Go!プリンセスプリキュア 第34話『ピンチすぎる~!はるかのプリンセスコンテスト!』 [Go!プリンセスプリキュア]
私も責任者になったとはいえ、誰かにすがり、頼りたいという気持ちは簡単には消えません。それははるかも同じこと。私以上に強い心を感じさせるはるかであっても、慣れぬ事や不得手な事には不安がつきものです。そんなはるかの支えだったはずのきららが間に合わない・・・
「ピンチは自分を高めるチャンス」
という、前回のマーメイドの発言がそのままはるかに向けられます。そして同時にきららとはるかの互いを応援する想いが際立つ一編でした。
カナタ生存の手がかりと言うべきボタンを前にして、はるかは居ても立っても居られません。今すぐにでも探しに行こうとしますが、外は既に夜。闇雲に探して見つかるものではありません。迷えるものは星に聞けというホープキングダムの伝承を基に、パフとシャムール先生は星占いを提案します。
占いの結果は「チョコレート」。意味が解らず首を傾げていると、きららが仕事から帰って来ました。差し入れでもらったというチョコレートには「チョコレートプリンセスコンテスト 参加者募集」と書いてあります。
「プリンセス」と聞いて、はるかはカナタに会えると色めき立ち、コンテストにエントリーします。
一次審査の書類選考は見事合格。チョコレートを無邪気に頬張る写真を貼ったのに、なぜこれで通ったのかは謎です(笑)。ともかく次は夢が浜ホールでの審査です。そこは以前きららが立った舞台で、ランウェイを歩くと聞いたはるかは途端に青ざめました。
『だったら私に任せてよ。ステージに立てるよう特訓してあげる』
いつもはるかに応援してもらっているお返しに、きららが応援を買って出ます。
そして翌日からレッスンが始まりました。まずきららがお手本を見せると、さすがはプロ。歩き方がサマになっています。続けてはるかが歩いてみますが、歩き方も表情も硬く、きららのようには行きません。
『顔上げて!』『背筋も伸ばして!』『頭と肩と腰を一本の線でまっすぐ繋ぐ!』『もっと歩幅を広く!』
次々に飛ぶきららの指摘を受けて、はるかの歩き方はどんどんきれいになって行きます。
『アンド・・・スマイル!』
その言葉を聞いて微笑を浮かべたはるかを、きららはその調子だと褒めました。
次はヒールを履いて歩く練習。これもいきなりは上手くいかず、はるかはモデルの大変さを身を持って理解しました。
お次はメイク。ところがはるかが行うと、やっぱり厚化粧になってしまいます。結局当日はきららがメイクすると申し出ますが、その日は彼女の撮影も重なっているため、本番ギリギリになりそうです。
『メイクも大事だけど、女の子を可愛く見せるのは笑顔だよ」
どんなにメイクしても、沈んだ顔だと可愛くないと言いながら、きららはメイクを修正します。鏡を見たはるかは、見違えた出来栄えに驚きと喜びを隠せません。
はるかはきららの撮影に付き添い、カメラマンの要求に的確に応えて次々にポーズを取る姿を見て、改めてきららの凄さを思い知りました。ネックレスをもっと目立たせたいという要求に、髪を結いあげて言葉通りに目立たせる等、きららの臨機応変な対応にも舌を巻きます。
『ショーにトラブルはつきものだからね。例えば靴のサイズが合わなかったりとか、用意してあるはずのものが無かったりとか。そういうのって、その場にあるもので何とかするしかないんだよね」
はるかは俄かに不安を覚えます。きららは私がついているから心配ないと言った後、
『ステージに上がったら、もう後ろを振り向かない。顔を上げて最高の笑顔で最後までやり切ること!』
とアドバイス。それを受けて、はるかも力強く頷きます。そしてファンに囲まれて身動きが取れなくなったきららにお礼を言い、はるかは先に帰りました。
その夜。社長はきららがファンに対してフランクに対応していた事を、以前では考えられなかったと指摘します。
『たまたまそういう気分だっただけ。それに・・・応援されるのも悪くないかなって』
コンテスト当日。みなみ、トワ、ゆいちゃんが、パフとアロマを連れて会場へ応援に来ます。ゆいちゃんははるかの緊張を和らげるために、みんなで寄せ書きを提案しました。
その頃、きららは・・・突然降って来た雨のため、撮影は中断。時間が押しています。このままでは間に合わない。焦りが募ります。
そして楽屋のはるかもトラブルに巻き込まれていました。衣装のサイズが全然合っておらず、スタッフも人手が足りないのか、はるかに構っていられない様子です。
『このままじゃ・・・きららちゃん。どうしよう・・・』
鏡に映るはるかの顔は、不安でいっぱいです。
雨が上がりきららの撮影は再開しました。終了後、きららは打ち上げを断って急いで会場へ向かいますが、途中ストップ&フリーズとすれ違い、足を止めました。ストップ&フリーズはメイク担当さんの「沢山の女性を美しくしたい」という夢を閉じ込めてゼツボーグを生成。きららは時間が無いと焦りながらも、単身トゥインクルへと変身します。
みなみとトワもゼツボーグ出現を察し、後のことをゆいちゃんに託して会場を後にしました。
一人で戦うトゥインクルがメイクを飛ばしてくる攻撃に苦戦していたところ、マーメイドとスカーレットが駆けつけ、三人でゼツボーグに挑みます。
その頃はるかは、未だきららが来ないのは何かあったのではないかと案じています。そして「ショーにトラブルはつきもの」という言葉を思い出し、腹を括りました。
『自分で何とかするしかない・・・』
しかし何をすればいいのか思いつかず、はるかの出番は着々と近づいて来ます。
『こんな時、きららちゃんだったら・・・』
きららが臨機応変に髪を結った事を思い出して、ガムテープに目を留めました。
三人で挑んでもゼツボーグは手強く、焦れば焦るほど思うように戦えません。不意打ちで倒れたトゥインクルを踏みつぶそうと、ゼツボーグが迫って来ます。
はるかはガムテープを駆使してドレスを自己流に加工し、あとは苦手のメイク。これもやるしかないと決心した矢先、出番が来てしまいました。すっぴんで挑むしかありません。
ゼツボーグの足をトゥインクルが押し留め、マーメイドが、スカーレットが、それぞれバブルリップルとスカーレットスパークるで援護します。
『負けない!はるはるが待ってるんだから!』
トゥインクルはゼツボーグを押し返しました。
いよいよはるかの出番。客席のゆいちゃんも心配そうです。メイクが出来なかった事と、客席にゆいちゃんしかいない事が、はるかの不安に輪を掛けます。その時ゆいちゃんが寄せ書きをはるかに向けました。
「春野はるか スマイル!」
大きく書かれた文字を彩るように、みんなのメッセージが記されています。それを見たはるかは「メイクよりも笑顔」と思い出し、笑顔でランウェイを進みました。先頭に立ち、裾をつまんで一礼。そして素朴で自然な笑顔が審査員の心を打ちます。
舞台袖に戻ると同時に、はるかは急いで駆け出しました。
ゼツボーグにてこずりながら、トゥインクルはショーに間に合わないと焦りを募らせています。その焦りが彼女を先走らせ、飛び出したところを狙い撃ちされます。
その時、はるかが駆けつけました。即座にフローラへ変身し、攻撃を掻い潜って蹴り飛ばします。
『ごめんね。任せてって言ったのに』
肩を落として謝るトゥインクルですが、
『私、ステージに立てたよ。いろいろトラブルもあったけど、私ちゃんと最後までやり切ったよ』
誇らしげなフローラの笑顔を見て、安堵しました。
『私ね、トゥインクルの言葉で頑張れたの。ありがとう、トゥインクル!』
フローラとトゥインクル二人の掌底がゼツボーグを怯ませたところを、エクラエスポワールで撃退。ストップ&フリーズは、トレードマークの変なポーズをとらずに淡々と引き上げました。
はるかはグランプリや準グランプリには選ばれませんでしたが、観客の選ぶ特別賞に選出されました。「チョコレート王子」なるゆるキャラが、花束を渡して祝福してくれます。王子は空振りに終わりましたが、今回の件できららは改めてはるかの凄さを述懐します。
『今までも凄いなって思ったことあったけど、はるはるは私が思ってたよりも、もっとずっと凄かったのかもね』
カナタとの再会は叶わず、と思ったその時。はるかは横断歩道を渡る人波に、カナタのような後ろ姿をみつけます。後を追おうとしても赤信号に阻まれて、その後ろ姿は雑踏の中へと消えていきました。
あの後ろ姿はカナタなのか、それとも・・・?
今回きららがはるかに対して向ける目線からは、親友のそれではなく、先日観返した魔法使いプリキュアにおける、リコを見るリアンさんのような「親目線」を感じた気がしました。
はるかは改めて言うまでも無く、自分の力で道を切り開き、困難に挑み、失敗を恐れずに挑むことが出来る子です。しかし慣れないモデル歩きとメイクには不安が隠せず、それを得手とするきららを頼るのは当然のこと。きららも自分が出来る事ではるかを支え応援する。ここまでは他のシリーズでも見受けられる友情・信頼関係です。
本来はるかは多少の事で泣き言を言ったりはしません。ところがランウェイを歩くと知った直後は、今までの彼女が見せてこなかった、不安を訴える姿を曝け出しています。
それでもきららの適切かつテキパキとしたアドバイスで徐々に改善されていく様は、さすがの飲み込みの早さを見せています。
『ステージに上がったら、もう後ろを振り向かない。顔を上げて最高の笑顔で最後までやり切ること!』
きららが言う通り、ランウェイでは誰も助けてくれません。舞台袖までは付き添う事ができても、そこから先は自分の足で歩くしかありません。きららが特に自立して見えるのは、この経験を普段から送っているからなのでしょう。
しかしはるかも「自立」という点では負けていません。本来は分不相応かもしれないノーブル学園への進学を果たし、学園内では様々なことに率先して取り組んで失敗しながらも着実に歩みを進めています。
方向性は違えど、自立した者同士が切磋琢磨して自分を高め合うような関係を見たような気がしました。
前述の通り、今回のきららに与えられた役どころは、自分が思っているよりも子が逞しく育っているのだと親目線で感じさせる役割に思えてきます。コンテスト終了後、きららが述懐する
『今までも凄いなって思ったことあったけど、はるはるは私が思ってたよりも、もっとずっと凄かったのかもね』
という台詞には、気づいたら背が伸びていた子どもの姿を見る親の気持ちが込められているようです。
もちろんきららもまだ子どもで、そんな彼女に親目線を向ける社長の存在が興味深いです。ステラももちろん一人の女性として魅力的ですが、現在一番近くできららを見守り、成長を見届けているのは社長です。だからこそ積極的にサインに応じたり、友達が出来てから可愛くなったという指摘が的を得ています。
もっとも社長とのやり取りで、きららは照れ隠しなのか「応援されるのも悪くない」と言っています。
きららもはるかを励まし応援することで自分を見つめ直し、応援する側の気持ちと応援される側の気持ちを知ったのだと思います。
今まで何度か言及した「自分を励ます最良の方法は誰かを励ます事」という言葉を、再び思い起こした次第です。
結果的にチョコレートコンテストは空振りに終わりましたが、コンテストに出場したからこそ、帰り道にカナタの後ろ姿を見たとも言えます。実際の星占いの結果は、あのゆるキャラ王子を指していたのかもしれませんが、占いの解釈とはそういうものです。迷った時に自分にとって道標となり得る者を信じて進めば、良いように解釈できるもの。悪く解釈しようとすればいくらでも悪く解釈できるものです。
また星占いの「星」といえば、はるかの「花」、みなみの「海」、トワの「炎」と共に、きららの「星」を象徴するものです。そのきららが持って帰って来たチョコレートが無ければ、さらにそこにコンテストの事が書かれていなければ、カナタの後ろ姿には出会えませんでした。時に必然ともいうべき偶然があります。それを幸運というのであれば、運も実力のうち、ということなのでしょう。
単純に「運」で言えば、今回は運が悪かったとしか言いようがありません。予期せぬ雨天できららは撮影が押して間に合わず、はるかの衣装はサイズが合わないままで、メイクをする時間すらありませんでした。それを運が悪いと嘆くのではなく、プラスに繋げようとする意志が、幸運を招きよせるのかもしれません。
そして審査員特別賞は、化粧をしていないはるかの飾らぬ素の笑顔がもたらした結果と言えます。実際に得たものはゆるキャラからの花束かもしれませんが、それ以上に価値のあるものを、今回のはるかはきららを通じて得た筈です。それこそ真の特別賞と言えるものでしょう。
はるかの場面と、トゥインクル達の戦い場面を頻繁に入れ替えて描く描写からは、焦りを煽るような緊迫感が感じられて見応えがありました。
それ以外では、きららの撮影を仕切っていた編集者が以前新しい雑誌を作ろうと夢見ていた女性だったという小ネタが目を惹きます。はるか達だけでなく、一人一人にそれぞれ夢を追い、夢を叶える人生があるという事が、改めて感じられます。こうした描写があるだけでリアリティが際立ってきます。
小ネタといえば、はるかに見せた寄せ書きで、みなみが細かい字で何やらビッシリと書き込んでいたのがツボでした(笑)。42型TVでは読み取れないほどの細かい文字でしたが、いったい何が書いてあったのでしょう・・・?
あとは前回の落ち込みから一転、超ゴキゲンなシャットさんにも笑わせてもらいました。感情が伺えないストップ&フリーズが相手だからこそ、そのハジけっぷりが際立っています。
さて、ラストで見かけた後ろ姿は明らかにカナタのものでした。その出会いがもたらすものは吉か凶か・・・って、既に先を知った身からするとワザとらしい締めですね。失礼しました。
「ピンチは自分を高めるチャンス」
という、前回のマーメイドの発言がそのままはるかに向けられます。そして同時にきららとはるかの互いを応援する想いが際立つ一編でした。
カナタ生存の手がかりと言うべきボタンを前にして、はるかは居ても立っても居られません。今すぐにでも探しに行こうとしますが、外は既に夜。闇雲に探して見つかるものではありません。迷えるものは星に聞けというホープキングダムの伝承を基に、パフとシャムール先生は星占いを提案します。
占いの結果は「チョコレート」。意味が解らず首を傾げていると、きららが仕事から帰って来ました。差し入れでもらったというチョコレートには「チョコレートプリンセスコンテスト 参加者募集」と書いてあります。
「プリンセス」と聞いて、はるかはカナタに会えると色めき立ち、コンテストにエントリーします。
一次審査の書類選考は見事合格。チョコレートを無邪気に頬張る写真を貼ったのに、なぜこれで通ったのかは謎です(笑)。ともかく次は夢が浜ホールでの審査です。そこは以前きららが立った舞台で、ランウェイを歩くと聞いたはるかは途端に青ざめました。
『だったら私に任せてよ。ステージに立てるよう特訓してあげる』
いつもはるかに応援してもらっているお返しに、きららが応援を買って出ます。
そして翌日からレッスンが始まりました。まずきららがお手本を見せると、さすがはプロ。歩き方がサマになっています。続けてはるかが歩いてみますが、歩き方も表情も硬く、きららのようには行きません。
『顔上げて!』『背筋も伸ばして!』『頭と肩と腰を一本の線でまっすぐ繋ぐ!』『もっと歩幅を広く!』
次々に飛ぶきららの指摘を受けて、はるかの歩き方はどんどんきれいになって行きます。
『アンド・・・スマイル!』
その言葉を聞いて微笑を浮かべたはるかを、きららはその調子だと褒めました。
次はヒールを履いて歩く練習。これもいきなりは上手くいかず、はるかはモデルの大変さを身を持って理解しました。
お次はメイク。ところがはるかが行うと、やっぱり厚化粧になってしまいます。結局当日はきららがメイクすると申し出ますが、その日は彼女の撮影も重なっているため、本番ギリギリになりそうです。
『メイクも大事だけど、女の子を可愛く見せるのは笑顔だよ」
どんなにメイクしても、沈んだ顔だと可愛くないと言いながら、きららはメイクを修正します。鏡を見たはるかは、見違えた出来栄えに驚きと喜びを隠せません。
はるかはきららの撮影に付き添い、カメラマンの要求に的確に応えて次々にポーズを取る姿を見て、改めてきららの凄さを思い知りました。ネックレスをもっと目立たせたいという要求に、髪を結いあげて言葉通りに目立たせる等、きららの臨機応変な対応にも舌を巻きます。
『ショーにトラブルはつきものだからね。例えば靴のサイズが合わなかったりとか、用意してあるはずのものが無かったりとか。そういうのって、その場にあるもので何とかするしかないんだよね」
はるかは俄かに不安を覚えます。きららは私がついているから心配ないと言った後、
『ステージに上がったら、もう後ろを振り向かない。顔を上げて最高の笑顔で最後までやり切ること!』
とアドバイス。それを受けて、はるかも力強く頷きます。そしてファンに囲まれて身動きが取れなくなったきららにお礼を言い、はるかは先に帰りました。
その夜。社長はきららがファンに対してフランクに対応していた事を、以前では考えられなかったと指摘します。
『たまたまそういう気分だっただけ。それに・・・応援されるのも悪くないかなって』
コンテスト当日。みなみ、トワ、ゆいちゃんが、パフとアロマを連れて会場へ応援に来ます。ゆいちゃんははるかの緊張を和らげるために、みんなで寄せ書きを提案しました。
その頃、きららは・・・突然降って来た雨のため、撮影は中断。時間が押しています。このままでは間に合わない。焦りが募ります。
そして楽屋のはるかもトラブルに巻き込まれていました。衣装のサイズが全然合っておらず、スタッフも人手が足りないのか、はるかに構っていられない様子です。
『このままじゃ・・・きららちゃん。どうしよう・・・』
鏡に映るはるかの顔は、不安でいっぱいです。
雨が上がりきららの撮影は再開しました。終了後、きららは打ち上げを断って急いで会場へ向かいますが、途中ストップ&フリーズとすれ違い、足を止めました。ストップ&フリーズはメイク担当さんの「沢山の女性を美しくしたい」という夢を閉じ込めてゼツボーグを生成。きららは時間が無いと焦りながらも、単身トゥインクルへと変身します。
みなみとトワもゼツボーグ出現を察し、後のことをゆいちゃんに託して会場を後にしました。
一人で戦うトゥインクルがメイクを飛ばしてくる攻撃に苦戦していたところ、マーメイドとスカーレットが駆けつけ、三人でゼツボーグに挑みます。
その頃はるかは、未だきららが来ないのは何かあったのではないかと案じています。そして「ショーにトラブルはつきもの」という言葉を思い出し、腹を括りました。
『自分で何とかするしかない・・・』
しかし何をすればいいのか思いつかず、はるかの出番は着々と近づいて来ます。
『こんな時、きららちゃんだったら・・・』
きららが臨機応変に髪を結った事を思い出して、ガムテープに目を留めました。
三人で挑んでもゼツボーグは手強く、焦れば焦るほど思うように戦えません。不意打ちで倒れたトゥインクルを踏みつぶそうと、ゼツボーグが迫って来ます。
はるかはガムテープを駆使してドレスを自己流に加工し、あとは苦手のメイク。これもやるしかないと決心した矢先、出番が来てしまいました。すっぴんで挑むしかありません。
ゼツボーグの足をトゥインクルが押し留め、マーメイドが、スカーレットが、それぞれバブルリップルとスカーレットスパークるで援護します。
『負けない!はるはるが待ってるんだから!』
トゥインクルはゼツボーグを押し返しました。
いよいよはるかの出番。客席のゆいちゃんも心配そうです。メイクが出来なかった事と、客席にゆいちゃんしかいない事が、はるかの不安に輪を掛けます。その時ゆいちゃんが寄せ書きをはるかに向けました。
「春野はるか スマイル!」
大きく書かれた文字を彩るように、みんなのメッセージが記されています。それを見たはるかは「メイクよりも笑顔」と思い出し、笑顔でランウェイを進みました。先頭に立ち、裾をつまんで一礼。そして素朴で自然な笑顔が審査員の心を打ちます。
舞台袖に戻ると同時に、はるかは急いで駆け出しました。
ゼツボーグにてこずりながら、トゥインクルはショーに間に合わないと焦りを募らせています。その焦りが彼女を先走らせ、飛び出したところを狙い撃ちされます。
その時、はるかが駆けつけました。即座にフローラへ変身し、攻撃を掻い潜って蹴り飛ばします。
『ごめんね。任せてって言ったのに』
肩を落として謝るトゥインクルですが、
『私、ステージに立てたよ。いろいろトラブルもあったけど、私ちゃんと最後までやり切ったよ』
誇らしげなフローラの笑顔を見て、安堵しました。
『私ね、トゥインクルの言葉で頑張れたの。ありがとう、トゥインクル!』
フローラとトゥインクル二人の掌底がゼツボーグを怯ませたところを、エクラエスポワールで撃退。ストップ&フリーズは、トレードマークの変なポーズをとらずに淡々と引き上げました。
はるかはグランプリや準グランプリには選ばれませんでしたが、観客の選ぶ特別賞に選出されました。「チョコレート王子」なるゆるキャラが、花束を渡して祝福してくれます。王子は空振りに終わりましたが、今回の件できららは改めてはるかの凄さを述懐します。
『今までも凄いなって思ったことあったけど、はるはるは私が思ってたよりも、もっとずっと凄かったのかもね』
カナタとの再会は叶わず、と思ったその時。はるかは横断歩道を渡る人波に、カナタのような後ろ姿をみつけます。後を追おうとしても赤信号に阻まれて、その後ろ姿は雑踏の中へと消えていきました。
あの後ろ姿はカナタなのか、それとも・・・?
今回きららがはるかに対して向ける目線からは、親友のそれではなく、先日観返した魔法使いプリキュアにおける、リコを見るリアンさんのような「親目線」を感じた気がしました。
はるかは改めて言うまでも無く、自分の力で道を切り開き、困難に挑み、失敗を恐れずに挑むことが出来る子です。しかし慣れないモデル歩きとメイクには不安が隠せず、それを得手とするきららを頼るのは当然のこと。きららも自分が出来る事ではるかを支え応援する。ここまでは他のシリーズでも見受けられる友情・信頼関係です。
本来はるかは多少の事で泣き言を言ったりはしません。ところがランウェイを歩くと知った直後は、今までの彼女が見せてこなかった、不安を訴える姿を曝け出しています。
それでもきららの適切かつテキパキとしたアドバイスで徐々に改善されていく様は、さすがの飲み込みの早さを見せています。
『ステージに上がったら、もう後ろを振り向かない。顔を上げて最高の笑顔で最後までやり切ること!』
きららが言う通り、ランウェイでは誰も助けてくれません。舞台袖までは付き添う事ができても、そこから先は自分の足で歩くしかありません。きららが特に自立して見えるのは、この経験を普段から送っているからなのでしょう。
しかしはるかも「自立」という点では負けていません。本来は分不相応かもしれないノーブル学園への進学を果たし、学園内では様々なことに率先して取り組んで失敗しながらも着実に歩みを進めています。
方向性は違えど、自立した者同士が切磋琢磨して自分を高め合うような関係を見たような気がしました。
前述の通り、今回のきららに与えられた役どころは、自分が思っているよりも子が逞しく育っているのだと親目線で感じさせる役割に思えてきます。コンテスト終了後、きららが述懐する
『今までも凄いなって思ったことあったけど、はるはるは私が思ってたよりも、もっとずっと凄かったのかもね』
という台詞には、気づいたら背が伸びていた子どもの姿を見る親の気持ちが込められているようです。
もちろんきららもまだ子どもで、そんな彼女に親目線を向ける社長の存在が興味深いです。ステラももちろん一人の女性として魅力的ですが、現在一番近くできららを見守り、成長を見届けているのは社長です。だからこそ積極的にサインに応じたり、友達が出来てから可愛くなったという指摘が的を得ています。
もっとも社長とのやり取りで、きららは照れ隠しなのか「応援されるのも悪くない」と言っています。
きららもはるかを励まし応援することで自分を見つめ直し、応援する側の気持ちと応援される側の気持ちを知ったのだと思います。
今まで何度か言及した「自分を励ます最良の方法は誰かを励ます事」という言葉を、再び思い起こした次第です。
結果的にチョコレートコンテストは空振りに終わりましたが、コンテストに出場したからこそ、帰り道にカナタの後ろ姿を見たとも言えます。実際の星占いの結果は、あのゆるキャラ王子を指していたのかもしれませんが、占いの解釈とはそういうものです。迷った時に自分にとって道標となり得る者を信じて進めば、良いように解釈できるもの。悪く解釈しようとすればいくらでも悪く解釈できるものです。
また星占いの「星」といえば、はるかの「花」、みなみの「海」、トワの「炎」と共に、きららの「星」を象徴するものです。そのきららが持って帰って来たチョコレートが無ければ、さらにそこにコンテストの事が書かれていなければ、カナタの後ろ姿には出会えませんでした。時に必然ともいうべき偶然があります。それを幸運というのであれば、運も実力のうち、ということなのでしょう。
単純に「運」で言えば、今回は運が悪かったとしか言いようがありません。予期せぬ雨天できららは撮影が押して間に合わず、はるかの衣装はサイズが合わないままで、メイクをする時間すらありませんでした。それを運が悪いと嘆くのではなく、プラスに繋げようとする意志が、幸運を招きよせるのかもしれません。
そして審査員特別賞は、化粧をしていないはるかの飾らぬ素の笑顔がもたらした結果と言えます。実際に得たものはゆるキャラからの花束かもしれませんが、それ以上に価値のあるものを、今回のはるかはきららを通じて得た筈です。それこそ真の特別賞と言えるものでしょう。
はるかの場面と、トゥインクル達の戦い場面を頻繁に入れ替えて描く描写からは、焦りを煽るような緊迫感が感じられて見応えがありました。
それ以外では、きららの撮影を仕切っていた編集者が以前新しい雑誌を作ろうと夢見ていた女性だったという小ネタが目を惹きます。はるか達だけでなく、一人一人にそれぞれ夢を追い、夢を叶える人生があるという事が、改めて感じられます。こうした描写があるだけでリアリティが際立ってきます。
小ネタといえば、はるかに見せた寄せ書きで、みなみが細かい字で何やらビッシリと書き込んでいたのがツボでした(笑)。42型TVでは読み取れないほどの細かい文字でしたが、いったい何が書いてあったのでしょう・・・?
あとは前回の落ち込みから一転、超ゴキゲンなシャットさんにも笑わせてもらいました。感情が伺えないストップ&フリーズが相手だからこそ、そのハジけっぷりが際立っています。
さて、ラストで見かけた後ろ姿は明らかにカナタのものでした。その出会いがもたらすものは吉か凶か・・・って、既に先を知った身からするとワザとらしい締めですね。失礼しました。
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