトワもまた然りです。
責任感を持ち、罪と正面に向き合う事ももちろん大切です。しかしトワにとって失われた月日はあまりに長く、普通の女の子としての幸せを味わっても咎められるものではありません。それを叶えられなかったダークドリームの分も、彼女には幸せを掴んでほしいと願わざるを得ません。(もっとも、既にこの先のトワの歩みも知っていますが・・・)
きららは今まではっきりと明示されてはいなくとも、学業を疎かにはしてこなかった筈です。プリキュアになると決意した際、全てを200%の力で乗り切ると宣言していました。そのきららが、今回は授業に身が入らない素振りを見せています。それは笑顔がカタくなってから顕著でした。
『笑えてるんだからいいじゃん!余計な事なんか考えないでさ』
トワに向けたきららの言葉は、そのままきららが自身に向けた言葉のようにも捉えられます。自然ではなく、時には意識して笑顔を作らなければならない場面もあります。特にきららはモデルという職業上、どんなに辛くても、悲しくても、カメラの前に立ったら表情を作らなければなりません。
自然に浮かべた表情が険しいからこそ、色々疲れて気負い、自分で追い込んでしまったきらら。それが打開されたきっかけは、トワをくすぐって無理に笑わせてからです。嘘でもいいから明るく笑顔をでいることで、それが本当の笑顔になる事もあります。私も最近は忙しく、固くなりがちなのですが、あえて意識してみる意味で、今回このタイミングで視聴出来て良かったと思います。
もっとも、放っておくと文章がどんどんカタくなるのが私の悪いところで(苦笑)例によって少し砕きますね。
まず秋冬モノの撮影衣装を着たきららが可愛くてたまりません。ツインお団子ヘアで決めている際のキリっとした表情、続く不自然な笑顔も、普段のきららではなかなか見られない表情でした。
プリキュアシリーズに登場する大人の女性って、みんな美人でカッコいいですね。今回の女性編集者も業界人らしいサバサバ感にプロ意識が加わり、それでいて結構かわいい、という高スペックでした。今回限りの登場(だったと思いますが・・・)が惜しまれます。
そしてきららが掲載されている雑誌の表紙に、ただ名前が載っているだけなのに、「一条らんこ」という文字列が持つ存在感は一体なんなんでしょう(笑)。そして裏面の怪しい広告など、細かい所の遊び心も目を惹きました。
ところで、「トワっち」という名前で某ダークフォールの枯葉の男を思い出したのは、私だけでは無いと思いますが・・・。トワの性格上言わないと思いますが、「わたくしは紅城トワ。トワっちと呼んで下さい」などと言い出さなくて本当に良かったです。
どうも、つながるぱずるんでエンジョイしている人です。
お互いに友達を作る機会に恵まれなかったきららとトワがルームメイトになって親交を深める話ですが、きららを推してた自分は、こういう形でトワと交流するのかというのが初見の印象で、12話の次にベスト3圏内に入るお話でしたね(ルームメイトの描写が無かったのは、すべてこの時の為かなんて邪推してたりします)。
Bパートで、池のほとりで思い出を語るトワの件から固い笑顔のトワをくすぐるきららが、今回の見どころでしょうね。
Aパート後半のモデル撮影の際に、撮影へのやる気とまだ生活に馴染めないトワのフォローが重なってるなど見ていてしんどそうな感じが伝わり、そしてそれが本番で見せる表情がなんとなく張りつめていて固く、本来の自分を見失っていることが如実に出てしまいます。
そんなきららが、トワを諭していくうちに自分の状況に気づくという展開はとても巧いとは思いましたね。
きららの目を細めてトワに感謝する表情には、「青山さんはなんて尊いことをしてくれたんだ!(要するに最高です)」と思いました。
by 山口勝 (2017-04-09 18:22)
>山口勝さん
「互いに友達を作る機会に恵まれなかった」という共通点には気付きませんでした。なるほどその両者だからこそ、この交流が光ります。
ところで「12話の次にベスト3圏内」の、あともう1つがちょっと気になります。この先で描かれるあの話でしょうか・・・?
>くすぐる
最近キマシタワーなる言葉を、私も覚えました。まさにキマシタワーでした(笑)
>本来の自分を見失っている
らしくなさに自分で気づけるところが、きららの立派なところです。決して他人に無関心ではないところが実に魅力的です。
>青山さん
超ベテランなのにあの仕事量!超人健在という感じでした。これからも先生の活躍に期待しています。
by スティクス (2017-04-11 21:49)