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第28話『レギーネ登場!ってもう来ないで!』 [ふたりはプリキュア]

調べてみたところ、「ふたりはプリキュア」シリーズが放映された2004年では、
このエピソードの公開日は「8月15日」の日曜日だったようです。
日本にとって8月6日、9日と共に、歴史に残る一日に放映されたエピソード。
新たな敵、レギーネ=小山翔子さんのサスペンスタッチの描写だけでなく、
ほのかの祖母、さなえさんによって語られる少女時代の話が印象的なストーリー。
「8月15日」という日の意味を強調するよりも、現代社会に生きる私達への
思いやりに満ちた、シリーズ随一の佳作の再見をしてみました。
  
『六根清浄、六根清浄、六根清浄・・・』
しゃくり上げる少女を背負い、坂道を登る軍服姿の男性。
やがてたどり着いたケヤキの生える坂道のてっぺんからは、
街の灯りと夜空の星空が同時に見える、美しい光景が広がっていました。
軍服姿の男性は、背負った少女に優しく語り掛けました。
『どんなに苦しい坂道でも、その向こうには綺麗な景色が開けてるもんだ。
 くよくよするな、どんなときでも希望を持って。な、さなえ』

現代の日本。夏の穏やかな陽気の元、公園の噴水で遊ぶ子供達。
朝顔が咲く花壇の奥では、奇妙な植物が芽を出して・・・

ほのかの家で、夏休みの宿題に励むなぎさでしたが、
暑さに滅入ってぐったりしていました。
『なるべく肌と肌が密着しないようにして、体の表面積をより大きくしてあげれば
 それだけ気化熱が奪われて、少しは涼しくなるかもね』
そんな極めて冷静なほのかのアドバイス通り、まるでひっくり返った蛙のような
ヒロインにあるまじき姿を晒し、ほのかの布団でぐったり、そして扇風機に向かって
『あ゛ーーー』など、集中力の欠片も見られないなぎさ。

そんななぎさに追い打ちをかけるように、メップル、ミップル、ポルンは
鬼ごっこに興じ、蒸し暑い中にうっとうしさを増すようなポルンとメップルのやかましいやり取りに
苛立って大声を上げるなぎさ。なぎさでなくても、非常に鬱陶しい一連のやり取りでしたが、
『そういうなぎさが一番うるさいメポ』
『そうだポポ、プリキュラのくせにポポ』
『ラじゃなくてア!プリキュア』
『だからプリキュラ・・・』
視聴者にも苛立ちが伝わってきそうなシーンでした。
そして、この後MHに至るまで続くポルンの「プリキュラ」はここから始まりました(笑)

突然、公園に陽炎のようにどこからともなく姿を現した気の弱そうな謎の女性=小山翔子。
うつろな目で天を見上げ、不自然にも足元は裸足でした。
いつの間にかヒールの付いたサンダルを履き、何かに導かれるように街を行く翔子さん。
ふと、マネキンの並ぶショーウィンドウの前に差し掛かったところ、
激しく胸が高鳴っていました。

雪城家では、宿題に励むなぎさとほのかの傍ら、
「だるまさんがころんだ」に興じる3匹、特にメップルとポルンのやかましさのせいで
相変わらず宿題に集中できないなぎさでしたが・・・
『目覚めるポポ・・・赤いポポ・・・赤い柱危ないポポ・・・』
前回同様、謎の予言のような口ぶりで語りだすポルン。

その頃、翔子さんは往来の激しい車道に足を踏み出し・・・
その背後で服だけを残して消えるマネキン。
突如割れる車のフロントガラス、凹むボンネット。
翔子さんを守るかのように、車の前に立ちはだかる5人のコートの男達。
そして男達に守られるように、車の止まった車道を横断する翔子さん。

ポルンの言葉を受けて、前回のジュナの事を思い出し、言いようの無い不安を口にするなぎさ。
『私達で大丈夫なのかな?ねえ、あんな奴がこれからもまた現れるかもしれないんでしょ?
 本当に、私達だけの力で大丈夫なの?』
いつになく弱気ななぎさを制するかのようなほのかの声も届かず、
『いつまで続くんだろう。あんな訳のわからない連中相手にして、
 メップルやミップルやポルン守って、プリズムストーン守って、光の園守って、
 この虹の園守って、いつになったら終わりが来るの?
 それまで本当に私達の力で大丈夫なの?私達って、本当にそんな力があるの?
 私達がどんなに頑張ったって、この世界もいつかは、ドツクゾーンに食い尽くされて・・・』
『やめて!』
なぎさの弱気な言葉を押しとどめるかのように、流れを断ち切るほのか。
『なぎさから、そんな話聞きたくない。私だって、私だって不安で不安でたまらないのに、
 なぎさがいてくれなかったら、バラバラになってしまいそうなくらいなのに・・・』
ほのかも口や態度にはあまり出しませんが、不安な気持ちは変わりませんでした。

考えてもどうしようもない。二人がそう割り切ろうとしたところに、麦茶を持って現れるさなえさん。
常に優しい表情と口調を保ちつつも、二人の顔色が冴えないことを気にかけるさなえさんですが、
『どうしようもない事』『今の私達にはどうすることもできない』という二人の呟きを耳にすると、
『それは、どうしようもないと思うから、どうする事も出来なくなる時だってあるんじゃないかしらねぇ
 そしてますます不安だけが膨らんでいくの』
麦茶を置いて立ち去ろうとした足を止めて、優しく二人に語り掛けるさなえさん。
そんなさなえさんにほのかが疑問をぶつけました。
『じゃあお婆ちゃまは、どうしようもないって思った事無いの?』
『そりゃあありますよ何度も。駆けっこで転んだ時、それから試験の成績が悪かった時、
 そして・・・この町が無くなった時』

場面は変わり、先程破壊された車は何事もなく、元に戻る車の流れ。
何事も無かったかのような、白昼夢のような光景。
ショーウィンドウからマネキンが消えうせた事を除けば・・・

『あれは、私があなた達と同じくらい。いえもう少し小さかったかしら。
 この家も焼け残ったのは半分くらいと小さな蔵が一つだけ』
さなえさんが語ったのは、戦後の混乱期の話でした。
『戦争は終わったものの、とにかくみんな生きるのに精一杯。
 そんなある日、ふと思い出したんです。いつかお父さんが連れて行ってくれた、
 あのケヤキの坂を。心のどこかで、自分を励まそうと思ってたのかもしれません。
 でも、いつからついてきてたんでしょう、その子はなかなか帰ろうとしないんです。
 それとも帰るところがないのか、未だによくわからない。
 なにしろ何を聞いても、黙ったままでしたから。
 本当は私も、一人が寂しかったのかもしれませんね』
少女時代のさなえさんは、ついて来ていた子の手を取り、父と同じように
『六根清浄、六根清浄、六根清浄・・・』と唱えながら坂を登り始めていました。
そして、そのうち一人増え二人増え、いつしか子供達を率いて遠足のように坂を上るさなえさん。
『六根清浄、六根清浄、六根清浄・・・』皆で唱えながら上り詰めた坂道。
『残った枝に緑の葉っぱを茂らせて、あのケヤキの木はしっかり立っていた』
ですが、その坂道から見えた景色を見て―
『別に何を期待してたって訳ではないけれど、坂の上から見下ろした町は・・・
 いえ、そこに町なんてなかった。どこまでも続く、瓦礫の原っぱ』
少女時代のさなえさんの胸に、父の声が響きます。
『(例えどんなに苦しい坂道でも、その向こうには綺麗な景色が開けているもんだ)』
『嘘つき・・・嘘つき・・・』現実の光景に失望したさなえさんは、泣いていました。
でもその時、はっきりと聞こえて来たのは、手にした物から伝わる励ましの声
『希望を忘れちゃ駄目ミポ』希望の姫君の声。
その声に元気付けられたように、涙を流しながら笑う少女時代のさなえさん。
『そうだよね・・・そうだった・・・ふふ・・・ふふふ』

『どんなときでも希望は忘れちゃ駄目。今はどんなに辛くても、どんなに苦しくても
 たった一つ、希望だけは忘れちゃいけない。
 希望さえ失わなければ、明日はきっといい日になるんだって。
 きっと絶望と希望は背中合わせなんですよ』
ほのかも初めて聞いたさなえさんの昔話。でも、その精神は確かに孫達に受け継がれました。

すっかりさなえさんの言葉に感銘を受けたなぎさは、
カキ氷を始めたものの売上がいまひとつとこぼすアカネさんを、
さなえさんの受け売りの言葉で励ましていました。
そして話にあったケヤキの坂に行ってみよう、と提案しますが、
思っていたよりも険しい道のりに、早速バテるなぎさ。

突如、フラッシュバックするジャアクキングとプリキュアの戦いの場面に
何かを感じたかのように、はっとする翔子さんは
ケヤキの坂道で、なぎさとほのかの少し上に佇み、静かに二人を見ていました。
再び翔子さんの脳裏にフラッシュバックするプリキュアと、
不穏な空気を感じ取って『目覚めるポポ』と怯えるポルン。
内からの衝動に突き動かされるように坂道を登り始める翔子さんを庇うかのように
二人と翔子さんの間に割ってはいるコートの男達。
彼らがザケンナーと知り、変身する二人。

一方翔子さんはケヤキの坂の頂上で立ち止まり、なにか怯えたような雰囲気です。
遠方の火山から翔子さんの足元まで、まるで水脈のように赤い光が走り・・・

ザケンナーと交戦中のプリキュアも、いつもと違う動きに違和感を感じていました。
プリキュアと戦うよりも、翔子さんを守るように道をふさぐ様な素振り。
その頃翔子さんの内の衝動もどんどん高まってゆき、早鐘のように高鳴る鼓動。
そして、叫び声と共に変身。「レギーネ」へと姿が変わり、驚く二人。
髪が「ボヨヨーン」と巻き戻り、再度驚く二人。

ところがレギーネとプリキュアが戦うでもなく、ジュナが突如現れ
『お前には、先にやる事がある筈だ』『プリキュアーーーーー!』
恐ろしい闘志を燃やすレギーネをよそに、冷静にレギーネを連れ去るジュナ。
ブラックとホワイトが追いかけようとケヤキの坂道のてっぺんにきたところ、
眼下に広がっていたのはザケンナーの大群でした。
『坂の向こうには、綺麗な景色が開けてるんじゃなかったの?
 無理だってば・・・絶対無理・・・いい加減にしてよね。
 本当はあんた達に付き合ってる暇なんて無いんだから、
 もっと、もっと普通の夏休みにしてよね』
再び弱気になるブラック。ホワイトもそんなブラックを気遣いますが、
『本当は、本当はすっごく焦ってんだから。
 早く行かなきゃ泉屋さんのチョコタルト売り切れちゃうし』
『え?』『限定商品だから・・・』『そういう話?』
『大体、このままじゃ宿題終わるかどうかもわかんないし』
『いやいや、毎日やれば終わると思うよ?』
『私はとっかかるのに、時間のかかるタイプなんです!
 だから!とっととドツクゾーンに帰ってよね!』

なんともいえない理屈で立ち直り、ザケンナーの群れに挑みかかるプリキュア。
その頃、レギーネは前回台風のエネルギーを吸収して覚醒したジュナのように
噴火する火山のエネルギーを吸収していました。
レギーネの覚醒と共に、役目を終えたかのように退散するザケンナーたち。
プリキュアが撃退するでもなく退散するというのは珍しいケースです。

ともあれ、今後の事を案じるメップル、ミップルを、さなえさんからもらった言葉
『今がどんなに辛くても』『絶望と希望はいつも背中合わせ』
『希望を失わないで頑張れば』『明日はきっと・・・』『いい日になるよ』
と語るなぎさとほのかで、幕となりました。

毎週放映のアニメーション。それも時事問題を扱わない作品において、
「8月15日」という放映日を意識した構成は珍しいと思います。
かつ、その日付に主題を置き過ぎて本来の作品の持ち味を崩すことなく、
自然にプリキュアの戦う理由、頑張る気持ちにつなげていく展開は秀逸だと思いました。
作中の描写から、さなえさんは私の祖母(昭和4年生)よりも年下だと思いますが、
戦争体験者の話というものは当事者からはなかなか身内に語られないと思います。
私の祖母も既に他界しており、わずかながら戦時中の体験を聞いたことはありますが、
あまり口にしたくない事が多々あったのでしょう。
ただ、今回のエピソードと、そこから得られる教訓を視聴し、
もっと聞いておくべきだったのか、それともそっとしておいて良かったのか、
少し考えさせられました。

前回は初登場のジュナと新たにレギュラー化したポルンがメインでしたが、
今回はさなえさんが大きなウェイトを占めています。
冒頭の父に背負われて登る坂道と、そこから見た美しい景色。
終戦直後の焼け野原の絶望と、そこから見出す希望。
かつて一度だけシルエットで登場した少女時代のさなえさんですが、
今回はモノクロながらしっかりと描かれており、おかっぱにしてモンペを履いたほのかのようです。
血は争えないのか、まゆ毛も太いのはご愛嬌でしょう(笑)
ともあれ、直接さなえさんからは語られていませんが、
終戦後の光景に父の姿が見られないのは、まだ戦地から復員していないのか、
残念ながら再び戻ってくる事が出来なかったのか。
そしてほのかの祖父がMHに至るまで存在を匂わせない所を見ると、
おそらく鬼籍に入っているのではないかと伺わせます。
そういった「どうしようもない出来事」も抱えつつ、それを口にせずに
最も二人に励みになる話だけを穏やかに語るさなえさんの芯の強さが感じられました。

残念ながら初登場にもかかわらず、少々エピソードの影に埋もれてしまった観のある
小山翔子=レギーネですが、私はこの「小山翔子」のファンだったりします(笑)
常にオドオドしているところ、小声でボソボソ話し、キレて大声になる、といった
コミカルな面もありますが、なにぶん面食いなもので・・・(笑)
ともあれ、夏の日差しの中、得体の知れない空気を醸し出すコート姿のザケンナーや
翔子さんの醸し出す不思議な雰囲気が、サスペンス色も含めて描かれていました。

続けて印象に残るのは、つい不安を口にするなぎさ=キュアブラック。
宿題の最中にいつ終わるとも知れない戦いへの不安、
ドツクゾーンにいつかは食い尽くされてしまうのでは、といった疑念。
それを口にした時、直ちになぎさをさえぎるほのかからは
態度に現さないまでも本当は不安でたまらないほのかの心境も描かれ、
なぎさがいるからこそほのかも頑張れる、という信頼感が伝わってきます。
そしてキュアブラック状態でケヤキの坂の上から口にした不安の言葉は
瞬時にギャグへと変換され、重くなりがちなテーマを和らげる意味でも
上手い構成だと思いました。

次回は第3の男メビウス様ベルゼイ・ガートルードの登場。
久々登場の藤Pも絡めて、少々ホラータッチの話だったと記憶しています。
その前に、ゴルフのために2週ぶりとなった明日のフレッシュの視聴記を書ければと思います。
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