スプラッシュスター第45話『ケーキと和也とクリスマス！』 [ふたりはプリキュアSprash Star]
毎年年末になるとプリキュアの日常を描くエピソードは終わり、一抹の寂しさを覚えます。
せっかくのクリスマスだというのに、咲の乙女心はいろいろな要因でズタズタに・・・
「しょんぼりしてる子見ぃ～つけた♪」
サソリーナがいれば確実に心の花を抽出されていそうな咲を励ますのは
お互いピンチを乗り越える度強く近くなった舞と、咲に恩返しとばかりに励まし返す満と薫。
4人とみのりのサンタ姿の愛らしさが花を添え、
シタターレ姐さんとキントレスキーのインパクトある最期、咲と和也の関係、
そして満と薫の存在の危機が重く影を落とす、最後の日常を彩るに相応しい一編です。
パンパカパンは明日からクリスマスセールですがその前夜、
咲は一人でケーキを作り上げ、綺麗にラッピングして冷蔵庫にしまいます。
『明日の準備は完璧！』
明らかに売り物では無さそうなケーキ。それを渡す相手は・・・
パンパカパンのクリスマスセールには舞、満、薫が手伝いに訪れ、
クリスマスケーキやブッシュ・ド・ノエルに舞とみのりの歓声が上がります。
セールのお手伝いの後は楽しいクリスマスパーティ。
当然パーティが初めての満と薫も胸が弾むようです。
さて、開店前に咲がみんなにお願いしたのは・・・
『変身完了！』『サンタさんだー♥』『ちょっと恥ずかしいかも・・・』
『何で私たちまで・・・』『派手・・・』
可愛すぎるサンタコスｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━!!
サンタの衣装に身を包んだ可愛い看板娘達の効果もあって？パンパカパンは大賑わい。
こういうのは苦手だと言っていた薫も精一杯の笑顔でみのりと一緒に売り子を務め、
満もすっかり接客が板についています。
『笑顔と挨拶が大事。教えてくれたのは咲でしょ？』
自然にお客さんを送り出す満の笑顔に咲もなんだか嬉しくなりました。
そんな折、空気を読まずに空腹を訴えるフラッピに続いてチョッピも同様に訴え、
ここは任せてと言う満と薫の言葉に甘え、咲と舞はひとまず中座します。
『何してるの？』
『え・・・いや、何でも・・・』
ふと、ガラスに映った自分を見て自然な笑顔を浮かべ、薫に指摘されて慌てる満。
滅びの力で生み出された2人からは
前々回のラストのような、自然な少女らしさが滲み出ています。
フラッピとチョッピのお世話を終え、咲は舞にそれとなく
今夜のパーティに和也が来るのか訊ねてみますが、
残念ながら高校のクラスみんなでのパーティに参加すると知って落胆を隠せません。
舞には誕生日にもらったプレゼントのお返しを渡したかったと言い訳しますが、
目ざとい精霊達の横槍が入ります。
『クリスマスにお返しムプ？』『今日渡すって事はクリスマスプレゼントププ』
『それは間違いなくこ・く・は・・・』
咲は慌ててフラッピの口を塞ぎますが、舞が色恋沙汰に極端に鈍感なおかげで救われました。
一方ダークフォール、ゴーヤーンのアジトでは、
髪を梳るシタターレ姐さんとダンベル運動に余念の無いキントレスキー、
危機感の欠片も無い二人を焚き付けるゴーヤーンも大変です。
挙句に「強者とは何か」で言い争いになり、筋肉くらいあるわよ！と
二の腕を見せるシタターレ姐さんに失笑を漏らすキントレスキー。
『それは筋肉ではない』『肉は肉でしょ！』
いつしか夫婦漫才の様相を呈した流れにしびれを切らしたゴーヤーンは、
プリキュアを倒した者にダークフォール最強の戦士の称号を与えると宣言。
俄然やる気を出して出撃した2人を見送った後、ため息混じりに現実的な発言を漏らしました。
次の一手を考える必要があるかもしれない、と・・・
咲は冷蔵庫にしまいこんだケーキを見てため息を漏らしていたところ、
思いがけずお店のほうから和也の声が聞こえ、胸をときめかせて店頭を覗きますが、
そこには咲が一番見たくない光景がありました。
クラスメイトとおぼしき桃園ラブちゃん女子生徒と仲良さそうに来店し、
一緒にケーキを選ぶ和也を見て、物陰から密かにその様子を眺めるしかできません。
和也は咲と手伝いに来ている筈の舞の姿が見当たらない事を気にして
目が合った満に奥にいると教えられますが、呼びましょうかという満の申し出を
咲も舞も忙しいだろうからと気遣って断り、ケーキを買った女子生徒と共に店を出て
並んで歩いて帰って行きました。その後姿を見送った咲は
心の花を萎れさせてしまったかのように落ち込んで自室のベッドへと倒れこみます。
『咲元気ないムプ』『失恋でもしたププ？』
直球すぎるムープとフープを慌てて制するフラッピですが、
『図星をついちゃ駄目ラピ！咲の前で失恋は禁句ラピ！』
フォローしているようでフォローになっていないフラッピに咲の堪忍袋の緒は切れる寸前です。
『とうとう和也さんに告白したムプ？』『見事に当たって砕けたププ？』
再び慌てて留めるフラッピの発言も咲の傷口に塩をもみ込むようなもので、
海より広い咲の心もとうとう我慢の限界を超えました。
『うるっさいわね！いい加減にしてくれる！？
人が落ち込んでるのにゴチャゴチャゴチャゴチャゴチャゴチャ！！』
今の咲には何を言っても通じません。
部屋を追い出されたフラッピ達の前に、満と薫が様子を見に来ました。
咲のために何かしてあげたいけれど、よく分からないという2人に対し、
フラッピはしばし考え、励ます事を提案しました。
いつも励ましてくれる咲を、今度は私達が励ます。
こういう時はさりげなく、というフラッピの言葉は、満と薫に妙に印象づいたようです。
『さりげなくね・・・』『出来るかしら？』
その一連のやり取りは、パンパカパンを遠巻きに眺めていた
シタターレ姐さんとキントレスキーにも知るところとなりました。
『あくまでさりげなく奴らに近付くわよ』
『しかし・・・なぜ私までこんな格好をしなければならんのだ』
姐さんにつき合わされたのか、
キントレスキーまでもがサンタ服を着て決め台詞を披露します。
『サンタレスキー！』『サンタターレ！』
一体どうなることやら・・・
上の空でテラスのテーブルを拭く咲を店内から伺い、
朝は元気そうだったのにと心配そうな舞に、
満と薫は先ほどのフラッピの言葉をなぞって大真面目に口にします。
『さりげなくよ、舞』
『こういうときは、とにかくさりげなくらしいの』
舞が良く分からないと漏らすのももっともですが・・・
大介パパが車で配達に向かおうとしたところ、キントレスキーとシタターレ姐さんが来店。
キントレスキーは常連客らしく店主と挨拶を交わして
シタターレ姐さんは内心二人が親しげな事を驚いていましたが、
『素敵な奥様ですね。では！』
そう告げて車を走らせる大介パパの言葉に唖然としました。
『奥様？このワタクシが？あんたの奥様ですって？』
『悪い、冗談だな・・・』
キントレスキーも微妙に迷惑そうですが、2人に気付いた舞、満、薫が店から出てきます。
『よく気付いたな！』
『そんな目立つ格好じゃすぐわかるわよ』
ボケるキントレスキーに突っ込める程になった満。
その傍らを、今にも心の花を枯らしそうな勢いの咲がふらふらと歩いてきました。
キントレスキーの呼びかけを無下に振り払った咲は、
シタターレ姐さんの『クリスマスで浮かれてるの？』との一言でとうとう堪忍袋の緒が切れました。
『クリスマスだからって何よ！あんたたちこそカップルで来るなんて浮かれすぎじゃない？
嫌がらせにも程があるわ！』
『誰がカップルやねん・・・』
思わずたじろいだ姐さんに、お約束の名前間違いを、それも強烈に言い放つ咲。
『あんたの事よミズ・シミッタレ！』
絶対わざと間違えてるでしょ！と姐さんも逆上し、
クリスマスプレゼントと称して袋から猛吹雪を吹き付けます。
あたり一面雪に覆われる世界で、サンタ服を脱ぎ捨てて勝負を挑む姐さんとキントレスキー。
『もうどうでもいいのよ・・・！』
咲は自暴自棄のまま変身。今回はブルーム、イーグレットへと変身します。
咲のヤケクソな気持ちが影響しているためか、相手コンビが強力なためか、
精霊の壁はいつもの強固な防御力を発揮できません。
キントレスキーの一撃であっさり破られ、二人がかりの赤い光を放とうとした満と薫も
シタターレ姐さんに先手を取られ、氷の輪によって動きを封じられました。
その間にも姐さんの巨大水球が、キントレスキーの重い一撃がプリキュアを襲いますが、
『私、もう駄目かも・・・』
普段の咲＝ブルームからは考えられない弱音を吐き、
精霊の力も弱まって立ち上がることが出来ません。
『クリスマスって言うより、これじゃ苦しみますって感じね』（誰が上手い事言えと）
ブルームを見下ろし、シタターレ姐さんは冷たく言い放ちます。
『諦めちゃ駄目、ブルーム！ブルームはいつも諦めるなって私達を励ましてくれた』
そんなブルームを励ますのは満と薫です。
『ブルームが落ち込んでいるのなら』
『今度は私達が力になるから』
さりげなく、ではなく本心から咲を立ち上がらせたいという想いが滲み出る言葉に、
ずっと連れ添ったパートナーとしてイーグレットもブルームの力になりたいと
ブルームを護るべく一人盾となります。そしてフラッピたちも一斉に同調。
その光景を諦めの悪い奴ら、と一笑に付す姐さんの巨大水球が放たれますが、
精霊の力が出ずともイーグレットは一人でブルームを守り切る覚悟です。
動きを封じられた満と薫は手を出せず、イーグレットに迫る巨大水球。そして炸裂・・・
『みんなが頑張ってるのに、私一人で落ち込んでられない！』
水球は立ち上がる力を取り戻したブルームと共に甦った精霊の力で防いでいました。
二人の強固な絆は強い精霊の力を呼び起こし、
追撃を仕掛けたキントレスキーを弾き飛ばします。
満と薫もその影響を受けたのか、自力で拘束を断ち切り、
二人がかりの赤い光でシタターレ姐さんとキントレスキーの力を消し去りました。
そしてブルームとイーグレットは月と風の力を纏い、スパイラルハートスプラッシュを放ちます。
『ワタクシ達も力を合わせるわよ！』
シタターレ姐さんとキントレスキーも二人がかりで受けて立ちます。
拮抗する力は次第にプリキュア優勢となり、
金切り声を上げて踏ん張るシタターレ姐さんの腕を取り、キントレスキーは言い含めました。
『敵に背を向けるなど戦士の恥だ。美しく散れ』
シタターレ姐さんはキントレスキーの美学に付き合う気など無かったのですが
『お前もなかなかの強者。共に戦えて満足だぞ・・・』
その言葉に少女のように顔を赤らめます。
スパイラルハートスプラッシュの奔流が迫る中、見つめあう二人。そして・・・
『あんた惚れターレ！』『アンタガスキー！』
スパイラルハートスプラッシュが象るハートの中で、
散り際に結ばれた二人は再び消え去りました・・・
夜になると共に雪が降り始め、ホワイトクリスマスとなりました。
セールも終わり、ご馳走を囲む看板娘達。そこに呼鈴が鳴り、
健太達が来たと思って向かった咲は思いがけない訪問者、和也の姿を目にしました。
先ほどの女子生徒はパンパカパンのファンというだけで、彼女にはBFがいる事を知り、
ただの早とちりだと察した咲に、更に思いがけないプレゼントが。
和也からのプレゼント、ショールをかけてもらい、咲もお返しに例のケーキを振舞います。
まるで夢心地の咲。しかし満と薫は・・・
夜空を見上げ、降る雪に手を伸ばした満の掌で儚く解けて消えてしまう雪。
『ねえ、薫。キントレスキーもミズシタターレも、この雪みたいに消えてしまったわ』
『私達も雪と同じ。いつか消えてしまうかもしれないけど』
『その前に、やるべき事がある』
いつしか健太たちも集まり、パーティが始まると告げに来た
咲と舞に返事をして室内に向かう満と薫。
楽しいパーティが始まるというのに、パンパカパンに降る雪と夜空は異様な重苦しさを残します。
何といっても咲、舞、満、薫、みのりの可愛すぎるサンタ服姿、
シタターレ姐さんに強要されたのかキントレスキーまでが着ているサンタ服が目を奪います。
実際にサンタが話にからむ5GoGoを除き、
意外にもプリキュアシリーズでのサンタの姿は思い浮かびません。
それだけに今回のサンタ服が残す印象は強く残りました。
さてクリスマス時期は毎年シリーズが佳境に入るタイミングでもあるため、
何らかの形で節目になったり、シリーズのストーリーに決着をつける展開も目立ちます。
MHでは藤Pとの関係に一応の答えを出したり、
フレッシュでは正体を明かして最後の戦いに赴く前の心理を描いたりしました。
SSはこの2例を合わせたような展開となり、和也との一応のハッピーエンドに
満と薫の密かな決意と覚悟が重い影を落とし、最終戦が近い事を暗に示しています。
高校のパーティを抜け出してまで咲のためにショールをプレゼントした和也は
ひょっとして咲に気があるのか（認めたくありませんが・・・）、
それともただの天然なのかはっきりとしませんが、
一年間頑張ってきた咲へのクリスマスプレゼントとしての意味合いで
このような展開になったのかもしれません。
そして情死とも受け取れるキントレスキーとシタターレ姐さんの最後の活躍も光りました。
大介パパに「奥様」と言われたときの姐さんの反応やキントレスキーの微妙な発言、
反目しているかのような夫婦漫才が、いつどこで転んでこうなったのかは謎ですが
アナコンディさんと館長以外には見られない「情死」という最期、
しかも悲壮に見えずコミカルに描かれるのが特徴的です。
今回ブライトとウィンディではなく、ブルームとイーグレットに変身したのは
スパイラル～スプラッシュの最後の決めが「星」か「ハート」かの違いでしょうか。
ハートに包まれて最期を迎えたおかげで、この二人の描写が印象深いものになりました。
スプラッシュスターの二人にとって精霊の力が出ない事は弾薬が無いも同然の事態ですが、
その状況に陥っても臆する事なく、逃げる事なくブルームを守ろうとする
イーグレットの奮闘も印象的です。
そして萎えた心を奮い立たせて立ち上がるブルーム。
「ふたりはプリキュア」の「最後の普通の戦い」は、
互いを想う気持ちと信頼する気持ちが見事に描かれていたと感じました。
作中と放映当時のスケジュールでは年末年始を挟み、
ついにダークフォールへと舞台が移ります。
日常を丁寧に描いてきたSSの日常エピソードがこれで終了となるのは少々残念で
もう少しこの世界を見てみたいという想いも残りますが、
他愛無くもかけがえの無い日常を守る尊さが描かれる残りの展開も
連休を利用して再見していきたいと思います。
せっかくのクリスマスだというのに、咲の乙女心はいろいろな要因でズタズタに・・・
「しょんぼりしてる子見ぃ～つけた♪」
サソリーナがいれば確実に心の花を抽出されていそうな咲を励ますのは
お互いピンチを乗り越える度強く近くなった舞と、咲に恩返しとばかりに励まし返す満と薫。
4人とみのりのサンタ姿の愛らしさが花を添え、
シタターレ姐さんとキントレスキーのインパクトある最期、咲と和也の関係、
そして満と薫の存在の危機が重く影を落とす、最後の日常を彩るに相応しい一編です。
パンパカパンは明日からクリスマスセールですがその前夜、
咲は一人でケーキを作り上げ、綺麗にラッピングして冷蔵庫にしまいます。
『明日の準備は完璧！』
明らかに売り物では無さそうなケーキ。それを渡す相手は・・・
パンパカパンのクリスマスセールには舞、満、薫が手伝いに訪れ、
クリスマスケーキやブッシュ・ド・ノエルに舞とみのりの歓声が上がります。
セールのお手伝いの後は楽しいクリスマスパーティ。
当然パーティが初めての満と薫も胸が弾むようです。
さて、開店前に咲がみんなにお願いしたのは・・・
『変身完了！』『サンタさんだー♥』『ちょっと恥ずかしいかも・・・』
『何で私たちまで・・・』『派手・・・』
サンタの衣装に身を包んだ可愛い看板娘達の効果もあって？パンパカパンは大賑わい。
こういうのは苦手だと言っていた薫も精一杯の笑顔でみのりと一緒に売り子を務め、
満もすっかり接客が板についています。
『笑顔と挨拶が大事。教えてくれたのは咲でしょ？』
自然にお客さんを送り出す満の笑顔に咲もなんだか嬉しくなりました。
そんな折、空気を読まずに空腹を訴えるフラッピに続いてチョッピも同様に訴え、
ここは任せてと言う満と薫の言葉に甘え、咲と舞はひとまず中座します。
『何してるの？』
『え・・・いや、何でも・・・』
ふと、ガラスに映った自分を見て自然な笑顔を浮かべ、薫に指摘されて慌てる満。
滅びの力で生み出された2人からは
前々回のラストのような、自然な少女らしさが滲み出ています。
フラッピとチョッピのお世話を終え、咲は舞にそれとなく
今夜のパーティに和也が来るのか訊ねてみますが、
残念ながら高校のクラスみんなでのパーティに参加すると知って落胆を隠せません。
舞には誕生日にもらったプレゼントのお返しを渡したかったと言い訳しますが、
目ざとい精霊達の横槍が入ります。
『クリスマスにお返しムプ？』『今日渡すって事はクリスマスプレゼントププ』
『それは間違いなくこ・く・は・・・』
咲は慌ててフラッピの口を塞ぎますが、舞が色恋沙汰に極端に鈍感なおかげで救われました。
一方ダークフォール、ゴーヤーンのアジトでは、
髪を梳るシタターレ姐さんとダンベル運動に余念の無いキントレスキー、
危機感の欠片も無い二人を焚き付けるゴーヤーンも大変です。
挙句に「強者とは何か」で言い争いになり、筋肉くらいあるわよ！と
二の腕を見せるシタターレ姐さんに失笑を漏らすキントレスキー。
『それは筋肉ではない』『肉は肉でしょ！』
いつしか夫婦漫才の様相を呈した流れにしびれを切らしたゴーヤーンは、
プリキュアを倒した者にダークフォール最強の戦士の称号を与えると宣言。
俄然やる気を出して出撃した2人を見送った後、ため息混じりに現実的な発言を漏らしました。
次の一手を考える必要があるかもしれない、と・・・
咲は冷蔵庫にしまいこんだケーキを見てため息を漏らしていたところ、
思いがけずお店のほうから和也の声が聞こえ、胸をときめかせて店頭を覗きますが、
そこには咲が一番見たくない光景がありました。
クラスメイトとおぼしき
一緒にケーキを選ぶ和也を見て、物陰から密かにその様子を眺めるしかできません。
和也は咲と手伝いに来ている筈の舞の姿が見当たらない事を気にして
目が合った満に奥にいると教えられますが、呼びましょうかという満の申し出を
咲も舞も忙しいだろうからと気遣って断り、ケーキを買った女子生徒と共に店を出て
並んで歩いて帰って行きました。その後姿を見送った咲は
心の花を萎れさせてしまったかのように落ち込んで自室のベッドへと倒れこみます。
『咲元気ないムプ』『失恋でもしたププ？』
直球すぎるムープとフープを慌てて制するフラッピですが、
『図星をついちゃ駄目ラピ！咲の前で失恋は禁句ラピ！』
フォローしているようでフォローになっていないフラッピに咲の堪忍袋の緒は切れる寸前です。
『とうとう和也さんに告白したムプ？』『見事に当たって砕けたププ？』
再び慌てて留めるフラッピの発言も咲の傷口に塩をもみ込むようなもので、
海より広い咲の心もとうとう我慢の限界を超えました。
『うるっさいわね！いい加減にしてくれる！？
人が落ち込んでるのにゴチャゴチャゴチャゴチャゴチャゴチャ！！』
今の咲には何を言っても通じません。
部屋を追い出されたフラッピ達の前に、満と薫が様子を見に来ました。
咲のために何かしてあげたいけれど、よく分からないという2人に対し、
フラッピはしばし考え、励ます事を提案しました。
いつも励ましてくれる咲を、今度は私達が励ます。
こういう時はさりげなく、というフラッピの言葉は、満と薫に妙に印象づいたようです。
『さりげなくね・・・』『出来るかしら？』
その一連のやり取りは、パンパカパンを遠巻きに眺めていた
シタターレ姐さんとキントレスキーにも知るところとなりました。
『あくまでさりげなく奴らに近付くわよ』
『しかし・・・なぜ私までこんな格好をしなければならんのだ』
姐さんにつき合わされたのか、
キントレスキーまでもがサンタ服を着て決め台詞を披露します。
『サンタレスキー！』『サンタターレ！』
一体どうなることやら・・・
上の空でテラスのテーブルを拭く咲を店内から伺い、
朝は元気そうだったのにと心配そうな舞に、
満と薫は先ほどのフラッピの言葉をなぞって大真面目に口にします。
『さりげなくよ、舞』
『こういうときは、とにかくさりげなくらしいの』
舞が良く分からないと漏らすのももっともですが・・・
大介パパが車で配達に向かおうとしたところ、キントレスキーとシタターレ姐さんが来店。
キントレスキーは常連客らしく店主と挨拶を交わして
シタターレ姐さんは内心二人が親しげな事を驚いていましたが、
『素敵な奥様ですね。では！』
そう告げて車を走らせる大介パパの言葉に唖然としました。
『奥様？このワタクシが？あんたの奥様ですって？』
『悪い、冗談だな・・・』
キントレスキーも微妙に迷惑そうですが、2人に気付いた舞、満、薫が店から出てきます。
『よく気付いたな！』
『そんな目立つ格好じゃすぐわかるわよ』
ボケるキントレスキーに突っ込める程になった満。
その傍らを、今にも心の花を枯らしそうな勢いの咲がふらふらと歩いてきました。
キントレスキーの呼びかけを無下に振り払った咲は、
シタターレ姐さんの『クリスマスで浮かれてるの？』との一言でとうとう堪忍袋の緒が切れました。
『クリスマスだからって何よ！あんたたちこそカップルで来るなんて浮かれすぎじゃない？
嫌がらせにも程があるわ！』
『誰がカップルやねん・・・』
思わずたじろいだ姐さんに、お約束の名前間違いを、それも強烈に言い放つ咲。
『あんたの事よミズ・シミッタレ！』
絶対わざと間違えてるでしょ！と姐さんも逆上し、
クリスマスプレゼントと称して袋から猛吹雪を吹き付けます。
あたり一面雪に覆われる世界で、サンタ服を脱ぎ捨てて勝負を挑む姐さんとキントレスキー。
『もうどうでもいいのよ・・・！』
咲は自暴自棄のまま変身。今回はブルーム、イーグレットへと変身します。
咲のヤケクソな気持ちが影響しているためか、相手コンビが強力なためか、
精霊の壁はいつもの強固な防御力を発揮できません。
キントレスキーの一撃であっさり破られ、二人がかりの赤い光を放とうとした満と薫も
シタターレ姐さんに先手を取られ、氷の輪によって動きを封じられました。
その間にも姐さんの巨大水球が、キントレスキーの重い一撃がプリキュアを襲いますが、
『私、もう駄目かも・・・』
普段の咲＝ブルームからは考えられない弱音を吐き、
精霊の力も弱まって立ち上がることが出来ません。
『クリスマスって言うより、これじゃ苦しみますって感じね』（誰が上手い事言えと）
ブルームを見下ろし、シタターレ姐さんは冷たく言い放ちます。
『諦めちゃ駄目、ブルーム！ブルームはいつも諦めるなって私達を励ましてくれた』
そんなブルームを励ますのは満と薫です。
『ブルームが落ち込んでいるのなら』
『今度は私達が力になるから』
さりげなく、ではなく本心から咲を立ち上がらせたいという想いが滲み出る言葉に、
ずっと連れ添ったパートナーとしてイーグレットもブルームの力になりたいと
ブルームを護るべく一人盾となります。そしてフラッピたちも一斉に同調。
その光景を諦めの悪い奴ら、と一笑に付す姐さんの巨大水球が放たれますが、
精霊の力が出ずともイーグレットは一人でブルームを守り切る覚悟です。
動きを封じられた満と薫は手を出せず、イーグレットに迫る巨大水球。そして炸裂・・・
『みんなが頑張ってるのに、私一人で落ち込んでられない！』
水球は立ち上がる力を取り戻したブルームと共に甦った精霊の力で防いでいました。
二人の強固な絆は強い精霊の力を呼び起こし、
追撃を仕掛けたキントレスキーを弾き飛ばします。
満と薫もその影響を受けたのか、自力で拘束を断ち切り、
二人がかりの赤い光でシタターレ姐さんとキントレスキーの力を消し去りました。
そしてブルームとイーグレットは月と風の力を纏い、スパイラルハートスプラッシュを放ちます。
『ワタクシ達も力を合わせるわよ！』
シタターレ姐さんとキントレスキーも二人がかりで受けて立ちます。
拮抗する力は次第にプリキュア優勢となり、
金切り声を上げて踏ん張るシタターレ姐さんの腕を取り、キントレスキーは言い含めました。
『敵に背を向けるなど戦士の恥だ。美しく散れ』
シタターレ姐さんはキントレスキーの美学に付き合う気など無かったのですが
『お前もなかなかの強者。共に戦えて満足だぞ・・・』
その言葉に少女のように顔を赤らめます。
スパイラルハートスプラッシュの奔流が迫る中、見つめあう二人。そして・・・
『あんた惚れターレ！』『アンタガスキー！』
スパイラルハートスプラッシュが象るハートの中で、
散り際に結ばれた二人は再び消え去りました・・・
夜になると共に雪が降り始め、ホワイトクリスマスとなりました。
セールも終わり、ご馳走を囲む看板娘達。そこに呼鈴が鳴り、
健太達が来たと思って向かった咲は思いがけない訪問者、和也の姿を目にしました。
先ほどの女子生徒はパンパカパンのファンというだけで、彼女にはBFがいる事を知り、
ただの早とちりだと察した咲に、更に思いがけないプレゼントが。
和也からのプレゼント、ショールをかけてもらい、咲もお返しに例のケーキを振舞います。
まるで夢心地の咲。しかし満と薫は・・・
夜空を見上げ、降る雪に手を伸ばした満の掌で儚く解けて消えてしまう雪。
『ねえ、薫。キントレスキーもミズシタターレも、この雪みたいに消えてしまったわ』
『私達も雪と同じ。いつか消えてしまうかもしれないけど』
『その前に、やるべき事がある』
いつしか健太たちも集まり、パーティが始まると告げに来た
咲と舞に返事をして室内に向かう満と薫。
楽しいパーティが始まるというのに、パンパカパンに降る雪と夜空は異様な重苦しさを残します。
何といっても咲、舞、満、薫、みのりの可愛すぎるサンタ服姿、
シタターレ姐さんに強要されたのかキントレスキーまでが着ているサンタ服が目を奪います。
実際にサンタが話にからむ5GoGoを除き、
意外にもプリキュアシリーズでのサンタの姿は思い浮かびません。
それだけに今回のサンタ服が残す印象は強く残りました。
さてクリスマス時期は毎年シリーズが佳境に入るタイミングでもあるため、
何らかの形で節目になったり、シリーズのストーリーに決着をつける展開も目立ちます。
MHでは藤Pとの関係に一応の答えを出したり、
フレッシュでは正体を明かして最後の戦いに赴く前の心理を描いたりしました。
SSはこの2例を合わせたような展開となり、和也との一応のハッピーエンドに
満と薫の密かな決意と覚悟が重い影を落とし、最終戦が近い事を暗に示しています。
高校のパーティを抜け出してまで咲のためにショールをプレゼントした和也は
ひょっとして咲に気があるのか（認めたくありませんが・・・）、
それともただの天然なのかはっきりとしませんが、
一年間頑張ってきた咲へのクリスマスプレゼントとしての意味合いで
このような展開になったのかもしれません。
そして情死とも受け取れるキントレスキーとシタターレ姐さんの最後の活躍も光りました。
大介パパに「奥様」と言われたときの姐さんの反応やキントレスキーの微妙な発言、
反目しているかのような夫婦漫才が、いつどこで転んでこうなったのかは謎ですが
アナコンディさんと館長以外には見られない「情死」という最期、
しかも悲壮に見えずコミカルに描かれるのが特徴的です。
今回ブライトとウィンディではなく、ブルームとイーグレットに変身したのは
スパイラル～スプラッシュの最後の決めが「星」か「ハート」かの違いでしょうか。
ハートに包まれて最期を迎えたおかげで、この二人の描写が印象深いものになりました。
スプラッシュスターの二人にとって精霊の力が出ない事は弾薬が無いも同然の事態ですが、
その状況に陥っても臆する事なく、逃げる事なくブルームを守ろうとする
イーグレットの奮闘も印象的です。
そして萎えた心を奮い立たせて立ち上がるブルーム。
「ふたりはプリキュア」の「最後の普通の戦い」は、
互いを想う気持ちと信頼する気持ちが見事に描かれていたと感じました。
作中と放映当時のスケジュールでは年末年始を挟み、
ついにダークフォールへと舞台が移ります。
日常を丁寧に描いてきたSSの日常エピソードがこれで終了となるのは少々残念で
もう少しこの世界を見てみたいという想いも残りますが、
他愛無くもかけがえの無い日常を守る尊さが描かれる残りの展開も
連休を利用して再見していきたいと思います。
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