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ハートキャッチ第32話『イケメンさんと対決?そんなの聞いてないです~!!』 [ハートキャッチプリキュア]

プリキュアは今や大きなビジネスマーケットとなり、
中盤でのパワーアップを新商品の玩具と合わせて展開するのは恒例となっています。
それを単なる販促ではなく、いかにエピソードを構築するかが製作側の腕の見せ所ですが・・・
今回の展開は私個人としては、変な見方をしてしまったために
何かモヤモヤしたものが晴れず、私にとってプリキュアシリーズの問題作となりそうです。
(決して悪い意味ではありませんので、悪しからずご諒承ください)
 
第1話の冒頭を思わせるような激闘が、開始早々展開されます。
『幾人ものプリキュアが我が前に立ちはだかって来たが、今日が最後だ』
蹴散らしても蹴散らしてもきりがないスナッキーの大群に息が上がった3人は、
その前に立ちはだかるデューンによって変身を解除されて倒れ伏します。
心の大樹も枯れ果て、見る間に死の星へと変貌して行く地球を
シプレを抱きしめながらなす術も無く見守るつぼみは、
デューンの高笑いを聞きながら無念さを噛み締めて・・・

この恐ろしい光景は、縁台でうたた寝をしていた薫子さんが見ていた悪夢でした。
うわ言のようにつぼみの名を口にする薫子さんを心配し、その手をとるつぼみ。
薫子さんはその頭を撫で、小さかったつぼみが大きくなった事を改めて実感しますが、
その表情とその発言からは複雑な心情が伺えるような気がします。

植物園でコッペ様にもたれかかり、至福の時を過ごしていた3人は
薫子さんに先日の強化デザトリアンの事を報告し、
対抗する力を得る必要があると考えていました。
薫子さんは強化デザトリアンの事よりも、3人が力を欲している事に顔を曇らせているようですが、
空気を読まずにシプレとコフレは、キュアフラワーが昔得た力の事を思い出しました。
何も知らずに無邪気に目を輝かせるえりか。
しかし薫子さんはその力、ハートキャッチミラージュはまだ早い、と制します。

ハートキャッチミラージュとは、プリキュアに無限の力をもたらすもの。
しかし、その代償も少なくありません。薫子さんが50年前にデューンと対決した折、
最後の力でハートキャッチミラージュを使い引き分けに持ち込んだものの、
力の限界を超えたためキュアフラワーへの変身能力を失う事となりました。
『私はあなた達の成長を見守りたいの。諦めなさい』
諦めろ、と薫子さんらしからぬ言葉に3人とも真剣な覚悟を訴えます。
改めてハートキャッチミラージュの入手方法を尋ねると、
そこに現れたゆりが薫子さんに代わってプリキュアパレスに納められていると答えました。
ゆりも砂漠の使途が力をつけている事を危惧し、ハートキャッチミラージュ入手を進言します。
薫子さんは大変な試練が待ち受けている事を説明し、
あくまで思い留まらそうとしますが、3人の目は本気でした。
『もう、小っちゃかったつぼみじゃないんです』
つぼみの言葉に薫子さんも仕方なく折れ、プリキュアパレスへ連れて行く事になりました。

プリキュアパレスへの道は、植物園の奥深くにある木に
ポプリが持つ種をはめる事で開けます。
つぼみ、えりか、いつき、そして見届けて欲しいと同行を頼まれたゆりの4人は中に入り、
プリキュアパレスへと転移しました。
一人残された薫子さんは、50年前にデューンを倒せなかったために
つぼみ達が戦うはめになった事を悔やみ、一人その苦しみに耐えているようです。

着地した4人を迎えるように厚い霧が晴れ、
その奥からはノイシュヴァンシュタイン城のような城が姿を現しました。
入城を前に変身し、準備を整える3人。
『宝探しにレッツゴー!』
待ち構える試練の事を忘れているのか、脳天気なマリンと
城にかかる橋の高さに足がすくむブロッサム。まるで遠足感覚のようです。
ところがいつの間にか心の大樹がプリキュアパレス上空に来ており、
ゆりは自らが試練を受けに来た時を思い出します。
その時心の大樹で待ち受けるダーク様に気付いたムーンライト様、
この2人が繰り広げた死闘が、第1話冒頭の戦いでした。
すなわち、ムーンライト様=ゆりも試練の内容を知らないという事にほかありません。

城内の白亜の回廊、ステンドグラスの織り成す光景の美しさに目を奪われつつ、
最奥部まで歩を進める4人は、そこで待ち受ける人物に気付きました。
それはまさしく薫子さんです。
つぼみの祖母、花咲薫子としてではなく、先代のプリキュアとして
古よりの掟に従い、戦って倒すよう言い放ちます。
ハートキャッチミラージュを手に入れるための試練とは、先代のプリキュアを倒す事。
その過酷な掟を薫子さん自身も乗り越えたからこそ、
ハートキャッチミラージュを手に入れた事を明かします。
しかしブロッサムは祖母と戦う事など出来ず、それは薫子さんも同様でした。
そのため代理として遣わすのは、窮地に陥った際に現れる
花咲空さんに瓜二つのあの青年です。

『砂漠の使途との戦いはますます厳しくなるわ。
 何があってもやりぬく覚悟が必要なのよ。覚悟が無いのならプリキュアを辞めなさい!』
厳しく突き放す薫子さんに対してブロッサムは腹を括り、
彼への密かな想いをうちあけた上で戦う事を決意しました。
『私、あなたを密かにお慕いしていました。
 でも私達には守らなければならないものがあるんです。
 イケメンさん。あなたと戦う事が試練なら・・・わ、私必ず、あなたを乗り越えて見せます!』

しかし今まで披露されてきた通り彼の強さは際立っており、
ブロッサムとマリンによる2人がかりの攻撃を難なくあしらって同時に2人を壁に叩きつけます。
次いでサンシャインに壁や天井の石材を飛ばし、サンフラワーイージスで防ぎますが
『前方の守りは強いけど、サイドは甘い』(ヤムチャかよ)
薫子さんの見通し通り、横に回りこまれて攻撃されるサンシャイン。
歯が立たない3人の未熟さを痛感し、薫子さんは試練を受けるのは早すぎたと漏らします。が・・・

シプレ、コフレ、ポプリの応援が3人に元気を与えました。
確かに未熟かも知れないけれど、力を合わせれば不可能は無い。
3人手を重ね、再び彼に挑みます。
石材の雨を乗り越えて接近し、ブロッサムが、続けてマリンが、
そしてサンシャインが連携攻撃を叩き込みます。
再び襲う石材をサンフラワーイージスで防ぐサンシャインの横の隙は
ブロッサムとマリンが防いで彼に反撃。同じ手は二度と食わないという事です。
『イケメンさん、私達の心の力、見てください』
そして繰り出される3人技、シャイニングフォルテッシモが彼に炸裂しました。

『成長したな・・・』
満足そうに呟いた彼は、突如コッペ様の姿に。
ゆりも初めて知ったらしい事実、彼の正体はやはりコッペ様でした。
空さんに似た姿でいたのは、薫子さんの最愛の人の姿で傍にいてあげるという
コッペ様の思いやりだと理解するゆり。
そしてブロッサムは試練を乗り越えた事よりも、
淡い恋心が再び夢敗れた事にショックを隠せませんでした。

何はともあれ、試練を乗り越えた証として奥の部屋への扉が開きます。
そこには(この作品世界での)先代プリキュア達の石像が安置され、
奥に聳える木は上空の心の大樹と重なり合っていました。
試練を乗り越えた事をねぎらう歴代プリキュア達の意思の声が響き、
無事ハートキャッチミラージュが授けられます。
それを手にした3人は、可能性を無限に高めるのならば
再びゆりがムーンライト様になれるのでは、との想いを抱き、
薫子さんとコッペ様は、50年前の自分達の姿と重ね合わせて
今の世代のプリキュア達を見守るのでした。
『コッペ、50年前は私とあなただけだった。
 でも今は違う。大丈夫ね、みんなが力を合わせれば、きっと・・・』


力を受け継ぐために、認めるために先代を倒して乗り越える。
私の世代では南斗鳳凰拳を伝承したサウザーが真っ先に浮かぶように、
こういった展開そのものは珍しくありません。
が、プリキュアシリーズでこの手の話は、率直に言って見たくありませんでした。
先代を倒すという悲しみ、痛みは深いもので、先述のサウザーもそれ故に
「愛などいらぬ!」という信念を持つに至りました。
そんな悲しく辛い想いを、私としてはプリキュア達に持たせたくありません。

今回薫子さんが終始重苦しい雰囲気を漂わせている所を見ると、
薫子さん自身もブロッサム達に倒される事を覚悟していたとしか思えません。
そして、倒されるとは何を意味するのでしょうか。
プリキュアとしての役目を終える事なのか、それとも文字通り命を投げ打つ事なのか・・・
薫子さんがかつて試練を乗り越えたと口にした際、
その脳裏にはかつてのプリキュアが石となったような姿が浮かびました。
蓋を開けてみれば、それは奥の間に安置されたプリキュアの石像と見るのが妥当ですが、
あれは本当にただの石像なのでしょうか。
新たなプリキュアのために踏み台となり、倒されたプリキュアそのものが石となっている、
あるいは倒されたプリキュアの墓碑に思えてなりません。
例えばちょっとしたファンサービスとして、石像の容姿を
過去シリーズのプリキュア達を思わせるデザインにする事も出来たと思いますが、
今までの誰にも似ていない「ハートキャッチシリーズの世界での過去のプリキュア」
に統一されているのは、それがファンサービスにならないと判断したからではないでしょうか。
ブラック、ホワイト、ルミナス、ブルーム、イーグレット、ドリーム、ルージュ、
レモネード、ミント、アクア、ローズ、ピーチ、ベリー、パイン、パッション。
この誰かに似ていたとしたら、彼女達がここで最期を遂げたかのように思えてしまい
それはあまりに酷な話で、少なくとも私は耐えられません。

ここで後輩に倒される運命を避けられないとしたら、
この作品世界でプリキュアになるという事は、非常に重いものとなります。
シプレ、コフレ、ポプリもその事実を知らなかったようですので
純粋にプリキュア誕生を喜んでいましたが、
これを知っていたとしたら素直に喜べないか、罪悪感を抱きかねません。
運命は変えられると信じて戦い抜いてきた歴代シリーズと比べて、
世界の平和のために捧げられる贖罪の山羊の運命を逃れられないのならば、
少女たちの戦いは実に悲しく思えてきます。
『誰かの犠牲の上に成り立つ世界なんて要らない・・・』
違った意味での初代のプリキュア、なぎさの言葉が思い出されました。

そのルールが厳密でない事も違和感を覚えます。
つぼみと戦えないというのは、たまたま身内がプリキュアに選ばれた薫子さんの私情で
代理の者に戦わせる事がまかり通るのならば、試練の重みが薄れるように感じました。
今回前半の薫子さんは、つぼみが大きくなった事に想いを馳せ、
プリキュアが力を得る事に複雑な想いを抱いており、
それは自身がつぼみ達に倒されるという運命を知っていたからだと思います。
『私はあなた達の成長を見守りたいの』
との発言は、つぼみ達が試練を通らずに、
薫子さんも倒されずに3人が成長する事を望んでいるように見えます。
薫子さんがデューンを倒しきれなかったがために、
つぼみ達を戦わせている事を嘆く描写からは、つぼみ達が砂漠の使途と戦う事よりも、
祖母と戦う運命を与えてしまった事を嘆いているようにです。
ところが、あっさりとコッペ様の代役が認められており、
薫子さんの前半で見せる悲壮な雰囲気は後半ではあまり感じられません。
憶測ですが、この描写の違いは薫子さんが本当に戦うというプロットだったものが
あまりに重過ぎるという事で差し替えられたのではないかと思いました。

今回は少々辛い評価で綴ってしまいましたが、
今までに無い設定を持って来た冒険心は素直に評価したいと思います。
そして憶測を読んだ謎の青年の正体を明かす際のあっさりとした描写、
(空さんと何らかの関係があるのかと思いきや、見事にはぐらかされました・・・)
第1話冒頭の舞台背景が明らかになるなど、一部の伏線回収もあり
中盤を盛り上げる一編である事には変わりありません。

そして次回、ムーンライト様復活劇に大いに期待したいと思います。
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pirosiki

玩具売り上げは今後、作品の続投を左右する重要な点とは理解していますが今回のハートキャッチミラージュはちょっと・・・(敢えて言いませんが)

今回心に残った点で幾つか・・・

・イケメンさん
個人的には正体がコッペ様である以上、あっさり描写の方がいいかもしれないと考えています。
どうしてものぞみとココを思い出してしまいますから・・・

・継承というテーマは確かに冒険でしたね。
今の子どもたちに受け入れられるかはまったくわかりませんし、プリキュアシリーズは型にはまろうとせず、進歩しようと努力していますね。

次回はいよいよムーンライト復活ww

PS.
秋になると来年度の新作品のタイトルがぼちぼち出てくるころです。
そしていつも初代復活を願ってる自分がいます(笑)
by pirosiki (2010-09-20 21:04) 

スティクス

>pirosikiさん
コメントありがとうございます。
仰るとおり、確かにハートキャッチミラージュは単価も高いですし
置き場所にも困りそうなサイズですよね。
クローバーボックスしかり、ポルンやムープ、フープの子供用パソコンもしかり
中盤に大型で単価の高い物を出すのは売上の上方修正を狙っているのでしょうか・・・

ところでコッペ様のあっさり正体暴露の肩透かしは
私も結構気に入っています。色々と伏線を張り巡らせるよりも
その潔さがかえって新鮮でした。
pirosikiさんがご指摘されるように、なるほど
のぞみとココに追随しないようにとの見方もあるのですね。

そして今回はいろいろと管々しく述べてしまいましたが、
違った展開、バックボーンを出そうという冒険心は評価したいですし、
それ故に進化していくシリーズだと思います。

初代から脈々と築き上げられてきたプリキュアという大樹が
どこまで大きくなるのか、来年度の新作品が楽しみですし、
このシリーズが終わるのが寂しくもあります。
来年のDX3での初代の活躍をぜひ期待したいですね。
(そして本編にもチラっと特別出演するのもアリかもしれません)
by スティクス (2010-09-21 23:10) 

やまぴょん

スティクスさん、こんばんは。

先代のプリキュアを倒して、というのはどうなんでしょうね。
個人的には、倒して=殺してという風には考えていなかったので、
(フレッシュ以降、決め技が浄化技であるため。)
それほど気にはしていなかったのですが、
そうは言っても、殴り合いをすることにはなりますからね。
ちなみに、娘(4歳)はあまり気にしている様子はなかったです。

それよりも、ハートキャッチの作りが全体的に雑なのが気になります。
例えば、薫子さん自身がデューンとの戦いでもうプリキュアに変身できなくなったことを言っていたはずなのに、
孫とは戦えないことを理由にしてコッペ様を代理に立てたので、
見てて思わず突っ込みたくなりました。

サンシャインの誕生やムーンライトの復活にしても、展開が速く感じ、
個人的にはもう少し丁寧に話を進めてほしかった気がしました。
by やまぴょん (2010-09-30 19:20) 

スティクス

>やまぴょんさん
コメントありがとうございます。
確かに「浄化技」ですから、私の考え方は少々物騒でしたね。
そしてプリキュア同士の殴り合いといえば、
子供達がトラウマになった劇場版MHがあるので
そこに配慮してコッペ様が出て来たのかもしれません。

ご指摘の通り、確かに矛盾や粗も目立ちましたが、
ハートキャッチにはハートキャッチの優れた点も多々あると思います。
悩みを抱えた人々を救い出す。それもプリキュアが解決するのではなく、
デザトリアンとなった本人が問題の根本に気が付く事で
前向きに生きていく、という展開は評価しています。

これからムーンライトも交えて日常展開が進むのか、
それとも一気にストーリーの核心に向かうかはわかりませんが、
見ている私も少し前向きになるハートキャッチの物語の後半も
楽しみながら視聴していきます。
by スティクス (2010-10-02 08:06) 

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