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プリキュア5 第16話『こまち小説家断念!?』 [Yes!プリキュア5]

「十五少年漂流記」「八十日間世界一周」「海底二万マイル」など
子供の頃にはヴェルヌの小説に胸を躍らせたものです。
面白い冒険小説とはスリリングな展開もさることながら
困難な状況に直面した人間同士の関係や、困難を乗り越える者の心の強さを
描いたものだと思いますが、こまちの作品「海賊ハリケーン」はどうだったのでしょうか。
ナッツの厳しい批評に、意外な脆さを見せるこまちの描写もさる事ながら、
初登場にして強い存在感を放つまどか姉さんの魅力も堪能できる一編でした。
  
"大嵐に遭遇した船は荒れ狂う波になす術も無く、今にも転覆しそうだった。
 そこへ追い打ちをかけるように、海賊船が現れた!
 絶望的な状況に、乗客誰もが口々に叫ぶ。「助けてくれ!」「もうおしまいだ!」
 しかし、一人だけ絶望していない者がいた。
 希望に輝く瞳を持つその少年は、力強く立ち上がって言った。"
・・・おしまいじゃないよ』

こまちはみんなに自作の小説「海賊ハリケーン」を読み聞かせていました。
みんなの反応も上々で、面白い、続きが気になる、こんなに文字を書けるなんて凄いと
一人のぞみだけ着眼点が違う褒め方をしますが、その反応にこまちも満足そうです。
ココはパルミエ王国一番の読書家だったというナッツに読ませてみようと提案し、
言葉通りにこまちはナッツの許へ原稿を持って行きますが・・・。

ナッツが読んでいる間、こまちはのぞみの父の新作童話について語り、
あんな風に人を感動させる物語が書きたいと話を弾ませていました。
こまちならきっと書ける。みんなはそう信じて疑いませんが、
海賊ハリケーンを読み終えたナッツの感想は、辛辣なものでした。
『何が言いたいのかわからない』
ナッツの感想を心待ちにしていたこまちは、思わず耳を疑います。
『こまちがこの物語で、何を訴えたいのかわからない』
戸惑いながらも説明しようとしたこまちを、さらに容赦の無い感想が襲います。
『説明しなければわからないのなら、これを読む意味は無いな。本にする価値は無い』
あまりの事に茫然自失のこまち。みんなはナッツの物言いを責めますが、
ナッツ自身には全く悪気が無く、素直な感想を言っただけの事。
さらに、客観的に見れば決して良い作品では無い、との言葉を聞いて、
こまちは震える手で原稿を握り締めました。
『そうよね・・・そんな簡単に良い話が書けるわけ無いわよね・・・』

ショックのあまり飛び出すように帰ってしまったこまちを追うかれん。
残された3人はナッツの事を責めますが、
当のナッツは本当の事を言っただけと悪びれる風もありません。
『俺は正直に思ったことを述べただけだ』
そうは言ったものの、ナッツは小々田先生の視線が気になります。
『馬鹿がつくほど正直で、お世辞の一つも言えない不器用な奴だってこと。
 こまちを傷つけてしまった自分に腹が立っている。だろ?』
ナッツもこまちを傷つけた事は気付いていますが、どう行動すればいいのかわかりません。
恩着せがましい小々田の言葉に反発するように、
自分で何とかすると一人ナッツハウスを出て外へ向かいました。

そして公園で、こまちを慰めるかれん。
あの話はたまたまナッツの好みじゃなかったという慰めも、
躍動感があって続きが気になるという励ましも、落ち込んだこまちには届きません。
『私は大丈夫だから・・・』
かれんを心配させないように笑顔を見せるも、
一人になった後はただ俯き、こまちはすっかり自身を失ってしまったように見えます。
その様子を物陰からアラクネアさんが目をつけて・・・
しょんぼりしてる子見ぃ~つけた 絶望のにおいがするわ』
  ↑時期が時期だけに、ネタなのに書いてて寂しくなりました。嗚呼、サソリーナ・・・

翌日夕刻、ナッツは苛立ちながら手当たり次第本をめくり、解決方法を探していました。
率直な感想をぶつけられた際の、衝撃を受けたこまちの顔が忘れられず、謝るべきか、
正直に言った事なのになぜ謝らなければならないのかと、苛立ちは募るばかり。
そんな折、ナッツハウスの前に大きなバイクに跨った女性ライダーが訪れました。
丁度来店したのぞみ、りんちゃん、うららもその格好良さに目を奪われますが、
ナッツにしてみれば店の前で大きなエンジン音を立てられて迷惑そうです。
『客だろうと迷惑にかわりは無い』『人と話す時に顔も見せないような奴には礼儀など必要無い』
などと相変わらず率直過ぎる言葉をぶつけますが、
女性ライダーはまるで動じず、素直にナッツの言葉を認めて、
失礼を詫びてヘルメットを脱ぐと、その顔を見たナッツと3人は驚きを隠せませんでした。
ヘルメットの下から現れたのはよし美先生こまちと全く同じ顔の女性ライダー。
まさか・・・?普段のおっとりのんびりしたこまちと正反対の振舞いに驚きますが
その後来店したかれんによって、それはこまちの姉、まどかだと知り、
まどか姉さんのサバサバとした態度に、早速のぞみ達はハートキャッチされました。

しかしその頃、こまちは一人自室に閉じこもり
膝を抱えて海賊ハリケーンの原稿に目を落としていました。
たまたま通りかかったピンキーを追って目を放した刹那、
その原稿に蜘蛛の影が忍び寄り・・・

まどか姉さんがナッツハウスに来たのは、こまちに頼まれて豆大福を持って来たためでした。
のぞみ達はこまちの気遣いを大人だと評して、ナッツも見習うよう批判しますが、
ナッツは感想を正直に言わないと本人のためにならないとの考えを曲げません。
こまちが落ち込んでいた理由を察したまどか姉さんは、ナッツの意見を支持します。
少しきつく言われたぐらいで拗ねるあの子が弱いだけ、
これしきの事で落ち込むようでは作家になるのは無理と切り捨てるまどか姉さんに、
4人は一斉に、無理じゃありませんと反論。
こまちがいかに熱心に執筆していたのかを、その熱意を、時に自らに置き換えて真摯に訴え、
断固こまちを応援するという4人の姿は、まどか姉さんの胸を打ちます。
みんなの激励を必ずこまちに伝えると約束し、帰ろうとするまどか姉さんに
ナッツはある頼み事を持ちかけました。

相変わらず部屋に閉じこもっているこまちに、来客を告げるまどか姉さん。
こまちが行ってみると、そこにはナッツが訪れていました。
まるで見合いのように座敷で向かい合う2人の様子を、庭でこっそり伺う4人。
自分には才能が無いと漏らしたこまちに、ナッツは再び素直すぎる言葉をぶつけました。
『お前の夢に対する気持ちは、その程度か!?』
ところがその口調が庭に忍び込んでいた4人の癇に障ったようで、
皆口々に立ち上がってナッツを非難しますが・・・
『何か出たココ!』
突如、卓の上の原稿が舞い上がり、まるでハリケーンのようにみんなの周りを包み込みます。
まどか姉さんが騒々しい物音を注意しに駆けつけたとき、
原稿は何事も無かったかのように丁寧に綴じられていますが、座敷には誰の姿もありません。

気がつくと5人は、嵐に揺れる船の甲板にいました。
のぞみの頬をつねって、夢じゃない事を確認するりんちゃん、
荒れ狂う波しぶきのしょっぱい味が本物だと感じるうらら。
本物の海にいるのか訝るかれんの前で、こまちは荒波に揉まれる客船を見て
海賊ハリケーンの中の世界であると確信します。
果たして物語の中の世界に姿を現すアラクネアさんが帆柱に仮面を被せ、
どこかジャック・スパロウのような風貌のコワイナーを前に変身する5人。

ロープの髪を振り乱し、マントを翻して襲い掛かるコワイナーに
ルージュとレモネードは甲板に叩きつけられ、
ドリームとアクアは荒れ狂う海に放り込まれる等、苦戦を余儀なくされます。
ミントは一人、自分が作り出した世界がみんなを苦しめているとの
罪の意識に苛まれて、戦う前から戦意を失っていました。
そんなミントに喝を入れるナッツ。その言葉は相変わらず率直なものですが、
物語を良い様に変えられ、利用されて腹が立たないのか。
自分を責めて落ち込んでも何も変わらないというナッツの言葉にドリームも続き、
失敗してもやり直せば良い、チャレンジは何度だって出来るという言葉に
ミントはようやく立ち上がる気力が戻りました。
そしてナッツの『夢を諦めるな』という言葉に立ち直りかけた時、
4人を襲う攻撃の余波を受け、ドリームコレットを落としてしまうナッツ。
格好のチャンスを見たアラクネアさんがナッツに迫りますが、
割って入ったミントがナッツを助け出しました。
『この物語は悲劇じゃない!何があっても主人公は決して諦めない。
 例え絶望しても再び立ち向かう勇気を持っているのよ』

ミントはもう、ウジウジしていません。

『これは私の物語よ!』
迫る攻撃からみんなだけでなく、物語をも守るようにミントプロテクションを張り、
その隙にレモネードフラッシュが炸裂、ルージュは髪のロープを逆にコワイナーに絡みつかせ、
『ミントの大切な物語を土足で踏み荒らした事を、反省なさい!』
有無を言わせぬ迫力でアクアストリームが叩き込まれ、コワイナーは撃退されました。
そしてアラクネアさんも捨て台詞を残し、引き上げていきます。
『何さこんな話。ぜーんぜんつまらないわ。ふーんだ!』
(しまった ぜんぜん コドモみたいだった!)

『直すべき点は多い』
素直に頷くこまちに、ナッツも今度は短所だけでなく、
主人公は悪くなく、嵐と共に現れる海賊の設定もまあまあだと、長所も指摘します。
褒めるのが下手ながら、ナッツの不器用な気持ちはこまちに通じました。
時間がかかっても書き直すと決心したこまちからは、もう夢を諦めた弱さは伺えません。
これで心置きなく豆大福が食べられると茶化し、笑い合うみんなを
まどか姉さんはいつの間に戻ってきたのか不思議そうに見つめていました。


私自身、文章を書くのは本当に難しいものだと常に感じています。
これで生計を立てているわけでも、報酬を得ているわけではありませんが、
こうして文章を公開する以上、文章に対する責任は必要だと思いますし、
後から読み返して書き直したくなる事も多々あります。
プロの作家ともなれば文章に対する責任はより重いものですし、
独りよがりの自己満足な内容では読者の共感も得られない事でしょう。
読者の要望を優先するか、自分の書きたいものを貫くかという葛藤や、
出版社との交渉、衝突もあるでしょうし、何より売れなければ収入になりません。
こまちが抱く作家の夢は、楽しいところだけを捉えていた感がありますが、
中学三年の少女にとって、まだ現実の厳しさは想像しづらいでしょう。
ほとんど出番が無い童話作家ののぞみの父ですが、前回にそれとなく
「出版社の人との打ち合わせで夜が遅い」と触れられていました。
童話作家は物語を通して夢を与える仕事かもしれませんが、
のぞみやこまちにとっては、その裏の現実は見えづらいのではないでしょうか。

今回、こまちに厳しい評価を下したナッツは一方的にみんなに責められますが、
残念ながらナッツと、それを支持したまどか姉さんの方が正論だと思います。
みんなに手放しで海賊ハリケーンを褒められたこまちは、
彼女の性格からして嫌味には見えないものの、内心では天狗になっていたのでしょう。
自身満々な時に否定されると、通常よりもダメージは大きいものですが、
簡単に夢を諦めると口にするのはプリキュアのヒロインとしては
少々残念な描かれ方で、これはこまちの一時の気の迷いだと思いたいです。
こまちを弁護する4人も残念ながら傷を舐めあっているように見えてしまい、
ナッツに非があるとすれば、オブラートに包まずに単刀直入すぎた事でしょうか。

私もナッツ同様、話の主題に対して少し辛い評価を下してしまいましたが、
まどか姉さんの気さくでさっぱりとした魅力が描かれていたり、
ナイトメアのやりとり等、脇を彩る物が印象に残る一編だと思います。
まどか姉さんはこまち役の永野愛さんが2役を演じているのですが、
かつてのよし美先生とシークンのように、一聴しただけでは同じ方とは思えず、
正反対の性格や口調と相俟って永野さんの芸達者ぶりを感じました。
そしてナイトメアではカワリーノの問いに窮したブンビーさんがアラクネアさんに無茶振りしたり、
デスパライアの「希望はどこから生まれている?」という問いに
「薄い給料袋から・・・」と答えるなど、「大人」の登場人物たちが生き生きとしていた印象でした。
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