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魔法つかいプリキュア!第35話『生徒会長総選挙!リコに清き一票を!』 [魔法つかいプリキュア!]

 今回の再視聴は、奇しくも都議会議員選挙を来週に控えた、旬なタイミングでの視聴となりました。
 耳触りのいい公約や場当たり的な人気取りに終始する候補者もいれば、真摯に理想を追求する候補者もいます。有権者として票を投じる責任もあり、選挙というものはいつになっても難しいものです。
 突然降って沸いた生徒会長候補としての肩書は、リコに何をもたらすのか。対立候補のゆうとの姿勢と共に、誠実さとは何かを考えさせられる一編です。
  
 今回もテストで百点を取ったリコは、クラスのみんなに一目置かれています。
 もうすぐ生徒会選挙の締め切りがやって来ますが、未だ立候補者が無く、高木先生はクラスのみんなに立候補を募りました。自分には無理だという雰囲気がクラスに漂う中、ゆうとは真剣な顔をしています。そしてみらいがことはに「生徒会長は生徒の代表」と説明するのを聞いたリコも、生徒会長という肩書に関心を抱きました。

 休み時間に、みらいはもう少し詳しく生徒会長について説明します。
『生徒会長って委員会をまとめたりとか、学校の行事を運営したりするんじゃないかな』
『なんかかっこいいねー』
 勝木さんとまゆみも、リコに立候補を勧めます。当のリコはまだやる気ではなくとも、「生徒会長」と呼ばれる事にはまんざらでも無さそうです。
 その後、リコは図書室で生徒会長の役割について詳しく調べてみました。
『学校生活における諸問題を解決する大切な役目を担い・・・。生徒の代表、大切な役目・・・』
 壇上で皆の歓声を浴びる姿を想像し、頬が緩みます。
『よし!生徒会長やってみようじゃない!』
 みらいとことはを伴って、職員室へ立候補の届け出に来ると、壮太に伴われたゆうとが届け出をしたところでした。リコとゆうとは互いに健闘を誓い合います。

 一方、デウスマスト。シャーキンスとベニーギョ様は読書に励むオルーバを、情報収集などせずに潰してしまえばいいと馬鹿にしています。オルーバは意に介さず、
『潰すだけなら簡単さ。でもね、僕らは知る必要がある。彼女達を。その力が一体何なのかを』
 既にプリキュア側へ間諜を放った事を告げました。

 その、オルーバの命を受けたハチのような妖精(この時点ではまだ名前が出ていませんが、表記が回りくどくなるので以下チクルンと呼んでしまいます)が、津成木町にやって来ました。公園でみらい達を見つけて、そっと様子を伺います。
 みらい達は選挙対策に興じています。名前を覚えてもらうためのポスター作りや声掛け運動を提案したり、女子の人気を得るためにモフルンを応援キャラクターにしたり、勝木さんとまゆみも交えて盛り上がっています。チクルンは「モフルンが重要」という意味を履き違えて解釈しました。
 家に戻った後、みらいが魔法の羽ペンで目立つポスターを、ことはは手作りの応援うちわを、それぞれ作りあげました。

 そして選挙活動スタート。互いのポスターが校内に貼られ、校門前で両陣営がアピールを行います。
『生徒会長になったらみんなの要望を聞いて、素敵な学校生活を送れるようにします』
 男子にはにこやかに握手を、女子にはモフルンを持ち出してハートを射抜くリコ陣営に対し、ゆうとは緊張して声が出ません。見かねた壮太が元気いっぱいに「真面目でいい奴です!」とアピールすると、応援演説した壮太の方に注目が集まる始末。壮太に喝を入れられ、ゆうとは精一杯声を張り上げます。
『僕はこの学校をもっともっと素敵にしたいと思って立候補しました!』
 巻き返してきた対立候補を前に、リコ達も負けじと声を上げます。
『皆さんの要望を、ぜひ私に聞かせて下さい』

 みんなの意見を沢山聞こうというリコの希望通り、うんざりするほど沢山の意見が集まりました。その中身はといえば「おやつの時間が欲しい」だの「宿題をなくして欲しい」だの、かつてのウルフルンタロー達の公約みたいなものばかり。そんな意見でもリコは真摯に受け止めるつもりです。
『でも、みんなの期待に応えないと』

 休み時間。ことはは人知れず花壇を直しているゆうとを見つけました。花壇がきれいになれば、みんなも花を見て優しい気持ちになるというゆうとの意見に、ことはも共感します。

 そして放課後。沢山集まった意見を整理するために、リコは一人図書室へ向かうと、図書委員でも無いゆうとが本の整理をしています。
『きちんとすればみんなも来たくなるかなと思ったんだ。せっかく同じ学校にいるんだし、こういう場所で生徒同士が知り合えたら、もっと楽しいかなって』
『それで生徒会長に立候補したの?』
 ゆうとが立候補した動機はそれだけではありません。グラウンド使用を巡って野球部と陸上部がモメている光景をリコに見せて、
『本当はスポーツが好きな者同士なのに。クラブやクラス関係なく生徒みんなが仲良くなれるよう、僕に何か出来ないかと思って。僕、この学校をもっともっと素敵な場所にしたいんだ』
 そしてリコに向き直り、生徒会長としてやりたい事は何なのかを尋ねます。
『え・・・?やりたいこと?』

 結局ゆうとの問いには答えられなかったリコは、その夜選挙のスピーチを考えるべく原稿用紙に向かいますが、ペンは遅々として進みません。
『私、なんで立候補したんだろう。生徒会長になって私がやりたい事って何だろう・・・』
 今までも「立派な魔法使いになる」という目標を持ちながら、その先はまだ見えていません。
『いつもそう。自分のやりたい事が分かってない』
 みらいも生徒達が寄せた要望書を見て、それを叶えれば素敵な学校になるものではないと、疑問を抱き始めました。リコは改めて机に向かいますが、手は進みません。

 選挙当日の朝。ことはは花壇を直してくれたお礼がしたいと、ゆうとのための応援うちわを作って来ました。
『ゆうと君、綺麗な花壇を見たらみんなも優しい気持ちになるって』『優しい気持ちに・・・』
『皆が優しい気持ちになったらきっと素敵だね』
 風に揺れる花を見て、リコは図書館でのゆうとの言葉を思い出します。そこにゆうとも登校して来ました。彼も選挙当日、落ち着かないのでしょう。
 改めて、互いの健闘を誓い合ったその時、ベニーギョ様が襲来しました。ゆうとは暴風に吹き飛ばされ、ことはに介抱されますが、眼鏡を落してしまい周りが良く見えません。
 
 うちわと選挙ポスターを合わせて生み出されたドンヨクバールに、ダイヤスタイルで挑むプリキュア達。暴風が三人を校舎へ叩き付け、追い打ちをかけるように無数の紙が貼り付いて、三人の動きを封じます。
 暴風の中、眼鏡を拾い上げたゆうとは、せっかく直した花壇が崩れているのを見て、身を挺して花壇を守ります。
『学校を、もっともっと素敵な場所にするために!僕が守るんだ!』
 ゆうとの行動と言葉は、マジカルの心に刺さりました。
『私、わかったわ。素敵な学校にするために必要なもの』
 学校を守りたいと言う気持ちは、マジカルも同じです。紙を払いのけ、アクアマリンの力でドンヨクバールを凍らせて、ペリドットで空高く跳ね飛ばしました。
ゆうとに声が聞こえてくる『ありがとう。あとは私たちに任せて』
 暴風が止まったり、ゆうとは「声」を聞いた気がします。その声の主たちはドンヨクバールを、エクストリームレインボーで撃退。ベニーギョ様も引き上げていきました。

 選挙の演説が始まります。まずはゆうとの番。これまでのアピールと同様、花壇や図書室を綺麗にして、みんなに集まってもらえるようにしたい。知らない生徒同士一緒にスポーツできるようなグラウンドにしたい。そして、この学校に通う全員が仲間になれるような、笑顔になれるような素敵な学校にしたいと締めくくりました。
 続いてリコが壇上に立ちます。
『本当のことを言うと、私は生徒会長になりたいって思う前に、自分のやりたい事が分かっていなかったんです』
 抱負を語る演説の場に似つかわしくない切り出しに、生徒達にどよめきが走ります。
『だからみんなの要望を聞いても、どうしたらこの学校が良くなるのか、答えが見つからなかった。でも、ゆうと君は最初から自分の答えを持っていて、ゆうと君が生徒会長ならきっと素敵な学校になります』
 まさかの対立候補を応援する内容に、ざわめく生徒達。
『応援してくれたみんな、ごめんなさい。でも、私はゆうと君に生徒会長になって欲しいんです。学校のみんなをもっともっと笑顔にしようと、懸命に考えているゆうと君に』
 自分の至らぬところを素直に認め、安易に立候補した事を謝って辞退したリコに、自然と拍手が起こります。改めてリコは、ゆうとに握手を求めました。
『ゆうと君のように、いつか私も本当にやりたい事を見つけるわ』
 壇上で胸を張るリコとゆうとに、生徒達の拍手が投げかけられます。


 プリキュアに生徒会長数あれど、過去に選挙が描かれたのはスマイルプリキュアのみです。あの時も今回同様、生徒達の欲深い要求をウルフルンタロー達が代弁し、地味で真面目なゆうとの姿勢は、れいかが目指した理想像に重なって見えます。れいかもそうでしたが、ゆうとの公約は真摯そのもの。しかし、いささか理想的にすぎるように感じられます。高潔な理想を提唱するリベラルには、運営能力が足りないことが少なくなく、現実の世界ではそれに幻滅させられる事もありました。ゆうとに運営能力が備わっているのかどうか、試されるのはこれからだと思います。

 もちろんゆうとは、気弱で内気そうな姿に反し、簡単には折れない芯の強さを持っていることが描かれています。また、リコを論破して打ち負かそうというのではなく、あくまで自分の理想を自然体にアピールすることで、生徒会長を務めようとしています。花壇の修理や本の整理、グラウンドの仲裁も、仮に彼が生徒会長になれない、あるいはならなかったとしても、自分の損得を考えずに動いていたと思われます。
 しかし穿った見方をすれば、果たして今回リコが辞退しなければ、またリコ以外の候補者がいたならば、ゆうとは当選できたのでしょうか。ただ真面目で堅苦しいだけの人間でないのは、壮太が「友情」でゆうとを支えていることからも見て取れます。リコを応援すべき立場である筈のことはが、ゆうとを応援する気持ちになったことからも、彼を知りさえすれば誠実さを理解し、一票を投じるとは思われます。
 ただ残念ながら、彼のアピール力は高くありません。ゆうとのポスターはリコのものと比較して実に地味です。校門でのアピールも壮太の方が目立ってしまう等、まるで応援演説に来た小泉進次郎氏のような場面も見受けられました。「知ってもらえずに」涙を飲んだ候補者の方も、現実には無数にいることでしょう。その点では、リコ陣営のような「知ってもらう」アピールもある意味正解と言えます。
 
 ゆうとが誠実に描かれるほど、リコは相対的に残念な場面が見受けられます。まずは生徒会長立候補の動機について。テスト満点を褒められてちょっと調子に乗っていたこともあり、「かっこいい」ということはの発言に影響されて考えなしに立候補を決めてしまいました。
 プリキュアの生徒会長といえば真っ先に連想されるマナを筆頭に、かれん、いつき、みなみ。いずれも生徒から一目置かれ、文武両道の高い能力を持ち、問題処理能力も高い子たちばかりです。前述のれいかも、少々天然ですが(笑)、スペックの高さと一目置かれる存在であることには変わりません。彼女達の生徒会長としての「理念」は、はっきりと語られないにしても、何をしたいのか、何をしたかったのかと問われれば、皆なんらかの答えは出せる筈です。
 リコは「みんなの要望を聞く」ことで、生徒会長の仕事を果たそうとしていました。いわゆる「劉邦タイプ」のリーダーとして、それも一つの答えです。しかしリコの本質はそうではないと思います。彼女はポンコツで抜けていたり、魔法が苦手なところもありますが、どちらかと言えば自ら高みを目指し、努力を怠らない「項羽タイプ」です。むしろゆうとの方が劉邦タイプとも言えそうです。
 もちろんリコもまだ発展途上ですから、間違いをしながら成長していくものです。あえてリコ陣営を反面教師に据える事で、リコもまた自分を見つめ直し、今回の経験を活かせることでしょう。

 もっとも、単に「あこがれ」から入ってその仕事に興味を持ち、壁にぶつかり挫折しながら大成していくという事も考えられます。その最たるものは、前作プリンセスプリキュアのはるかでしょう。あこがれは決してマイナスだけでは片付けられません。リコが成長した将来に就いていた職業(あえて現時点では伏せます)も、「あこがれ」を自分のやりたい事、できる事を踏まえて見つめ直した結果の賜物だと思います。

 ところで、図書室でリコが生徒会長について調べていた本は、よく見ると人物適性判断の本でした。一時停止して読んでみると面白かったので、以下、リコが口にした「大切な役目を担い」以下を引用すると・・・
"あなたの頭の中にはこんなムズカシイコトバがいっぱい!
 沢山の事を知っていて、友達からも一目置かれるクールな生徒会長タイプだよ。
 頭の回転が速くて何でもすぐ覚えちゃうけど、ほんとはちょっと忘れっぽい、
 おっちょこちょいさんなトコロもあるかも?
 実は感動屋さんなあなたは、美術や音楽と言った芸術系の分にゃでも才能を発揮できそうよ"
・・・これを参考にしちゃったんですね(笑)。民明書房の本を読んでも、真に受けてしまいそうです。さらにこの本の隣のページには
"適職は総理大臣"
などと書かれています。まさか、マナもこの本を読んで生徒会長を志した、とか・・・?

 みらいが「魔法で」ポスターを作り、ことはが「手作業で」うちわを作るといった、ある意味逆転現象といえそうな作業も意味深でした。
 また、チクルンが目をつけたモフルンの「重要性」は、解釈こそ間違っていたものの、モフルンが重要な存在という事実は的を得ています。先の展開を知った上で見ると、こうした何気ない描写にも目が向きました。

 さて来週の日曜が都議会議員選挙の投票日です。まだ誰にするかは決めていませんが、候補者の本質を見極めて、適切な一票を投じたいものです。

※お知らせ
 職場の四半期決算がらみで業務の集中が見込まれるため、10日~2週間ほど更新をお休みすると思います。落ち着いたタイミングで再開しますので、しばしお待ち下さい・・・
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悩める父メフィスト

順調そうなご視聴・ご投稿 何よりです。
実はこの回、不思議と記憶に残ってます。うまく書けないのですが、、、リコはいつ覚醒するんだろう? そろそろそういう回かなと先入観もって当時視聴してたせいかもしれませんが。
by 悩める父メフィスト (2017-07-08 20:17) 

スティクス

>悩める父メフィストさん
最近ペースが落ちており、あまり順調ではないかもしれませんが、いつもお気遣いありがとうございます。

私はこの話のリアルタイム視聴時「辞退」という選択にかなりのインパクトを感じました。その時抱いた感想が活かしきれていれば良いのですが・・・
by スティクス (2017-07-10 22:21) 

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