SSブログ

残り少ない冬の日に シベリウスの交響曲第6番 [音楽]

2月も下旬に入り、ようやく寒さが多少和らいできました。
とはいえまだまだ寒さを感じる日々が続き、
こんな寒い日には北国の音楽が聴きたくなるものです。
先日はフィンランドのメタルを紹介しましたが、
今回はそのフィンランドが誇る大作曲家シベリウスの作品のうち、
私が一番好きな曲、交響曲第6番をご紹介します。
もっとも、これはクラシックファンの間でもかなりマイナーな曲なのですが・・・
  
クラシックに馴染みの無い方でも知っているシベリウスの楽曲といえば、
何と言ってもダイ・ハード2でも使われた「フィンランディア」でしょう。
普段クラシックを聴いている方でも、交響曲なら第2番、他はせいぜい第1番か第5番、
トゥオネラの白鳥、カレリア組曲、悲しきワルツといった管弦楽作品群、
そしてヴァイオリン協奏曲といったところが一般的です。
そんなシベリウスの全7曲の交響曲の中で、この第6番は実演も録音も少なく、
決して有名とはいえない作品です。
しかし、シベリウスファンに好きな作品を挙げてもらうとすれば、
真っ先に第6番を挙げる方も多いのではないでしょうか。
この曲にはそれほど、フィーリングに合った聴き手を魅了するものがあります。
以下、この曲の魅力を語って行きたいのですが、
かなり厨っぽい言い回しが多いのはご容赦下さい(苦笑)
なにぶん相応しい言葉が思いつかないもので・・・

私は第1楽章の序奏の終わり、ハープが遊ぶリズムに乗って、フルートが踊るメロディに、
初めて聴いた時から魅せられてきました。(この動画では2分36秒からの展開です)

森と湖の国フィンランドの、初夏の爽やかな空気が感じられそうな雰囲気、
森の奥の清麗な泉に舞う妖精のような、可憐で美しい音楽が
どこまでも淀みなく続くこの楽章を聴いた時、
世界にはこんなにも美しいものがあったのかと衝撃を受けたものです。
この楽章の全てが大好きなのですが、前述のハープとフルートの他、
4分50秒からのバスクラリネットとチェロが導き出す旋律、
6分10秒からの流れるような躍動感に溢れた展開が好きで好きでたまりません。

続く第2楽章は、例えるならば冬のフィンランドの夜空に舞うオーロラでしょうか。

北欧の静かで暗く長い夜に、ゆらゆらと揺れるオーロラのような仄暗い光。
本当に少しずつ、少しずつ盛り上がって行き、
この動画の3分17秒あたりからの力強くはためくような展開を聴く度に、
本物のオーロラを見てみたいと思ってしまいます。
そして4分10秒あたりからの、静かにしんしんと降る粉雪のようなリズムにのって
民謡風のメロディが歌う展開が、この楽章の余韻を高めています。

3楽章は一転、リズミカルな音楽です。

初めて聴いた時以来「白夜の白樺の森の奥から聴こえる舞曲」
といったイメージを抱いてきました。
チャーミングかつ幻想的な雰囲気の中にも、
どこか切ない雰囲気を漂わせるのは続く4楽章への布石でしょうか。

その4楽章は後ろ髪を引かれるような旋律から始まります。

決して悲しい音楽ではない筈なのに、この切なく哀しい雰囲気は何なのでしょうか。
今年の大河ドラマ「平清盛」の音楽を担当されている吉松隆氏は、
宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」と、この交響曲第6番との類似を語っています。
私は第1~第3楽章まではさほど銀河鉄道の夜との親和性が感じられないのですが、
この4楽章だけは氏のご意見に賛成です。
銀河鉄道の夜の終盤、どこまでも一緒に行こうとジョヴァンニが口にした直後、
永遠に姿を消すカムパネルラ。その姿を追い求めて涙するジョヴァンニを乗せて
宇宙の闇を間を疾走する銀河鉄道の姿が、この楽章にぴたりと当てはまるように聴こえます。
この曲のラスト、切ないながらもどこか安らぎを感じさせるような結びは、
魂の平穏を願う祈りのように思えてなりません。

この曲の録音は多くなく、ほとんどが「シベリウス交響曲全集」の一部として
収められている程度なので、おのずと選ぶCDは限られてきます。
私にとって一番大きなポイントは、前述の1楽章での
ハープとフルートのフレーズが私のフィーリングに合うかという事です。
その点では、かねてより評価の高いカラヤン指揮ベルリン・フィルの67年盤は、
この部分が私の好みに合わないのが少々残念です。
それ以外の部分では大変素晴らしい演奏なのですが・・・

シベリウスファンにはお馴染みとも言える、
ベルグルド指揮ヨーロッパ室内管盤は、この曲の全てを見透かすような
透明度の高い極めて優れた演奏だという事は異論がありません。
しかし、好きかと問われると、これも私の好みとかけ離れてしまっています。
あまりに透明すぎるというのが残念、という贅沢な要求なのですが・・・

ヤルヴィ盤、ヴァンスカ盤など、北欧出身指揮者のシベリウスは
本場の演奏と言えるのですが、やはり件の箇所が好みに合わず、
数少ないこの曲の録音において、私の理想盤というのがなかなかありませんでした。

私がずっと聴いてきたのは、シベリウス演奏のパイオニアと言える
サー・ジョン・バルビローリ指揮ハレ管弦楽団による全集盤です。
とにかくシベリウスの音楽が好きで好きでたまらない温厚な英国紳士による、
格調高く暖かい演奏は、少々古いスタイルといえど、
今もって聴く度に発見がある優れたものだと思います。
シベリウスの作品を聴く際は、大抵バルビローリ盤を選べば外れは無いと言えるでしょう。
バルビローリ同様、シベリウスが好きで好きでたまらない日本紳士、
渡邊暁雄指揮の日本フィル盤も好きな演奏の一つです。

ところが最近、ブロムシュテッド指揮サンフランシスコ交響楽団盤を聴いて、
これこそ私にとっての理想盤だと感じました。
例のハープとフルートの絡みの場面は、こんこんと湧き出る泉の源流のような美しさがあり、
それ以降も私が望みたいもの全てが現出されています。
人によって好みの好悪は当然ありますが、
私にとってはようやく探し求めていた演奏に出会えた嬉しさが半端ありませんでした。

この曲の紹介のために探した動画におけるサロネンの演奏も
2楽章が私にとっては早すぎるきらいがあるものの、概ね満足行くものでした。
動画では終始音ズレが発生している事が残念ですが、
この曲は演奏会で採り上げられる事そのものが珍しいため、
貴重なものを観られたという満足感がありました。

ちなみに、私はこの曲が本当に好きなのにもかかわらず、
一度も生で聴いたことがありません。
マイナーな曲のために、演奏会で採り上げるのは営業上難しいと思いますが、
いつかは生でこの響きを堪能したいものです。
各オーケストラの皆様がもしこの駄文をご覧になっておりましたら、
ぜひ演奏会のプログラムに挙げて頂けると嬉しいのですが・・・
nice!(1)  コメント(5)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 5

ナンナン

はじめて書き込みさせていただきます。

シベリウスの6番、ほんとういい曲ですよね。
僕にとっても大切な曲の一つです。

今回書き込みさせていただいたのは、近々、この曲が演奏されるライブがあるということをお知らせしたかったからです。

それは以下のコンサートです。
http://www.ainola.jp/concert.html

また、日本フィルの2012~2013の定期演奏会では、全交響曲が演奏される予定となっています。

参考にしていただければ嬉しく思います。
by ナンナン (2012-03-03 01:25) 

スティクス

>ナンナンさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
この曲が好きな方は結構多いと思っていただけに、嬉しいです。

本当に素晴らしい曲なのに、知名度が低いのが勿体ないですが
ある意味あまり隠れた名曲という立ち位置が良いと思ったりと、
シベリウス後期の作品群に対しては、ちょっと複雑な気分になりますね。

コンサート情報、ありがとうございます。
夢にまで見た生演奏、日曜日という事ですので
ぜひ時間を作って足を運んでみたいです。
というよりもシベリウス好きには嬉しいプログラム、
これは絶対に行かせて頂きます。
当日会場でお会いするかもしれませんね。

日フィル定期の情報もありがとうございました。
来年の4月26日・27日と少々先の事ではありますが、
今から意識しておけば有休もとれそうですので
こちらも楽しみにさせていただきます。
第3番、第6番、第7番という、シベリウス好きをにとって
宝物のように素晴らしいプログラムがたまりません。
by スティクス (2012-03-03 22:20) 

サンフランシスコ人

「ブロムシュテッド指揮サンフランシスコ交響楽団盤を聴いて、
これこそ私にとっての理想盤だと感じました。」

あの定期演奏会に行きました..

http://www.sfgate.com/news/article/Blomstedt-s-inspired-Sibelius-3150223.php
by サンフランシスコ人 (2016-12-13 08:09) 

スティクス

>サンフランシスコ人さん
あの演奏を生で聴いていらしたとは!羨ましいです。
リンク先の資料も貴重なもので、ありがとうございました。
by スティクス (2016-12-14 07:44) 

サンフランシスコ人

小澤征爾はサンフランシスコ交響楽団でシベリウスの交響曲をやらなかった思います......
by サンフランシスコ人 (2017-10-20 06:58) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。