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METライブビューイング『ドン・ジョヴァンニ』 [音楽]

 先日初めてこのMETライブビューイングを観た際、その面白さにすっかり虜になってしまいました。先週土曜から新たに上映されたのは、モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」。重量級の「トリスタンとイゾルデ」より入り込みやすいとはいえ、モーツァルトのオペラの中では最も重厚なクライマックスを演出する作品です。
 そんなわけで、昨日は「魔法つかいプリキュア」の放映を見た後、同作の第8話感想を途中まで書き上げ、昼前に一旦東銀座まで自転車で行ってきました。
  
 14時の上映に合わせて昼ごろ家を出て、のんびり自転車を漕ぐこと30分。途中でラーメンと餃子を食して鑑賞に備えました。なにもオペラだからって、タキシードを着こんでシャンパン片手に、なんて気取ったことする必要は本来無い筈なんですが、世間からはそんな敷居の高いイメージが未だにあるようです。

 結局昼間っからビールと餃子とラーメンなどを流し込んで、15分前には東劇到着。前回の「トリスタンとイゾルデ」の時にも感じたのですが、この映画館の座席、なんともすわり心地が絶妙です。シネコンとは異なる老舗映画館の風格のようなものが感じられました。
 先日と同じく開演前の客席風景が映し出されると、場内のざわめきと、オーケストラの「勝手弾き」の独特の音など、実際の劇場やコンサートホールへ足を運ぶと聞こえてくる音が聞こえて、本当にメトロポリタン歌劇場にいるような臨場感があります。

 そして開幕。先日の「トリスタンとイゾルデ」は演出上、前奏曲を演奏している様はほとんど映りませんでしたが、今回の序曲では、ピットの中のオーケストラが活躍する様も楽しむことが出来ました。
 ただ、やっぱり前回も感じた残念な点は相変わらず、遅刻してくる方の多いことといったら・・・。あまり神経質にならないで楽しむように、私自身が考えを変えた方が良いのかもしれません。かつてはオペラの序曲が流れている最中にも入場が許されていたり、みんなお喋りしていたり、という時代もあったようですから。

 さて、「ドン・ジョヴァンニ」について。例によってストーリーは実にどうでもいい話だったりします。ざっくり今風に置き換えて要約すると
「女を見ると口説かずにはいられない連続レイプ男が、夜這いしようと忍び込んだ家のとっつぁんを殺して逃亡。その後も己の行いを悔いることなく女に手を出し続け、挙句に子分に罪をなすりつけようとしたり、その子分の嫁を寝取ろうとするなどやりたい放題。そんなときに殺したとっつぁんがあの世から現れ、悔い改めるよう迫るけど、全く聞く耳持たず、男は地獄へ落とされましたとさ」
 なんていう話です。しかし、そこに音楽が合わさると至高のエンターテイメントへ昇華されてしまうところがオペラの面白さであり、不思議なところです。

 プリキュア感想を書き連ねて来た身としては、方向性が異なるものの、ドン・ジョヴァンニの生き様はプリキュア5GoGo!のラスボスである館長を思い出させました。もっとも彼は好色な人間ではなく、逆に想い人に対して一途だった故に他の事など一切省みない男でした。しかし、他人の評価など気にせず己のやりたい事を貫き通し、最後の最後まで己の信念を曲げずに貫き通したところ、なんとなく共通するようなものを感じました。

 そしてもう一人、ジョジョ第4部のラスボスである吉良吉影も、ドン・ジョヴァンニに通じるものがあるように思えます。現在放映中のアニメで初めて4部を観ていて原作未読の方には若干ネタバレになるのでご注意ください。
 吉良吉影も、殺人という性を背負いながら自分の欲望に対して忠実です。また、どんな窮地に追い込まれても必ずそれを乗り越えようとする精神力は、ドン・ジョヴァンニも持っています。そして、かつて殺した相手(杉本鈴美)によって地獄(振り返ってはいけない小路の先)へ引きずり込まれる最後の最後まで、悔い改めず己の信念を貫いたところにも共通点を感じました。

 ドン・ジョヴァンニのラストシーンは、登場人物みんなで悪い奴の最後はこんなもんだ♪みたいな歌を歌っておしまいになるのですが、迷惑ばっかりかけまくるドン・ジョヴァンニがいなくなった事に、いつの間にか妙な寂しさを感じてしまう不思議な余韻を残します。4部のラストも、もう戻らない川尻浩作を待ち続ける姿などに寂しさが伺えます。今までモーツァルトを聞いてこんな感想を抱いた事などなかったのですが、間もなく4部アニメが終わるタイミングだからこそ、このような感想を持ったのかもしれません。

 さて、今回の演出については、これぞスタンダードなドン・ジョヴァンニという分かりやすいもので、この作品を観た事が無い方にとってもお勧めできる内容でした。ドン・ジョヴァンニの地獄落ちの場面での迫力も十分で、DVDよりも大画面で観た方がこの迫力を堪能できると思います。
【参考】「地獄落ち」はこんな感じの場面です。


 そしてインタビューでは、好色男ドン・ジョヴァンニ役のキーンリーサイド氏が、本作品をアメリカ独立戦争やフランス革命、ダーウィンの進化論や神への挑戦、そして昨今のテロ問題などにからめて言及し、極めて固い内容の話をしていたのが印象的でした。ギャップ萌えって奴でしょうか(違)
 一方、他の出演者が「モスクワのみなさん観てる~♥」「インディアナのみんな~♥」なんていうお茶目なインタビューやってたりするのも楽しく、この企画が世界各地の映画館で上映されているのだという事も実感させられました。

 今週金曜まで上映しているようなので、オペラ入門にもふさわしいこの作品を通して、オペラの世界へ足を踏み入れてみてはいかがでしょうか・・・?
 ちなみに次回上映作品は、ほぼ新作の「遥かなる愛」なるオペラで、これは私もまったく知りません。逆にどんな作品なのか楽しみですが、これはちょっと入門向けとは言え無さそうです。さらにその次の「ナブッコ」の方が楽しめるかもしれませんね。

 そして前回でも感じましたが、こんなに素晴らしいものを見せられては、ニューヨークに行きたくなってしまいそうです。冬のボーナスに全く期待できなさそうな状況なので、困ったものです・・・
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サンフランシスコ人

サンフランシスコ歌劇場のドン・ジョヴァンニの公演に行ったことがあります....

http://archive.sfopera.com/reports/rptOpera-id317.pdf
by サンフランシスコ人 (2016-12-11 07:00) 

スティクス

>サンフランシスコ人さん
はじめまして。海外からのコメントでしょうか。ありがとうございます。
21年前の公演プログラムという貴重な資料もありがとうございました。
ラニクルズの指揮、サミュエル・ラミーやダニエラ・デッシー出演と、なかなか豪華な顔ぶれですね。こちらも見てみたくなりました。
by スティクス (2016-12-11 08:11) 

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